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公爵家編
公爵庶子リリアの敗北宣言
「ねぇ、サラ」
その日の夜、私はお父様とお母様が自室に引っ込んだのを確認して、私に付けられた侍女の声を掛けた。
いつも通り坦々と返事を返す侍女。この無機質な態度が一流の侍女なのだろうと、喜んでいたが改めて観察すると、彼女は私を監視して評価する採点者だったのだろうと気付いた。
唾を飲み込み意を決してサラにソフィアお姉様に会いたいと頼んだ。
するとサラは確認を取る事すらなく、私をソフィアお姉様の居場所に案内してくれた。
この事で私は確信を強める。
初めから私がこうしてソフィアお姉様に接触しようとする事は想定されていたと言う事なのだろう。
サラに連れて行かれたのは当主の執務室だった。
私は此処でお父様が仕事をしているのだと思っていたが、実際にはソフィアお姉様が全ての仕事をしていたのだろう。
サラがノックをして私の来訪を告げると、入室を許可する声が聞こえた。
扉を開いてくれたサラの横から叩き込まれたマナーにを駆使しながら執務室に入った。
部屋の中は両側の資料がぎっしり詰まった棚と、書類が山積みにされた机、小さな応接セットがあるだけのシンプルな部屋だった。
机に座り、書類に埋もれる様にしながらペンを動かしていたお姉様がこちらに視線を向けてニコリと花が咲いた様に笑った。
「どうしたのかしら、リリア。こんな時間に?」
「こんばんわ、お姉様。お約束もなく申し訳ありません」
「良いのよ。こちらにいらっしゃい」
「はい」
私が近くと、ソフィアお姉様は手にしていた書類を机に置いた。
その書類はお母様の身辺調査書の様だ。これも私にわざと見える様に置いたのだろう。
「お姉様、先ずはこちらを」
私が差し出したのは先日お母様が奪ったソフィアお姉様のブローチだ。
「あら、貴女はそれが欲しかったのではなかったの?」
「いいえ、私がお母様にお姉様の素敵なブローチのお話をしてしまった事で、お母様が大変失礼な事をしてしまいました。申し訳有りません」
私が差し出したブローチを受け取ったソフィアお姉様は、私に目をじっと見ると『ふぅ』と短く息を吐いた。
すると今までの柔らかい雰囲気が一変し、鋭く研ぎ澄まされた刃の様な気配に変わった。
「貴女はこの家の次期当主になると言っているようだけど?」
ゾワリと背筋が震え、冷や汗が背中を流れた。
ソフィアお姉様は、今まで抑えていた魔力を私でも感じる様に放ったのだ。
「も、申し訳有りませんでした」
私はすぐさま頭を下げて謝った。
多少、様子を伺おうと思っていたが即降参だ。勝ち目なんてない。
立場としてもだけれど、こうして正面から相対して改めてそう思った。
家庭教師に魔法を習い始めた事で、ようやく私はソフィアお姉様が魔導士としてどれ程格上だったのかにも気が付いた。ようやく生活魔法意外の魔法を練習し始めた私など、指の一振りで殺される。
「お、お父様に次期当主にしてやると言われて舞い上がってしまいました。しかし私に公爵家の継承権が無い事は既に理解しています。私にはお姉様と敵対する意思は有りません」
「…………どうやら自分の置かれている状況を理解する程度の頭は有るようね」
「頭を上げなさい」と言う言葉に恐る恐る顔を上げると、魔力を抑えて気配を柔らかくしたソフィアお姉様は何度か頷く。
「良いでしょう。私の采配に従うと言うなら、貴女は今後も私の可愛い妹として扱いましょう。
将来の事も心配しないで良いわ。私が貴女に相応しい婚姻を用意しましょう。今後もしっかりと励みなさい」
「は、はい! ありがとうございます、お姉様」
こえぇぇ!
私に相応しい相手って事は、私が役に立たないと判断したら適当な相手に嫁がせるって事でしょ?
頑張ります! 頑張りますから、何卒まともな縁談を!
その日の夜、私はお父様とお母様が自室に引っ込んだのを確認して、私に付けられた侍女の声を掛けた。
いつも通り坦々と返事を返す侍女。この無機質な態度が一流の侍女なのだろうと、喜んでいたが改めて観察すると、彼女は私を監視して評価する採点者だったのだろうと気付いた。
唾を飲み込み意を決してサラにソフィアお姉様に会いたいと頼んだ。
するとサラは確認を取る事すらなく、私をソフィアお姉様の居場所に案内してくれた。
この事で私は確信を強める。
初めから私がこうしてソフィアお姉様に接触しようとする事は想定されていたと言う事なのだろう。
サラに連れて行かれたのは当主の執務室だった。
私は此処でお父様が仕事をしているのだと思っていたが、実際にはソフィアお姉様が全ての仕事をしていたのだろう。
サラがノックをして私の来訪を告げると、入室を許可する声が聞こえた。
扉を開いてくれたサラの横から叩き込まれたマナーにを駆使しながら執務室に入った。
部屋の中は両側の資料がぎっしり詰まった棚と、書類が山積みにされた机、小さな応接セットがあるだけのシンプルな部屋だった。
机に座り、書類に埋もれる様にしながらペンを動かしていたお姉様がこちらに視線を向けてニコリと花が咲いた様に笑った。
「どうしたのかしら、リリア。こんな時間に?」
「こんばんわ、お姉様。お約束もなく申し訳ありません」
「良いのよ。こちらにいらっしゃい」
「はい」
私が近くと、ソフィアお姉様は手にしていた書類を机に置いた。
その書類はお母様の身辺調査書の様だ。これも私にわざと見える様に置いたのだろう。
「お姉様、先ずはこちらを」
私が差し出したのは先日お母様が奪ったソフィアお姉様のブローチだ。
「あら、貴女はそれが欲しかったのではなかったの?」
「いいえ、私がお母様にお姉様の素敵なブローチのお話をしてしまった事で、お母様が大変失礼な事をしてしまいました。申し訳有りません」
私が差し出したブローチを受け取ったソフィアお姉様は、私に目をじっと見ると『ふぅ』と短く息を吐いた。
すると今までの柔らかい雰囲気が一変し、鋭く研ぎ澄まされた刃の様な気配に変わった。
「貴女はこの家の次期当主になると言っているようだけど?」
ゾワリと背筋が震え、冷や汗が背中を流れた。
ソフィアお姉様は、今まで抑えていた魔力を私でも感じる様に放ったのだ。
「も、申し訳有りませんでした」
私はすぐさま頭を下げて謝った。
多少、様子を伺おうと思っていたが即降参だ。勝ち目なんてない。
立場としてもだけれど、こうして正面から相対して改めてそう思った。
家庭教師に魔法を習い始めた事で、ようやく私はソフィアお姉様が魔導士としてどれ程格上だったのかにも気が付いた。ようやく生活魔法意外の魔法を練習し始めた私など、指の一振りで殺される。
「お、お父様に次期当主にしてやると言われて舞い上がってしまいました。しかし私に公爵家の継承権が無い事は既に理解しています。私にはお姉様と敵対する意思は有りません」
「…………どうやら自分の置かれている状況を理解する程度の頭は有るようね」
「頭を上げなさい」と言う言葉に恐る恐る顔を上げると、魔力を抑えて気配を柔らかくしたソフィアお姉様は何度か頷く。
「良いでしょう。私の采配に従うと言うなら、貴女は今後も私の可愛い妹として扱いましょう。
将来の事も心配しないで良いわ。私が貴女に相応しい婚姻を用意しましょう。今後もしっかりと励みなさい」
「は、はい! ありがとうございます、お姉様」
こえぇぇ!
私に相応しい相手って事は、私が役に立たないと判断したら適当な相手に嫁がせるって事でしょ?
頑張ります! 頑張りますから、何卒まともな縁談を!
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