生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

文字の大きさ
1,305 / 1,480

1304.【ハル視点】行方不明の

しおりを挟む
「参加者も物資も準備が出来ているのか。さすがだな」

 満足そうにひとつ頷いた父さんは、今度はリヤンに視線を向けた。

「冒険者ギルドとして日程の要望があるなら聞くが…何か言いたい事はあるか?」

 ごまかさずにはっきりと言って欲しいと続けた父さんに、リヤンは迷う事なく答えた。

「冒険者パーティーへの声がけは、今日にでも済むと思う。ただ…もし可能なら、冒険者ギルドとしては出来るだけ出発が早い方が良いな」
「ああ、行方不明の冒険者パーティーがいると言っていた件か…」
「そうなんだ。できるだけ早く探索に行きたいからな」

 真剣な表情でこくりと頷いたリヤンに、ルピカさんとコーデリアさんは大きく目を見開いて固まっていた。

 何故この二人がこんなに驚いているんだ?不思議な反応に思わず首を傾げてしまったが、言葉にして尋ねるよりも前に、コーデリアさんが我に返った。

「えっ…ちょっと待ってよ、ギルマス!私…行方不明の冒険者パーティーがいるとかいま初めて聞いたんだけど?」

 コーデリアさんは、釣りあがった目でリヤンを睨みつけながらそう尋ねた。見た目がこどもに見えてしまうせいで迫力はあまり無いが、威圧感はあるな。

「ねぇ、ルピカさんは知ってた?」

 視線はルピカに固定したままでの質問に、ルピカさんは苦笑を洩らす。

「いいや、俺も初耳だよ」
「あー…そういえば…お前たちにはまだ言って無かった…な」
「リヤンは冒険者ギルドのギルマスなんだから、最初に冒険者にそういう報告をするべきなんじゃないの?領主様一家のみなさんが驚いてないって事は、そっちには事前に報告してたんでしょう?」
「…そうだな。すまなかった」

 正論だと頷いたリヤンが素直に頭を下げた所で、コーデリアさんはハッと周りに視線を向けた。領主様の前でギルマスを怒鳴りつけてしまったとか考えているんだろうな。

 あの父さんの微妙に寂しそうな表情は、別にリヤンを怒鳴りつけたからでは無い。もしここに母さんがいたら、コーデリアさんと仲良くなれそうなのにとか考えてるんだと思うぞ。まあ、領主の威厳も何も無いから、こちら側からそれを教える事は無いんだが。

「し、失礼しました…」
「いや、別に気にしなくて良い。たとえ上司が相手でも、諫めるべき事はきちんと進言するのは良い事だ。なあ、ボルト」
「はい、良い関係を築かれているのだなと思うぐらいで、不敬だなんだとは言いませんよ」

 急に話を振られたのに、きっちりそう答えるボルトはやっぱりすごいと思う。コーデリアさんもホッとした様子で、ふうと息を吐き出していた。

「それで?いったい誰のパーティーが戻ってきていないんだ?」
「アコットのパーティーだ」
「え…アコットのパーティーが…?あの人たちってもっと深層にいるんじゃないの?」

 コーデリアさんは不思議そうにそう尋ねた。

「最近は欲しい素材があるとかで100階層付近を探索中だと申請が出ているんだ。だが、一週間ほどから連絡も無く戻ってきていないらしい」
「そうなんだ…無事だと良いけど」

 顔見知りなのか心配そうに呟いたコーデリアさんに、リヤンもそうだなと重々しく頷いた。

「盗賊に捕まっている可能性があるかもと考えているんだが…」
「その可能性は高いかもしれないな」

 リヤンと父さんが早い方が良いかもしれないと言い合う中、不意にルピカさんが恐る恐る手をあげた。
 
「あー…この空気の中で言うのは嫌なんだが…アコットたちなら、数日前に街の裏の黒酒の美味い酒場で会った」
「は?」
「酒場で?」
「ああ、無事に欲しかった素材が手に入ったから、俺達も休暇中だと言いながら飲んでたな」
「…申請も出さずに帰ってきてるってのは…たしかに予想外だったな。予想外すぎて調べてすらいなかった…」

 無表情なリヤンの極低音の呟きに、コーデリアさんとルピカさんはすっと気配を消した。危機管理がきっちり出来ていてすごいな。まあリヤンはここで暴れ出したりはしないだろうが。

 みんながじっと見つめる中、父さんは率直に尋ねた。

「リヤン、冒険者ギルドが参加する理由は無くなったんじゃないか?もう一度だけ確認するが…本隊に参加するのか?」

 今なら参加しないと言っても問題は無いぞと苦笑する父さんに、リヤンはいやと首を振った。

「アコットたちは後できっちり叱るとして…ダンジョン内でポズナーラを罠に使う馬鹿共をぶちのめすっていう、大事な理由があるからな」
「分かった。では明日は各自用意のために使うとして、明後日に出発で良いだろうか?」

 ぐるりと周りを見回した父さんの視線を、全員が黙って見返した。こういう場合は沈黙が同意になるからな。

「では明後日、時刻は明日中に連絡するからよろしく頼む」
しおりを挟む
感想 377

あなたにおすすめの小説

『働いたら負けだと思ったので、何もしなかったら勝手に勝ちました』

ふわふわ
恋愛
王太子から一方的に婚約を破棄された公爵令嬢、 ファワーリス・シグナス。 理由は単純。 「何もしようとしない女だから」。 ……だが彼女は、反論もしなければ、復讐もしない。 泣き叫ぶことも、見返そうと努力することもなく、 ただ静かに言う。 ――「何をする必要が?」 彼女は何もしない。 問題が起きれば専門家が対処すべきであり、 素人が善意で口出しする方が、かえって傷口を広げると知っているから。 婚約破棄の後、 周囲は勝手に騒ぎ、勝手に動き、勝手に自滅し、 勝手に問題を解決していく。 彼女がしたことは、 ・責任を引き受けない ・期待に応えない ・象徴にならない ・巻き込まれない ――ただそれだけ。 それでも世界は、 彼女を基準にし、 彼女を利用しようとし、 最後には「選ぼう」とする。 だがファワーリスは、 そのすべてを静かに拒み続ける。 働いたら負け。 何もしないのが勝ち。 何も背負わず、何も奪わず、何も失わない。 「何もしない」という選択を貫いた令嬢が手にしたのは、 誰にも邪魔されない、完全な自由だった。 これは、 戦わず、争わず、努力もせず、 それでも最後に“勝ってしまった” 一人の令嬢の、静かなざまぁ物語。

できない子に転生しましたが、家族と食卓があれば十分です ―人間不信だった私が、ゆっくり育つ異世界生活―

愛朱ひいろ
ファンタジー
人の顔色ばかり伺い、心を壊した26歳の会社員女性。 彼女は死後、異世界で「できない子」として転生する。 魔法は使えない。 体は不器用で、成長も人より遅い。 前世の記憶のせいで、人と関わることが少し怖い。 けれどこの世界には、 見守り支えてくれる両親と、 あたたかい食卓があった。 泣いて、つまずいて、できないことに落ち込みながら、 彼女は少しずつ「できないままでも、生きていていい」と知っていく。 これは、 最強でもチートでもない主人公が、 家族と食事に支えられながら、ゆっくり育ち直す 生活密着型・異世界転生×成長×グルメファンタジー。 ……の、予定です。 毎日更新できるように執筆がんばります!

新年に余り物でおせちを作ったら、冷酷と噂の騎士団長様に「運命の番」だと求婚されました

水凪しおん
BL
料理人だった俺が転生したのは、男性オメガというだけで家族に虐げられる不遇の青年カイ。 新年くらいはと前世の記憶を頼りに作ったのは、この世界にはない『おせち料理』だった。 それを偶然口にしたのは、氷のように冷酷と噂される最強の騎士団長リアム。 「お前は俺の運命の番だ」 彼の屋敷に保護され、俺の作る料理が彼の心を溶かしていく。 不器用で、だけどまっすぐな愛情を注いでくれる彼と、美味しい料理で紡ぐ、甘くて温かい異世界スローライフ。

てめぇの所為だよ

章槻雅希
ファンタジー
王太子ウルリコは政略によって結ばれた婚約が気に食わなかった。それを隠そうともせずに臨んだ婚約者エウフェミアとの茶会で彼は自分ばかりが貧乏くじを引いたと彼女を責める。しかし、見事に返り討ちに遭うのだった。 『小説家になろう』様・『アルファポリス』様の重複投稿、自サイトにも掲載。

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。 ----------------------------------------- 0時,6時,12時,18時に2話ずつ更新

婚約破棄から50年後

あんど もあ
ファンタジー
王立学園の卒業パーティーで、王子が婚約者に婚約破棄を宣言した。王子は真に愛する女性と結ばれ、めでたしめでたし。 そして50年後、王子の孫の王子は、婚約破棄された女性の孫と婚約する事に。そこで明かされた婚約破棄の真実とは。

幼馴染みの婚約者が「学生時代は愛する恋人と過ごさせてくれ」と言ってきたので、秒で婚約解消を宣言した令嬢の前世が、社畜のおっさんだった件。

灯乃
ファンタジー
子爵家の総領娘である令嬢の前に、巨乳美少女と腕を組んだ婚約者がやってきた。 曰く、「学生時代くらいは、心から愛する恋人と自由に過ごしたい。それくらい、黙って許容しろ」と。 婚約者を甘やかし過ぎていたことに気付いた彼女は、その場で婚約解消を宣言する。 前半はたぶん普通の令嬢もの、後半はおっさんコメディーです。

異世界に行った、そのあとで。

神宮寺 あおい
恋愛
新海なつめ三十五歳。 ある日見ず知らずの女子高校生の異世界転移に巻き込まれ、気づけばトルス国へ。 当然彼らが求めているのは聖女である女子高校生だけ。 おまけのような状態で現れたなつめに対しての扱いは散々な中、宰相の協力によって職と居場所を手に入れる。 いたって普通に過ごしていたら、いつのまにか聖女である女子高校生だけでなく王太子や高位貴族の子息たちがこぞって悩み相談をしにくるように。 『私はカウンセラーでも保健室の先生でもありません!』 そう思いつつも生来のお人好しの性格からみんなの悩みごとの相談にのっているうちに、いつの間にか年下の美丈夫に好かれるようになる。 そして、気づけば異世界で求婚されるという本人大混乱の事態に!

処理中です...