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ヘンドリックとの対決
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クルトお兄様の焦りを含んだ視線と、ヘンドリックお兄様の冷たい視線を受けて、私は聞いた。
別に子供にどんな視線を向けられようが怖くない。だって私、中身は十七歳だし。
「ヘンドリックお兄様、ちょっとお聞きしたいのですが、どうしてわたくしは騎士科を選んでも剣のお稽古ができないのでしょうか?」
私の言葉にクルトお兄様の「は?」という間抜けな声が続いた。
ヘンドリックお兄様に向けていた視線をクルトお兄様に向けてみる。
せっかくかっこいいのにそんな間抜けな顔していたらもてないよ。
そう思うと、目が合ったクルトお兄様がにこっと笑って私に言った。
「エレナ、礼儀作法は習ったのに空気を読むということは教えてもらわなかったのかい?」
わお、すごい怒っている。笑顔なのに怒りが伝わってくるよ。
「もちろん教えていただきましたわ。お茶会に置いてとても大事なことだと、お義母様が」
だけどそれはお茶会でよその貴族に対して、の話のはずだ。
今はお茶会ではないし、相手は身内。空気を読む必要が感じられない。
そういうとクルトお兄様は呆れた顔で、ベンチに座り、投げやりな態度で、ヘンドリックお兄様の方を手で示した。
「もういいよ。好きにしてくれ」
よし、許可が下りた。
私は改めてヘンドリックお兄様に向き合った。
「ヘンドリックお兄様、教えてくださいませ」
「簡単なことだ。お前は騎士科を選べない」
私の言葉にヘンドリックお兄様はふん、と馬鹿にしたように鼻を鳴らして言った。
え、え、え、なんですとおおぉぉぉ!
それでは私の思い描いた剣と魔法のファンタジー世界が堪能できない!
「な、なぜですか! もしかして騎士科は殿方しか選べないのですか!?」
思わず取り乱してヘンドリックお兄様に詰め寄ると、お兄様が嫌そうに、私から距離を取るために下がった。
そして、何かを言おうと口を開いた時、私は思い出した。
あれ、確か、この世界って魔法もあったよね。
ゲームのヒロインは、魔法科だったよね。これはもしかするともしかするのかもしれない!
「お前は」
「もしかしてわたくしは魔法科に行くのでしょうか!?」
思わず口をついて出た言葉はヘンドリックお兄様の言葉を遮ってしまった。
だけどそんなこと気にしていられない。ゲームではエレナが何科だったのかは分からなかった。
ヒロインと仲が良かったってことはきっと同じ科だよね!?
というか騎士科と魔法科以外思いつかない。だって剣と魔法のファンタジー世界だよ!
他に選択肢なんてないでしょ!
目を輝かせている私を、ヘンドリックお兄様は変わらず冷たい目で私を見下ろしている。
ほらほら、早くそうだって言ってよ!
「お前が行くのは文官科だ。父上が既に決めている」
「……へ?」
文官科? そんな科あったっけ? 記憶にないよ。
急にテンションが下がって、詰め寄っていたヘンドリックお兄様から離れる。
「お前は父上の決定には逆らわない。だから、お前が行くのは文官科だ。分かったら私に近付くな!」
ヘンドリックお兄様はそれだけ言うと、私を突き飛ばして、早足で館の中に入って行った。
私は勢いでしりもちをつく。いったぁ、酷いお兄様だ。
「エレナ様!」
アリアが慌てて私に駆け寄ってくる。手を借りて立ち上がり、ハッとした。
あ、逃げられた! もっと詳しく聞きたかったのに!
まあ嫌われているから仕方ないか。
そう思って振り返ると、クルトお兄様がすごい顔をしていた。……ドン引かれている。
アリアはと、視線を向けるとにっこりと笑顔を浮かべていた。が、目が笑っていない。
ひぃ、怒られる!
「お怪我はありませんか?」
「は、はい、大丈夫です……」
とても心配している声色には聞こえない。
アリアはため息をついて、口を開こうとした。私はその前に慌てて言う。
「アリア、お小言はお部屋に戻ってから聞きます」
本当は聞きたくないけど、ここでくどくど言われるよりは、部屋で座って聞く方がましだ。部屋の方が少しは涼しいし。
「クルトお兄様、かばってくださってありがとうございました。すみませんが今日はもうお部屋に戻りますわ」
「あ、ああ」
クルトお兄様が頷いたのを確認して、私は、色々あったというのにまだ素振りをしているバルトルトに近付く。
いや、でかっ! 見上げていると首が痛くなりそうで、しゃがんでもらう。
「バルトルト、わたくしも剣のお稽古がしたいのです。許可が下りたら教えてくれますか?」
アリアから少し距離があることを確認し、こそこそっと言うと、バルトルトはにかっと笑って頷いてくれた。
よし! 師匠ゲット! これで騎士科に入れなくても剣の世界は確保できた。あとは魔法の世界の確保だ。
これはまだ全く心当たりがないけど。だって、さっきまで忘れていたくらい、生活の中に魔法がないのだから。
アリアの機嫌が直ったら聞いてみようかな。
そう思いながら、私は目が笑っていないアリアを連れて部屋へと戻った。
別に子供にどんな視線を向けられようが怖くない。だって私、中身は十七歳だし。
「ヘンドリックお兄様、ちょっとお聞きしたいのですが、どうしてわたくしは騎士科を選んでも剣のお稽古ができないのでしょうか?」
私の言葉にクルトお兄様の「は?」という間抜けな声が続いた。
ヘンドリックお兄様に向けていた視線をクルトお兄様に向けてみる。
せっかくかっこいいのにそんな間抜けな顔していたらもてないよ。
そう思うと、目が合ったクルトお兄様がにこっと笑って私に言った。
「エレナ、礼儀作法は習ったのに空気を読むということは教えてもらわなかったのかい?」
わお、すごい怒っている。笑顔なのに怒りが伝わってくるよ。
「もちろん教えていただきましたわ。お茶会に置いてとても大事なことだと、お義母様が」
だけどそれはお茶会でよその貴族に対して、の話のはずだ。
今はお茶会ではないし、相手は身内。空気を読む必要が感じられない。
そういうとクルトお兄様は呆れた顔で、ベンチに座り、投げやりな態度で、ヘンドリックお兄様の方を手で示した。
「もういいよ。好きにしてくれ」
よし、許可が下りた。
私は改めてヘンドリックお兄様に向き合った。
「ヘンドリックお兄様、教えてくださいませ」
「簡単なことだ。お前は騎士科を選べない」
私の言葉にヘンドリックお兄様はふん、と馬鹿にしたように鼻を鳴らして言った。
え、え、え、なんですとおおぉぉぉ!
それでは私の思い描いた剣と魔法のファンタジー世界が堪能できない!
「な、なぜですか! もしかして騎士科は殿方しか選べないのですか!?」
思わず取り乱してヘンドリックお兄様に詰め寄ると、お兄様が嫌そうに、私から距離を取るために下がった。
そして、何かを言おうと口を開いた時、私は思い出した。
あれ、確か、この世界って魔法もあったよね。
ゲームのヒロインは、魔法科だったよね。これはもしかするともしかするのかもしれない!
「お前は」
「もしかしてわたくしは魔法科に行くのでしょうか!?」
思わず口をついて出た言葉はヘンドリックお兄様の言葉を遮ってしまった。
だけどそんなこと気にしていられない。ゲームではエレナが何科だったのかは分からなかった。
ヒロインと仲が良かったってことはきっと同じ科だよね!?
というか騎士科と魔法科以外思いつかない。だって剣と魔法のファンタジー世界だよ!
他に選択肢なんてないでしょ!
目を輝かせている私を、ヘンドリックお兄様は変わらず冷たい目で私を見下ろしている。
ほらほら、早くそうだって言ってよ!
「お前が行くのは文官科だ。父上が既に決めている」
「……へ?」
文官科? そんな科あったっけ? 記憶にないよ。
急にテンションが下がって、詰め寄っていたヘンドリックお兄様から離れる。
「お前は父上の決定には逆らわない。だから、お前が行くのは文官科だ。分かったら私に近付くな!」
ヘンドリックお兄様はそれだけ言うと、私を突き飛ばして、早足で館の中に入って行った。
私は勢いでしりもちをつく。いったぁ、酷いお兄様だ。
「エレナ様!」
アリアが慌てて私に駆け寄ってくる。手を借りて立ち上がり、ハッとした。
あ、逃げられた! もっと詳しく聞きたかったのに!
まあ嫌われているから仕方ないか。
そう思って振り返ると、クルトお兄様がすごい顔をしていた。……ドン引かれている。
アリアはと、視線を向けるとにっこりと笑顔を浮かべていた。が、目が笑っていない。
ひぃ、怒られる!
「お怪我はありませんか?」
「は、はい、大丈夫です……」
とても心配している声色には聞こえない。
アリアはため息をついて、口を開こうとした。私はその前に慌てて言う。
「アリア、お小言はお部屋に戻ってから聞きます」
本当は聞きたくないけど、ここでくどくど言われるよりは、部屋で座って聞く方がましだ。部屋の方が少しは涼しいし。
「クルトお兄様、かばってくださってありがとうございました。すみませんが今日はもうお部屋に戻りますわ」
「あ、ああ」
クルトお兄様が頷いたのを確認して、私は、色々あったというのにまだ素振りをしているバルトルトに近付く。
いや、でかっ! 見上げていると首が痛くなりそうで、しゃがんでもらう。
「バルトルト、わたくしも剣のお稽古がしたいのです。許可が下りたら教えてくれますか?」
アリアから少し距離があることを確認し、こそこそっと言うと、バルトルトはにかっと笑って頷いてくれた。
よし! 師匠ゲット! これで騎士科に入れなくても剣の世界は確保できた。あとは魔法の世界の確保だ。
これはまだ全く心当たりがないけど。だって、さっきまで忘れていたくらい、生活の中に魔法がないのだから。
アリアの機嫌が直ったら聞いてみようかな。
そう思いながら、私は目が笑っていないアリアを連れて部屋へと戻った。
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