悪役令嬢ステンノ―とカボチャ軍団

甫人一車

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その3

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「…………」

 馬車はのろのろと領地へと進む。
 その後を、オレンジカボチャのゴーレムがひょこひょこと追ってくる。

 ゴーレムの頭部は目鼻や口らしい空洞が空き、うっすら光っていた。
 前世でいうところのハロウィンのランタンそっくりだ。

 夜に出会えば、さぞ不気味だろうと思う。

「ステンノ―様……あれ、どうなさるおつもりです?」

「どうするって、まあわたくしの言う通りに動くゴーレムですし」

「それはいいんですけど……どういう役に立つのですか? 見たところ細身で頭でっかちで、こう何と言いますか……」

「不格好だと?」

「はあ、まあ……」

「確かにそうですけどね」

 何とか自作のゴーレムを擁護してみんと思い、考えを巡らす。

 しかし、これというものは浮かばなかった。

 パンプキンゴーレムは特に力が強いわけでも、動きが素早いわけでもない。
 まあ、せいぜい人並み程度だ。

 そして、カボチャの蔓が体であるためか、耐久力もさしてない。

「……まあ、給金のいらない家来がいると思えばいいのですわ」

「それはありがたいけどね。しかし、やらせるほどの仕事があるかどうか」

「……」

 よく考えれば、この先明日の食事さえ怪しい。

 とりあえずいくらかの金銭はある。

 しかし、食料を売り買いできる相手が、いるものかどうか。

「ふーむ……」

 得たばかりの魔力を感触を確かめながら、わたくしは考えてみた。
 ゴーレムを使って、何かできないものだろうか、と。

 その時、頭の隅からぽわんと浮かんだものがある。
 言葉というのか、知識というのか。

<パンプキンゴーレム。頭部が食用可能>

 「うわ……」

 あまり知りたくない情報を受け、わたくしは頭を抱える。

「どうされました?」

「もしかすれば、食料の心配はいらないかもしれませんわ……」

「それはどういう意味で?」

「……試してみます?」

「試す?」

「ハイドラ、馬車を停めてちょうだいな」

 馬車が停車した後、わたくしはもう一度カボチャゴーレムを作る。
 今度はより速く、スムーズに生成ができた。

 ゴーレムは自分の頭をむんずとつかむと、ぶちりと引きちぎり、

「……まさか」

 カボチャヘッドを突き出されたマギーは、目を見開いてわたくしを見た。

「食べられるようですの、これ」

「あまり食欲をそそる状態じゃないですね、これは」

 それでもカボチャヘッドを受け取りつつ、マギーは嘆息。

 同時にゴーレムの胴体はバラバラに分解。
 無数の棒きれとなって、地面に転がる。

 拾ってみると、一本一本がほど良い硬さと長さ。
 すっかり渇き切っており、よく燃えそうでもある。

「薪の心配もいらないようですねえ……。これは便利」

 言いながらも、マギーの顔はまだ引きつっている。

「せっかくですし――食事のご用意をしましょうか?」

「ええ、お願い……」

 やや遠慮がちに声をかけてくるハイドラに、わたくしは辛うじて微笑みを返す。
 かくして、その場で簡単な煮物料理が作られたわけだけれど。

「……」

 出来上がったものを、即座に口に入れる気にはなれなかった。

 匂いは、悪くない。
 むしろ食欲をそそる良い香り。

 しかし、細かく切った後とはいえ、さっきまでゴーレムだったもの。
 それも即席で入手した変な魔法で造ったゴーレム。

(食べて大丈夫なのかしらん……?)

 自分で出したものなのに、自信はない。
 浮かんできた知識では、食用だとされているけれども……。

「私が毒味をしましょうか?」

 小さいがハッキリとした声で言ったのはハイドラだ。

「私なら、多少の毒は平気です」

「おなか、丈夫なのね……」

 わたくしの声にハイドラは、ただ笑顔を浮かべただけだった。
 そして、煮物を少量口にするハイドラ。

「……悪くないです」

「じゃ、食べても平気?」

「ええ、というか甘みが強いというか、美味しいです」

 答えるハイドラの表情はひどく素朴な印象だった。

「食べられるゴーレムというのは、すごいですね」

 それしか言えない、という顔でマギーは肩をすくめた。

「でも、食べ物にあてができるのは重畳です」

 そんなわけで、煮物を三人で美味しくいただくこととなった。

 ゴーレムのカボチャは甘みが強く、ちょっと子供向けな気もする。
 けれど、甘味の貧しいこの世界というか社会では最高だと思う。

「少し皮が堅いけど、それも味ですわねえ」

「さすがに毎日だと飽きるかもしれませんけど」

「毎日って……」

「そういう可能性も、割とあるんですよ……」

 若干不吉なことを言うマギーは、乾いた笑みを浮かべる。

「時に……魔法は魔力を消費するもので、素人や初心者はその負荷がかなりしんどいと聞いたことがあります。ステンノ―様は平気なようですが……」

「ええ、特に何も」

「よほど資質というか、才能がおありだったようですねえ……」

「そんなことは言われた覚えがないですけど?」

 わたくしは首をかしげる。

 貴族で魔力というか魔法の資質のある者は、割と早くお抱えなどの魔法使いに見いだされることが多いそうだ。
 我が家にも見知った魔法使いはいたが――

「才能がどうとかいうのは、聞いたことがないですわ」

「他の魔法使いにはわからないものだったのか、それとも他に何かあるのか……」

「素人ばっかりが考えても詮無いことですわ」

「そうですけど」

「ただまあ、自分の魔力がどれくらいか、よくわからないというのは頼りないものでありますわねえ」

 そうつぶやいた時、また頭の隅から湧き出る知識があった。


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