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第148話 賢者の石の奇跡
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床に散らばった賢者の石の欠片。
それをみつめる俺とベアさんとククリ。
俺はなんとか口を開く。
「あの……ベアさん。三百万円は……?」
『賢者の石が割れちまった以上その話はなしだな』
「……ですよね」
俺ががっくりしているとククリが、
「ベアさんベアさん。最後に賢者の石に触ったのはベアさんじゃないんですか?」
ベアさんを問い詰めるように訊ねた。
「いや、いいんだよククリ。落としたのは俺なんだから俺が悪いんだよ」
確かにベアさんの手には当たったが責任逃れをしてベアさんにお金を払ってもらおうなんて気はない。
ククリの気持ちは嬉しいが――
「え? マツイさん何言ってるんですか? 悪いのはマツイさんですよ」
「え……あ、うん……え?」
思っていた答えとは別の答えが返ってきた。
「そういうことではなくてですね。私が言いたいのは賢者の石を使ったのは誰かってことです」
「? どういうことだククリ?」
「いいですか、マツイさん。賢者の石は割った者に奇跡が訪れるんですよ。賢者の石は実際にこうして割れているわけですから誰かが使ったことになるんですよ」
ククリは割れて散らばっている賢者の石を指差し説明する。
「あー、そういうことか。あれ? でも俺には何も変化はないようだけど……」
賢者の石を落として割ってしまったのは俺だが俺には何も奇跡など起こっているようには見えない。
『ああ、おれも特に変わったところはないぜ』
ベアさんも続く。
『つうか厳密に言えば最後に賢者の石に当たったのはそいつだろ』
言ってベアさんが人差し指を下に向けようとしたちょうどその時だった。
『あ~、マジお腹すいたし~』
鼻にかかったような若い女性の声が俺の足元から聞こえた。
「……へ?」
『……ん?』
「……え?」
俺とベアさんとククリは三人で顔を見合せた後、声の出どころにゆっくり視線を落とす。
『お腹すきすぎてマジ何も考えられないし~』
「お、おい、どうなってんだククリ……」
『はんっ、こりゃたまげたぜ』
「これが賢者の石の奇跡……」
俺たちの視線の先――
若い女性の声は俺の足元でぐったりと寝そべっているスラの口から発せられていたものだった。
それをみつめる俺とベアさんとククリ。
俺はなんとか口を開く。
「あの……ベアさん。三百万円は……?」
『賢者の石が割れちまった以上その話はなしだな』
「……ですよね」
俺ががっくりしているとククリが、
「ベアさんベアさん。最後に賢者の石に触ったのはベアさんじゃないんですか?」
ベアさんを問い詰めるように訊ねた。
「いや、いいんだよククリ。落としたのは俺なんだから俺が悪いんだよ」
確かにベアさんの手には当たったが責任逃れをしてベアさんにお金を払ってもらおうなんて気はない。
ククリの気持ちは嬉しいが――
「え? マツイさん何言ってるんですか? 悪いのはマツイさんですよ」
「え……あ、うん……え?」
思っていた答えとは別の答えが返ってきた。
「そういうことではなくてですね。私が言いたいのは賢者の石を使ったのは誰かってことです」
「? どういうことだククリ?」
「いいですか、マツイさん。賢者の石は割った者に奇跡が訪れるんですよ。賢者の石は実際にこうして割れているわけですから誰かが使ったことになるんですよ」
ククリは割れて散らばっている賢者の石を指差し説明する。
「あー、そういうことか。あれ? でも俺には何も変化はないようだけど……」
賢者の石を落として割ってしまったのは俺だが俺には何も奇跡など起こっているようには見えない。
『ああ、おれも特に変わったところはないぜ』
ベアさんも続く。
『つうか厳密に言えば最後に賢者の石に当たったのはそいつだろ』
言ってベアさんが人差し指を下に向けようとしたちょうどその時だった。
『あ~、マジお腹すいたし~』
鼻にかかったような若い女性の声が俺の足元から聞こえた。
「……へ?」
『……ん?』
「……え?」
俺とベアさんとククリは三人で顔を見合せた後、声の出どころにゆっくり視線を落とす。
『お腹すきすぎてマジ何も考えられないし~』
「お、おい、どうなってんだククリ……」
『はんっ、こりゃたまげたぜ』
「これが賢者の石の奇跡……」
俺たちの視線の先――
若い女性の声は俺の足元でぐったりと寝そべっているスラの口から発せられていたものだった。
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