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第三部
18.失恋と恋心
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今回7000字オーバーで、長めです。誤字脱字、多いと思います。すみません…!
*誤字脱字、訂正しました
********************************************
7月最後の月曜日。いつものように社長室でお昼ご飯を食べていた私に、向かいのソファに座る白夜は告げた。
「……え? 関西支社に出張?」
「はい、木曜から週末まで、急遽行かなければならない用事ができまして」
あらら~そりゃまた、大変だ。予定の調整をする司馬さんも大変だけど。
そうなると、今週末は一緒には過ごせないのか。出張なんて珍しくはないけれど、週末の両方をつぶすのは久しぶりだな、なんて考えながらお弁当のおかずをつまんだ。内心寂しいかも、と思う本心は隠して。
そんな私に気付いているのかわからない笑顔で、白夜は提案する。
「ですので、麗も週末あちらに来ませんか?」と。
「え? 大阪に?」
「はい。金曜の夜に来てくだされば、週末も一緒に過ごせますし」
「いや、でも、土日も仕事なんじゃ?」
嬉しいけど、邪魔にはなりたくない。
それに秘書として同行するわけじゃないんだよね? 契約社員なんだし。
そう訊ねると、白夜はやはり司馬さんに同行を頼んだと言う。が、土日までには急用とやらを終わらせるつもりらしく、遅くなっても土曜の午前中には終わるそうだ。その後の付き合いなんかは、多分断るのだろう。
「それに、土曜の夜には向こうで夏祭りがあるそうですよ。ここら辺だと社内の人間に目撃される可能性も高いですが、さすがに大阪まで離れていれば大丈夫かと」
「え、夏祭り?」
”お祭りデート”という単語が脳内で駆け巡った。
なんてときめくフレーズ……! まさしくそれは夏のデートの定番じゃない!
今まで誰かとお祭りデートを体験したことのなかった私は、一気にテンションが上がった。はっ! 新しい浴衣買わなきゃ!
「行く! 浴衣着てデートに行きたい!」
「浴衣ですか……今から仕立てるのは時間的に厳しいかもしれませんね……」
いや、あの、仕立てから始めるつもりはないんだけど……。なんてセレブ思考なんだ。
「それは大丈夫だから。新しい浴衣は今日の帰りにでも見に行ってみるね。あ、でも鷹臣君いないからどうやって着よう……」
私が着付けを学べばいいんだろうけど、本番で出来るか不安だし。
独り言のような私の呟きを耳ざとく拾った白夜は、訝しげな反応を見せた。
「何故古紫室長に頼むのでしょう? まさか、今までずっと彼に着付けを頼んでいたわけではありませんよね……?」
「え? 何か問題が?」
美容院をわざわざ予約しなくても、ヘアメイクは自分で出来るし、着付けは身内がしてくれたら安上がりでいいじゃないか。
けれど逆にそう訊ね返してみれば、真夏の室内にはふさわしくない冷気が……! あ、でもこれはこれで涼しいかも……じゃなかった。笑顔で精神攻撃は反対!
盛大にため息をついた白夜は一言、「大有りです」と言った。
「あのね、子供の頃から鷹臣君にやってもらってたから、別に問題ないよ? それにキャミとスパッツだって身に着けてたし。京都の実家じゃいつも和装だから、鷹臣君は着物に慣れてて、女性用のでも着付けが出来るんだよ。帯も毎回可愛いくやってくれるから、正直助かってたんだけど……」
「子供の頃と今では違うでしょう? だめですよ、今後あなたの着付けは私がします」
え、出来るの? 白夜が? どんだけ引き出しが多いの!
「一度習ってコツさえ掴めれば大丈夫です。それに、万が一出先で着崩れてしまった場合、私が直せたほうが麗にとっても助かるでしょう?」
「まあ、それは確かに……」
人ごみに押しつぶされたりして、帯が緩んだら直すの面倒だよね。
トポトポとお茶を淹れる司馬さんが、ちらりと白夜に視線を投げた。無表情だけど何か言いたげな司馬さんが少しだけ気になる。でも、あまり深く考えない私はとりあえず「ありがとう」と白夜に告げた。
◆ ◆ ◆
司馬さんから任された仕事がひと段落した所で、秘書課のお姉さまからお使いを頼まれた。それは別の課に、とある書類を届けてほしいという物。どうやら彼女は今から外出しないといけないらしい。座ってばっかりだった私は、快く引き受けた。
10階の社長室から私は6階までエレベーターで降りた。このフロアの開発部には初めて足を踏み入れる。私には到底理解できそうにもない専門知識が飛び交うこのフロアは、それぞれ専門分野に秀でた技術者だらけだ。謎な機械が至る所に置かれており、触れたら怖いので極力近寄らないでおく。とりあえず私は、防犯グッズなどの開発を担当している夏目主任に会いたいんだけど……。
デスク付近に近づいた所で、私の存在に気付いたこの課の男性社員が声をかけてくれた。
「どなたをお捜しですか?」
「え? えっと、夏目主任に書類を手渡したいのですが……」
白衣にネクタイ姿の私と同年代と思われる男性が、フロアを見渡した。
暗めの茶髪に黒縁メガネ。眼鏡の奥にはタレ目がちな黒い瞳と、左目の下には泣きぼくろが。一見軽そうに見えるけど、メガネがうまくカバーしているのかもしれない。容姿は中の上? 目立つわけじゃないがそこそこ整っている容姿で、インテリ理系青年といった雰囲気だ。
噂では聞いてたけど、このフロアのメガネ率は9割を超えるってマジかもしれない。少なくともこの場にいる人間、全員メガネで白衣着用って……。眼鏡フェチにはたまらないだろうけど、生憎私にそんな趣味はないからなぁ。
「主任はどうやらデスクを離れているみたいだけど、すぐに戻って来るよ。今一服中だから」と、茶目っ気たっぷりの仕草でそう言ったのは、タレ目泣きぼくろ青年の後ろからひょっこり現れた別の男性。黄色いフレームの眼鏡、似合うな。
二人にお礼を告げて、この場で待たせてもらう事を伝えると。夏目主任のデスク付近まで案内された。
その直後に後ろから女性の声がかけられて、私はゆっくりと振り返った。
……女医さん?
そう一瞬間違いそうになりそうな女性も、やはり白衣に眼鏡。おお、良くみれば知的美女だ! 黒髪を一つにくくって、きりりとした涼やかな目元がより知的に見える。キャリアウーマン、って感じの女性だ。
私の傍らにいた二人はそろって、「お疲れ様です、主任」と声をかけたので、私は内心驚いた。
夏目主任って女性だったのか……。恐らく年齢は30代前後? 今のところ男性しか見えないから、もしかして紅一点なのかも。す、すごいな……。
「あら、あなたは……確か、社長の第二秘書をされている、長月さん?」
「はい、長月都と申します。夏目主任に手渡すようにと書類を預かってまいりました」
「あら、ありがとう。あなたとは初めまして、よね。夏目涼子よ。よろしくね」
クールビューティーが笑った!
何だかつられて笑いそうになるのをぐっとこらえて、私は会釈した。
その後案内をしてくれた二人も自己紹介をしてくれた。黒縁メガネのタレ目泣きぼくろ青年は、真壁真と言うそうで、黄色い眼鏡の人懐っこい方は、「深山でいーよー」とのことだ。
その後休憩時間が終わったのか、案内してくれた二人も仕事に戻った。私も改めてお礼を言って、夏目主任に挨拶をしてから10階へ戻る。けど……。
な~んか、しっくりこない。っていうか、真壁真の名前とあの顔、どっかで見たことがあるような……。
職業柄、変装していても見破れるようにと、一通り特訓はさせられている。そして上から読んでも下から読んでも同じ名前の彼は、以前どこかで会った気がする。
「あのタレ目に泣きぼくろ、どこで見た?」
エレベーター内で考える事数秒。私はようやく思い出した。
「ぁあ! 瑠璃ちゃんの、マー君!!」
そうだよ、マー君だよ!!
一度だけ以前スマホの写真を見せてもらったんだった。その時は眼鏡をしていなくて、髪ももっと茶髪って感じだったから一瞬気が付かなかったけど。でもあの一度聞いたら覚えやすい名前とほくろは、絶対そうだよ!
「あ~すっきりしたー」
と思いつつも、胸の中のもやもやは晴れない。
瑠璃ちゃんは一度もマー君が東条セキュリティで働いている事を言わなかった。いや、もしかしたら知らないのかもしれない。彼女は恋愛ハンターで、同時に恋愛体質だけど、踏み込んだ事は訊かない傾向がある。彼女自身も自分の職業を「受付兼事務かな~」と言っているらしい。探偵事務所で働いているとは、今までの彼氏に言ったことがないと、私と鏡花さんに言っていた。
守秘義務が多い仕事だし、その方が楽ならいいんじゃない? なんて私達も言った気がする。でも、もしかしたら自分の職業を言わないと同時に、相手にもどこの企業で働いているのかは訊けなかったのかもしれない。「マー君はエンジニアですよ~」って言っていたけど、多分それ以上は踏み込めなかったんだろう。彼女にとって、何をしている人なのかを知る必要はあっても、”どこで働いているか”までは不必要な情報なのかもしれないから。
「なんだか、嫌な予感がするんだけど……」
パッと見は軽くも見えるマー君こと、真壁さん。でも、根は真面目だって瑠璃ちゃんが言っていたように、真面目な青年に見えた。どっちかって言うと、深山さんの方が軽そうだったし。
でも真壁さんが一瞬だけ夏目主任を見た時の目が、やけに思い出される。普通なら気づかない位の些細なもの。部下として上司を尊敬する眼差しに含まれていたのは、純粋に慕う心だけじゃなくて、別の感情も同時に覗かせたような……
「って、気のせいだよ、気のせい! あんな一瞬で、些細な変化を私が気づくはずないじゃない!」
――そう一人で笑い飛ばしたのに。
なんだか胸の奥で妙な引っかかりを感じて、私は今日の出来事を瑠璃ちゃんに話す気にはなれなかった。
◆ ◆ ◆
嫌な予感ほど当たるのは、どうしてなのだろうか。
私にも女の勘というものが備わっていた事に気づかされたのは、事務所に出社した木曜日の朝だった。
いつも通りの時間に着いた私に、鷹臣君は私を手招いた。
「麗、お前今日終わったら、ちょっと瑠璃の様子見てこい」
「は? え、何それ。瑠璃ちゃん風邪?」
何故だかドキン、と心臓が鳴った。
火曜日の瑠璃ちゃんはいつも通りだった。今はどのアイドルにはまっているとか、流行の話をしてお昼ご飯を一緒に食べた。風邪の兆候は見られなかったけど、多分鷹臣君はそんな事を言っているんじゃないと、直感で悟る。
まだ私しか出社していない今、鷹臣君は深々と室長椅子に腰かけて、長い脚を組んだ。
「風邪じゃなくってな、あれだ。今日は失恋休暇で休みだ」
「っ!? ま、マジで……?」
恐る恐る尋ねると、鷹臣君は「マジだ」と言った。
失恋休暇――文字通り、失恋した時にもらえる休みの事だ。今のところ、この休暇を使っているのは恋愛体質の瑠璃ちゃん位しかいない。(私は失恋どころか、片想いにすら縁遠かったから。)
高校時代からオフィスTKでバイトをしていた瑠璃ちゃんが、半ば自棄気味に高校を卒業と同時に鷹臣君に申し出たのだ。「失恋したので暫くバイトに行く気になれません! 失恋休暇っての、作ってください~!」と泣きながら言ったら、あっさり鷹臣君はOKを出した。半分位冗談のつもりだったんだと思う。
今のところ瑠璃ちゃんがこの休暇を使ったのは、私が知る限りでも2回。そして、今回のも失恋なら、3回目だ。
今まで失恋はそれこそたくさんあったと思う。彼氏と別れるのは大抵瑠璃ちゃんからだけど、この休暇を使った時は当然相手から別れを切り出された時。そして瑠璃ちゃんが別れを予期していなかった時だ。
過去2回、立ち直るまでにかかった日数は3日ほど。というか、休みOKを出したのが2日まで。それ以上だと有給扱いになる。
「……実はさ、マー君って東条セキュリティにいたみたいなんだよね……」
「は? マジか」
一通り私が見て感じた事を告げたら、鷹臣君は深々とため息を吐いた。
こればっかりは、当人ががんばって立ち直るしかない。私にできる事は食べる事を拒否しないように、おいしいご飯に連れて行ってあげられることだけ。ヤケ食いでもヤケ酒でも付き合ってあげるから、瑠璃ちゃん早まっちゃダメだよ!?
そんな懸念を胸に抱きながら、いつもより早めに事務所を後にした私は、瑠璃ちゃんを行きつけの居酒屋に連れ込んだ。仕切りになっている個室は周囲の目が気にならないし、それなりに騒がしく人の気配がする居酒屋は結構落ち着いて喋れる。それこそ、静かなバーなんかよりは。
待ち合わせに応じてくれた瑠璃ちゃんは、いつもより気合いのないチュニックとショートパンツという、ほぼ部屋着で現れた。髪も一つにくくっただけ、メイクもしていない。泣きはらしたかのような顔は、瞼を冷やしてもまだ若干腫れている。普段はコンタクトをつけている瑠璃ちゃんは、珍しく赤いフレームの眼鏡をかけていた。
今日は生憎鏡花さんは来れない。仕事が忙しくって、参加できないそう。何だっけ、今は遺産相続の争いに巻き込まれている依頼者の護衛と本物の遺言書捜しを、白石さんと二人でやっているとか……。相変わらず、大変そうな仕事でお疲れ様です。
私は極力いつも通りの自分を心掛けて、瑠璃ちゃんに席に座るよう優しく誘導した。
次から次へ運ばれてくる一品料理とお酒が、瞬く間に消えていく。それは私がというよりは、ほとんど瑠璃ちゃんが、なんだけど。
食べる元気があって何よりだよ、瑠璃ちゃん。
「一晩泣いて、ほぼ丸1日食べずにいたからお腹が減ってたみたいです~」と箸を進める瑠璃ちゃんの口調はどこか荒れている。泣き顔じゃないことに安堵するけど、眉間の皺が刻まれていて、若干怖いよ……?
ビールをグラスで3杯飲み干した所で、瑠璃ちゃんは言った。
「……他に好きな人が出来たから、別れてほしいって。そう言って来たんですよ、マー君」
「……」
やはり、それは夏目主任の事なのかな……。
あの二人が恋人同士には見えなかったけど、根が真面目な彼は中途半端な自分が嫌だったのかもしれない。もしかしたらまだ付き合っているわけじゃなくて、気持ちが夏目主任に傾いているのに瑠璃ちゃんと付き合い続けるのは不誠実だと、そう思ったのだろうか。
「マー君は、その人と付き合ってるの?」
そう訊いたら、瑠璃ちゃんは首を左右に振った。やっぱり、まだなのか……。
「片想いだけど、その人が気になっているのに私との交際は続けられないって。ごめんって、謝られたら……、泣いて縋って「捨てないで!」なんて、言えないじゃないですかぁ~! だって、マー君も泣きそうな顔してたんですもん……!」
うう、としゃっくりをあげはじめた瑠璃ちゃんの瞳は、視界が潤み始めている。ああ、まずい。散々水分を補給したから、涙腺が再び決壊しちゃう!
「い、1年、ですよ……。珍しく長続きしたな、なんて思っていた矢先に、振られちゃう、なんて~……。瑠璃の事ちゃんと、見てくれているって思ってたのに。結局お互い、何も知らないまま、だったの、かも……。マー君、自分が悪いって、ごめんって謝ってばかり、で。瑠璃のこと、嫌いじゃないけど、ダメだって……っうう、嫌いじゃないなら、なんでえ~?」
「ああ、瑠璃ちゃん、泣かないで……!」
私ももらい泣きしそうだよ!
今までは恋愛経験がなさすぎて、鏡花さんが宥める傍らで、頷いてフォローをしているばかりだった。考えてみれば、私には失恋経験だってない。だって初恋の相手は白夜で、気づいたら両想いで、結婚まで勢いでしちゃって。傍から見たら「羨ましい!」と妬まれて当然だと思う。
そんな私が何言っても慰めにはならないだろう。嫌味と捉えられるかもしれない。
顔をテーブルに突っ伏してしくしく泣き始める瑠璃ちゃんを眺める。
多分、どちらも悪くないんだろう。
相手が浮気して、とか、そんな風に別れる場合は「別れて正解だよ、そんな男!」って励ます事もできたんだろうけど。今回のは、事情が異なる。
人の気持ちが永遠に変わらないなんて、嘘だ。誰かの気持ちがずっとその人だけに向いているなんて、夢物語に近い。相手の心を繋ぎ止めていたくて、きっとお互いに努力をするのだろう。相思相愛は、なかなかたどり着けない、険しい道のりを超えた先にあるのかもしれない。
永遠の愛を手に入れたいと願って、相手の気持ちが自分に向いているのか気になって。好きになればなるほど、辛くなる。恋は楽しいけど苦しいと、誰かが言っていたっけ。
何度失恋しても、瑠璃ちゃんは恋する事をやめない。日本に戻ってきてから数年、瑠璃ちゃんを見続けて来た。彼女は傷つきやすいのに恋に貪欲で、誰かを好きになる事をやめようとはしない。それって実はかなり勇気あるよね? そんな彼女に、私は密かに尊敬している。
秘密主義で防衛線を張っていても、そんな自分を丸ごと受け入れてくれる人を瑠璃ちゃんは捜しているんじゃないかな。大きな懐を持って、甘えたがりでミーハーだけどキラキラ輝く瑠璃ちゃんの傍にいてくれる男性が、現れてくれたらいい。私には何もできないけど、愚痴ならいくらでも聞いてあげられる。
ふわふわな頭を、私はやさしくポンポンと撫でた。頭を上げた彼女はぐしゃぐしゃな顔をしている。私はハンカチを取り出して彼女に差し出した。
「瑠璃ちゃんにもいつか現れるよ。自分だけを見てくれる王子様が」
だから、今は思いっきり泣いちゃってもいいよ? お店の人に迷惑をかけない大きさなら。
さっきまで「泣かないで」なんて言ってたくせにと、内心自分で突っ込みを入れるけれど。思いっきり泣いて誰かに聞いてもらえる事で、吹っ切れる事もあるよね。
――10時近くになるまで、私と瑠璃ちゃんは居酒屋に居座り続けた。
◆ ◆ ◆
その後、瑠璃ちゃんの家近くの駅まで見送り、私は自宅へ帰った。
お店を出た時の瑠璃ちゃんは、少しすっきりした顔をしていた。忘れる事は出来ないけれど、マー君よりいい男をゲットしてやるという意気込みまで見せた。流石、肉食系女子。「その意気だよ、瑠璃ちゃん!」と、私は思いっきり応援したのだ。
翌日気になって、東条セキュリティの帰り道に事務所に立ち寄った私は、すっか元気に戻った瑠璃ちゃんを見て安堵した。
が、その後告げられた内容に、驚愕する。
「お世話になりました、麗さん! それでですね、見てください~次の彼氏候補!」
でもまだ彼女見習いなんですけどね~。
そう告げた瑠璃ちゃんの言葉の意味が謎すぎて、私は首を傾げながら手渡されたスマホを受け取った。
そこに写っていたのは、どこからどう見ても、私が良く知っている男性――海斗さんだった。
って、あの後一体何があったの、瑠璃ちゃん!?
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瑠璃ちゃんの話は、また後日番外編にて…(リクエストがあれば?)
誤字脱字、見つけましたら報告お願いします!
*誤字脱字、訂正しました
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7月最後の月曜日。いつものように社長室でお昼ご飯を食べていた私に、向かいのソファに座る白夜は告げた。
「……え? 関西支社に出張?」
「はい、木曜から週末まで、急遽行かなければならない用事ができまして」
あらら~そりゃまた、大変だ。予定の調整をする司馬さんも大変だけど。
そうなると、今週末は一緒には過ごせないのか。出張なんて珍しくはないけれど、週末の両方をつぶすのは久しぶりだな、なんて考えながらお弁当のおかずをつまんだ。内心寂しいかも、と思う本心は隠して。
そんな私に気付いているのかわからない笑顔で、白夜は提案する。
「ですので、麗も週末あちらに来ませんか?」と。
「え? 大阪に?」
「はい。金曜の夜に来てくだされば、週末も一緒に過ごせますし」
「いや、でも、土日も仕事なんじゃ?」
嬉しいけど、邪魔にはなりたくない。
それに秘書として同行するわけじゃないんだよね? 契約社員なんだし。
そう訊ねると、白夜はやはり司馬さんに同行を頼んだと言う。が、土日までには急用とやらを終わらせるつもりらしく、遅くなっても土曜の午前中には終わるそうだ。その後の付き合いなんかは、多分断るのだろう。
「それに、土曜の夜には向こうで夏祭りがあるそうですよ。ここら辺だと社内の人間に目撃される可能性も高いですが、さすがに大阪まで離れていれば大丈夫かと」
「え、夏祭り?」
”お祭りデート”という単語が脳内で駆け巡った。
なんてときめくフレーズ……! まさしくそれは夏のデートの定番じゃない!
今まで誰かとお祭りデートを体験したことのなかった私は、一気にテンションが上がった。はっ! 新しい浴衣買わなきゃ!
「行く! 浴衣着てデートに行きたい!」
「浴衣ですか……今から仕立てるのは時間的に厳しいかもしれませんね……」
いや、あの、仕立てから始めるつもりはないんだけど……。なんてセレブ思考なんだ。
「それは大丈夫だから。新しい浴衣は今日の帰りにでも見に行ってみるね。あ、でも鷹臣君いないからどうやって着よう……」
私が着付けを学べばいいんだろうけど、本番で出来るか不安だし。
独り言のような私の呟きを耳ざとく拾った白夜は、訝しげな反応を見せた。
「何故古紫室長に頼むのでしょう? まさか、今までずっと彼に着付けを頼んでいたわけではありませんよね……?」
「え? 何か問題が?」
美容院をわざわざ予約しなくても、ヘアメイクは自分で出来るし、着付けは身内がしてくれたら安上がりでいいじゃないか。
けれど逆にそう訊ね返してみれば、真夏の室内にはふさわしくない冷気が……! あ、でもこれはこれで涼しいかも……じゃなかった。笑顔で精神攻撃は反対!
盛大にため息をついた白夜は一言、「大有りです」と言った。
「あのね、子供の頃から鷹臣君にやってもらってたから、別に問題ないよ? それにキャミとスパッツだって身に着けてたし。京都の実家じゃいつも和装だから、鷹臣君は着物に慣れてて、女性用のでも着付けが出来るんだよ。帯も毎回可愛いくやってくれるから、正直助かってたんだけど……」
「子供の頃と今では違うでしょう? だめですよ、今後あなたの着付けは私がします」
え、出来るの? 白夜が? どんだけ引き出しが多いの!
「一度習ってコツさえ掴めれば大丈夫です。それに、万が一出先で着崩れてしまった場合、私が直せたほうが麗にとっても助かるでしょう?」
「まあ、それは確かに……」
人ごみに押しつぶされたりして、帯が緩んだら直すの面倒だよね。
トポトポとお茶を淹れる司馬さんが、ちらりと白夜に視線を投げた。無表情だけど何か言いたげな司馬さんが少しだけ気になる。でも、あまり深く考えない私はとりあえず「ありがとう」と白夜に告げた。
◆ ◆ ◆
司馬さんから任された仕事がひと段落した所で、秘書課のお姉さまからお使いを頼まれた。それは別の課に、とある書類を届けてほしいという物。どうやら彼女は今から外出しないといけないらしい。座ってばっかりだった私は、快く引き受けた。
10階の社長室から私は6階までエレベーターで降りた。このフロアの開発部には初めて足を踏み入れる。私には到底理解できそうにもない専門知識が飛び交うこのフロアは、それぞれ専門分野に秀でた技術者だらけだ。謎な機械が至る所に置かれており、触れたら怖いので極力近寄らないでおく。とりあえず私は、防犯グッズなどの開発を担当している夏目主任に会いたいんだけど……。
デスク付近に近づいた所で、私の存在に気付いたこの課の男性社員が声をかけてくれた。
「どなたをお捜しですか?」
「え? えっと、夏目主任に書類を手渡したいのですが……」
白衣にネクタイ姿の私と同年代と思われる男性が、フロアを見渡した。
暗めの茶髪に黒縁メガネ。眼鏡の奥にはタレ目がちな黒い瞳と、左目の下には泣きぼくろが。一見軽そうに見えるけど、メガネがうまくカバーしているのかもしれない。容姿は中の上? 目立つわけじゃないがそこそこ整っている容姿で、インテリ理系青年といった雰囲気だ。
噂では聞いてたけど、このフロアのメガネ率は9割を超えるってマジかもしれない。少なくともこの場にいる人間、全員メガネで白衣着用って……。眼鏡フェチにはたまらないだろうけど、生憎私にそんな趣味はないからなぁ。
「主任はどうやらデスクを離れているみたいだけど、すぐに戻って来るよ。今一服中だから」と、茶目っ気たっぷりの仕草でそう言ったのは、タレ目泣きぼくろ青年の後ろからひょっこり現れた別の男性。黄色いフレームの眼鏡、似合うな。
二人にお礼を告げて、この場で待たせてもらう事を伝えると。夏目主任のデスク付近まで案内された。
その直後に後ろから女性の声がかけられて、私はゆっくりと振り返った。
……女医さん?
そう一瞬間違いそうになりそうな女性も、やはり白衣に眼鏡。おお、良くみれば知的美女だ! 黒髪を一つにくくって、きりりとした涼やかな目元がより知的に見える。キャリアウーマン、って感じの女性だ。
私の傍らにいた二人はそろって、「お疲れ様です、主任」と声をかけたので、私は内心驚いた。
夏目主任って女性だったのか……。恐らく年齢は30代前後? 今のところ男性しか見えないから、もしかして紅一点なのかも。す、すごいな……。
「あら、あなたは……確か、社長の第二秘書をされている、長月さん?」
「はい、長月都と申します。夏目主任に手渡すようにと書類を預かってまいりました」
「あら、ありがとう。あなたとは初めまして、よね。夏目涼子よ。よろしくね」
クールビューティーが笑った!
何だかつられて笑いそうになるのをぐっとこらえて、私は会釈した。
その後案内をしてくれた二人も自己紹介をしてくれた。黒縁メガネのタレ目泣きぼくろ青年は、真壁真と言うそうで、黄色い眼鏡の人懐っこい方は、「深山でいーよー」とのことだ。
その後休憩時間が終わったのか、案内してくれた二人も仕事に戻った。私も改めてお礼を言って、夏目主任に挨拶をしてから10階へ戻る。けど……。
な~んか、しっくりこない。っていうか、真壁真の名前とあの顔、どっかで見たことがあるような……。
職業柄、変装していても見破れるようにと、一通り特訓はさせられている。そして上から読んでも下から読んでも同じ名前の彼は、以前どこかで会った気がする。
「あのタレ目に泣きぼくろ、どこで見た?」
エレベーター内で考える事数秒。私はようやく思い出した。
「ぁあ! 瑠璃ちゃんの、マー君!!」
そうだよ、マー君だよ!!
一度だけ以前スマホの写真を見せてもらったんだった。その時は眼鏡をしていなくて、髪ももっと茶髪って感じだったから一瞬気が付かなかったけど。でもあの一度聞いたら覚えやすい名前とほくろは、絶対そうだよ!
「あ~すっきりしたー」
と思いつつも、胸の中のもやもやは晴れない。
瑠璃ちゃんは一度もマー君が東条セキュリティで働いている事を言わなかった。いや、もしかしたら知らないのかもしれない。彼女は恋愛ハンターで、同時に恋愛体質だけど、踏み込んだ事は訊かない傾向がある。彼女自身も自分の職業を「受付兼事務かな~」と言っているらしい。探偵事務所で働いているとは、今までの彼氏に言ったことがないと、私と鏡花さんに言っていた。
守秘義務が多い仕事だし、その方が楽ならいいんじゃない? なんて私達も言った気がする。でも、もしかしたら自分の職業を言わないと同時に、相手にもどこの企業で働いているのかは訊けなかったのかもしれない。「マー君はエンジニアですよ~」って言っていたけど、多分それ以上は踏み込めなかったんだろう。彼女にとって、何をしている人なのかを知る必要はあっても、”どこで働いているか”までは不必要な情報なのかもしれないから。
「なんだか、嫌な予感がするんだけど……」
パッと見は軽くも見えるマー君こと、真壁さん。でも、根は真面目だって瑠璃ちゃんが言っていたように、真面目な青年に見えた。どっちかって言うと、深山さんの方が軽そうだったし。
でも真壁さんが一瞬だけ夏目主任を見た時の目が、やけに思い出される。普通なら気づかない位の些細なもの。部下として上司を尊敬する眼差しに含まれていたのは、純粋に慕う心だけじゃなくて、別の感情も同時に覗かせたような……
「って、気のせいだよ、気のせい! あんな一瞬で、些細な変化を私が気づくはずないじゃない!」
――そう一人で笑い飛ばしたのに。
なんだか胸の奥で妙な引っかかりを感じて、私は今日の出来事を瑠璃ちゃんに話す気にはなれなかった。
◆ ◆ ◆
嫌な予感ほど当たるのは、どうしてなのだろうか。
私にも女の勘というものが備わっていた事に気づかされたのは、事務所に出社した木曜日の朝だった。
いつも通りの時間に着いた私に、鷹臣君は私を手招いた。
「麗、お前今日終わったら、ちょっと瑠璃の様子見てこい」
「は? え、何それ。瑠璃ちゃん風邪?」
何故だかドキン、と心臓が鳴った。
火曜日の瑠璃ちゃんはいつも通りだった。今はどのアイドルにはまっているとか、流行の話をしてお昼ご飯を一緒に食べた。風邪の兆候は見られなかったけど、多分鷹臣君はそんな事を言っているんじゃないと、直感で悟る。
まだ私しか出社していない今、鷹臣君は深々と室長椅子に腰かけて、長い脚を組んだ。
「風邪じゃなくってな、あれだ。今日は失恋休暇で休みだ」
「っ!? ま、マジで……?」
恐る恐る尋ねると、鷹臣君は「マジだ」と言った。
失恋休暇――文字通り、失恋した時にもらえる休みの事だ。今のところ、この休暇を使っているのは恋愛体質の瑠璃ちゃん位しかいない。(私は失恋どころか、片想いにすら縁遠かったから。)
高校時代からオフィスTKでバイトをしていた瑠璃ちゃんが、半ば自棄気味に高校を卒業と同時に鷹臣君に申し出たのだ。「失恋したので暫くバイトに行く気になれません! 失恋休暇っての、作ってください~!」と泣きながら言ったら、あっさり鷹臣君はOKを出した。半分位冗談のつもりだったんだと思う。
今のところ瑠璃ちゃんがこの休暇を使ったのは、私が知る限りでも2回。そして、今回のも失恋なら、3回目だ。
今まで失恋はそれこそたくさんあったと思う。彼氏と別れるのは大抵瑠璃ちゃんからだけど、この休暇を使った時は当然相手から別れを切り出された時。そして瑠璃ちゃんが別れを予期していなかった時だ。
過去2回、立ち直るまでにかかった日数は3日ほど。というか、休みOKを出したのが2日まで。それ以上だと有給扱いになる。
「……実はさ、マー君って東条セキュリティにいたみたいなんだよね……」
「は? マジか」
一通り私が見て感じた事を告げたら、鷹臣君は深々とため息を吐いた。
こればっかりは、当人ががんばって立ち直るしかない。私にできる事は食べる事を拒否しないように、おいしいご飯に連れて行ってあげられることだけ。ヤケ食いでもヤケ酒でも付き合ってあげるから、瑠璃ちゃん早まっちゃダメだよ!?
そんな懸念を胸に抱きながら、いつもより早めに事務所を後にした私は、瑠璃ちゃんを行きつけの居酒屋に連れ込んだ。仕切りになっている個室は周囲の目が気にならないし、それなりに騒がしく人の気配がする居酒屋は結構落ち着いて喋れる。それこそ、静かなバーなんかよりは。
待ち合わせに応じてくれた瑠璃ちゃんは、いつもより気合いのないチュニックとショートパンツという、ほぼ部屋着で現れた。髪も一つにくくっただけ、メイクもしていない。泣きはらしたかのような顔は、瞼を冷やしてもまだ若干腫れている。普段はコンタクトをつけている瑠璃ちゃんは、珍しく赤いフレームの眼鏡をかけていた。
今日は生憎鏡花さんは来れない。仕事が忙しくって、参加できないそう。何だっけ、今は遺産相続の争いに巻き込まれている依頼者の護衛と本物の遺言書捜しを、白石さんと二人でやっているとか……。相変わらず、大変そうな仕事でお疲れ様です。
私は極力いつも通りの自分を心掛けて、瑠璃ちゃんに席に座るよう優しく誘導した。
次から次へ運ばれてくる一品料理とお酒が、瞬く間に消えていく。それは私がというよりは、ほとんど瑠璃ちゃんが、なんだけど。
食べる元気があって何よりだよ、瑠璃ちゃん。
「一晩泣いて、ほぼ丸1日食べずにいたからお腹が減ってたみたいです~」と箸を進める瑠璃ちゃんの口調はどこか荒れている。泣き顔じゃないことに安堵するけど、眉間の皺が刻まれていて、若干怖いよ……?
ビールをグラスで3杯飲み干した所で、瑠璃ちゃんは言った。
「……他に好きな人が出来たから、別れてほしいって。そう言って来たんですよ、マー君」
「……」
やはり、それは夏目主任の事なのかな……。
あの二人が恋人同士には見えなかったけど、根が真面目な彼は中途半端な自分が嫌だったのかもしれない。もしかしたらまだ付き合っているわけじゃなくて、気持ちが夏目主任に傾いているのに瑠璃ちゃんと付き合い続けるのは不誠実だと、そう思ったのだろうか。
「マー君は、その人と付き合ってるの?」
そう訊いたら、瑠璃ちゃんは首を左右に振った。やっぱり、まだなのか……。
「片想いだけど、その人が気になっているのに私との交際は続けられないって。ごめんって、謝られたら……、泣いて縋って「捨てないで!」なんて、言えないじゃないですかぁ~! だって、マー君も泣きそうな顔してたんですもん……!」
うう、としゃっくりをあげはじめた瑠璃ちゃんの瞳は、視界が潤み始めている。ああ、まずい。散々水分を補給したから、涙腺が再び決壊しちゃう!
「い、1年、ですよ……。珍しく長続きしたな、なんて思っていた矢先に、振られちゃう、なんて~……。瑠璃の事ちゃんと、見てくれているって思ってたのに。結局お互い、何も知らないまま、だったの、かも……。マー君、自分が悪いって、ごめんって謝ってばかり、で。瑠璃のこと、嫌いじゃないけど、ダメだって……っうう、嫌いじゃないなら、なんでえ~?」
「ああ、瑠璃ちゃん、泣かないで……!」
私ももらい泣きしそうだよ!
今までは恋愛経験がなさすぎて、鏡花さんが宥める傍らで、頷いてフォローをしているばかりだった。考えてみれば、私には失恋経験だってない。だって初恋の相手は白夜で、気づいたら両想いで、結婚まで勢いでしちゃって。傍から見たら「羨ましい!」と妬まれて当然だと思う。
そんな私が何言っても慰めにはならないだろう。嫌味と捉えられるかもしれない。
顔をテーブルに突っ伏してしくしく泣き始める瑠璃ちゃんを眺める。
多分、どちらも悪くないんだろう。
相手が浮気して、とか、そんな風に別れる場合は「別れて正解だよ、そんな男!」って励ます事もできたんだろうけど。今回のは、事情が異なる。
人の気持ちが永遠に変わらないなんて、嘘だ。誰かの気持ちがずっとその人だけに向いているなんて、夢物語に近い。相手の心を繋ぎ止めていたくて、きっとお互いに努力をするのだろう。相思相愛は、なかなかたどり着けない、険しい道のりを超えた先にあるのかもしれない。
永遠の愛を手に入れたいと願って、相手の気持ちが自分に向いているのか気になって。好きになればなるほど、辛くなる。恋は楽しいけど苦しいと、誰かが言っていたっけ。
何度失恋しても、瑠璃ちゃんは恋する事をやめない。日本に戻ってきてから数年、瑠璃ちゃんを見続けて来た。彼女は傷つきやすいのに恋に貪欲で、誰かを好きになる事をやめようとはしない。それって実はかなり勇気あるよね? そんな彼女に、私は密かに尊敬している。
秘密主義で防衛線を張っていても、そんな自分を丸ごと受け入れてくれる人を瑠璃ちゃんは捜しているんじゃないかな。大きな懐を持って、甘えたがりでミーハーだけどキラキラ輝く瑠璃ちゃんの傍にいてくれる男性が、現れてくれたらいい。私には何もできないけど、愚痴ならいくらでも聞いてあげられる。
ふわふわな頭を、私はやさしくポンポンと撫でた。頭を上げた彼女はぐしゃぐしゃな顔をしている。私はハンカチを取り出して彼女に差し出した。
「瑠璃ちゃんにもいつか現れるよ。自分だけを見てくれる王子様が」
だから、今は思いっきり泣いちゃってもいいよ? お店の人に迷惑をかけない大きさなら。
さっきまで「泣かないで」なんて言ってたくせにと、内心自分で突っ込みを入れるけれど。思いっきり泣いて誰かに聞いてもらえる事で、吹っ切れる事もあるよね。
――10時近くになるまで、私と瑠璃ちゃんは居酒屋に居座り続けた。
◆ ◆ ◆
その後、瑠璃ちゃんの家近くの駅まで見送り、私は自宅へ帰った。
お店を出た時の瑠璃ちゃんは、少しすっきりした顔をしていた。忘れる事は出来ないけれど、マー君よりいい男をゲットしてやるという意気込みまで見せた。流石、肉食系女子。「その意気だよ、瑠璃ちゃん!」と、私は思いっきり応援したのだ。
翌日気になって、東条セキュリティの帰り道に事務所に立ち寄った私は、すっか元気に戻った瑠璃ちゃんを見て安堵した。
が、その後告げられた内容に、驚愕する。
「お世話になりました、麗さん! それでですね、見てください~次の彼氏候補!」
でもまだ彼女見習いなんですけどね~。
そう告げた瑠璃ちゃんの言葉の意味が謎すぎて、私は首を傾げながら手渡されたスマホを受け取った。
そこに写っていたのは、どこからどう見ても、私が良く知っている男性――海斗さんだった。
って、あの後一体何があったの、瑠璃ちゃん!?
************************************************
瑠璃ちゃんの話は、また後日番外編にて…(リクエストがあれば?)
誤字脱字、見つけましたら報告お願いします!
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