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試験
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試験会場はとてもシンプルな教室だった。もちろん装飾はおしゃれでそれなりに豪華だけど、机と椅子しか置かれていない。
ここまで案内してくれた先生は私達に自由に座るように言った。え、席自由なの? あっちの世界じゃ受験の席なんて全部決まってたよね。え、いいの?
皆が続々と座っていく中、私も近くの空いていた席に座ると、クリスは私の隣に座った。
よし、これで私の周りはもう空いていない。カイは不服そうな表情を浮かべたが、空いていた一番前の席へと向かった。ため息をつきたい気分だ。
今までは分からなかったけど、こうして外に出てみると分かる。カイは私が思っている以上に私を好いている。というか、懐いている。何をそんなに気に入ったのか、と思う。結局ため息は我慢できなかった。
「試験問題は既に置いてあります。終わった人から教室を出てください。一度席を立つと、もうペンを持ってはいけなません。以上です。どうぞ、始めてください」
……え? 先生出て行っちゃったんだけど。
教室の中には受験生のみが残されていて、試験監督の先生はいない。え、いいの? 誰も教室にいなくていいの?
ポカンとしていると、カリカリとペンの音が聞こえてきた。あ、そっか、もう始めていいんだ。え、っていうか制限時間なし?
とりあえずペンは持ったものの、気になることが多すぎて集中できない。試験においても世界の違いはとても大きい。……時間を言われなかったからできるだけ早く終わらせてしまおう。実は制限時間がありました、なんて冗談じゃない。
問題は基本中の基本で、たまに応用問題があるだけだった。とても簡単で、あっという間に終わってしまった。最後の問題を解き終わって顔を上げると、誰もがまだ手を動かしていた。
その必死な姿を見ていると不安になって来た。え、問題これだけだよね? 私のだけ一枚抜けていたりしないよね? 見直してみても、特に気になるところはない。
……抜けていても私のミスじゃないもん。
できるだけ音を立てずに立ち上がる。できるだけ見ないようにしても、視界が高くなったことで教室の中が良く見えた。
あ、あの子今カンニングした。あっちの子もそうだな。
カンニングした子たちは絶対に受かることはないんだろうなと思う。だってこの世界は魔法が存在しているのだ。試験監督をその教室内に置かなくてもカンニングを見張ることくらいは可能だろう。
まあそんなことは私には関係ない。もう立ち上がった私は教室を出ることしかできないのだから。
一直線に扉へと向かって、開けようと手を伸ばすと、私が触れる前に開いた。
うわ、びっくりした。え、自動ドア? この世界に?
首を傾げて教室から出ると、その扉の向こうに人の姿があることに気が付いた。……だよね、自動ドアなんてないよね。
「お疲れ様でした。この廊下を真っすぐ歩いて、突き当りの部屋へどうぞ」
恐らく生徒だろう。男の子が扉を閉めて、手で行く方向を指し示してくれた。
「はい、ありがとうございます」
言われた方へと歩き、突き当りの部屋の扉を開けると、そこには誰もいなかった。……ここでどうしろと?
椅子とテーブルは用意されている。お茶でも出してくれるのかもしれない。が、誰もいない。途方に暮れて突っ立っていると、扉が空いて誰かが入って来た。
「あら、クルトお兄様?」
「あれ、エレナ。もしかしてもう終わったのかい?」
クルトお兄様は驚いたような表情を浮かべた。そして「どうやってこの部屋に入ったの?」と聞かれた。
どうやっても何も普通に入ったけど……。
「鍵も何もかけられていなかったので普通に入ることはできましたが?」
そう言って気が付いた。そういえば普通の令嬢は自分で扉を開けるなんてしないんだった。なるほど、あそこは扉の前で困っているのが正解だったか。
「……お兄様、わたくしが自分で扉を開けたということはどうか内密にお願い致します」
ここにいたのがクルトお兄様でよかった。知らない人だったら言い訳のしようもない。もしこれがお義母様やアリアにばれたら大目玉だろう。
「僕がここを離れていたのも内緒にしてくれるかい?」
「ええ、わたくしはクルトお兄様の開けた扉から部屋に入りましたもの」
お互い都合がいい。持ち場を離れてどこに行っていたのかと思えば、制服のネクタイを忘れて取りに行っていたそうだ。まだまだ最初の子が来るには余裕があると思っていたらしい。クルトお兄様は恥ずかしそうに笑った。
「座って。お茶を用意するよ」
そう言うとクルトお兄様は腰につけていたベルを鳴らした。その響きが消えると同時に部屋の中にあったもう一つの扉が開いた。そこから女子生徒が数人、ティーセットを持って出てきた。
「お疲れ様でした。早かったですわね」
「どうぞ、お座りになって」
キラキラとした令嬢の笑顔を向けられて、私も負けじと笑顔を作る。やばい、本物の令嬢だ。下手のことはできないぞ。
「はい、ありがとうございます」
お姉さま方は椅子を引いてくれたり、お茶を入れてくれたり、普通の令嬢はしないようなことをしてくれた。先輩にそんなことしてもらうなんて冗談じゃない。
おろおろしている私を見て、お姉さま方は笑った。
「良いのよ。私たちも同じことをしてもらったもの。今だけは爵位も年齢も関係ないわ。だから、あなたがここに入学したら、下の子たちに同じことをしてあげたらいいのよ」
なるほど、この学校の伝統みたいなものなのか。そういうことなら喜んでおもてなしされよう。にっこりと笑ってお礼を言う。そしてお茶をすする。
美味しいお茶だ。だけどやっぱりアリアの入れるお茶にはかなわない。……お城の執事さんのいれてくれたお茶も飲んでるし、舌が肥えているのかもしれない。
ここまで案内してくれた先生は私達に自由に座るように言った。え、席自由なの? あっちの世界じゃ受験の席なんて全部決まってたよね。え、いいの?
皆が続々と座っていく中、私も近くの空いていた席に座ると、クリスは私の隣に座った。
よし、これで私の周りはもう空いていない。カイは不服そうな表情を浮かべたが、空いていた一番前の席へと向かった。ため息をつきたい気分だ。
今までは分からなかったけど、こうして外に出てみると分かる。カイは私が思っている以上に私を好いている。というか、懐いている。何をそんなに気に入ったのか、と思う。結局ため息は我慢できなかった。
「試験問題は既に置いてあります。終わった人から教室を出てください。一度席を立つと、もうペンを持ってはいけなません。以上です。どうぞ、始めてください」
……え? 先生出て行っちゃったんだけど。
教室の中には受験生のみが残されていて、試験監督の先生はいない。え、いいの? 誰も教室にいなくていいの?
ポカンとしていると、カリカリとペンの音が聞こえてきた。あ、そっか、もう始めていいんだ。え、っていうか制限時間なし?
とりあえずペンは持ったものの、気になることが多すぎて集中できない。試験においても世界の違いはとても大きい。……時間を言われなかったからできるだけ早く終わらせてしまおう。実は制限時間がありました、なんて冗談じゃない。
問題は基本中の基本で、たまに応用問題があるだけだった。とても簡単で、あっという間に終わってしまった。最後の問題を解き終わって顔を上げると、誰もがまだ手を動かしていた。
その必死な姿を見ていると不安になって来た。え、問題これだけだよね? 私のだけ一枚抜けていたりしないよね? 見直してみても、特に気になるところはない。
……抜けていても私のミスじゃないもん。
できるだけ音を立てずに立ち上がる。できるだけ見ないようにしても、視界が高くなったことで教室の中が良く見えた。
あ、あの子今カンニングした。あっちの子もそうだな。
カンニングした子たちは絶対に受かることはないんだろうなと思う。だってこの世界は魔法が存在しているのだ。試験監督をその教室内に置かなくてもカンニングを見張ることくらいは可能だろう。
まあそんなことは私には関係ない。もう立ち上がった私は教室を出ることしかできないのだから。
一直線に扉へと向かって、開けようと手を伸ばすと、私が触れる前に開いた。
うわ、びっくりした。え、自動ドア? この世界に?
首を傾げて教室から出ると、その扉の向こうに人の姿があることに気が付いた。……だよね、自動ドアなんてないよね。
「お疲れ様でした。この廊下を真っすぐ歩いて、突き当りの部屋へどうぞ」
恐らく生徒だろう。男の子が扉を閉めて、手で行く方向を指し示してくれた。
「はい、ありがとうございます」
言われた方へと歩き、突き当りの部屋の扉を開けると、そこには誰もいなかった。……ここでどうしろと?
椅子とテーブルは用意されている。お茶でも出してくれるのかもしれない。が、誰もいない。途方に暮れて突っ立っていると、扉が空いて誰かが入って来た。
「あら、クルトお兄様?」
「あれ、エレナ。もしかしてもう終わったのかい?」
クルトお兄様は驚いたような表情を浮かべた。そして「どうやってこの部屋に入ったの?」と聞かれた。
どうやっても何も普通に入ったけど……。
「鍵も何もかけられていなかったので普通に入ることはできましたが?」
そう言って気が付いた。そういえば普通の令嬢は自分で扉を開けるなんてしないんだった。なるほど、あそこは扉の前で困っているのが正解だったか。
「……お兄様、わたくしが自分で扉を開けたということはどうか内密にお願い致します」
ここにいたのがクルトお兄様でよかった。知らない人だったら言い訳のしようもない。もしこれがお義母様やアリアにばれたら大目玉だろう。
「僕がここを離れていたのも内緒にしてくれるかい?」
「ええ、わたくしはクルトお兄様の開けた扉から部屋に入りましたもの」
お互い都合がいい。持ち場を離れてどこに行っていたのかと思えば、制服のネクタイを忘れて取りに行っていたそうだ。まだまだ最初の子が来るには余裕があると思っていたらしい。クルトお兄様は恥ずかしそうに笑った。
「座って。お茶を用意するよ」
そう言うとクルトお兄様は腰につけていたベルを鳴らした。その響きが消えると同時に部屋の中にあったもう一つの扉が開いた。そこから女子生徒が数人、ティーセットを持って出てきた。
「お疲れ様でした。早かったですわね」
「どうぞ、お座りになって」
キラキラとした令嬢の笑顔を向けられて、私も負けじと笑顔を作る。やばい、本物の令嬢だ。下手のことはできないぞ。
「はい、ありがとうございます」
お姉さま方は椅子を引いてくれたり、お茶を入れてくれたり、普通の令嬢はしないようなことをしてくれた。先輩にそんなことしてもらうなんて冗談じゃない。
おろおろしている私を見て、お姉さま方は笑った。
「良いのよ。私たちも同じことをしてもらったもの。今だけは爵位も年齢も関係ないわ。だから、あなたがここに入学したら、下の子たちに同じことをしてあげたらいいのよ」
なるほど、この学校の伝統みたいなものなのか。そういうことなら喜んでおもてなしされよう。にっこりと笑ってお礼を言う。そしてお茶をすする。
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