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第52話 マーダーゾンビ
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千体ものゾンビを倒してゾンビコレクターを取得した俺だったがレベルは期待していたほどは上がらなかった。
ククリが言うにはゾンビの経験値はゴブリンのそれよりずっと低いらしい。
*************************************
マツイ:レベル26
生命力:48/64
魔力:26/26
攻撃力:33
防御力:30
素早さ:28
スキル:魔眼、スライムコレクター、ゴブリンコレクター、ゾンビコレクター
魔法:バトルマッチ、ヒール、バトルアイス、キュア、バトルウインド
*************************************
「丸一日かけてゾンビ千体倒して上がったのは3レベルだけか……しかもドロップアイテムは一個もなし」
腐った液体は吐いてくるし、フロアは臭いし、経験値は少ないし、アイテムドロップはないし、散々だな。二度とゾンビとは戦いたくない。
「でもでも新しい攻撃魔法も覚えたじゃないですか」
「どうせまた使えない魔法なんだろ」
バトルマッチもバトルアイスもまともな攻撃魔法ではなかった。
まだ試してはいないがバトルウインドって魔法もきっと心地いいそよ風が吹くだけの魔法とかに決まっている。
「試しに使ってみてくださいよ」
「いいよ、魔力がもったいない」
どうせ使うならヒールの方がましだ。
ゾンビの攻撃をくらって少しだけダメージを受けているからな。
「それよりフロアボスを倒しにいくぞ」
俺はフロアボスのいる部屋に向かって歩き出した。
「えっ? 休憩してからじゃなくてもう行くんですか?」
「ああ」
「いつも慎重なマツイさんにしては珍しいですね」
「一刻も早くこのゾンビ臭いフロアを出たいんだよ」
臭い臭いは思考を鈍らせる効果があるのかもしれない、この時の俺は地下三階層を抜け出したい一心でゴブリンのいる地下二階層で休むという発想は思いつきもしなかったのだから。
「今の装備品とレベルでフロアボスに勝てると思うか?」
「妖刀きりがくれとみかがみの盾がありますし、新しい魔法も覚えましたし、負ける要素はありませんね」
「そっか、それを聞けて安心したよ。ところでフロアボスのマーダーゾンビってのはどんなモンスターなんだ?」
俺はマーダーゾンビのいる部屋の前まで到着するとククリに顔を向けた。
「ここから見てわかる通りこれまでのゾンビより少し大きいです」
「ああ、それは見ればわかる。それから?」
「これまでのゾンビより強いです」
「そりゃそうだろうよ。じゃなくて何か特徴とか弱点とかないのか?」
俺は生命力を回復させるため薬草をむしゃむしゃ食べながら訊く。
「そうですね~……特にはないですね」
ククリは首をひねりながら答えた。
「ふーん……まあいいか」
今の俺は皮の鎧に安全靴、妖刀きりがくれにみかがみの盾というこれまでにない最強装備のうえ、投げ当てると混乱させることの出来るアイテム黒曜の玉も持っている。
レベルも上がっていることだし、
「じゃあ、部屋に入るぞ」
俺は部屋へと足を踏み入れた。
通路が石の壁で塞がる。
これで逃げ場はない。
俺の気配に気付いたのかマーダーゾンビは顔を上げギロッと目玉を動かした。
俺を視界にとらえると『アアー……』とうめき声を発して両の手を前に伸ばす。
だがそのまま動く様子がないので俺は盾を構えながらながらじりじりと近付いていった。
どうせゾンビだ、これまでの雑魚モンスターより強いと言ってもたかが知れている。
そうたかをくくっていたのだが、
「あっ、しいて言えばこれまでのゾンビよりも動きが速いです」
ククリのその言葉が合図だったかのようにマーダーゾンビが俺めがけて駆けだした。
「っ!?」
がしっと俺の盾を掴んで引きはがそうとする。
俺とマーダーゾンビでみかがみの盾を引っ張り合う形になった。
「くっ、こいつ結構力が強いぞっ……」
俺の力は常人の三倍以上、握力は軽く百キロは超えているというのにマーダーゾンビも負けていない。
何が特徴はないだ、ククリの奴。
これまでのゾンビと比べて圧倒的に速いし強いじゃないか。
俺は盾をとられまいと刀を振るった。
しかしマーダーゾンビはこれをしゃがみ込んでかわす。
続けざま俺は刀を突き下ろした。
するとマーダーゾンビが左の手のひらを犠牲にして刀を受け止めた。
そしてそのまま刀を握り込むマーダーゾンビ。
予想通り痛みも恐怖も感じてはいないらしい。
『ゲボッ……』
マーダーゾンビが腐った液体を自分の手もろとも刀にかけようと吐き出した。
危ないっ!
俺は武器をなくされてはたまらないと瞬時に刀を右に振り抜いた。マーダーゾンビの左手の指が数本宙を舞う。
『アアー……』
ここでマーダーゾンビが盾から手を放すと大きく腕を振り回しながら攻撃を仕掛けてきた。
だがその手は空を切る。妖刀きりがくれの効果が出て目が見えなくなっているようだ。
よしっ。
こうなればこっちのものだ。
俺は一旦距離をとると足音を立てないようにそっとマーダーゾンビの背後に回り込む。
『アアー……』
依然大振りの攻撃を誰もいない場所に向かって続けているマーダーゾンビ。
俺はマーダーゾンビの後ろにつくと頭めがけて斬りかかった。
ザシュッ。
地面にぽたぽたと赤い血が落ちる。
……俺の血だ。
「くっ……!」
俺は右目から血を流していた。
ククリが言うにはゾンビの経験値はゴブリンのそれよりずっと低いらしい。
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マツイ:レベル26
生命力:48/64
魔力:26/26
攻撃力:33
防御力:30
素早さ:28
スキル:魔眼、スライムコレクター、ゴブリンコレクター、ゾンビコレクター
魔法:バトルマッチ、ヒール、バトルアイス、キュア、バトルウインド
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「丸一日かけてゾンビ千体倒して上がったのは3レベルだけか……しかもドロップアイテムは一個もなし」
腐った液体は吐いてくるし、フロアは臭いし、経験値は少ないし、アイテムドロップはないし、散々だな。二度とゾンビとは戦いたくない。
「でもでも新しい攻撃魔法も覚えたじゃないですか」
「どうせまた使えない魔法なんだろ」
バトルマッチもバトルアイスもまともな攻撃魔法ではなかった。
まだ試してはいないがバトルウインドって魔法もきっと心地いいそよ風が吹くだけの魔法とかに決まっている。
「試しに使ってみてくださいよ」
「いいよ、魔力がもったいない」
どうせ使うならヒールの方がましだ。
ゾンビの攻撃をくらって少しだけダメージを受けているからな。
「それよりフロアボスを倒しにいくぞ」
俺はフロアボスのいる部屋に向かって歩き出した。
「えっ? 休憩してからじゃなくてもう行くんですか?」
「ああ」
「いつも慎重なマツイさんにしては珍しいですね」
「一刻も早くこのゾンビ臭いフロアを出たいんだよ」
臭い臭いは思考を鈍らせる効果があるのかもしれない、この時の俺は地下三階層を抜け出したい一心でゴブリンのいる地下二階層で休むという発想は思いつきもしなかったのだから。
「今の装備品とレベルでフロアボスに勝てると思うか?」
「妖刀きりがくれとみかがみの盾がありますし、新しい魔法も覚えましたし、負ける要素はありませんね」
「そっか、それを聞けて安心したよ。ところでフロアボスのマーダーゾンビってのはどんなモンスターなんだ?」
俺はマーダーゾンビのいる部屋の前まで到着するとククリに顔を向けた。
「ここから見てわかる通りこれまでのゾンビより少し大きいです」
「ああ、それは見ればわかる。それから?」
「これまでのゾンビより強いです」
「そりゃそうだろうよ。じゃなくて何か特徴とか弱点とかないのか?」
俺は生命力を回復させるため薬草をむしゃむしゃ食べながら訊く。
「そうですね~……特にはないですね」
ククリは首をひねりながら答えた。
「ふーん……まあいいか」
今の俺は皮の鎧に安全靴、妖刀きりがくれにみかがみの盾というこれまでにない最強装備のうえ、投げ当てると混乱させることの出来るアイテム黒曜の玉も持っている。
レベルも上がっていることだし、
「じゃあ、部屋に入るぞ」
俺は部屋へと足を踏み入れた。
通路が石の壁で塞がる。
これで逃げ場はない。
俺の気配に気付いたのかマーダーゾンビは顔を上げギロッと目玉を動かした。
俺を視界にとらえると『アアー……』とうめき声を発して両の手を前に伸ばす。
だがそのまま動く様子がないので俺は盾を構えながらながらじりじりと近付いていった。
どうせゾンビだ、これまでの雑魚モンスターより強いと言ってもたかが知れている。
そうたかをくくっていたのだが、
「あっ、しいて言えばこれまでのゾンビよりも動きが速いです」
ククリのその言葉が合図だったかのようにマーダーゾンビが俺めがけて駆けだした。
「っ!?」
がしっと俺の盾を掴んで引きはがそうとする。
俺とマーダーゾンビでみかがみの盾を引っ張り合う形になった。
「くっ、こいつ結構力が強いぞっ……」
俺の力は常人の三倍以上、握力は軽く百キロは超えているというのにマーダーゾンビも負けていない。
何が特徴はないだ、ククリの奴。
これまでのゾンビと比べて圧倒的に速いし強いじゃないか。
俺は盾をとられまいと刀を振るった。
しかしマーダーゾンビはこれをしゃがみ込んでかわす。
続けざま俺は刀を突き下ろした。
するとマーダーゾンビが左の手のひらを犠牲にして刀を受け止めた。
そしてそのまま刀を握り込むマーダーゾンビ。
予想通り痛みも恐怖も感じてはいないらしい。
『ゲボッ……』
マーダーゾンビが腐った液体を自分の手もろとも刀にかけようと吐き出した。
危ないっ!
俺は武器をなくされてはたまらないと瞬時に刀を右に振り抜いた。マーダーゾンビの左手の指が数本宙を舞う。
『アアー……』
ここでマーダーゾンビが盾から手を放すと大きく腕を振り回しながら攻撃を仕掛けてきた。
だがその手は空を切る。妖刀きりがくれの効果が出て目が見えなくなっているようだ。
よしっ。
こうなればこっちのものだ。
俺は一旦距離をとると足音を立てないようにそっとマーダーゾンビの背後に回り込む。
『アアー……』
依然大振りの攻撃を誰もいない場所に向かって続けているマーダーゾンビ。
俺はマーダーゾンビの後ろにつくと頭めがけて斬りかかった。
ザシュッ。
地面にぽたぽたと赤い血が落ちる。
……俺の血だ。
「くっ……!」
俺は右目から血を流していた。
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