悪役令嬢ステンノ―とカボチャ軍団

甫人一車

文字の大きさ
6 / 18

その6

しおりを挟む



 フッと頭の隅に情報が浮かぶ。

<ハイドラ、帰還する>

 目をこすりながら窓を開けると、すっかり草の刈られた道をハイドラが歩いてくる。
 何かを担いでいるので、どうやら獲物はあったらしい。

「おーい」

 わたくしが声をかけると、ハイドラは手を挙げて応えた。
 どうやらカボチャばかりの食事にも他の色が添えられるらしい。

 そして、戻ってきたハイドラを出迎えたわけだけど。

「リス?」

「はい」

 ハイドラが獲ってきたのは、3匹ほどのリス。
 リスといえば小さいものを想像したけど、けっこう大きい。

 ヒツジやヤギ、それも豚。あと贅沢品だが牛も食べたけど……。

「リスというのは、初めてですわねえ?」

「田舎のほうでは割とよく見られますよ。貴族でも狩猟をされるかたはけっこう召し上がりと聞きます」

 マギーはそう言って、嬉しそうに笑う。

「とはいうものの、さてどう料理しますか」

「それは私にお任せください」

 トンとハイドラは軽く胸を叩いた。

 こういうサバイバルに強い部下がいるのは心強い。
 せっかくなので、調理しているところを見学してみた。

 するすると皮を剥いでいき、内臓を取る。
 こうなるともう完全に食材で、可愛いリスの面影はない。

 大きな骨はとるが、細かい骨は肉ごと砕いていく。

 気づけばカボチャの入ったシチューに、肉団子が投下された。

「手際が良いですわねえ」

「素人料理ですが」

 それでもハイドラは嬉しそうに応え、シチューを煮込み続ける。

 しばらく後。

 ようやく火が消され、あつあつのシチューが皿によそわれた。
 実に、良い匂いである。

 よく見るとカボチャと肉団子の他の香草のようなものも。

「このハーブが良いですわね! 素晴らしいですわ!!」

 思わぬ美味。
 わたくしは舌鼓を打ってハイドラを称賛した。

「なるほど。良い味です。ニワトリやウサギはよく食べましたけど、これはまた一風変わって味わい深し……。リスも美味しいものですね」

「もう少し他の調味料や材料も欲しかったのですが、今はこれだけで」

 褒められながらも、ハイドラは自分の仕事に不満げでもあった。

「できるだけ早いうちにヤギでも買い入れましょう。あとニワトリなども欲しいですね」

「向上心は良いけど、あんまり手を広げても人手が――」

「ゴーレムに家畜が世話できるか。試してもよいですわねえ」

 マギーの声を受けて、わたくしは言った。

「そういえば人手になるものがありましたか」

 マギーは苦笑して、

「裏に物置小屋がありましたが、そのうち家畜用の小屋も新設の必要アリですね」

「簡単なものならば私でもどうにかなりますが、きちんとしたものはやはり相応の職人などの手が要りますね。少なくとも設計図があったほうが良いかと」

「ハイドラ、あなただけじゃ無理だと」

「馬の世話をしていましたし、厨の整備もやってはいましたが、やはり……」

 わたくしが言うと、ハイドラは少し苦い顔でうなずいた。

「まあまあ、ハイドラ。今となっては我らは都落ちの身です。あまり完璧なものを求めるのはよろしくない。まずはほどほどのところで安定しないと」

 マギーはハイドラの肩を軽く叩いた。

「ともあれ。明日から何をするか決めておいた方が良さそうですわ」 

「ですれば、まず街道となる道の整備をすべきでしょうね。今のままでは、私たちの使う道も不自由していますから」

「なるほど。それもゴーレムがどの程度できるか調べませんとね。少なくとも人並みのことはできるとわかったらいいけど」

「ただ働きぶりを見るに、あまり腕力はないようですね。まあ、せいぜい人並みです」

「仕方ないですわ。力のない所は数でカバーしましょ。今出してる分で足りる?」

「かなりの規模をやらねばなりませんから、多ければ多いほど良いでしょうが……」

 大丈夫ですか? と、マギーは付け足した。

「とりあえず、100体までやってみますわ」

「そんなに!?」

「消費するのは一体につき1ポイントですから。何とかなるでしょ」

 総MPは999万9999なのだから。

 そういうわけで。

 夜にまでわたくしはゴーレムを100まで作り続けた。
 というか、時間にして1時間もかからなかったのだけど。

 なので、余った時間は食用カボチャを増産し、ゴーレムに整理させた。

「売るにしても食べるにしても、多すぎです……」

 カボチャの山を見たハイドラは珍しく感情を露わにして感想を言う。

「まだ売りに行けるまで日にちがあるのに……。まあ日持ちする野菜ですけど」

「いっそ、宣伝に使ってはどうですの?」

「せんでん?」

 わたくしの提案に、二人は顔を見合わせる。

「見本というかサンプルとして、あちこちに配るんですわ。今度良かったら買ってくださいという感じで。評判が良ければ次の買い手がつくかもしれません」

「大手の商家がたまにそんなことをやると聞いたことはありますが……」

 マギーは思案顔だ。

「じゃあ野菜ではわたくしたちが最初かしら」

「もしかしたら、大口の取引先が作れるかもしれませんね」

 ハイドラはどちらかというと賛成の様子。

「じゃあ、そういうことで……」

「ですが、その前に荷馬車と輸送用の馬も買わないといけません」

「それかあ……」

 忘れていた。
 わたくしはどうもゴーレムに夢中になり、色々見落としていたらしい。

「ここに乗ってきた馬車はちょっと使えませんしねえ。さて、割と大きな出費だ……」

「いっそゴーレムたちに持たせて移動させましょうか?」

「目立ちすぎますよ。ろくなことになりません」

 即座にマギーは否定した。

「化け物の集団かと思われかねません」

 ハイドラも首を振る。

「他にも売るあてがないか、もう少し考えてみましょう」

 マギーは手を開いて、問題を先送りに。
 とはいえ、わたくしにもどうこうできるアイデアなどなし。

「いっそ、馬や馬車もゴーレムの要領で造れればねえ……」

「そこまで望みすぎかと」

 わたくしにつぶやきに、マギーは苦笑した。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

国一番の美少女だけど、婚約者は“嫌われ者のブサイク王子”でした

玖坂
ファンタジー
気がつけば、乙女ゲームの“悪役令嬢”ポジションに転生してました。 しかも婚約者は、誰もがドン引きする“ブサイクで嫌われ者の王子様” だけど――あれ? この王子、見た目はともかく中身は、想像以上に優しすぎる……!? 国一番の美少女に転生した令嬢と、誰にも愛されなかった王子が、少しずつ成長していく物語。

【完結】アラサー喪女が転生したら悪役令嬢だった件。断罪からはじまる悪役令嬢は、回避不能なヤンデレ様に溺愛を確約されても困ります!

美杉日和。(旧美杉。)
恋愛
『ルド様……あなたが愛した人は私ですか? それともこの体のアーシエなのですか?』  そんな風に簡単に聞くことが出来たら、どれだけ良かっただろう。  目が覚めた瞬間、私は今置かれた現状に絶望した。  なにせ牢屋に繋がれた金髪縦ロールの令嬢になっていたのだから。  元々は社畜で喪女。挙句にオタクで、恋をすることもないままの死亡エンドだったようで、この世界に転生をしてきてしあったらしい。  ただまったく転生前のこの令嬢の記憶がなく、ただ状況から断罪シーンと私は推測した。  いきなり生き返って死亡エンドはないでしょう。さすがにこれは神様恨みますとばかりに、私はその場で断罪を行おうとする王太子ルドと対峙する。  なんとしても回避したい。そう思い行動をした私は、なぜか回避するどころか王太子であるルドとのヤンデレルートに突入してしまう。  このままヤンデレルートでの死亡エンドなんて絶対に嫌だ。なんとしても、ヤンデレルートを溺愛ルートへ移行させようと模索する。  悪役令嬢は誰なのか。私は誰なのか。  ルドの溺愛が加速するごとに、彼の愛する人が本当は誰なのかと、だんだん苦しくなっていく――

転生『悪役』公爵令嬢はやり直し人生で楽隠居を目指す

RINFAM
ファンタジー
 なんの罰ゲームだ、これ!!!!  あああああ!!! 本当ならあと数年で年金ライフが送れたはずなのに!!  そのために国民年金の他に利率のいい個人年金も掛け、さらに少ない給料の中からちまちまと老後の生活費を貯めてきたと言うのに!!!!  一銭も貰えないまま人生終わるだなんて、あんまりです神様仏様あああ!!  かくなる上はこのやり直し転生人生で、前世以上に楽して暮らせる隠居生活を手に入れなければ。 年金受給前に死んでしまった『心は常に18歳』な享年62歳の初老女『成瀬裕子』はある日突然死しファンタジー世界で公爵令嬢に転生!!しかし、数年後に待っていた年金生活を夢見ていた彼女は、やり直し人生で再び若いままでの楽隠居生活を目指すことに。 4コマ漫画版もあります。

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持

空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。 その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。 ※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。 ※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

悪役令嬢の逆襲

すけさん
恋愛
断罪される1年前に前世の記憶が甦る! 前世は三十代の子持ちのおばちゃんだった。 素行は悪かった悪役令嬢は、急におばちゃんチックな思想が芽生え恋に友情に新たな一面を見せ始めた事で、断罪を回避するべく奮闘する!

最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である

megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。

わがままな婚約者はお嫌いらしいので婚約解消を提案してあげたのに、反応が思っていたのと違うんですが

水谷繭
恋愛
公爵令嬢のリリアーヌは、婚約者のジェラール王子を追いかけてはいつも冷たくあしらわれていた。 王子の態度に落ち込んだリリアーヌが公園を散策していると、転んで頭を打ってしまう。 数日間寝込むはめになったリリアーヌ。眠っている間に前世の記憶が流れ込み、リリアーヌは今自分がいるのは前世で読んでいたWeb漫画の世界だったことに気づく。 記憶を思い出してみると冷静になり、あれだけ執着していた王子をどうしてそこまで好きだったのかわからなくなる。 リリアーヌは王子と婚約解消して、新しい人生を歩むことを決意するが…… ◆表紙はGirly Drop様からお借りしました ◇小説家になろうにも掲載しています

転生者はチートな悪役令嬢になりました〜私を死なせた貴方を許しません〜

みおな
恋愛
 私が転生したのは、乙女ゲームの世界でした。何ですか?このライトノベル的な展開は。  しかも、転生先の悪役令嬢は公爵家の婚約者に冤罪をかけられて、処刑されてるじゃないですか。  冗談は顔だけにして下さい。元々、好きでもなかった婚約者に、何で殺されなきゃならないんですか!  わかりました。私が転生したのは、この悪役令嬢を「救う」ためなんですね?  それなら、ついでに公爵家との婚約も回避しましょう。おまけで貴方にも仕返しさせていただきますね?

処理中です...