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マーリンさんの学業奮闘記
レオンハルトさん、冒険者になる
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コーレルと戦ってから1ヶ月が過ぎた。
俺達はあの後、姉上にゲンコツを貰い、教師に怒られ、寮監に説教された。
確かにコーレルが邪教徒だと見抜いた時点で誰かに相談するべきだった。
姉上が偶々、学院に視察に来ていなかったら俺達だけでなく、兵士や生徒などに大量の犠牲者を出していたかも知れない。
はぁ、よし!
ドンマイ、俺!
次からは気をつけよう!
俺は反省はするがくよくよしたりはしないのだ。
そして学院が連休に入る初日の今日、俺はマーリンの部屋を訪ねて来ている。
変な意味はない。
マーリンに頼みがあってきたのだ。
「それで? なに、頼みって?」
「ああ、実はな、前に授業で作った偽りの指環を貸して欲しいんだ」
「偽りの指環を? なんで?」
「うっ、言わなきゃダメか?」
「当たり前でしょ」
確かにマーリンの言っている事は正論だ。
くっ、恥ずかしいが仕方ない。
俺にはどうしても偽りの指環が必要なのだ。
「あ~その、だな、あ~今度シアの誕生日があるだろ?
今度の誕生日は俺との婚約を発表してからの初めての誕生日だしな。
その記念になる物を送りたいのだ。
そこでだな、あ~、俺は、その、自らが稼いだ金でプレゼントを用意したいのだ」
「あ~なるほど。
愛するシアの為に身分を偽り、額に汗して働いてプレゼントを買いたいと」
ぐ、マーリンの奴めニヤニヤしやがって。
「そ、そう言う事だ。協力して欲しい」
「分かったわ。これ、貸してあげる」
マーリンは引き出しから授業で作成した偽りの指環を取り出し、手渡してくれた。
「済まない、恩にきるよ」
「シアの為にがんばりなよ。
愛するシアの為に」
ニヤニヤするマーリンに礼を言い、俺は姿を変えると街へと繰り出した。
まず冒険者ギルドに来た俺はレーオと言う名前で冒険者として登録すると、早速依頼を探した。
街の外へ出る仕事は受けない。
そう、マーリンと約束したからな。
俺も自分の立場は分かっているつもりだ。
国民の血税で育てて貰った俺は、この命を国民の為に使う義務がある。
こうして、無意味に危険に身を投じるのは国民に対しての裏切りに等しい行為だ。
だが、どうか学院が休みのこの数日だけ、許して欲しい。
俺はどうしても自らが稼いだ金でプレゼントを送りたいのだ。
俺の婚約者は異常な程の天才だ。
賢者の如き知恵者であり、武人の如き強さを持ち、聖女の如き心を持っている。
その溢れる才覚で、若干14歳で国に功績を認められ、栄誉ある勲章を叙勲された傑物だ。
対して俺はどうか。
俺は単に王家に産まれただけの男だ。
もちろんこれまで努力をして来た。
剣を振るい、魔法を学び、学問を修めた。
しかし、それはどこまで行っても凡人のそれでしかない。
天才である彼女はあらゆる物を手に入れられる。
交易が盛んな領地、巨大な商会を持つ彼女なら、手に入らない物は無いだろう。
では、凡人に過ぎない俺が彼女にあげられるものは何か?
平凡な頭を絞って考えたのだ。
彼女の為に汗を流して手に入れたプレゼントは彼女がどんな手を使っても、自力で手に入れる事は出来ないのではないかと。
1日目、食堂での皿洗い
「おい! レーオ! まだ洗い終わらねぇのか! 」
「済みません!」
2日目、荷運び
「わっ、とっと」
「馬鹿やろぉ! しっかり持ちやがれ!」
3日目、ドブ掃除
「はぁ、はぁ、金を稼ぐのがこんなにも大変だとは……だが、シアの為に……もう少しだ!」
4日目、再び食堂
「おうレーオ、ご苦労だったな。
ほら、給金だ。
お前は真面目に働いてくれたからな。
少しだか色を付けておいたぞ」
「え、良いのですか?」
「ああ、そいつは俺がお前を認めた証だからな。
それで良いものを買ってやれ」
「な、なぜ⁉︎」
「がっはっは、分かるさ。
長年、食堂で人を見て来たんだからな。
立ち振る舞いや言動をみればわかる。
お前、かなり裕福な家の出だろ?
そんなボンボンが親の力を借りず、額に汗して金が欲しいなんて、女に決まってんだろ。頑張れよ、青年」
「は、はい。ありがとうございます」
最後の休日、今日はシアの誕生日だ。
寮ではマーリンやアル、クルス達がパーティの準備をしているだろう。
本来なら公爵家の令嬢である彼女の誕生日は領地で盛大に祝われる事だろう。
しかし、シアは俺と共に学院に残ると言ってくれたのだ。
だから俺達で盛大に祝ってやるのだ。
俺は目をつけていた行商人を探す。
数日前、アルやクルスと街を歩いていてまたまた見つけたのだ。
行商人に聞くとまだ数日は王都に留まり、商売をすると言っていた。
そこで俺はソレを取り置いて貰えるように頼み込み、急ぎ金を用意したのだ。
行商人を見つけた俺はマーリンに借りた偽りの指環を外し、自分が作った偽りの指環に付け替えると以前と同じ場所で商品を広げていた露店の主人に声をかける。
「ロキ殿!」
「おや、いらっしゃいませ。
例の物ですね」
「ああ、待たせて済まない」
「いえいえ、どうぞ、こちらです」
俺はこの数日、懸命に稼いだお金を支払い、目を付けていた物を受け取る。
はたしてシアは喜んでくれるだろうか?
俺は赤毛の行商人に礼を伝えると学生寮に向けて走り出した。
俺達はあの後、姉上にゲンコツを貰い、教師に怒られ、寮監に説教された。
確かにコーレルが邪教徒だと見抜いた時点で誰かに相談するべきだった。
姉上が偶々、学院に視察に来ていなかったら俺達だけでなく、兵士や生徒などに大量の犠牲者を出していたかも知れない。
はぁ、よし!
ドンマイ、俺!
次からは気をつけよう!
俺は反省はするがくよくよしたりはしないのだ。
そして学院が連休に入る初日の今日、俺はマーリンの部屋を訪ねて来ている。
変な意味はない。
マーリンに頼みがあってきたのだ。
「それで? なに、頼みって?」
「ああ、実はな、前に授業で作った偽りの指環を貸して欲しいんだ」
「偽りの指環を? なんで?」
「うっ、言わなきゃダメか?」
「当たり前でしょ」
確かにマーリンの言っている事は正論だ。
くっ、恥ずかしいが仕方ない。
俺にはどうしても偽りの指環が必要なのだ。
「あ~その、だな、あ~今度シアの誕生日があるだろ?
今度の誕生日は俺との婚約を発表してからの初めての誕生日だしな。
その記念になる物を送りたいのだ。
そこでだな、あ~、俺は、その、自らが稼いだ金でプレゼントを用意したいのだ」
「あ~なるほど。
愛するシアの為に身分を偽り、額に汗して働いてプレゼントを買いたいと」
ぐ、マーリンの奴めニヤニヤしやがって。
「そ、そう言う事だ。協力して欲しい」
「分かったわ。これ、貸してあげる」
マーリンは引き出しから授業で作成した偽りの指環を取り出し、手渡してくれた。
「済まない、恩にきるよ」
「シアの為にがんばりなよ。
愛するシアの為に」
ニヤニヤするマーリンに礼を言い、俺は姿を変えると街へと繰り出した。
まず冒険者ギルドに来た俺はレーオと言う名前で冒険者として登録すると、早速依頼を探した。
街の外へ出る仕事は受けない。
そう、マーリンと約束したからな。
俺も自分の立場は分かっているつもりだ。
国民の血税で育てて貰った俺は、この命を国民の為に使う義務がある。
こうして、無意味に危険に身を投じるのは国民に対しての裏切りに等しい行為だ。
だが、どうか学院が休みのこの数日だけ、許して欲しい。
俺はどうしても自らが稼いだ金でプレゼントを送りたいのだ。
俺の婚約者は異常な程の天才だ。
賢者の如き知恵者であり、武人の如き強さを持ち、聖女の如き心を持っている。
その溢れる才覚で、若干14歳で国に功績を認められ、栄誉ある勲章を叙勲された傑物だ。
対して俺はどうか。
俺は単に王家に産まれただけの男だ。
もちろんこれまで努力をして来た。
剣を振るい、魔法を学び、学問を修めた。
しかし、それはどこまで行っても凡人のそれでしかない。
天才である彼女はあらゆる物を手に入れられる。
交易が盛んな領地、巨大な商会を持つ彼女なら、手に入らない物は無いだろう。
では、凡人に過ぎない俺が彼女にあげられるものは何か?
平凡な頭を絞って考えたのだ。
彼女の為に汗を流して手に入れたプレゼントは彼女がどんな手を使っても、自力で手に入れる事は出来ないのではないかと。
1日目、食堂での皿洗い
「おい! レーオ! まだ洗い終わらねぇのか! 」
「済みません!」
2日目、荷運び
「わっ、とっと」
「馬鹿やろぉ! しっかり持ちやがれ!」
3日目、ドブ掃除
「はぁ、はぁ、金を稼ぐのがこんなにも大変だとは……だが、シアの為に……もう少しだ!」
4日目、再び食堂
「おうレーオ、ご苦労だったな。
ほら、給金だ。
お前は真面目に働いてくれたからな。
少しだか色を付けておいたぞ」
「え、良いのですか?」
「ああ、そいつは俺がお前を認めた証だからな。
それで良いものを買ってやれ」
「な、なぜ⁉︎」
「がっはっは、分かるさ。
長年、食堂で人を見て来たんだからな。
立ち振る舞いや言動をみればわかる。
お前、かなり裕福な家の出だろ?
そんなボンボンが親の力を借りず、額に汗して金が欲しいなんて、女に決まってんだろ。頑張れよ、青年」
「は、はい。ありがとうございます」
最後の休日、今日はシアの誕生日だ。
寮ではマーリンやアル、クルス達がパーティの準備をしているだろう。
本来なら公爵家の令嬢である彼女の誕生日は領地で盛大に祝われる事だろう。
しかし、シアは俺と共に学院に残ると言ってくれたのだ。
だから俺達で盛大に祝ってやるのだ。
俺は目をつけていた行商人を探す。
数日前、アルやクルスと街を歩いていてまたまた見つけたのだ。
行商人に聞くとまだ数日は王都に留まり、商売をすると言っていた。
そこで俺はソレを取り置いて貰えるように頼み込み、急ぎ金を用意したのだ。
行商人を見つけた俺はマーリンに借りた偽りの指環を外し、自分が作った偽りの指環に付け替えると以前と同じ場所で商品を広げていた露店の主人に声をかける。
「ロキ殿!」
「おや、いらっしゃいませ。
例の物ですね」
「ああ、待たせて済まない」
「いえいえ、どうぞ、こちらです」
俺はこの数日、懸命に稼いだお金を支払い、目を付けていた物を受け取る。
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