池に落ちて乙女ゲームの世界に!?ヒロイン?悪役令嬢?いいえ、ただのモブでした。

紅蘭

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お小言とお願い

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「エレナ様、私は余計なことは言わないように、と申し上げませんでしたか?」


部屋に戻った私はアリアに説教されていた。

こんな風に怒られたことは初めてだ。小言を言われるくらいならあったけど。


「聞いたような気がします。でもまさか今日帰って来るとは思わなかったじゃない?」


怒ったアリアが思った以上に怖くて、言い訳にもならない言い訳をしてみるが、アリアはやっぱり騙されてはくれない。


「明日だったらエレナ様は余計なことを言わなかったのでしょか?」

「ひぃぃぃ、そんなに怒らなくてもいいじゃない!」


私が恐怖でそう叫ぶが、アリアは更に怒ったようで、笑みを深めた。

目が笑ってないよおぉ。


「ごめんなさい、もう余計なことをしないように気を付けるから! そんなに怒らないで!」


涙目で謝る私を見て、アリアは大きなため息をついた。

それで怒っているオーラはほとんど消えた。

よかった、とほっと息をつく。

だけどお小言は続く。私はアリアの小言を聞いているふりをしながら考えた。

それにしてもどうして私はヘンドリックお兄様にあんなにも嫌われているんだろう。

女性嫌いとは言っていたけど、私ってまだ女性なんて言う見た目じゃないよね。子供だし。

……今度本人に聞いてみようかな。嫌われてはいたけど、無視はされてないみたいだし。

さて、次に私が文官科に行く問題。これはお父様の決定だって言っていたし、お父様に直談判しよう。よし、次。

私の剣のお稽古の許可を得る方法。つまり、アリアを説得する方法だ。

かっこいいからって言っても多分ダメっていうだろうし……とういうか、一般的に令嬢って剣のお稽古しないのかな?

令嬢こそ自分の身を守る手段が必要だと思うんだけど。だって、危ないからってお庭よりも外に出ちゃダメなんでしょ?

うん? ということは、自分の身を守れたら外に出ていいってこと? 自分の目でこの世界を見れるってこと?

それはやるしかないでしょ!


「エレナ様はどう思われますか?」

「やっぱりわたくしは剣のお稽古を受けるべきだと思います! ……え?」


勢いよく言ってしまったが、絶対に違う。

やばい、話を聞いていなかったのがばれた……。

思わず頭を抱えてアリアをちら、と見る。

ああああ、怒ってるよおぉぉ。


「必死に守ろうとしたのに、守る対象が自分から危険に近付いた時、エレナ様はどう思われますか?」


決して笑ってはいない笑顔のままアリアが私に言う。

私は小さくなって、小さな声で答えた。


「はい、すごく呆れると思います……」


多分クルトお兄様のことだろう。あの時のクルトお兄様の表情を思い出してそう言うと、アリアは深いため息をついた。


「そうですね、それが分かるのでしたらしっかりとクルト様に謝ってくださいね」

「はい。アリアにも、ごめんなさい。わたくしのことを考えていてくれたのでしょう?」


本当に悪いとは思っている。ヘンドリックお兄様には近づかないように、二人が考えてくれていただろうに、我を忘れてしまったのは私だから。

そしてこれからも同じようなことが起こらないとはいえない。とはいえないから心の中でさらに謝っておく。ごめんねアリア。

アリアは驚いたように私を見て、ふっと笑った。

どうやらもう怒ってはいないようだ。

ふう、どうにか命拾いしたみたい。

私がほっと息をつくと同時にアリアが言った。


「エレナ様は剣のお稽古をしたいのですか?」

「え、ええ……令嬢らしくないからダメかしら?」


聞かなかったことにされたと思っていた私の言葉は、アリアはしっかりと聞いていたようだ。

少し驚きながらも頷く。そしてアリアの言いそうなことを先回りして言ってみる。


「なぜですか?」

「さっきヘンドリックお兄様に押された時にこけてしまったでしょう? わたくしも少しは体を鍛えるべきだと思いましたの。クルトお兄様がすごくかっこよかったっていうのも理由の一つだけれど」

「確かに体を鍛えるべきだというのは納得ができますね……奥様にも許可を求めてみます」


あれ、思ったよりもすんなりだ。お義母様の許可が出ればいいってことだよね?

アリアの許可が出たことに目を丸くしていると、私を見たアリアが言った。


「確かに令嬢らしくはありません。ですが、学校に入って騎士科を選ぶ令嬢もいます。この敷地の中だけのことでしたら、エレナ様の評判にかかわることもないでしょう。それに、エレナ様が本気でしたいとお考えなら私も本気でサポートさせていただきます」


おおおおおおお! アリアかっこいい!

許可なんて下りないだろうからアリアの目を盗んで勝手にバルトルトに教えてもらおうと思っていた私を許して。

口に出したら絶対に怒られるから言わない。私もそこまで馬鹿ではないのだ。


「アリアありがとう! 大好きよ」


そう言うと、アリアが私から視線を逸らした。

耳が赤くなっているわよ、とは言わずに、私は机の上に置いていた本を開いて、自主的に勉強をした。
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