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その4

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 <ステータス表示。魔法などの保有量やレベルなどを数値化可能>

「……これは、おまけかしら」

「何です?」

「どうやら、ステータスなるものが表示できるようですの」

「ひょっとして、体力などをわかりやすく数値化できると?」

「そのようですわ」

「聞いたことない……。いやまあ、あってもあまり口には出さないでしょうか」

「まあ、自分の短所やら弱点まで出るかもしれませんからねえ」

「そういうことです」

「けど、ま、自分でわからない現状では致し方なし」

 そういうわけで、早速表示を試してみる。

<レベル1。パンプキンゴーレム。MP9,999,999>

 MP……とは、マジックパワーのことだろうか?

 999万9999。

 これは、多いのか。少ないのか?
 前世のゲームなんかを思い出すとチートレベルの多さだが。

 だが、これはゲームではない。
 そも、ゴーレム一体作るのMP100万くらい消費するかもしれぬ。

<パンプキンゴーレム生成。消費MP:1。稼働時間:1時間につき基本1>

「…………」

 つまり、作るの1ポイント。動かすのに1時間で1ポイント。
 めっちゃ消費良くありません?

「コスパは良いようですね……」

 横でマギーが困った顔ながら、祝福のようなことを言ってくれる。

「あんまり強くはなさそうですけれどね……。おほほ」

 ボーッと突っ立っている最初に造ったゴーレムを見ながら、わたくしは笑った。

「色々使ってみて、具合を確かめるのが良いのでは?」

 建設的な意見を述べたのは、食事の片づけをしているハイドラ。
 ついでに、馬にも食事を与える。

 食事と言ってもちゃんとした飼葉ではない。例のゴーレムカボチャ。
 が、馬はものすごく美味しそうに食べた。

 意外。

 しばらく休憩した後、再び出発。
 少なくとも餓死はせずにすみそうなので幸先は良いと思う。

 そして、まあどうにか旧領主の屋敷とやらに到着したわけだが。

「…………これは」

 一応、二階建てでそれなりの造りではある。

 が、しかし。

「屋敷というか住宅というか……」

 マギーは壁などを叩いて調べつつ、つぶやいた。
 庶民のそれと比べれば、まあ立派なものなのだろう。

 しかし、どう見ても屋敷と言える代物ではない。
 辺りも草ボーボーでどこまでが庭なのかもわからぬ。

「少し調べてまいります」

 そう言って先に立ったのはハイドラ。
 ハイドラは用心深くドアなどを調べつつ、中へ。

 待っている間暇だったわたくしは、

「えい……」

 用心のためというわけでもないけど、適当にカボチャゴーレムを作っていた。

「大丈夫のようです」

 10体ほどのゴーレムを作ったあたりでハイドラが二階の窓から顔を出す。

「あちこち痛んでおりますが、住めないことはないです。ただ、掃除をしないとどうにもなりません」

「それは、そうですわねえ。しかし、この大きさでも掃除となると……」

 けっこうな手間と人数を要求しそうである。

「失礼ながら。ステンノ―様のゴーレムは使えませんでしょうか?」

「そうねえ。ゴミを運ぶくらいはできそうだけれど……」

 ハイドラの意見に、わたくしはゴーレムを見る。

 どうにも頼りない印象をぬぐえない感はあった。
 ある意味バカみたいにも思える。

「けどま、贅沢は言えませんし。使ってみましょうか?」

 そういうわけで、ハイドラとゴーレムたちは掃除に取りかかった。

「執事殿は、ステンノ―様に」

 ハイドラはそう言って、鼻息を荒くしながら住宅に向かう。

「道具もないですし、手間がかかるかもしれませんね」

「うーん……」

 マギーの声に、わたくしも同意してしまう。

 箒も雑巾もなし。鎌などもないから、草刈りもできない。
 これは、困った。

 と。

<ゴーレムオプション。形態変化>

 どうやらゴーレムは状況に応じて形も変えられるらしい。
 何か良いものはないかと探ってみると。

 ゴーレムの手が刃物のようになったり、箒のようになったり。
 あるいは手が膨れて、水分を吸うように――つまり雑巾みたく使えるように。

 ついでに。

 ゴーレムたちの動向は見えないところへ行ってもわかるようだ。
 ただ、あくまで何となくわかるという感覚的なもの。

 どの程度の制度があるかは、今いち自信が持てない。

 わたくしはさらにゴーレムを増員し、草刈りもやらせてみた。
 見た感じやや不器用ではあるけど、まあまあ動ける。

 掃除のほうも何とかやっているようだ。

「案外早くに終わるかもしれませんね」

 ゴーレムたちの働きを見ながら、マギーはちょっと笑った。

「これで料理や洗濯もできれば、私たちの出番はなくまりますよ」

<精密作業用ハンド>

「料理はわからないけど、洗濯もできそうですわ」

 新たなゴーレムの手を実物で確認しながら、わたくしはオホホと笑う。

「これは本当に使用人いらずですか……」

「そうでもないです」

 ちょっと困り顔で微笑むのマギーへ、わたくしは即答。

「ほほう。それは何故?」

「ある程度の作業の手本となるものがないと、ゴーレムもちゃんと動けないようなの。掃除はハイドラというお手本があるからいいけど、草刈りは」

 とりあえず刈っているという程度で、あちこちまばら。
 ぶっちゃけ小汚い。

「所詮はわたくしは動かしているものですから。限界がありますわ」

「それは喜んでいいことなのですか?」

「さあ? でも、あなたたち二人がいないとわたくしは困ります。非常に」

 わたくしの意見に、マギーが笑っただけ。

「――どうやら生活の目途はいくらかつきそうですが……これからどうしましょう?」

 それはわたくしが聞きたいところである。


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