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お義母様の呼び出し
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翌日、朝食を終えて勉強をしていると、珍しくお義母様に呼び出された。
ああ、昨日のカミラのことかな……泣かせちゃったから叱られるかも。お願いも果たせなかったし。
せっかくお義母様とも仲良くなれたと思ったのに、振出しか。
憂鬱な気分でお義母様の部屋へと歩いていると、斜め後ろを歩くアリアから注意された。
「エレナ様、顔をあげてください。奥様に教えていただいたでしょう」
「分かっているわ」
お義母様の部屋の前まで来て、私は大きく深呼吸をした。
よし!
私が背筋を伸ばして顔を上げて微笑むと、アリアがドアを開けてくれた。
「失礼いたします、お義母様。お呼びと伺って参りました」
「ああ、エレナ、わざわざごめんなさいね。座ってちょうだい」
お義母様に促されるまま椅子に座ると、私の正面にお義母様も座った。
……怒ってはいない、よね?
お茶を出される間、ちら、とお義母様の様子を伺って見るが、どうもよく分からない。怒っていないようには見えるけど。
私がお茶に口をつけると、お義母様が口を開いた。
「最近はどうかしら?」
びくっと肩がはねた。
や、やっぱり、カミラのこと……? 言うべきなのかな。でも隠していたってカミラから伝わるだろうし……先に言った方が印象は良いよね。
そんな下心で私は口を開いた。
「申し訳ありません、わたくし、昨日カミラを泣かせてしまいました」
「何があったのか教えていただける?」
怒っているのか怒っていないのかよく分からない表情と声。
私は小さくなって昨日のことを話した。
「というわけで、わたくし、お義母様にお願いされてたにも関わらず、果たせそうにありません。本当に申し訳ありません」
「謝らないでちょうだい」
下げた頭をあげてお義母様を見ると、お義母様は微笑んだ。
怒っては、ないよね……。
ほっとしてお茶に口をつける。
「エレナはよくやってくれました。元々わたくしのせいですもの。カミラのことはわたくしがどうしかします。それより、わたくしのお願いのせいでカミラとの仲が悪くなってしまったのですから、謝るのはわたくしです」
お義母様に頭を下げられて、私は慌てて両手を振った。
いやあぁぁ、頭を下げないで!
私お義母様に頭を下げられるほど偉くないから!!
「とんでもないですわ! わたくしお義母様にお願いされていないくてもきっとカミラを外に連れ出そうとしていましたもの。謝らないでくださいませ」
私がそう言ってもお義母様の表情は暗いままだ。
もう止めて!
さっきから周りのメイドさんたちの視線がすごい。見られているのが分かる。
「そ、そうです! お義母様はどうしてわたくしを呼んだのでしょう!?」
一刻も早く話題を逸らしたくて咄嗟に口から出た言葉だったが、お義母様は「そうだったわね」といつも通りの表情になった。
よかったぁ……。
「来週、お茶会があります。エレナも一緒に行きませんこと?」
「お茶会、ですか……」
「ええ、わたくしのお友達のお招きなのだけれど、内輪のものなので、エレナの初めてのお茶会にはピッタリじゃないかと思いますの」
一応、お義母様は私に行くか行かないかの選択を迫っているようだけど、実際は私に選択肢などない。
お義母様の誘いを断ることは義娘の私にはできないことだ。
「ありがとうございます。ぜひ参加させてくださいませ」
そう言いながら、大きな感情が心の底の方から湧き上がってくるのが分かった。
今にも叫び出しそうなのをこらえるために、膝の上でぎゅっと手を握る。
本来なら、お茶会に誘うのは本当の娘であって、義娘を誘うことはない。だから、私もお義母様に誘われることなんてないとアリアに聞いていた。
だからこの話は本当に嬉しい。
それはつまり、私を公式の場で娘として認めてくれるということだろうから。
義娘としてとても誇らしいし、礼儀作法の弟子としてとても嬉しい。
「じゃあ詳しいことは後でメイドを寄こすわね」
「はい、楽しみにしておりますわ」
お義母様は忙しいだろうから、私は話が終わったらアリアと一緒に部屋に戻った。
「聞きましたよね!? わたくしお茶会に誘われましたわ!!」
アリアが部屋のドアを閉めたのを確認して、私はアリアにこの喜びをぶつける。
アリアも嬉しそうに笑う。
「ええ、本当に喜ばしいことですね」
「やっっったーー!」
気持ちがどうにも抑えられなくて、飛び跳ねる。
頑張ってよかった。本当に窮屈な礼儀作法だけど、頑張ってきてよかった。
「エレナ様、見なかったことにするのはここまでです。これ以上は奥様に言いつけますよ」
アリアの厳しい言葉に私はすぐに背を正した。
これがお義母様に知られたらお茶会の件もなかったことにされてしまう。
「もう少しくらい喜んでもいいじゃない」
「ダメです」
きっぱりとそう言ったアリアの頬も緩んでいる。
アリアも本当に喜んでくれているのが分かって、私は機嫌よく、勉強の続きをするためにペン先をインクにつけた。
ああ、昨日のカミラのことかな……泣かせちゃったから叱られるかも。お願いも果たせなかったし。
せっかくお義母様とも仲良くなれたと思ったのに、振出しか。
憂鬱な気分でお義母様の部屋へと歩いていると、斜め後ろを歩くアリアから注意された。
「エレナ様、顔をあげてください。奥様に教えていただいたでしょう」
「分かっているわ」
お義母様の部屋の前まで来て、私は大きく深呼吸をした。
よし!
私が背筋を伸ばして顔を上げて微笑むと、アリアがドアを開けてくれた。
「失礼いたします、お義母様。お呼びと伺って参りました」
「ああ、エレナ、わざわざごめんなさいね。座ってちょうだい」
お義母様に促されるまま椅子に座ると、私の正面にお義母様も座った。
……怒ってはいない、よね?
お茶を出される間、ちら、とお義母様の様子を伺って見るが、どうもよく分からない。怒っていないようには見えるけど。
私がお茶に口をつけると、お義母様が口を開いた。
「最近はどうかしら?」
びくっと肩がはねた。
や、やっぱり、カミラのこと……? 言うべきなのかな。でも隠していたってカミラから伝わるだろうし……先に言った方が印象は良いよね。
そんな下心で私は口を開いた。
「申し訳ありません、わたくし、昨日カミラを泣かせてしまいました」
「何があったのか教えていただける?」
怒っているのか怒っていないのかよく分からない表情と声。
私は小さくなって昨日のことを話した。
「というわけで、わたくし、お義母様にお願いされてたにも関わらず、果たせそうにありません。本当に申し訳ありません」
「謝らないでちょうだい」
下げた頭をあげてお義母様を見ると、お義母様は微笑んだ。
怒っては、ないよね……。
ほっとしてお茶に口をつける。
「エレナはよくやってくれました。元々わたくしのせいですもの。カミラのことはわたくしがどうしかします。それより、わたくしのお願いのせいでカミラとの仲が悪くなってしまったのですから、謝るのはわたくしです」
お義母様に頭を下げられて、私は慌てて両手を振った。
いやあぁぁ、頭を下げないで!
私お義母様に頭を下げられるほど偉くないから!!
「とんでもないですわ! わたくしお義母様にお願いされていないくてもきっとカミラを外に連れ出そうとしていましたもの。謝らないでくださいませ」
私がそう言ってもお義母様の表情は暗いままだ。
もう止めて!
さっきから周りのメイドさんたちの視線がすごい。見られているのが分かる。
「そ、そうです! お義母様はどうしてわたくしを呼んだのでしょう!?」
一刻も早く話題を逸らしたくて咄嗟に口から出た言葉だったが、お義母様は「そうだったわね」といつも通りの表情になった。
よかったぁ……。
「来週、お茶会があります。エレナも一緒に行きませんこと?」
「お茶会、ですか……」
「ええ、わたくしのお友達のお招きなのだけれど、内輪のものなので、エレナの初めてのお茶会にはピッタリじゃないかと思いますの」
一応、お義母様は私に行くか行かないかの選択を迫っているようだけど、実際は私に選択肢などない。
お義母様の誘いを断ることは義娘の私にはできないことだ。
「ありがとうございます。ぜひ参加させてくださいませ」
そう言いながら、大きな感情が心の底の方から湧き上がってくるのが分かった。
今にも叫び出しそうなのをこらえるために、膝の上でぎゅっと手を握る。
本来なら、お茶会に誘うのは本当の娘であって、義娘を誘うことはない。だから、私もお義母様に誘われることなんてないとアリアに聞いていた。
だからこの話は本当に嬉しい。
それはつまり、私を公式の場で娘として認めてくれるということだろうから。
義娘としてとても誇らしいし、礼儀作法の弟子としてとても嬉しい。
「じゃあ詳しいことは後でメイドを寄こすわね」
「はい、楽しみにしておりますわ」
お義母様は忙しいだろうから、私は話が終わったらアリアと一緒に部屋に戻った。
「聞きましたよね!? わたくしお茶会に誘われましたわ!!」
アリアが部屋のドアを閉めたのを確認して、私はアリアにこの喜びをぶつける。
アリアも嬉しそうに笑う。
「ええ、本当に喜ばしいことですね」
「やっっったーー!」
気持ちがどうにも抑えられなくて、飛び跳ねる。
頑張ってよかった。本当に窮屈な礼儀作法だけど、頑張ってきてよかった。
「エレナ様、見なかったことにするのはここまでです。これ以上は奥様に言いつけますよ」
アリアの厳しい言葉に私はすぐに背を正した。
これがお義母様に知られたらお茶会の件もなかったことにされてしまう。
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