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ベアトリクスのアタック
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「クリスティーナ様、一緒にまわりませんこと? わたくし色々見たいですわ」
「ええ、ぜひご一緒させていただきますわ」
速攻クリスと約束をしていると、反対側からカイも声をかけてきた。が、その声は他の声で遮られた。
「カイ様、わたくしと一緒に行きましょう!」
お、出た、ベアトリクス。媚びるような声でカイにくっついているその姿はとてもみっともなく見えた。婚約者でも人前でその距離ははしたないというのに、婚約者でもない女の子がする態度ではない。
カイはあからさまに表情に出すことはないけど、態度には出ている。少しでもベアトリクスから離れたいようで、一歩引く。が、ベアトリクスがすぐにその一歩を詰める。助けてあげたいが、私の出る幕ではない。
だって私だって別に婚約者じゃないし。さらに言えば他に婚約者がいるし。ごめん、カイ。大丈夫、あと三年待てばヒロインが出てくるから!
とはいえ、そのままにしておくわけにもいかない。
「ねえ、クリスティーナ様、ヨハン様はどこにいらっしゃるのかしら? お兄様とヨハン様に案内していただきませんこと?」
「ええ、そうですわね」
こうなれば他の人の手を借りるしかない。クリスは意図を読み取ってくれたのか、ヨハンへと声を飛ばした。それを見て、周りにいた子たちがざわっとなった。
「あの子魔法を使っているわよ」
「あんなに簡単そうに……」
ああ、そうか、魔法を使うのは難しいんだったね。自分で使えないからってクリスにお願いしたけど、目立たせてしまったかもしれない。クリスの様子を伺ってみるが、クリスは全く気にしていないようだった。
……カイと仲が良いってだけで十分目立ってるんだもん。この際目立ちまくってしまった方が、変にいじめられないでいいかもしれない。
ベアトリクスを上手くかわそうとするカイ、遠回しに断られているのにそれに気が付かずに押せ押せのベアトリクス。うっとおしそうにカイの援護をするレオン。黙ってそれを見ているが、ここぞという時にずばっと口を出すマクシミリアン。四人を眺めているのは結構面白かった。
他の子もまだ一人も部屋を出ていなく、その様子を見ている。
少ししてクルトお兄様がドアを開けた。入って来たのはもちろん、あの二人だ。
「お疲れ様、エレナちゃん、クリス」
「呼んでしまって申し訳ありません。ぜひ校内を案内していただきたくて」
そう言いながら私が視線だけでカイを見ると、ヨハンが頷いた。ヘンドリックお兄様は小さく「またあいつか」と呟く。ちょっとぉ!? 聞こえるから! 心の中で思うだけにしておいてよ!
ヨハンはカイの方へと向かったが、お兄様は動こうとせず、私を見た。
「試験はどうだったか?」
「ええ、問題ありませんわ。基本的なものでしたもの」
もちろん、基本的な問題ではなかったことはもう理解している。が、どうも、私はヘンドリックお兄様に認められたいらしい。気が付いたら言葉が出ていた。
……お兄様は多分できる人が好きだ。
にっこりと笑ってそう言うと、お兄様は少し唇の端を上げた。さっきみたいな笑い方は流石に見れないか。でもこれでも満足だ。
「そうか」
「ええ」
すっとカイの方へ視線を向ける。話はまとまったようで、ほっとした顔のカイと不満そうなベアトリクスがいた。結局どうなったんだろう。
ヨハンに視線を向けると、ヨハンは穏やかな笑みを見せた。
「エレナちゃんとクリスはヘンドリックに案内してもらって。私はこっちの四人を案内するから」
私が頷く前に反応したのはカイだった。
「皆で一緒に行くって言っていたじゃないか」
「お黙りなさい、殿下」
ヨハンの厳しい声でカイはグッと黙り込んだ。……カイが私と一緒に回ろうと思っていたことは知っている。だけどベアトリクスも一緒となると私はちょっと遠慮したい。碌な目に合う気がしないし。
ヨハンもそこを気遣ってくれたんだと思う。もちろんその気遣いは喜んで受け取る。
「ありがとうございます、ヨハン様。では殿下、また」
あっちはヨハンがいるから不安はない。大体いつも問題を起こしているのは私とベアトリクスだし。
ヘンドリックお兄様は何も言わずに扉の方へと歩き出した。私とクリスもその後を追い、部屋を出る直前でクルトお兄様と目が合った。クルトお兄様も一緒に行けたらいいのに。その気持ちを察したのか、クルトお兄様は微笑んだ。
「僕はここにいないといけないから、兄上と楽しんでおいで」
……最初にクルトお兄様とヘンドリックお兄様がそろった時はすごいバチバチだったのに。今ではそのかけらもなく、クルトお兄様はいじめられていた私を守ってくれていただけだったと分かる。
私がエレナになった頃は会ったこともなかったカミラとは仲良しになって、すごく嫌われていたヘンドリックお兄様にはもう嫌われてはいないし、お義母様とも本当の母娘のようだし。
私本当に頑張った……!
「エレナが帰る時は見送りに行くから教えて」
「はい!」
頷いて部屋を出ると、ヘンドリックお兄様は待っていてくれたのか、私の姿を見て歩き出した。よーし、私の通う(予定の)学校見学、楽しみだ!
「ええ、ぜひご一緒させていただきますわ」
速攻クリスと約束をしていると、反対側からカイも声をかけてきた。が、その声は他の声で遮られた。
「カイ様、わたくしと一緒に行きましょう!」
お、出た、ベアトリクス。媚びるような声でカイにくっついているその姿はとてもみっともなく見えた。婚約者でも人前でその距離ははしたないというのに、婚約者でもない女の子がする態度ではない。
カイはあからさまに表情に出すことはないけど、態度には出ている。少しでもベアトリクスから離れたいようで、一歩引く。が、ベアトリクスがすぐにその一歩を詰める。助けてあげたいが、私の出る幕ではない。
だって私だって別に婚約者じゃないし。さらに言えば他に婚約者がいるし。ごめん、カイ。大丈夫、あと三年待てばヒロインが出てくるから!
とはいえ、そのままにしておくわけにもいかない。
「ねえ、クリスティーナ様、ヨハン様はどこにいらっしゃるのかしら? お兄様とヨハン様に案内していただきませんこと?」
「ええ、そうですわね」
こうなれば他の人の手を借りるしかない。クリスは意図を読み取ってくれたのか、ヨハンへと声を飛ばした。それを見て、周りにいた子たちがざわっとなった。
「あの子魔法を使っているわよ」
「あんなに簡単そうに……」
ああ、そうか、魔法を使うのは難しいんだったね。自分で使えないからってクリスにお願いしたけど、目立たせてしまったかもしれない。クリスの様子を伺ってみるが、クリスは全く気にしていないようだった。
……カイと仲が良いってだけで十分目立ってるんだもん。この際目立ちまくってしまった方が、変にいじめられないでいいかもしれない。
ベアトリクスを上手くかわそうとするカイ、遠回しに断られているのにそれに気が付かずに押せ押せのベアトリクス。うっとおしそうにカイの援護をするレオン。黙ってそれを見ているが、ここぞという時にずばっと口を出すマクシミリアン。四人を眺めているのは結構面白かった。
他の子もまだ一人も部屋を出ていなく、その様子を見ている。
少ししてクルトお兄様がドアを開けた。入って来たのはもちろん、あの二人だ。
「お疲れ様、エレナちゃん、クリス」
「呼んでしまって申し訳ありません。ぜひ校内を案内していただきたくて」
そう言いながら私が視線だけでカイを見ると、ヨハンが頷いた。ヘンドリックお兄様は小さく「またあいつか」と呟く。ちょっとぉ!? 聞こえるから! 心の中で思うだけにしておいてよ!
ヨハンはカイの方へと向かったが、お兄様は動こうとせず、私を見た。
「試験はどうだったか?」
「ええ、問題ありませんわ。基本的なものでしたもの」
もちろん、基本的な問題ではなかったことはもう理解している。が、どうも、私はヘンドリックお兄様に認められたいらしい。気が付いたら言葉が出ていた。
……お兄様は多分できる人が好きだ。
にっこりと笑ってそう言うと、お兄様は少し唇の端を上げた。さっきみたいな笑い方は流石に見れないか。でもこれでも満足だ。
「そうか」
「ええ」
すっとカイの方へ視線を向ける。話はまとまったようで、ほっとした顔のカイと不満そうなベアトリクスがいた。結局どうなったんだろう。
ヨハンに視線を向けると、ヨハンは穏やかな笑みを見せた。
「エレナちゃんとクリスはヘンドリックに案内してもらって。私はこっちの四人を案内するから」
私が頷く前に反応したのはカイだった。
「皆で一緒に行くって言っていたじゃないか」
「お黙りなさい、殿下」
ヨハンの厳しい声でカイはグッと黙り込んだ。……カイが私と一緒に回ろうと思っていたことは知っている。だけどベアトリクスも一緒となると私はちょっと遠慮したい。碌な目に合う気がしないし。
ヨハンもそこを気遣ってくれたんだと思う。もちろんその気遣いは喜んで受け取る。
「ありがとうございます、ヨハン様。では殿下、また」
あっちはヨハンがいるから不安はない。大体いつも問題を起こしているのは私とベアトリクスだし。
ヘンドリックお兄様は何も言わずに扉の方へと歩き出した。私とクリスもその後を追い、部屋を出る直前でクルトお兄様と目が合った。クルトお兄様も一緒に行けたらいいのに。その気持ちを察したのか、クルトお兄様は微笑んだ。
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