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4 アーノルドとの出会い:シャルロッテ視点
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鳥のさえずりで目を覚ます。
(……ん、もう朝ですか)
私はふかふかのベットから体を起こす。
「……アーノルド」
アーノルドが去ってから数日が経過して、日に日にアーノルドと出会った頃の記憶が蘇ってくる。
私はベットから起きると、窓を開け放ち晴天の空を見上げる。
(……うん。良い天気!)
アーノルドと出会った日もこんな晴天の日でしたね。
◇◇◇ ~三年前~
成人の誕生日を迎えた私は父上にある願い事をした。
それは”人間族に会ってみたい”といったもの。
「お父様、私……人間族が治めているアラバスト王国へ行ってみたいです」
「……うむ、優しく育ったシャルロッテのたっての願いだ。いいだろう」
人間族とエルフ族の関係はあまりよくないと聞いていたが、好奇心が勝ってしまいダメ元でお父様にお願いしたら二つ返事で承諾してくれた。
「ありがとうございます。お父様!」
「だが、私も付き添わせてもらう。……心配だからな」
「……ですがお父様、お体に障りませんか?」
私は心臓と肺に持病を患っているお父様に対して尋ねる。
「なに、愛娘の旅を傍で見たいのだ。付き添わせてくれ」
「……わかりました」
それからアラバスト王国へ向かう用意を行い、私とお父様は二人で馬車の荷台に乗り、御者席にはお父様の御付きの者が座る。
「それではギルバート様、シャルロッテ様。出発致します」
御付きの者が振り返り出発する旨を私達に伝えてくる。
「はい。お願い致します」
返事を返すと、馬車は宮廷から人間族がいるアラバスト王国へと向かった。
◇◇◇
半日を費やし、私たちはアラバスト王国に到着した。
「わぁ! お父様、人間族の方がこんなに……この王国にいる者は耳が尖っていないのね!」
まだ日が昇っている晴天の空の下、私は馬車の中から多くの人間族が通る大広場を眺める。
「あぁ、そうだともシャルロッテ。……だが、不用意に近寄るんじゃないよ? 人間族から我々エルフ族は忌み嫌われているからね」
種族間の関係は良くないと聞いていたが明確な理由は知らない。
そう思った私は、お父様に問いかける。
「お父様、それは何故なのですか?」
「……それは我々エルフの寿命が大きな理由だよシャルロッテ。……エルフは人間より多くの時間を生きる事ができる。それが人間族の妬みを生み、反感を買っているのだ」
お父様の話を聞き、ふと昔に死別したお母様の事を思い出す。
「ですがお父様、私のお母様は幼い頃に亡くなっていますわ……」
「……うむ、我らでも病には立ち向かう事は難しいのだ。いつも寂しい思いをさせてすまない」
「いいのです。私にはいつもお父様が傍にいてくれますから」
悲しい表情をするお父様に私はとびっきりの笑顔を向ける。
「シャルロッテ……ありが――」
お父様は話している最中に咳き込んでしまう。
「――ゴホッゴホッ」
「お父様!」
私はお父様の発作が収まるまで背中をさすり続けた。
「……すまない、シャルロッテ。もう落ち着いたよ」
「もう、だから言ったじゃないですか。遠出は体に障るって……大丈夫ですか? お父様」
「あぁ、もう大丈夫だ」
お父様がそう呟くと、御者席に座っている御付きの者が声を上げる。
「ギルバート様、まもなく大通りに差し掛かります。ですが、どうやら馬車では通れないようです」
「おぉ、そうか。それではシャルロッテ。少し歩くとするか」
「はい、お父様!」
それから私たちはアラバスト王国の城下町を見て回る事にした。
馬車から出てすぐに周りから向けられる視線に私は気づく。
「お父様……何か多くの視線を感じます」
「……そうであろう。人間族から見たら我らエルフ族は珍しいからな――」
――ガクっ!
すると急にお父様が胸を押さえてその場にうずくまる。
「お父様!?」
「うぅ……」
「ギルバート様!」
お父様は心臓部分を掴み、その場から動けそうもなかった。
私は顔を上げ、周りに視線を向けて声を上げる。
「誰か、お願いです! 手を貸してください!」
……だが、私が声をあげても誰もが視線を逸らし、通り過ぎていく。
「そんな……誰かお願いです! 私のお父様をお助けください!!」
私はもう一度必死の思いで声を上げた。
すると――
「……ちょっと見せて貰えるか」
――過ぎ去っていく人間族の中で一人だけ無精ひげが特徴的な方が声を掛けてきた。
「あ、ありがとうございます!」
私はお礼を伝えると、彼と共にいた者が血相を変えて駆け寄ってくる。
「おい、アーノルド! エルフ族などに構う必要はないぞ!」
声を上げたのは高貴な衣装を着た男性だった。
アーノルドという男性は、この方に仕えているのだろうか。
「……はぁ、種族なんて関係ないだろ。どんな種族でも俺の目が届く範囲で死んで貰っては御免だ」
「ならん! エルフ族なんぞに手を貸すというのならお前はこの王国から追放だぞ!」
「……だったらお好きにどうぞ」
「ぐっ……! もうお前の帰る場所は無いと思え!」
高貴な服を着た者はそう吐き捨てると去っていった。
「えと……あの、なんか……申し訳ございません」
私は二人のやり取りを聞いて一先ず謝る事にした。
「いや、俺のきまぐれだから君が気に病むことじゃないよ」
アーノルドという男性は、そう呟くとお父様の胸元に手を添えて何かを唱える。
すると、次第にお父様の顔色が良くなっていく。
「い、今何をしたのですか?」
「……ん? あぁ、ちょっと心臓が危ない状態だったから治させてもらったよ」
「こんなに早く。……すごいのですね」
「でも、君のお父さんは相当心臓を弱めていたようだ。生きているのも不思議なぐらいだったよ」
「そ、そうなのですか……もうお父様は大丈夫なのですか?」
「……しばらくはね。すぐ目を覚ますと思うから安心するといいよ」
アーノルドという男性は私にお父様を預けると立ち上がる。
「アーノルド……さんでよろしいでしょうか。お父様をお救い頂きありがとうございます!」
「アーノルド・エドワースだ。気にしないでくれ、単なる俺のきまぐれだからな」
アーノルドさんはそう呟くと、どこかに歩いていこうとする。
「……あ、あの!! 差支えないのであれば……お礼をしたいのですがよろしいでしょうか!」
私は去ってしまうアーノルドさんに向かって声を掛けていた。
「……え?」
「先ほどの者は王国から追放すると仰っておりました。行く宛がないのではないでしょうか!」
「それは……そうだけど、君たちってエルフ族だよな。……ここら辺の住民じゃないと思うんだけど」
「はい。私はシャルロッテ・エリナベルと申します。是非、私の宮廷にお越しくださいませ!」
◇◇◇ ~現在~
あの日からアーノルドを宮廷に招き入れ、お父様を治療したその腕を買ったお父様は、人間族でありながらこの宮廷にある医療班に配属させることに成功したのです。
(……ですが、バッカスさんがこの宮廷に来てからすべてが変わってしまいました)
ふとそんな事を思っていると――
――コンコンッ
扉からノック音が鳴り響いた。
(……ん、もう朝ですか)
私はふかふかのベットから体を起こす。
「……アーノルド」
アーノルドが去ってから数日が経過して、日に日にアーノルドと出会った頃の記憶が蘇ってくる。
私はベットから起きると、窓を開け放ち晴天の空を見上げる。
(……うん。良い天気!)
アーノルドと出会った日もこんな晴天の日でしたね。
◇◇◇ ~三年前~
成人の誕生日を迎えた私は父上にある願い事をした。
それは”人間族に会ってみたい”といったもの。
「お父様、私……人間族が治めているアラバスト王国へ行ってみたいです」
「……うむ、優しく育ったシャルロッテのたっての願いだ。いいだろう」
人間族とエルフ族の関係はあまりよくないと聞いていたが、好奇心が勝ってしまいダメ元でお父様にお願いしたら二つ返事で承諾してくれた。
「ありがとうございます。お父様!」
「だが、私も付き添わせてもらう。……心配だからな」
「……ですがお父様、お体に障りませんか?」
私は心臓と肺に持病を患っているお父様に対して尋ねる。
「なに、愛娘の旅を傍で見たいのだ。付き添わせてくれ」
「……わかりました」
それからアラバスト王国へ向かう用意を行い、私とお父様は二人で馬車の荷台に乗り、御者席にはお父様の御付きの者が座る。
「それではギルバート様、シャルロッテ様。出発致します」
御付きの者が振り返り出発する旨を私達に伝えてくる。
「はい。お願い致します」
返事を返すと、馬車は宮廷から人間族がいるアラバスト王国へと向かった。
◇◇◇
半日を費やし、私たちはアラバスト王国に到着した。
「わぁ! お父様、人間族の方がこんなに……この王国にいる者は耳が尖っていないのね!」
まだ日が昇っている晴天の空の下、私は馬車の中から多くの人間族が通る大広場を眺める。
「あぁ、そうだともシャルロッテ。……だが、不用意に近寄るんじゃないよ? 人間族から我々エルフ族は忌み嫌われているからね」
種族間の関係は良くないと聞いていたが明確な理由は知らない。
そう思った私は、お父様に問いかける。
「お父様、それは何故なのですか?」
「……それは我々エルフの寿命が大きな理由だよシャルロッテ。……エルフは人間より多くの時間を生きる事ができる。それが人間族の妬みを生み、反感を買っているのだ」
お父様の話を聞き、ふと昔に死別したお母様の事を思い出す。
「ですがお父様、私のお母様は幼い頃に亡くなっていますわ……」
「……うむ、我らでも病には立ち向かう事は難しいのだ。いつも寂しい思いをさせてすまない」
「いいのです。私にはいつもお父様が傍にいてくれますから」
悲しい表情をするお父様に私はとびっきりの笑顔を向ける。
「シャルロッテ……ありが――」
お父様は話している最中に咳き込んでしまう。
「――ゴホッゴホッ」
「お父様!」
私はお父様の発作が収まるまで背中をさすり続けた。
「……すまない、シャルロッテ。もう落ち着いたよ」
「もう、だから言ったじゃないですか。遠出は体に障るって……大丈夫ですか? お父様」
「あぁ、もう大丈夫だ」
お父様がそう呟くと、御者席に座っている御付きの者が声を上げる。
「ギルバート様、まもなく大通りに差し掛かります。ですが、どうやら馬車では通れないようです」
「おぉ、そうか。それではシャルロッテ。少し歩くとするか」
「はい、お父様!」
それから私たちはアラバスト王国の城下町を見て回る事にした。
馬車から出てすぐに周りから向けられる視線に私は気づく。
「お父様……何か多くの視線を感じます」
「……そうであろう。人間族から見たら我らエルフ族は珍しいからな――」
――ガクっ!
すると急にお父様が胸を押さえてその場にうずくまる。
「お父様!?」
「うぅ……」
「ギルバート様!」
お父様は心臓部分を掴み、その場から動けそうもなかった。
私は顔を上げ、周りに視線を向けて声を上げる。
「誰か、お願いです! 手を貸してください!」
……だが、私が声をあげても誰もが視線を逸らし、通り過ぎていく。
「そんな……誰かお願いです! 私のお父様をお助けください!!」
私はもう一度必死の思いで声を上げた。
すると――
「……ちょっと見せて貰えるか」
――過ぎ去っていく人間族の中で一人だけ無精ひげが特徴的な方が声を掛けてきた。
「あ、ありがとうございます!」
私はお礼を伝えると、彼と共にいた者が血相を変えて駆け寄ってくる。
「おい、アーノルド! エルフ族などに構う必要はないぞ!」
声を上げたのは高貴な衣装を着た男性だった。
アーノルドという男性は、この方に仕えているのだろうか。
「……はぁ、種族なんて関係ないだろ。どんな種族でも俺の目が届く範囲で死んで貰っては御免だ」
「ならん! エルフ族なんぞに手を貸すというのならお前はこの王国から追放だぞ!」
「……だったらお好きにどうぞ」
「ぐっ……! もうお前の帰る場所は無いと思え!」
高貴な服を着た者はそう吐き捨てると去っていった。
「えと……あの、なんか……申し訳ございません」
私は二人のやり取りを聞いて一先ず謝る事にした。
「いや、俺のきまぐれだから君が気に病むことじゃないよ」
アーノルドという男性は、そう呟くとお父様の胸元に手を添えて何かを唱える。
すると、次第にお父様の顔色が良くなっていく。
「い、今何をしたのですか?」
「……ん? あぁ、ちょっと心臓が危ない状態だったから治させてもらったよ」
「こんなに早く。……すごいのですね」
「でも、君のお父さんは相当心臓を弱めていたようだ。生きているのも不思議なぐらいだったよ」
「そ、そうなのですか……もうお父様は大丈夫なのですか?」
「……しばらくはね。すぐ目を覚ますと思うから安心するといいよ」
アーノルドという男性は私にお父様を預けると立ち上がる。
「アーノルド……さんでよろしいでしょうか。お父様をお救い頂きありがとうございます!」
「アーノルド・エドワースだ。気にしないでくれ、単なる俺のきまぐれだからな」
アーノルドさんはそう呟くと、どこかに歩いていこうとする。
「……あ、あの!! 差支えないのであれば……お礼をしたいのですがよろしいでしょうか!」
私は去ってしまうアーノルドさんに向かって声を掛けていた。
「……え?」
「先ほどの者は王国から追放すると仰っておりました。行く宛がないのではないでしょうか!」
「それは……そうだけど、君たちってエルフ族だよな。……ここら辺の住民じゃないと思うんだけど」
「はい。私はシャルロッテ・エリナベルと申します。是非、私の宮廷にお越しくださいませ!」
◇◇◇ ~現在~
あの日からアーノルドを宮廷に招き入れ、お父様を治療したその腕を買ったお父様は、人間族でありながらこの宮廷にある医療班に配属させることに成功したのです。
(……ですが、バッカスさんがこの宮廷に来てからすべてが変わってしまいました)
ふとそんな事を思っていると――
――コンコンッ
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