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第51話 ゾンビコレクター
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地下三階層。
「……相変わらず臭いなここは。鼻が曲がりそうだ」
フロアに下り立つと死臭が鼻をついてくる。
「そうですか? 私は何も感じませんけど」
「ククリがうらやましいよ、まったく……」
なぜかククリはこのフロアのゾンビの放つ悪臭が平気らしい。
「そんなに臭いなら口で息したらいいんじゃないですか?」
「それも考えたけどやめたよ」
口で息をすると直接汚れた空気を肺に入れているようで余計気持ちが悪い。
まだ臭い臭いを我慢する方がましだ。
一刻も早くこんなフロアからは抜け出したいがゾンビコレクターを取得するには千体のゾンビを倒す必要がある。
「ククリ、早いとこゾンビを千体倒してゾンビコレクターを手にするぞっ」
「おーっ!」
意気揚々と返事をするククリを横に従え俺は魔眼の透視能力を発動した。
周りの壁を透視して宝箱の位置を探る。
ゾンビ狩りの前にまずはアイテム収集だ。
今の装備のままでも充分戦えるが新しいアイテムを手に入れておいて損はないからな。
運よく左方向に宝箱を発見すると俺はそっちに向かっていく。
透視能力でゾンビとの出会い頭の接触だけは回避しつつ通路の角を曲がると宝箱を肉眼で確認できた。
「マツイさん、宝箱ですよっ」
「ああ」
罠ではないことを確かめてから蓋を開ける。
とそこには攻撃力+5の銅の剣が入っていた。
「普段なら嬉しいところだけど今は荷物になるだけだな……」
俺は右手には攻撃力+10の妖刀きりがくれを左手には防御力+10のみかがみの盾を持っているので銅の剣は持てそうにない。
肩にかけた布の袋の中に入れるという手もあるが下手すれば布の袋が破れかねない。
俺は銅の剣をなくなく諦め他の宝箱を探すことにした。
『アー……』
そんな矢先ゾンビが前から現れた。
動きの遅いゾンビは一歩一歩ゆっくりと近付いてくる。
ゾンビを倒すには首をはねるか脳を破壊するしかないらしいので俺は刀の届く間合いまで待ってからサッと刀を振り抜いた。
きれいな切り口でゾンビの首を斬り落とす。
ゾンビは石畳の上に倒れると頭部と胴体それぞれが泡状になって消えていった。
「うん、ゾンビ相手でも問題ないな」
俺は刀を見上げつぶやくが、
「でも一撃で倒しちゃったら妖刀きりがくれを使っている意味があまりないですけどね」
とククリは言う。
妖刀きりがくれ。
斬った相手の目を見えなくさせるという特殊効果のある刀だが未だにその効果は発揮できてはいない。
それというのもここまですべてのモンスターを俺が一撃で倒してしまっているからだ。
「一発で倒せるならそれに越したことはないだろ」
「まあそうですけど~」
ククリは口をとがらせた。
どうやら俺に妖刀きりがくれの効果を試してもらいたいようだ。
「なんにしても気をつけなきゃいけないのは腐った液体だな」
「そうですね」
ゾンビの吐く腐った液体は武器や防具を腐食させ錆びさせてしまう。
前回ダンジョンに潜った時はこれで武器と防具を駄目にされて帰還を余儀なくされた。
「それに関してはみかがみの盾があるから今回は平気そうですけどね」
「本当にこの盾は錆びないのか?」
「はい、そういう盾ですから。ゾンビが腐った液体を吐いてきたら避けるかその盾でガードしてください」
「わかったよ」
俺はククリの言うことを信じ、みかがみの盾を文字通り盾にしながらアイテム探しを続けた。
道中フロアボスのいる部屋の前を通る。
フロアボスのマーダーゾンビはうつむきながら頬まで切れ上がった口を不気味にひくひくさせていた。
内臓が飛び出ていてグロい。
「うぇ……気味悪い奴」
あいつと戦う前になんとしてでもゾンビ系のモンスターに対して三倍のダメージを与えられるようになるスキル、ゾンビコレクターを取得しておきたいところだ。
その後俺は宝箱を二つみつけ中に入っていた黒曜の玉とムカデ草を布の袋にしまい込んだ。
黒曜の玉は投げ当てると相手を混乱させられるアイテムでムカデ草は食べると麻痺が治るらしい。
「フロアは探索し終わりましたね。あとはゾンビを倒していきましょう」
「そうだな」
言うと俺は首からぶら下げていたにおい袋の口を開けた。
これで何もしなくても向こうからモンスターが寄ってきてくれる。
効果が表れたのかにおい袋を開けて一分もしないうちにぞろぞろとゾンビがやってきた。
「いくぞっ」
俺は先頭のゾンビの首を一振りではね飛ばすと返す刀で次のゾンビの首を斬り落とす。
さらに斬れ味抜群の妖刀きりがくれで今度は二体のゾンビの首をまとめて斬り捨てた。
それでも一向にひるまないゾンビたちはぞろぞろと近付いてくる。
『ゲボッ……』
『ゲボッ……』
「あぶねっ!」
腐った液体をなんとか盾で防ぎながら俺は一旦退いた。
やっぱり腐った液体が厄介だな……。
ここで俺は戦い方を変えてみた。
一歩踏み込み刀を横になぎ払うとすぐさまゾンビたちの間合いの外に出る。
今の一振りでダメージを負ったゾンビたちが妖刀きりがくれの効果で目が見えなくなり右往左往しだした。
さらに前に出てくるゾンビたちに向かって俺はまたも一太刀浴びせる。
目の見えなくなったゾンビたちが同士討ちを始めだした。
こうしてヒットアンドアウェイを繰り返し完全に隙だらけになったゾンビたちを俺は一体ずつ確実に始末していった。
「すごいですけどなんか地味ですね……」
天井付近で見ていたククリがそうもらすがなんとでも言ってくれ。
こっちはダンジョン攻略に生活がかかっているんだ、戦い方の派手さなんて気にしていられない。
大体ククリの望み通り妖刀きりがくれの効果をいかんなく発揮して戦っているんだからほめてほしいくらいだ。
俺は時間をかけつつ安全にゾンビの群れを全滅させるとまたもやってきたゾンビたちにも同じ戦法で戦いを挑んだ。
ダンジョンを強制的に追い出される前に地下二階層に足を踏み入れまた地下三階層に戻ってきてはゾンビたちの相手をするを繰り返す。
途中におい袋を閉じて仮眠をとりながらゾンビを狩ること丸一日――
【ゾンビコレクターを取得しました】
ようやく俺はスキル、ゾンビコレクターを手にしたのだった。
「……相変わらず臭いなここは。鼻が曲がりそうだ」
フロアに下り立つと死臭が鼻をついてくる。
「そうですか? 私は何も感じませんけど」
「ククリがうらやましいよ、まったく……」
なぜかククリはこのフロアのゾンビの放つ悪臭が平気らしい。
「そんなに臭いなら口で息したらいいんじゃないですか?」
「それも考えたけどやめたよ」
口で息をすると直接汚れた空気を肺に入れているようで余計気持ちが悪い。
まだ臭い臭いを我慢する方がましだ。
一刻も早くこんなフロアからは抜け出したいがゾンビコレクターを取得するには千体のゾンビを倒す必要がある。
「ククリ、早いとこゾンビを千体倒してゾンビコレクターを手にするぞっ」
「おーっ!」
意気揚々と返事をするククリを横に従え俺は魔眼の透視能力を発動した。
周りの壁を透視して宝箱の位置を探る。
ゾンビ狩りの前にまずはアイテム収集だ。
今の装備のままでも充分戦えるが新しいアイテムを手に入れておいて損はないからな。
運よく左方向に宝箱を発見すると俺はそっちに向かっていく。
透視能力でゾンビとの出会い頭の接触だけは回避しつつ通路の角を曲がると宝箱を肉眼で確認できた。
「マツイさん、宝箱ですよっ」
「ああ」
罠ではないことを確かめてから蓋を開ける。
とそこには攻撃力+5の銅の剣が入っていた。
「普段なら嬉しいところだけど今は荷物になるだけだな……」
俺は右手には攻撃力+10の妖刀きりがくれを左手には防御力+10のみかがみの盾を持っているので銅の剣は持てそうにない。
肩にかけた布の袋の中に入れるという手もあるが下手すれば布の袋が破れかねない。
俺は銅の剣をなくなく諦め他の宝箱を探すことにした。
『アー……』
そんな矢先ゾンビが前から現れた。
動きの遅いゾンビは一歩一歩ゆっくりと近付いてくる。
ゾンビを倒すには首をはねるか脳を破壊するしかないらしいので俺は刀の届く間合いまで待ってからサッと刀を振り抜いた。
きれいな切り口でゾンビの首を斬り落とす。
ゾンビは石畳の上に倒れると頭部と胴体それぞれが泡状になって消えていった。
「うん、ゾンビ相手でも問題ないな」
俺は刀を見上げつぶやくが、
「でも一撃で倒しちゃったら妖刀きりがくれを使っている意味があまりないですけどね」
とククリは言う。
妖刀きりがくれ。
斬った相手の目を見えなくさせるという特殊効果のある刀だが未だにその効果は発揮できてはいない。
それというのもここまですべてのモンスターを俺が一撃で倒してしまっているからだ。
「一発で倒せるならそれに越したことはないだろ」
「まあそうですけど~」
ククリは口をとがらせた。
どうやら俺に妖刀きりがくれの効果を試してもらいたいようだ。
「なんにしても気をつけなきゃいけないのは腐った液体だな」
「そうですね」
ゾンビの吐く腐った液体は武器や防具を腐食させ錆びさせてしまう。
前回ダンジョンに潜った時はこれで武器と防具を駄目にされて帰還を余儀なくされた。
「それに関してはみかがみの盾があるから今回は平気そうですけどね」
「本当にこの盾は錆びないのか?」
「はい、そういう盾ですから。ゾンビが腐った液体を吐いてきたら避けるかその盾でガードしてください」
「わかったよ」
俺はククリの言うことを信じ、みかがみの盾を文字通り盾にしながらアイテム探しを続けた。
道中フロアボスのいる部屋の前を通る。
フロアボスのマーダーゾンビはうつむきながら頬まで切れ上がった口を不気味にひくひくさせていた。
内臓が飛び出ていてグロい。
「うぇ……気味悪い奴」
あいつと戦う前になんとしてでもゾンビ系のモンスターに対して三倍のダメージを与えられるようになるスキル、ゾンビコレクターを取得しておきたいところだ。
その後俺は宝箱を二つみつけ中に入っていた黒曜の玉とムカデ草を布の袋にしまい込んだ。
黒曜の玉は投げ当てると相手を混乱させられるアイテムでムカデ草は食べると麻痺が治るらしい。
「フロアは探索し終わりましたね。あとはゾンビを倒していきましょう」
「そうだな」
言うと俺は首からぶら下げていたにおい袋の口を開けた。
これで何もしなくても向こうからモンスターが寄ってきてくれる。
効果が表れたのかにおい袋を開けて一分もしないうちにぞろぞろとゾンビがやってきた。
「いくぞっ」
俺は先頭のゾンビの首を一振りではね飛ばすと返す刀で次のゾンビの首を斬り落とす。
さらに斬れ味抜群の妖刀きりがくれで今度は二体のゾンビの首をまとめて斬り捨てた。
それでも一向にひるまないゾンビたちはぞろぞろと近付いてくる。
『ゲボッ……』
『ゲボッ……』
「あぶねっ!」
腐った液体をなんとか盾で防ぎながら俺は一旦退いた。
やっぱり腐った液体が厄介だな……。
ここで俺は戦い方を変えてみた。
一歩踏み込み刀を横になぎ払うとすぐさまゾンビたちの間合いの外に出る。
今の一振りでダメージを負ったゾンビたちが妖刀きりがくれの効果で目が見えなくなり右往左往しだした。
さらに前に出てくるゾンビたちに向かって俺はまたも一太刀浴びせる。
目の見えなくなったゾンビたちが同士討ちを始めだした。
こうしてヒットアンドアウェイを繰り返し完全に隙だらけになったゾンビたちを俺は一体ずつ確実に始末していった。
「すごいですけどなんか地味ですね……」
天井付近で見ていたククリがそうもらすがなんとでも言ってくれ。
こっちはダンジョン攻略に生活がかかっているんだ、戦い方の派手さなんて気にしていられない。
大体ククリの望み通り妖刀きりがくれの効果をいかんなく発揮して戦っているんだからほめてほしいくらいだ。
俺は時間をかけつつ安全にゾンビの群れを全滅させるとまたもやってきたゾンビたちにも同じ戦法で戦いを挑んだ。
ダンジョンを強制的に追い出される前に地下二階層に足を踏み入れまた地下三階層に戻ってきてはゾンビたちの相手をするを繰り返す。
途中におい袋を閉じて仮眠をとりながらゾンビを狩ること丸一日――
【ゾンビコレクターを取得しました】
ようやく俺はスキル、ゾンビコレクターを手にしたのだった。
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