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お義母様のお願い
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「お願いというのは、カミラのことです」
「カミラのこと、でございますか……」
なんだろう。そう思いながら私は昨日も会ったカミラを思い浮かべる。
優しくて可愛い私の天使。
「あなたがとてもよくしてくれていると、カミラから聞いております」
私がカミラに会いに行くときにお義母様に会うことはないけど、お義母様もちゃんとカミラに会いに行っているんだ。……そっか、カミラはあそこで一人寂しい思いをしているわけじゃないんだね。よかった。
「カミラはエレナをとても慕っております。そこでお願いしたいのです」
「はい、なんでしょう」
「どうか、カミラを外へ連れ出してはもらえませんか?」
ああ、なるほど。お義母様でもカミラを外に連れ出すのは無理なんだ。
私が散歩に誘っても嫌がったカミラ。正直、お義母様のお願いでも私にできるかは分からない。
お義母様の顔にいつもの余裕そうな笑みはない。そこにはただ、娘を心配する母親がいた。
……そんな顔をされたらできないなんて言えないよ。
「はい、精一杯努力いたします」
そう言うと、お義母様は明らかに安心したような表情を浮かべた。だけど、その表情をすぐに曇る。
「……エレナ、わたくし、あなたに謝らないといけません」
お義母様が私に謝る!? 何々、そんな謝られるような心当たりないよ! いや、待てよ、本物のエレナならあるかも……?
お義母様、それ多分私じゃないです。そう思ってもまさか口に出せるはずもなく、私は首を傾げるだけにしておいた。
ごめん、エレナ。代わりに私が聞いておくから! 本物のエレナに謝っておく。
「わたくし、エレナにカミラがいじめられることを、心配していたのです。本当にごめんなさい」
「顔を上げてくださいませ……!」
あわあわと手を振って頭を下げるお義母様に顔を上げてもらうようにお願いをする。
だけどお義母様は顔を上げない。
ええー……これどうするのよ。
アリアも他のメイドさん達も驚いているのが見える。なんか、私が悪いみたいじゃない。
「お義母様、わたくしもお義母様の立場なら同じように思うと思いますわ。だって、カミラはあんなにも可愛いんですもの。嫉妬で誰かにいじめられる心配はとてもよく分かりますわ」
アリアが言ったように、お義母様が心配していたのは母親同士の身分のせいでいじめられることだろう。だけど、それを、お義母様よりも下の私が言うのは、お義母様のプライドが傷付くだろうし、何より失礼だ。
お義母様にはそれが伝わったのか、とても柔らかい表情を浮かべた。
「エレナはとても優しいのですね」
いえ、お義母様の教育です。
言葉を飲み込み、何も言わずに笑う。
しかしお義母様は再び表情を曇らせた。
「実は、カミラが外に出られなくなってしまったのはわたくしに原因がありますの」
「お義母様に、でしょうか?」
「ええ、わたくしもカミラと同じような立場でしたの」
曰く、お義母様のお母さんも後妻で、もっと身分の高かった前妻の子である兄や姉にひどい扱いを受けた。そこで、同じ環境で育つカミラは私達に接触しないよう、別館で育て、外は怖いところだと教えたらしい。
なるほど、お義母様自身がそんな環境で育ったなら警戒するのも当たり前よね。
「幸運にもあの子は姉であるエレナに可愛がられ、とても慕っております。本当に、エレナには感謝していますわ」
「いえ、感謝なんてそんな……可愛い妹ですもの」
本当に本当に可愛い妹だ。いじめるなんて絶対にしないし、そんなことをする人は私が許さない。
私の言葉にお義母様の表情が少し緩んだ。
「ありがとう。わたくしの心配は杞憂でしたわね。ですから、カミラには外へ出て欲しいのです」
「はい、わたくしもカミラと外をお散歩出来たらどんなに楽しいかと、常々思っております」
本を読むのもいい。だけど、外に出て健康的な生活を送ってほしい。
「わたくし、お義母様のためにも、カミラのためにも精一杯頑張りますわ!」
私がそう宣言すると、お義母様は嬉しそうに笑ってくれた。
話が終わると、私はお義母様の部屋を辞し、自分の部屋へと戻った。
「アリア、聞いたわよね!? わたくし、お義母様に褒められましたわ!」
部屋に入って真っ先にそう言うと、アリアは呆れたように笑った。
「ええ、エレナ様の上達具合には目を見張るものがあります。ですが、大きな声を出すのはあまり褒められたものではありませんよ」
褒めた後に注意するのはやめて欲しい。
「アリアは知っているでしょ。私が本物のエレナじゃないこと。二人の時くらいはいいじゃない」
愛玲奈の時の口調で文句を言うが、アリアは困った顔をしただけで注意をすることはなかった。
というか、なんか、違和感が……。
ここ最近、言葉遣いに関しても厳しく注意されたからか、言葉遣いを崩すと、違和感と罪悪感がすごかった。
「ごめんなさい、アリア。今のわたくしにはこちらの方があっているみたいだわ」
「それはよかったです」
「ところで、カミラに外に出てもらうにはどうしたらいいかしら?」
一応アリアに意見を求めてみるが、二人してさっぱり思い浮かばない。
これは難題になりそうだ。私は思っているよりもずっと難しいことを頼まれたことにようやく気が付いた。
「時間をかけて頑張ってみるしかなさそうね」
思わずため息が出てしまった。
「カミラのこと、でございますか……」
なんだろう。そう思いながら私は昨日も会ったカミラを思い浮かべる。
優しくて可愛い私の天使。
「あなたがとてもよくしてくれていると、カミラから聞いております」
私がカミラに会いに行くときにお義母様に会うことはないけど、お義母様もちゃんとカミラに会いに行っているんだ。……そっか、カミラはあそこで一人寂しい思いをしているわけじゃないんだね。よかった。
「カミラはエレナをとても慕っております。そこでお願いしたいのです」
「はい、なんでしょう」
「どうか、カミラを外へ連れ出してはもらえませんか?」
ああ、なるほど。お義母様でもカミラを外に連れ出すのは無理なんだ。
私が散歩に誘っても嫌がったカミラ。正直、お義母様のお願いでも私にできるかは分からない。
お義母様の顔にいつもの余裕そうな笑みはない。そこにはただ、娘を心配する母親がいた。
……そんな顔をされたらできないなんて言えないよ。
「はい、精一杯努力いたします」
そう言うと、お義母様は明らかに安心したような表情を浮かべた。だけど、その表情をすぐに曇る。
「……エレナ、わたくし、あなたに謝らないといけません」
お義母様が私に謝る!? 何々、そんな謝られるような心当たりないよ! いや、待てよ、本物のエレナならあるかも……?
お義母様、それ多分私じゃないです。そう思ってもまさか口に出せるはずもなく、私は首を傾げるだけにしておいた。
ごめん、エレナ。代わりに私が聞いておくから! 本物のエレナに謝っておく。
「わたくし、エレナにカミラがいじめられることを、心配していたのです。本当にごめんなさい」
「顔を上げてくださいませ……!」
あわあわと手を振って頭を下げるお義母様に顔を上げてもらうようにお願いをする。
だけどお義母様は顔を上げない。
ええー……これどうするのよ。
アリアも他のメイドさん達も驚いているのが見える。なんか、私が悪いみたいじゃない。
「お義母様、わたくしもお義母様の立場なら同じように思うと思いますわ。だって、カミラはあんなにも可愛いんですもの。嫉妬で誰かにいじめられる心配はとてもよく分かりますわ」
アリアが言ったように、お義母様が心配していたのは母親同士の身分のせいでいじめられることだろう。だけど、それを、お義母様よりも下の私が言うのは、お義母様のプライドが傷付くだろうし、何より失礼だ。
お義母様にはそれが伝わったのか、とても柔らかい表情を浮かべた。
「エレナはとても優しいのですね」
いえ、お義母様の教育です。
言葉を飲み込み、何も言わずに笑う。
しかしお義母様は再び表情を曇らせた。
「実は、カミラが外に出られなくなってしまったのはわたくしに原因がありますの」
「お義母様に、でしょうか?」
「ええ、わたくしもカミラと同じような立場でしたの」
曰く、お義母様のお母さんも後妻で、もっと身分の高かった前妻の子である兄や姉にひどい扱いを受けた。そこで、同じ環境で育つカミラは私達に接触しないよう、別館で育て、外は怖いところだと教えたらしい。
なるほど、お義母様自身がそんな環境で育ったなら警戒するのも当たり前よね。
「幸運にもあの子は姉であるエレナに可愛がられ、とても慕っております。本当に、エレナには感謝していますわ」
「いえ、感謝なんてそんな……可愛い妹ですもの」
本当に本当に可愛い妹だ。いじめるなんて絶対にしないし、そんなことをする人は私が許さない。
私の言葉にお義母様の表情が少し緩んだ。
「ありがとう。わたくしの心配は杞憂でしたわね。ですから、カミラには外へ出て欲しいのです」
「はい、わたくしもカミラと外をお散歩出来たらどんなに楽しいかと、常々思っております」
本を読むのもいい。だけど、外に出て健康的な生活を送ってほしい。
「わたくし、お義母様のためにも、カミラのためにも精一杯頑張りますわ!」
私がそう宣言すると、お義母様は嬉しそうに笑ってくれた。
話が終わると、私はお義母様の部屋を辞し、自分の部屋へと戻った。
「アリア、聞いたわよね!? わたくし、お義母様に褒められましたわ!」
部屋に入って真っ先にそう言うと、アリアは呆れたように笑った。
「ええ、エレナ様の上達具合には目を見張るものがあります。ですが、大きな声を出すのはあまり褒められたものではありませんよ」
褒めた後に注意するのはやめて欲しい。
「アリアは知っているでしょ。私が本物のエレナじゃないこと。二人の時くらいはいいじゃない」
愛玲奈の時の口調で文句を言うが、アリアは困った顔をしただけで注意をすることはなかった。
というか、なんか、違和感が……。
ここ最近、言葉遣いに関しても厳しく注意されたからか、言葉遣いを崩すと、違和感と罪悪感がすごかった。
「ごめんなさい、アリア。今のわたくしにはこちらの方があっているみたいだわ」
「それはよかったです」
「ところで、カミラに外に出てもらうにはどうしたらいいかしら?」
一応アリアに意見を求めてみるが、二人してさっぱり思い浮かばない。
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思わずため息が出てしまった。
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