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15 繁盛する薬屋

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シャルロッテの協力の元、俺達の薬屋は瞬く間に全世界の国々に知られる事となった。

「シャルロッテ様、また数多くの発注が入りました!」

シャルロッテは他国に派遣していた薬屋の広報をしている者から注文を受け取る。
発注書を見るとざっと数千個単位の数字が記載されている。

「ありがとうございます! アーノルド、また大量に発注を頂いたみたいですよ」
「……すごいな。いや、本当にシャルロッテが用意してくれた機械のお陰で助かっているよ」

シャルロッテが用意してくれたポーション製造機の事を思い出しながら俺は答える。

(……もし前みたいに一つひとつポーションを作っていたら、数千個なんてそれだけで日が暮れてしまう)

シャルロッテが用意してくれた機械は単純で、俺がやる事は大量のタンクに入っている水に右手の力を注ぎこむだけだ。

(……後は機械で全自動で小さなビンに詰めていってくれるから本当に楽になったな)

おまけに俺の右手の力が入っているってだけで、ほぼ水を売っているようなものだ。
原価も小さなビンぐらいで必然的に売り上げも瞬く間に爆増していった。



そんな中、俺達は今日も押し寄せる多くのお客さんの対応に追われていた。
当然ながら接客が必要でシャルロッテやラミリアは接客の為、店内を忙しく動き回っている。

「すみませ~ん」
「いらっしゃいまセ!」

薬屋に入って来たお客さんにすぐラミリアが駆け寄る。
手慣れたもので、すっかり薬屋衣装も様になっているラミリアはとても元気な声で接客を行っている。

「……でも、本当に一国の君主であるシャルロッテが接客業ってのもさすがに悪い気がするんだが……もっと他に仕事があっただろう?」
「いえ、私が望んで行っている事ですので、アーノルドは気にしないでください」

シャルロッテはニコっと微笑みを浮かべる。

「……そっか? いや、本当に助かっているよ。それじゃ俺はちょっと裏に行ってくるから店を頼む」
「はい! ここは任せてください」

俺はシャルロッテに店を任せて裏に移動する。
裏ではオイドが売り上げを管理しており、大量の硬貨の整理を行っていた。

「オイド、お疲れ。……相変わらず大変そうだな」
「ふぉっふぉっふぉ、嬉しい悲鳴が止まらんわい。銀貨のままだと多すぎじゃからの、金貨に両替をして保管しておるが……それでももう金庫がいっぱいになってきておる」

オイドは大量にある金貨とそれを保管している金庫を見ながら答える。
ちなみに銀貨100枚で金貨1枚に取り換える事ができる。

「……だな。金貨がこんだけあったら何に使っていいか分からないぐらいだ」

俺は大量に余る金貨の使い道について考えるがまったく思いつかない。
そんな事を考えている時――

「アーノルド! 村長さんがお話があるようです」

――接客をしていたシャルロッテから俺を呼ぶ声が聞こえてきた。

「あぁ、今行く! ……呼ばれたようだ。それじゃ引き続き頼むよ。オイド」
「ふぉっふぉっふぉ、任せるのじゃ!」

俺はオイドと別れるとシャルロッテ達がいる売り場に戻る。

「おまたせ。シャルロッテ」
「いえいえ、それでは私は他のお客さんの接客に戻りますね」
「頼むな」

俺は接客に戻ったシャルロッテを横目に来訪者である村長に視線を移す。

「……それで、俺に何か用ですか?」
「繁盛しているな。何、今日はこのネルド村の村長をアーノルドにお願いしようと思ってきたのだ」
「…………は? ……村長? なんで俺が」
「このネルド村がここまで栄えたのもアーノルドたちの尽力によるものが大きいからだよ。これからもこのネルド村の復興をアーノルドにお願いできないだろうか?」
「いやぁ……どうだろう」
(……正直、そんな糞面倒くさい事したくないんだが)

俺が断る気満々でいると――

「村の大勢も私の意見に賛同しているんだ。どうか、お願いできないだろうか?」

――薬屋の外で待機していた村人も村長の合図で薬屋に入ってくる。

「アーノルドさん! 村長になるの、私も賛成だわ!」
「先生が村長になってくれるなんて、とても安心できるわ!」
「お願いだ! 俺達の村の村長になってくれないか!」
(待て待て、だから一度に大勢で話しかけてくるなって!)

俺は薬屋に押し寄せてきた村人に圧倒されてしまう。

「えっと~…………すみません、ちょっと考えさせてもらってもいいですか? 返事は後ほどさせて頂きます」
「……わかった。嬉しい返答を期待しているぞ」

村長はそう言うと、率いていた村人と共に薬屋を後にする。

(……ふぅ、面倒なことになったな)

俺は忙しく働くシャルロッテ達を横目にそんな事を思うのだった。



その日の夜、村長になる件を皆に相談する。

「私は賛成です! アーノルドだったらネルド村を更に良い道へと導いてくれるでしょう」

シャルロッテは両手を合わせて俺が村長になる事に賛成のようだ。

「いや、簡単に言うけど――」
「――私も! アーノルドが村長、とても良いと思ウ!!」

俺の言葉を遮る勢いでラミリアも賛同してくる。

「はぁ……なんでそう思うんだよ。……なぁ、オイド」

俺はため息交じりにオイドに視線を向ける。

「仕方ないじゃろう、ネルド村にこれ程の売り上げをたたき出すポーションを生み出したのだからのぉ」
「……俺もこんなに売れるとは思ってもみなかったよ」
「じゃから、村長に選ばれるのも必然な事じゃ、諦めて引き受けてはどうかの?」
「う~ん……」

ラミリアとシャルロッテもとてもキラキラした目をして俺を見つめてくる。

(……そんな目で見られると断るに断れないんだが)
「……はぁ、わかったよ。やるよ、ネルド村の村長。……でも、まったく勝手が分からないからシャルロッテ、いろいろ教えてくれるか?」
「もちろんです、アーノルド!」

笑顔で承諾するシャルロッテ。
シャルロッテは薬屋開業から今日まで持てるすべての力を使って薬屋のポーションを全世界に広める為に尽力してくれていた。

「でも、本当によかったのか? ネルド村に移住してまで薬屋を手伝ってくれるなんて……ありがたいけど」
「いいのです。お父様もアーノルドのお陰で前以上に元気になりましたし、王位継承を行って頂きましたが、またしばらくはお父様が国に戻り、業務を行ってくれるという話になっております」

ギルバートはあれからすぐに目を覚まし、シャルロッテの申し出により国に戻り、シャルロッテと護衛・広報部隊はネルド村に残し、薬屋に協力してくれる運びとなったのだ。

「わかったよ。……それじゃ、明日にでも村長に俺が村長になる旨を伝えてくるよ」

こうして、何故か知らんが俺がネルド村の村長に抜擢ばってきされたのだった。
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