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初めての冬
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「雪! 雪よ! クリス!」
お城へと向かう馬車の中だった。視界をなにかがよぎった気がして、窓の外を見ると、白いものがふわふわと落ちてきていた。
この世界にも雪は降るんだ。てっきりこの世界に冬はないのかと思っていた。だってもう一月だし。夏が終わると、秋が長く、十二月になってもそこまで寒くならないから冬はないのかと思っていた。
最近急に寒くなってきたもんね。
アリアに着せられたもこもこのコートの袖をきゅっと握る。雪が積もったら雪だるまを作りたい。あとはかまくらの中でお餅を焼きたい。……この世界にお餅があるのかは分からないけど。というか、エレナになってお米すら食べたことないな。
……文化の違いは仕方ないし、この世界でばりっばりの和食が出てきたら世界観が壊れるもんね。うん、仕方がない。
「積もるかしら?」
わくわくしてクリスを見ると、クリスは笑った。
「積もらないと思うよ。王都で雪が積もるなんて建国以来一回もないらしいもん」
「やっぱりそうよね。でももしも積もったら一緒に遊びましょう」
王都に雪が積もったことがないのは知っている。だけど、夢を見るくらいは良いだろう。だってまだ子供なんだから。私の言葉に、クリスは可笑しそうに笑った。
「私はいいけど、エレナは怒られるんじゃない?」
「アリアやお義母様には内緒よ」
うちでアリアの目の届かないところはないけど、お城に通っている今ならそれもできる。
令嬢らしい日常も悪くはないけど、たまには息抜きも必要だよ。
お城について、馬車を降りると、馬車の中から見るよりもずっと雪が降っていることが分かった。すごくテンションが上がる。
鼻歌を歌いながら空を見上げてくるくる回る。人目も気にせずに回る。
もっと、もっと降れー!! 雪だるまが作れるくらい、北海道くらい積もれー!
修学旅行で行く予定だった北海道。エレナにならなかったら今はその時期だ。写真で見た北海道の雪を思い浮かべたその時だった。
カッと空が光った。
突然の光に目がちかちかして、下を向く。
やばい、何も見えない……。何、なんか、急に寒くなってきたんだけど。
「今の何っ!?」
クリスの驚いた声が聞こえると同時に、体から力が抜けて立っていられなくなった。
……私やらかしたかもしれない。
「エレナ!」
クリスが駆け寄ってくる気配がする。
「クリス……アリアを呼んで……」
ごめんなさい、アリア。わたくしやってしまいました。反省はしていますの。だからそんなに怒らないでくださいませ。
遠のいていく意識の中で、アリアへの言葉を考え、それから先の記憶はない。
気が付いたらベッドの中だった。それも超豪華な、大きいベッド。
うん、うちじゃないね。お城だね。……雪! 雪はどうなったの!?
靴も履かずに窓に駆け寄る。雪はさっきよりも強く降っていて、窓の外は一面銀世界だった。
……嘘でしょ。寝てたのなんてせいぜい数時間だよね。……止んで、止め!!
空を見上げて雪が止むのを想像してみるが、一向に止まない。
慌ててテーブルに走り、ベルを鳴らした。
アリア、助けて!!
なんでもできて、なんでも知っているアリアにならどうにかできるかもしれない。ベルを持ったまま突っ立ってドアをじっと見つめる。もう一回ベルを鳴らしてしまいそうな手にぐっと力を込めて。
早く、早く来て!
「エレナ様」
ノックと同時にドアが開いて慌てた様子のアリアが入って来た。
この感じだともう分かっているのかな……。
アリアは立っている私を見ると、キッと目を吊り上げた。
「エレナ様、どうして靴を履いていないのですか? 私はそんなことを教えた記憶はございませんが」
「はいっ、ごめんなさい……!」
そこっ!? 今それどころじゃないと思うんだけど!
そう思いながらも怒られると反射で謝ってしまう。私はさっと椅子に座って足を払おうとした。が、その前にアリアが布で拭いてくれた。私の足元に跪いて。
なんか、罪悪感が……。
「……心配、しました」
申し訳なくて、何かを言おうと言葉を探していると、アリアが小さな声で言った。俯いている表情は見えないけど、その声だけで本当に心配してくれたことが分かる。
そうだよね、急に倒れたんだもんね。家を出るときはあんなに元気だったのに。
アリアに靴を履かせてもらい、立ち上がる。
「ごめんなさい。倒れたことも、来てもらったことも、それから……あの……」
なんて言おう……だってまだ確信もないし……。
言葉を探してもごもごしていると、アリアが私の顔を覗き込んだ。真っすぐな目と合う。
「やはり、エレナ様なのですね」
「……多分、そうだと思うわ。だけど、魔法を使おうと思ったわけじゃないの。ただ、もっと雪が降ってくれたら嬉しいなって思っただけ」
段々と声が小さくなっていく。分かっている。これは言い訳だ。魔法を使うつもりがなくても、結果的にそうなってしまったのは変わらない。このままだと本当に北海道みたいになってしまう。
多分これは国の異常事態だ。
「アリア、騒ぎにはなっているのかしら」
「……はい。恐らく、エレナ様が思っている以上に」
「私が倒れた原因は、魔力切れかしら」
他に思い当たることがない。体力も筋力もつけている健康優良児の私が倒れることなんて今まで一度もないから。
アリアは「おそらく」と頷いた。
「ただ、そんな気がしたのでお医者様には診ていただいてはおりません」
アリアナイス!!
だってそんなことしたら私が魔法を使えることがばれるもんね。
……でもそんなことはもう言っていられないかもしれない。
「アリア、このことがばれたらわたくしはどうなるのかしら」
「分かりません。ただ、今まで通りの日常は戻らないかもしれません。……良くも悪くも」
まあそうだよね……とりあえずこれを止めないと。自分の尻ぬぐいはしないといけない。
……大丈夫、切り札はある。
私の光の魔力はこの国にとって重要なもののはずだ。まだヒロインも出てきてないし。
ふーと長く息を吐いて、私は顔を上げた。とりあえず情報収集だ。
にっこりと笑顔を浮かべると同時に、部屋の中にノックの音が響き渡った。
お城へと向かう馬車の中だった。視界をなにかがよぎった気がして、窓の外を見ると、白いものがふわふわと落ちてきていた。
この世界にも雪は降るんだ。てっきりこの世界に冬はないのかと思っていた。だってもう一月だし。夏が終わると、秋が長く、十二月になってもそこまで寒くならないから冬はないのかと思っていた。
最近急に寒くなってきたもんね。
アリアに着せられたもこもこのコートの袖をきゅっと握る。雪が積もったら雪だるまを作りたい。あとはかまくらの中でお餅を焼きたい。……この世界にお餅があるのかは分からないけど。というか、エレナになってお米すら食べたことないな。
……文化の違いは仕方ないし、この世界でばりっばりの和食が出てきたら世界観が壊れるもんね。うん、仕方がない。
「積もるかしら?」
わくわくしてクリスを見ると、クリスは笑った。
「積もらないと思うよ。王都で雪が積もるなんて建国以来一回もないらしいもん」
「やっぱりそうよね。でももしも積もったら一緒に遊びましょう」
王都に雪が積もったことがないのは知っている。だけど、夢を見るくらいは良いだろう。だってまだ子供なんだから。私の言葉に、クリスは可笑しそうに笑った。
「私はいいけど、エレナは怒られるんじゃない?」
「アリアやお義母様には内緒よ」
うちでアリアの目の届かないところはないけど、お城に通っている今ならそれもできる。
令嬢らしい日常も悪くはないけど、たまには息抜きも必要だよ。
お城について、馬車を降りると、馬車の中から見るよりもずっと雪が降っていることが分かった。すごくテンションが上がる。
鼻歌を歌いながら空を見上げてくるくる回る。人目も気にせずに回る。
もっと、もっと降れー!! 雪だるまが作れるくらい、北海道くらい積もれー!
修学旅行で行く予定だった北海道。エレナにならなかったら今はその時期だ。写真で見た北海道の雪を思い浮かべたその時だった。
カッと空が光った。
突然の光に目がちかちかして、下を向く。
やばい、何も見えない……。何、なんか、急に寒くなってきたんだけど。
「今の何っ!?」
クリスの驚いた声が聞こえると同時に、体から力が抜けて立っていられなくなった。
……私やらかしたかもしれない。
「エレナ!」
クリスが駆け寄ってくる気配がする。
「クリス……アリアを呼んで……」
ごめんなさい、アリア。わたくしやってしまいました。反省はしていますの。だからそんなに怒らないでくださいませ。
遠のいていく意識の中で、アリアへの言葉を考え、それから先の記憶はない。
気が付いたらベッドの中だった。それも超豪華な、大きいベッド。
うん、うちじゃないね。お城だね。……雪! 雪はどうなったの!?
靴も履かずに窓に駆け寄る。雪はさっきよりも強く降っていて、窓の外は一面銀世界だった。
……嘘でしょ。寝てたのなんてせいぜい数時間だよね。……止んで、止め!!
空を見上げて雪が止むのを想像してみるが、一向に止まない。
慌ててテーブルに走り、ベルを鳴らした。
アリア、助けて!!
なんでもできて、なんでも知っているアリアにならどうにかできるかもしれない。ベルを持ったまま突っ立ってドアをじっと見つめる。もう一回ベルを鳴らしてしまいそうな手にぐっと力を込めて。
早く、早く来て!
「エレナ様」
ノックと同時にドアが開いて慌てた様子のアリアが入って来た。
この感じだともう分かっているのかな……。
アリアは立っている私を見ると、キッと目を吊り上げた。
「エレナ様、どうして靴を履いていないのですか? 私はそんなことを教えた記憶はございませんが」
「はいっ、ごめんなさい……!」
そこっ!? 今それどころじゃないと思うんだけど!
そう思いながらも怒られると反射で謝ってしまう。私はさっと椅子に座って足を払おうとした。が、その前にアリアが布で拭いてくれた。私の足元に跪いて。
なんか、罪悪感が……。
「……心配、しました」
申し訳なくて、何かを言おうと言葉を探していると、アリアが小さな声で言った。俯いている表情は見えないけど、その声だけで本当に心配してくれたことが分かる。
そうだよね、急に倒れたんだもんね。家を出るときはあんなに元気だったのに。
アリアに靴を履かせてもらい、立ち上がる。
「ごめんなさい。倒れたことも、来てもらったことも、それから……あの……」
なんて言おう……だってまだ確信もないし……。
言葉を探してもごもごしていると、アリアが私の顔を覗き込んだ。真っすぐな目と合う。
「やはり、エレナ様なのですね」
「……多分、そうだと思うわ。だけど、魔法を使おうと思ったわけじゃないの。ただ、もっと雪が降ってくれたら嬉しいなって思っただけ」
段々と声が小さくなっていく。分かっている。これは言い訳だ。魔法を使うつもりがなくても、結果的にそうなってしまったのは変わらない。このままだと本当に北海道みたいになってしまう。
多分これは国の異常事態だ。
「アリア、騒ぎにはなっているのかしら」
「……はい。恐らく、エレナ様が思っている以上に」
「私が倒れた原因は、魔力切れかしら」
他に思い当たることがない。体力も筋力もつけている健康優良児の私が倒れることなんて今まで一度もないから。
アリアは「おそらく」と頷いた。
「ただ、そんな気がしたのでお医者様には診ていただいてはおりません」
アリアナイス!!
だってそんなことしたら私が魔法を使えることがばれるもんね。
……でもそんなことはもう言っていられないかもしれない。
「アリア、このことがばれたらわたくしはどうなるのかしら」
「分かりません。ただ、今まで通りの日常は戻らないかもしれません。……良くも悪くも」
まあそうだよね……とりあえずこれを止めないと。自分の尻ぬぐいはしないといけない。
……大丈夫、切り札はある。
私の光の魔力はこの国にとって重要なもののはずだ。まだヒロインも出てきてないし。
ふーと長く息を吐いて、私は顔を上げた。とりあえず情報収集だ。
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