悪役令嬢ステンノ―とカボチャ軍団

甫人一車

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その5

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「現地点が、おそらくこの辺りですね」

 と、マギーが地図を指した。

 掃除の終わった家で、わたくしたちはテーブルを囲んでいる。
 家に残っていたわずかな家具の一つ。

 古い地図には、メーウ村と記されていた。
 これはハイドラが発見したもので、

「10数年くらい前のものですね」

 と、マギーが判じた。

「事前に聞いた情報では、数年前に村は離散しています。もう少し後まで残っていた村も他にあるようですが、まあ無人なのは同じことです」

「人もいない。資源もない。農地としてもダメ。こういう場合どうすればいいのかしら」

 わたくしが言うと、マギーは肩をすくめ、

「まあできるだけ整地して、人が集まりやすいように、というのでしょうけど」

「さっきあちこち見てきましたけど、やっぱり土地は荒れています。古い麦畑らしき跡はありましたけど、大きくはありませんでした」

 これはハイドラの報告。
 何か売り物になるものでも……あったら人が0になってないか。

「カボチャならいくらでもできるんですけれども……味は良いですし」

 わたくしはそばのカボチャゴーレムを見やり、嘆息。

「味はともかく、見た目がどうも」

「人面は不気味です」

 そうなのだ。ゴーレムにはみんな人間のような顔の掘り込み。

「これがなければまだ何とか――」

 その時。

<ゴーレム生成。途中キャンセル>

「ん?」

 またも浮かんだ知識に、わたくしは腰を上げる。
 そして、早速にゴーレムを生成。

 と、大きくなり切る前にキャンセル。
 そこにはオレンジのカボチャと、乾いた蔓だけが残る。

「これで良かったりして?」

「……もう何でもありですね。そのうち黄金やら宝石やらも出せるようになるのでは」

「だったらいいのですけど」

 呆れた顔のマギーに微笑み、わたくしはオレンジのカボチャを叩いた。

「しかしオレンジ色のカボチャが売れるか、ですね。カボチャといえば緑と決まっているものですし。ただの珍品扱いになる危険もあります」

 冷静な意見を述べるハイドラ。

「最低でも家畜の飼料にはなるでしょ」

「確かに馬は喜んでいましたけど……」

「しかしこのままだとカボチャだけの毎日になりますわね。一番近い市場はどの辺り?」

「――ここですね」

 マギーが指したのは、そう遠くなさそうな距離。
 しかし、隣の領内だった。

「……人がいないというのは、不便なものですわね」

「今さらでしょう」

 マギーは苦笑し、

「楽市が開かれる時にでも一度行ってみましょうか」

「らくいち?」

「比較自由に物が売り買いできる市です。普段はギルドなんかが仕切ってますけど、その時は他領の人間でも物が売れます。いくらか手数料を払う必要がありますが」

「へえ……」

 初耳である。
 お嬢様育ちのためか、そういう知識もあまりなかった。

「まあ王都なんかでは開かれませんが。やっぱり色々制約があるんでしょうね」

「それまでは、現金収入他必要品の売り買いも難しいかしら?」

「買いだめできるものはある程度用意しましたが、それでもやはり」

「限界はあるますわねえ」

 やっぱりカボチャばかりの毎日になりそうだった。

「近くに森や川もあります。何か採れるかもしれません。人がいないということは獣や魚も、すれてないと思いますし」

 ハイドラが言った。

「すれてないって?」

「罠やなんかにかかりやすい、ということでしょうけど。半面人を恐れないということもありえますね――」

 説明するのはマギー。

「大丈夫なの、ハイドラ」

「獣に関しては多少知識も経験もあります。簡単な狩猟程度なら」

 ハイドラの静かな目は、やはり静かな自信に満ちていた。

「まだ日も高いですし、調査も兼ねて辺りを見てまいります」

「気をつけて」

「おまかせを」

 かくしてハイドラは簡単な身支度をして出かけていく。

 わたくしは――

 手持ち無沙汰となり、ゴーレムたちを家屋周辺に配置したりしてみた。
 無数のカボチャ頭が突っ立ている様子はきっと不気味だろう。

 しかし、そう感じる人間もここにはいない。
 それにしても、この力は一体何なのか。

 レベルがある。
 ということは、上があるということか。

(どうすれば上がるか……まあ、練習をこなすか、モンスターでも倒すか)

 後者はあんまり関係なさそうだし、やはり前者か。

<ゴーレム操作などが一定値まで上昇するとレベルが昇段する>

 ……と、いうことらしい。
 やはりたくさん動かしてうまくなれ、ということか。

 わたくしは部屋の中で、また一体を生成してみた。
 カボチャゴーレムを作るのには、土がいるのかと思っていたが……。

 そうでもないようだ。
 屋内でも、床の上でも普通に生成はできた。

 これでMP消費は1であるから、すごい。
 他の魔法使いというの比較はできないから、どれほどかはわからないが。

 でも、悪くはないと思う。
 ゴーレムの行動や体験? などもいくらかわかるのも助かる。

 もっともあまり詳細というか、そういうのではない。

 例えるなら。
 他人の経験を文章化したもの読んだような感じ、だろうか。

 それでも、一応リアルタイムでわかるから、見張りにも使えそうだ。

(ゴーレムの視覚とかどういう理屈なのかしら……。まあ別にどうでもいいけど)

 わたくしはゴーレムを操りつつ、ふっと微睡んだ。

 色々あって疲れてきたせいか。
 夢の中では、前世で体験した諸々のことが浮かんでは消えて、消えては浮かぶ。

 コーラ。ポテトチップス。アイスクリーム。ハンバーグ。おでん。
 映画。テレビ。ネット。マンガ。それにゲーム……。


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