4 / 18
その4
しおりを挟む<ステータス表示。魔法などの保有量やレベルなどを数値化可能>
「……これは、おまけかしら」
「何です?」
「どうやら、ステータスなるものが表示できるようですの」
「ひょっとして、体力などをわかりやすく数値化できると?」
「そのようですわ」
「聞いたことない……。いやまあ、あってもあまり口には出さないでしょうか」
「まあ、自分の短所やら弱点まで出るかもしれませんからねえ」
「そういうことです」
「けど、ま、自分でわからない現状では致し方なし」
そういうわけで、早速表示を試してみる。
<レベル1。パンプキンゴーレム。MP9,999,999>
MP……とは、マジックパワーのことだろうか?
999万9999。
これは、多いのか。少ないのか?
前世のゲームなんかを思い出すとチートレベルの多さだが。
だが、これはゲームではない。
そも、ゴーレム一体作るのMP100万くらい消費するかもしれぬ。
<パンプキンゴーレム生成。消費MP:1。稼働時間:1時間につき基本1>
「…………」
つまり、作るの1ポイント。動かすのに1時間で1ポイント。
めっちゃ消費良くありません?
「コスパは良いようですね……」
横でマギーが困った顔ながら、祝福のようなことを言ってくれる。
「あんまり強くはなさそうですけれどね……。おほほ」
ボーッと突っ立っている最初に造ったゴーレムを見ながら、わたくしは笑った。
「色々使ってみて、具合を確かめるのが良いのでは?」
建設的な意見を述べたのは、食事の片づけをしているハイドラ。
ついでに、馬にも食事を与える。
食事と言ってもちゃんとした飼葉ではない。例のゴーレムカボチャ。
が、馬はものすごく美味しそうに食べた。
意外。
しばらく休憩した後、再び出発。
少なくとも餓死はせずにすみそうなので幸先は良いと思う。
そして、まあどうにか旧領主の屋敷とやらに到着したわけだが。
「…………これは」
一応、二階建てでそれなりの造りではある。
が、しかし。
「屋敷というか住宅というか……」
マギーは壁などを叩いて調べつつ、つぶやいた。
庶民のそれと比べれば、まあ立派なものなのだろう。
しかし、どう見ても屋敷と言える代物ではない。
辺りも草ボーボーでどこまでが庭なのかもわからぬ。
「少し調べてまいります」
そう言って先に立ったのはハイドラ。
ハイドラは用心深くドアなどを調べつつ、中へ。
待っている間暇だったわたくしは、
「えい……」
用心のためというわけでもないけど、適当にカボチャゴーレムを作っていた。
「大丈夫のようです」
10体ほどのゴーレムを作ったあたりでハイドラが二階の窓から顔を出す。
「あちこち痛んでおりますが、住めないことはないです。ただ、掃除をしないとどうにもなりません」
「それは、そうですわねえ。しかし、この大きさでも掃除となると……」
けっこうな手間と人数を要求しそうである。
「失礼ながら。ステンノ―様のゴーレムは使えませんでしょうか?」
「そうねえ。ゴミを運ぶくらいはできそうだけれど……」
ハイドラの意見に、わたくしはゴーレムを見る。
どうにも頼りない印象をぬぐえない感はあった。
ある意味バカみたいにも思える。
「けどま、贅沢は言えませんし。使ってみましょうか?」
そういうわけで、ハイドラとゴーレムたちは掃除に取りかかった。
「執事殿は、ステンノ―様に」
ハイドラはそう言って、鼻息を荒くしながら住宅に向かう。
「道具もないですし、手間がかかるかもしれませんね」
「うーん……」
マギーの声に、わたくしも同意してしまう。
箒も雑巾もなし。鎌などもないから、草刈りもできない。
これは、困った。
と。
<ゴーレムオプション。形態変化>
どうやらゴーレムは状況に応じて形も変えられるらしい。
何か良いものはないかと探ってみると。
ゴーレムの手が刃物のようになったり、箒のようになったり。
あるいは手が膨れて、水分を吸うように――つまり雑巾みたく使えるように。
ついでに。
ゴーレムたちの動向は見えないところへ行ってもわかるようだ。
ただ、あくまで何となくわかるという感覚的なもの。
どの程度の制度があるかは、今いち自信が持てない。
わたくしはさらにゴーレムを増員し、草刈りもやらせてみた。
見た感じやや不器用ではあるけど、まあまあ動ける。
掃除のほうも何とかやっているようだ。
「案外早くに終わるかもしれませんね」
ゴーレムたちの働きを見ながら、マギーはちょっと笑った。
「これで料理や洗濯もできれば、私たちの出番はなくまりますよ」
<精密作業用ハンド>
「料理はわからないけど、洗濯もできそうですわ」
新たなゴーレムの手を実物で確認しながら、わたくしはオホホと笑う。
「これは本当に使用人いらずですか……」
「そうでもないです」
ちょっと困り顔で微笑むのマギーへ、わたくしは即答。
「ほほう。それは何故?」
「ある程度の作業の手本となるものがないと、ゴーレムもちゃんと動けないようなの。掃除はハイドラというお手本があるからいいけど、草刈りは」
とりあえず刈っているという程度で、あちこちまばら。
ぶっちゃけ小汚い。
「所詮はわたくしは動かしているものですから。限界がありますわ」
「それは喜んでいいことなのですか?」
「さあ? でも、あなたたち二人がいないとわたくしは困ります。非常に」
わたくしの意見に、マギーが笑っただけ。
「――どうやら生活の目途はいくらかつきそうですが……これからどうしましょう?」
それはわたくしが聞きたいところである。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
21
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる