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お兄様と私
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「アリア、早く行きましょう!」
昼食が終わってそわそわとする私と反対に、アリアはずっと浮かない表情だ。
上のお兄様が帰って来るって聞いてからだから、きっとそのせいだよね。
私はため息をついて、アリアを見た。
「アリア、上のお兄様のことを聞かせてちょうだい」
「あ、そうですね、エレナ様にお話ししなければいけませんでしたね」
アリアはハッとして顔を上げたが、依然、表情は暗いまま。
何、怖い人なの? それともアリアと個人的に何かあったとか?
伯爵子息とそのメイドの禁断の恋! とか!?
一気にテンションが上がって来た。
だってエレナには一年前から仕えているって言ってたよね? じゃあその前にお兄様に仕えていたとしても不思議じゃないじゃない!
やばい、これきたんじゃない!?
ふおおぉぉぉ!
「エレナ様、お顔に出ておられますよ」
アリアはジトっとした目で私を見て、ため息をついた。
あ、出てた? やばいやばい、抑えなきゃ。
「どうも斜め上の方向に勘違いされておられるようですが、そのような事実は全くございません」
きっぱりと言い切られた。そっか、ちょっと残念。だけどアリアが泣かされたわけじゃなくて良かった。
「お名前はヘンドリック様、エレナ様の五つ上でございます」
ほうほう、ヘンドリックお兄様ね。私の五つ上ってことは今十三歳か。まだ子供じゃん。
「私はエレナ様の前にヘンドリック様に仕えておりましたが、とても優秀な方でした」
ヘンドリックお兄様に仕えていたのは私の想像通りだった。
それにしてもアリアはエレナも優秀だったって言ってたけど、兄妹そろって優秀揃い? それともアリアが甘いだけ?
「エレナ様の場合は、記憶力がすごかったのですが、ヘンドリック様は頭の回転が速く、賢い方です」
なるほど、記憶力が。だから私も色々覚えられるのかな? 体は元のエレナなんだし。
「それで、どうしてアリアはそんなに浮かない顔をしているの?」
ヘンドリックお兄様が優秀だったのも、前にアリアがそこにいたのも分かった。
だけど、それなら帰って来るならアリアにとっては嬉しいはずじゃないの? 前の主ってことでしょ?
アリアは私の言葉に深くため息をついた。
「ヘンドリック様は女性嫌いでございます」
「女性嫌い? もしかしていじめられたとか?」
それは大変だ! 私のアリアをいじめたなら報復しなければ!
身を乗り出した私をそっとたしなめる。おお、さすができるメイド。気分が落ち込んでいてもしっかり仕事はこなすね。
「いいえ、私ではありません。私はお仕えしてはおりましたが、そんなに接することもなく、そのようなことはありませんでした。いじめられていたのは私ではなくエレナ様です」
うん? エレナ? って私?
私実のお兄様にいじめられていたの? まじか……。
がっくりと肩を落とすと、アリアが心配そうに私を見た。
お義母様との関係もいい感じだし、カミラとも仲良しだし、家族仲の問題はクリアしたと思ったのに、こんなところに伏兵がいるなんて……。
「ヘンドリック様がどうしてエレナ様に特別厳しい態度をとられるのかは分かりません。去年までは長期休暇でも帰って来られなかったので、今年もてっきり……」
そう言って俯くアリアは私よりもずっと落ち込んでいるように見えた。
アリアがいじめられたわけじゃないんだからそんなに落ち込まないでよ。そう言いたいけど、言ったって無駄だろうから言わない。
だけどアリアが私を心配して自分のことのように落ち込んでくれるのは、なんだかすごく嬉しかった。
「わたくしは気にしませんわよ。長期休暇ってふた月でしょう? そのくらい平気です。わたくし、以前は神経が図太いと皆から言われてましたもの」
胸を張ってそう言うと、アリアは可笑しそうに笑った。
いじめるって言っても別に暴力を振るわれるわけではないだろう。
……うん、大丈夫だよね。
ヘンドリックお兄様の話はとりあえず置いておいて、私はアリアと一緒に館の裏にある訓練場へと足を運んだ。
こんなところにあったんだ。
普段は館の裏に来ることがなく、こんなところに訓練場が合ったなんて知らなかった。
そこは綺麗に整備されていて、テニスコートくらいの大きさだった。木の人形が隅の方にいくつか立っている。
すごい、想像通りの訓練場だ。
「エレナ、待たせたね」
私があちこちを見て回っていると、後ろから声がかけられた。
おっと、令嬢らしくしないといけない。慌てて姿勢を正し、クルトお兄様の方を向くと、クルトお兄様は先ほどとは違い、動きやすそうな服に着替えていた。
後ろに立っている強そうなおじさまの手には木剣が二本握られている。
「クルトお兄様、頑張ってくださいませ」
私はそれだけ言うと、訓練場が見えるように置かれたベンチに座って訓練の様子を眺める。
アリアは私の横に立って見ている。座ればいいのに、と思うけど、アリアに行ってしまうときっと「令嬢らしくない」と言われるので言わない。
お兄様とおじさまはお互いに剣を持って打ち合っている。
その音は私が思っていたよりも重く、すごくテンションがあがってきた。
やばい、超かっこいいんだけど……。
まさか自分よりも年下の男の子にときめく日がくるなんて思わなかった。
クルトお兄様はしばらくの間お稽古をすると、私の方へとやってきた。
「すごくかっこよかったですわ!」
「ありがとう」
近くで見るとすごく汗をかいている。こんな暑い中あんなにも動いたらそりゃ汗もかくよ。
水分補給をしないと倒れちゃうんじゃない?
そう思って周りを見てみるが、誰もお水を持ってこない。
「アリア、お兄様にお水を持って来てちょうだい。こんなに汗をかいたら倒れちゃうわ」
私の言葉にアリアはすぐにお水を取りに行ってくれた。
お兄様の側仕えはいないのかな?
思えばここに来た時もお兄様はお稽古のおじさましか連れていなかった。
「心配してくれてありがとう、エレナ」
「いいえ、当然のことですわ。アリアが戻ってくるまで座って休憩をしてくださいませ」
先ほどまで座っていたベンチに座るように勧めるとお兄様は座った。
そして、爽やかな笑みを浮かべる。
「エレナは本当に変わったね」
その言葉になんと返せばいいのか、アリアのいないこの場では分からず、私は曖昧に笑っておくだけにしておいた。
昼食が終わってそわそわとする私と反対に、アリアはずっと浮かない表情だ。
上のお兄様が帰って来るって聞いてからだから、きっとそのせいだよね。
私はため息をついて、アリアを見た。
「アリア、上のお兄様のことを聞かせてちょうだい」
「あ、そうですね、エレナ様にお話ししなければいけませんでしたね」
アリアはハッとして顔を上げたが、依然、表情は暗いまま。
何、怖い人なの? それともアリアと個人的に何かあったとか?
伯爵子息とそのメイドの禁断の恋! とか!?
一気にテンションが上がって来た。
だってエレナには一年前から仕えているって言ってたよね? じゃあその前にお兄様に仕えていたとしても不思議じゃないじゃない!
やばい、これきたんじゃない!?
ふおおぉぉぉ!
「エレナ様、お顔に出ておられますよ」
アリアはジトっとした目で私を見て、ため息をついた。
あ、出てた? やばいやばい、抑えなきゃ。
「どうも斜め上の方向に勘違いされておられるようですが、そのような事実は全くございません」
きっぱりと言い切られた。そっか、ちょっと残念。だけどアリアが泣かされたわけじゃなくて良かった。
「お名前はヘンドリック様、エレナ様の五つ上でございます」
ほうほう、ヘンドリックお兄様ね。私の五つ上ってことは今十三歳か。まだ子供じゃん。
「私はエレナ様の前にヘンドリック様に仕えておりましたが、とても優秀な方でした」
ヘンドリックお兄様に仕えていたのは私の想像通りだった。
それにしてもアリアはエレナも優秀だったって言ってたけど、兄妹そろって優秀揃い? それともアリアが甘いだけ?
「エレナ様の場合は、記憶力がすごかったのですが、ヘンドリック様は頭の回転が速く、賢い方です」
なるほど、記憶力が。だから私も色々覚えられるのかな? 体は元のエレナなんだし。
「それで、どうしてアリアはそんなに浮かない顔をしているの?」
ヘンドリックお兄様が優秀だったのも、前にアリアがそこにいたのも分かった。
だけど、それなら帰って来るならアリアにとっては嬉しいはずじゃないの? 前の主ってことでしょ?
アリアは私の言葉に深くため息をついた。
「ヘンドリック様は女性嫌いでございます」
「女性嫌い? もしかしていじめられたとか?」
それは大変だ! 私のアリアをいじめたなら報復しなければ!
身を乗り出した私をそっとたしなめる。おお、さすができるメイド。気分が落ち込んでいてもしっかり仕事はこなすね。
「いいえ、私ではありません。私はお仕えしてはおりましたが、そんなに接することもなく、そのようなことはありませんでした。いじめられていたのは私ではなくエレナ様です」
うん? エレナ? って私?
私実のお兄様にいじめられていたの? まじか……。
がっくりと肩を落とすと、アリアが心配そうに私を見た。
お義母様との関係もいい感じだし、カミラとも仲良しだし、家族仲の問題はクリアしたと思ったのに、こんなところに伏兵がいるなんて……。
「ヘンドリック様がどうしてエレナ様に特別厳しい態度をとられるのかは分かりません。去年までは長期休暇でも帰って来られなかったので、今年もてっきり……」
そう言って俯くアリアは私よりもずっと落ち込んでいるように見えた。
アリアがいじめられたわけじゃないんだからそんなに落ち込まないでよ。そう言いたいけど、言ったって無駄だろうから言わない。
だけどアリアが私を心配して自分のことのように落ち込んでくれるのは、なんだかすごく嬉しかった。
「わたくしは気にしませんわよ。長期休暇ってふた月でしょう? そのくらい平気です。わたくし、以前は神経が図太いと皆から言われてましたもの」
胸を張ってそう言うと、アリアは可笑しそうに笑った。
いじめるって言っても別に暴力を振るわれるわけではないだろう。
……うん、大丈夫だよね。
ヘンドリックお兄様の話はとりあえず置いておいて、私はアリアと一緒に館の裏にある訓練場へと足を運んだ。
こんなところにあったんだ。
普段は館の裏に来ることがなく、こんなところに訓練場が合ったなんて知らなかった。
そこは綺麗に整備されていて、テニスコートくらいの大きさだった。木の人形が隅の方にいくつか立っている。
すごい、想像通りの訓練場だ。
「エレナ、待たせたね」
私があちこちを見て回っていると、後ろから声がかけられた。
おっと、令嬢らしくしないといけない。慌てて姿勢を正し、クルトお兄様の方を向くと、クルトお兄様は先ほどとは違い、動きやすそうな服に着替えていた。
後ろに立っている強そうなおじさまの手には木剣が二本握られている。
「クルトお兄様、頑張ってくださいませ」
私はそれだけ言うと、訓練場が見えるように置かれたベンチに座って訓練の様子を眺める。
アリアは私の横に立って見ている。座ればいいのに、と思うけど、アリアに行ってしまうときっと「令嬢らしくない」と言われるので言わない。
お兄様とおじさまはお互いに剣を持って打ち合っている。
その音は私が思っていたよりも重く、すごくテンションがあがってきた。
やばい、超かっこいいんだけど……。
まさか自分よりも年下の男の子にときめく日がくるなんて思わなかった。
クルトお兄様はしばらくの間お稽古をすると、私の方へとやってきた。
「すごくかっこよかったですわ!」
「ありがとう」
近くで見るとすごく汗をかいている。こんな暑い中あんなにも動いたらそりゃ汗もかくよ。
水分補給をしないと倒れちゃうんじゃない?
そう思って周りを見てみるが、誰もお水を持ってこない。
「アリア、お兄様にお水を持って来てちょうだい。こんなに汗をかいたら倒れちゃうわ」
私の言葉にアリアはすぐにお水を取りに行ってくれた。
お兄様の側仕えはいないのかな?
思えばここに来た時もお兄様はお稽古のおじさましか連れていなかった。
「心配してくれてありがとう、エレナ」
「いいえ、当然のことですわ。アリアが戻ってくるまで座って休憩をしてくださいませ」
先ほどまで座っていたベンチに座るように勧めるとお兄様は座った。
そして、爽やかな笑みを浮かべる。
「エレナは本当に変わったね」
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