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殿下と仲良しな私
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席に座ったまま、改めて周りを見てみる。人数は思っていたよりも多くない。皆が到着したとしても全部で四十人から五十人くらいだ。
まあ新入生だけで、更に魔力量が規定に達している子だけだもんね。試験でどのくらい絞り込まれるのだろうか。学力が基準を超えていたら合格? それとも上から何人、みたいな感じ?
まあどっちでもいいけど。
「ここが講堂? たいしたことないわね」
高い声が響き渡り、あちこちから聞こえていたひそひそ声が消えた。とても聞き覚えのある声だ。振り返らずに座っていると、一番前の席の一番真ん中に座る姿が見えた。
おいおい、ベアトリクス。確かに席は決まってないけど、でもカイがいるのにそこに堂々と座るのはちょっとまずいんじゃないの? 教育がなってないと思われるよ。
クリスも同じことを思ったのか、小さくため息をついている。一周まわってすごい。
少しすると、またひそひそ声が止んだ。
「ありがとう、ヨハン」
カイか。振り返らなくても声だけで分かるほどには仲良くなってしまった。入学してからはぜひともちょっと距離を置きたい。
二人分の足音が後ろから聞こえ、段々近付いて来る。さて、カイはどこに座るんだろうか。まさかベアトリクスの横には座らないよね? でも端っこの方に座るのも皇子としてどうかと思うし。
「失礼、すまないけど二人分、席を開けてくれないかな?」
はいぃ!?
すぐ近くで聞こえた声に思わず振り返ると、カイがマクシミリアンの隣に座っている子に話しかけていた。男の子が二人、慌てた様子で立ち上がった。
いやいやいや、なんでこんなところに座るの。マクシミリアンと一緒に座りたいなら一緒に前に座りなよ!
と思っていたら、マクシミリアンも立ち上がった。あれ、やっぱり一緒に前に行くんじゃん。じゃああの子たちにどいてもらわなくてもよかったのに。
「やあエレナ。会えて嬉しいよ」
カイは爽やかな笑みを浮かべてそう言うと、マクシミリアンが立った席、つまり私の横の席に座った。レオンがその隣、マクシミリアンがまたその隣に座り直す。ちょっと待ってよ、なんでわざわざ私の隣に……。
ひそひそと声が聞こえ、すごく注目されているのが分かる。クリスに視線だけで助けを求めるが、平然とした顔をしていて、私の気持ちには気が付いていないようだ。
「ごきげんよう、殿下。わざわざこんなところに座らなくても前の方が空いておりますわよ」
前の方のがらっがらなところに行け!!
だが、カイには全く伝わらなかったようで、「ああ」と手を打って言った。
「そっか、あの子たちにどいてもらわなくても、エレナを一緒に連れて行けばよかったのか」
ちっがーう!
「いえ、ここで一緒に座りましょう……」
前の方にカイと一緒に座るなんて論外だ。そんな目立つようなことしたくない。もう遅い気がするけど。ああ、ほら、ベアトリクスめっちゃ睨んでくるじゃん……。
視線を下げようとしたその時だった。もう一つ強い視線を感じた。
……ああ、ラルフか。忘れてた。
ひとつ前の列にラルフが座っていた。婚約者と言っても名ばかりで、季節一つに一回会うか会わないかの関係だ。今の今まで同じ年だったということも忘れていたくらいだ。
これは私悪くないでしょ。私を睨むな、二人とも。
そうこうしている内に、先生らしき人が壇上に立ち、試験の説明が始まった。
この後部屋を移動してそこで試験を受けること。筆記試験だが、カンニングはもちろん禁止であること。要約するとたったそれだけだった。
あっという間に話は終わり、移動が始まる。皆でぞろぞろと講堂を出る中、私は常にクリスからは離れなかった。そして、カイも決して私からは離れてくれなかった。
何度か距離を取ろうと頑張ってみたが、ダメで、唯一の救いはベアトリクスがカイに近付いて来たことだった。嬉しそうにカイに話しかけるベアトリクスと、それに当たり障りなく応えるカイ。おかげでカイは私に話しかける余裕がなく、私は一時の平穏を得ていた。
……明日にでも学校では距離を置くことを提案してみよう。カイに察しろというのは無理な話だった。この際はっきりと言ってしまおう。
誰も直接話しかけては来ないけど、「あの子殿下の知り合いなの?」という空気が蔓延している。そして決して少なくはない敵意を感じる。よく聞くと悪口も聞こえてくるし。
「クリス、わたくしこの空気とても嫌なのだけれど」
「ええ、わたくしも面白くはないですわ。思ったことは直接はっきりと言っていただきたいですわね」
私はただ我慢ができなくて、クリスにこそこそっと愚痴っただけだったが、クリスはとても大きな声でそう言った。周りの子たちがあからさまに私たちを睨んでくる。
……どうしてクリスはそう好戦的なの。誰か私を助けて。どうか今だけはこの爽やかだけど鈍い皇子と距離を置かせて!!
人生、願ったってどうしようもないことばかりである。私はとてつもなく悪い空気の中、試験会場へと足を踏み入れた。
まあ新入生だけで、更に魔力量が規定に達している子だけだもんね。試験でどのくらい絞り込まれるのだろうか。学力が基準を超えていたら合格? それとも上から何人、みたいな感じ?
まあどっちでもいいけど。
「ここが講堂? たいしたことないわね」
高い声が響き渡り、あちこちから聞こえていたひそひそ声が消えた。とても聞き覚えのある声だ。振り返らずに座っていると、一番前の席の一番真ん中に座る姿が見えた。
おいおい、ベアトリクス。確かに席は決まってないけど、でもカイがいるのにそこに堂々と座るのはちょっとまずいんじゃないの? 教育がなってないと思われるよ。
クリスも同じことを思ったのか、小さくため息をついている。一周まわってすごい。
少しすると、またひそひそ声が止んだ。
「ありがとう、ヨハン」
カイか。振り返らなくても声だけで分かるほどには仲良くなってしまった。入学してからはぜひともちょっと距離を置きたい。
二人分の足音が後ろから聞こえ、段々近付いて来る。さて、カイはどこに座るんだろうか。まさかベアトリクスの横には座らないよね? でも端っこの方に座るのも皇子としてどうかと思うし。
「失礼、すまないけど二人分、席を開けてくれないかな?」
はいぃ!?
すぐ近くで聞こえた声に思わず振り返ると、カイがマクシミリアンの隣に座っている子に話しかけていた。男の子が二人、慌てた様子で立ち上がった。
いやいやいや、なんでこんなところに座るの。マクシミリアンと一緒に座りたいなら一緒に前に座りなよ!
と思っていたら、マクシミリアンも立ち上がった。あれ、やっぱり一緒に前に行くんじゃん。じゃああの子たちにどいてもらわなくてもよかったのに。
「やあエレナ。会えて嬉しいよ」
カイは爽やかな笑みを浮かべてそう言うと、マクシミリアンが立った席、つまり私の横の席に座った。レオンがその隣、マクシミリアンがまたその隣に座り直す。ちょっと待ってよ、なんでわざわざ私の隣に……。
ひそひそと声が聞こえ、すごく注目されているのが分かる。クリスに視線だけで助けを求めるが、平然とした顔をしていて、私の気持ちには気が付いていないようだ。
「ごきげんよう、殿下。わざわざこんなところに座らなくても前の方が空いておりますわよ」
前の方のがらっがらなところに行け!!
だが、カイには全く伝わらなかったようで、「ああ」と手を打って言った。
「そっか、あの子たちにどいてもらわなくても、エレナを一緒に連れて行けばよかったのか」
ちっがーう!
「いえ、ここで一緒に座りましょう……」
前の方にカイと一緒に座るなんて論外だ。そんな目立つようなことしたくない。もう遅い気がするけど。ああ、ほら、ベアトリクスめっちゃ睨んでくるじゃん……。
視線を下げようとしたその時だった。もう一つ強い視線を感じた。
……ああ、ラルフか。忘れてた。
ひとつ前の列にラルフが座っていた。婚約者と言っても名ばかりで、季節一つに一回会うか会わないかの関係だ。今の今まで同じ年だったということも忘れていたくらいだ。
これは私悪くないでしょ。私を睨むな、二人とも。
そうこうしている内に、先生らしき人が壇上に立ち、試験の説明が始まった。
この後部屋を移動してそこで試験を受けること。筆記試験だが、カンニングはもちろん禁止であること。要約するとたったそれだけだった。
あっという間に話は終わり、移動が始まる。皆でぞろぞろと講堂を出る中、私は常にクリスからは離れなかった。そして、カイも決して私からは離れてくれなかった。
何度か距離を取ろうと頑張ってみたが、ダメで、唯一の救いはベアトリクスがカイに近付いて来たことだった。嬉しそうにカイに話しかけるベアトリクスと、それに当たり障りなく応えるカイ。おかげでカイは私に話しかける余裕がなく、私は一時の平穏を得ていた。
……明日にでも学校では距離を置くことを提案してみよう。カイに察しろというのは無理な話だった。この際はっきりと言ってしまおう。
誰も直接話しかけては来ないけど、「あの子殿下の知り合いなの?」という空気が蔓延している。そして決して少なくはない敵意を感じる。よく聞くと悪口も聞こえてくるし。
「クリス、わたくしこの空気とても嫌なのだけれど」
「ええ、わたくしも面白くはないですわ。思ったことは直接はっきりと言っていただきたいですわね」
私はただ我慢ができなくて、クリスにこそこそっと愚痴っただけだったが、クリスはとても大きな声でそう言った。周りの子たちがあからさまに私たちを睨んでくる。
……どうしてクリスはそう好戦的なの。誰か私を助けて。どうか今だけはこの爽やかだけど鈍い皇子と距離を置かせて!!
人生、願ったってどうしようもないことばかりである。私はとてつもなく悪い空気の中、試験会場へと足を踏み入れた。
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