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校内見学
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さて、ヘンドリックお兄様はどこに連れて行ってくれるのだろうか。クリスと並んでお兄様の後ろを歩いていると、すれ違う生徒たち、主に女子生徒がお兄様を見ていることに気が付いた。
……モテモテじゃん。ちょっとは笑いかけてあげるとかしなよ。ああ、そうか、お兄様は私だけが嫌いだったんじゃなくて、女の人が苦手なのか。
かっこいいし、魔法得意だし、多分頭いいし、長男だし、優良物件だと思う。あの冷たい目に耐えることができるなら。
「ヘンドリック様は婚約は決まっているのですか?」
令嬢の仮面を脱いだクリスが、お兄様へと声をかけた。
うわ、ヘンドリックお兄様にそんなこと聞けるなんてクリスすごい。私にはとても聞けないことだ。ヘンドリックお兄様もクルトお兄様も、私はお兄様方の婚約事情は全く知らない。とても気になる話題だ。表情には出さないようにして、しっかりと話に耳を傾ける。
「決まっていないし、決めるつもりもない」
なんですと! もったいない! というかヘンドリックお兄様はいずれお家を継ぐんだから結婚しないといけないでしょ。
ああ、そうだ。
「それならクリスなんていかがです? お兄様もクリスのことはお嫌いではないでしょう?」
我ながらとてもいい案だ。クリスと姉妹になるのは私にとってはとても嬉しいことだ。クリスだったら、ほら、女子女子していないし。……悪口じゃないよ。
だけど、クリスは信じられない、といった表情を浮かべて私を見た。え、あれ、お兄様の婚約者嫌だった? お兄様はというと、とても呆れた表情で私を見て、「冗談じゃない」と一言。
えぇっ!? めっちゃいい案だと思ったんだけど……私が思っていた程二人は仲良くなかったのかもしれない。
「エレナ、世の中には開けちゃいけない扉もあるんだよ」
クリスはそれだけ言うと、さっと話題を変えて、入学したら何をしたいかを話し出した。……この話題を出したのクリスなのに。お兄様も何事もなかったかのように前を向いて歩く。色々と納得はできないが、仕方がないので私もクリスに相槌を打ちながら歩いた。
お兄様は色々な教室を見せてくれた。座学を受ける教室。試験を受ける教室。魔法の授業で使う教室。本当に広い。造りはお城とちょっと似ていて覚えるまでは迷子になってしまいそうだ。
あっちの世界の学校との大きな違いは、ダンスホールがあるところ。すごく高い天井とシャンデリア、たくさんの窓。卒業パーティーや、ダンスの授業でも使うようだ。
「ここが騎士科の使う訓練場だ」
最後にお兄様が連れてきてくれたのは訓練場だった。
「訓練場は中にもあるが、外を使うことが多い。魔法の実技でも使うことがある」
うちの訓練場よりも圧倒的に広い。お城の訓練場よりはちょっと狭いけど。見ると、向こうの方で素振りをしている生徒が見えた。
へえ、女子もいるんだ。
私が眺めていると、お兄様はその人たちの方へと近付いた。
お兄様が自分から誰かに話しかけるのって初めて見た。なんか新鮮。そんなどうでもいいことを思っていると、お兄様は木剣を二つ持って戻って来た。その一つをポイと私の方へ放る。
「手合わせだ」
……うん? 私が? ヘンドリックお兄様と? どうしてそうなる。
「失礼ですが、お兄様は剣も嗜んでいらっしゃるのですか?」
ヘンドリックお兄様は魔法、クルトお兄様は剣。私の中では二人のイメージはそれで、逆は想像がつかない。いやいや、待ってよ。大体学校見学だよね? それでなんで剣を持つ必要があるの?
「嗜む程度だ」
「いいじゃん、エレナ。ヘンドリック様とだよ。相手にとって不足なし、だよ」
それはどうだけど。だってお兄様が負けるところなんて想像できないし。だけど私は今日剣を握る予定なんてなかった。こんなひらひらの服で剣を握るって令嬢としてどうなのだろうか。
「今更気にする外聞などありはすまい」
「どういう意味ですか!」
失礼だな。そりゃたしかに色々やらかしてはいるけど。
もたもたしていると、後ろから、嬉しそうな声が聞こえた。
「エレナ!」
振り返ると、ヨハン一行が立っていた。
「で、殿下……」
カイが満面の笑みで私に近付いて来て、ベアトリクスがその後ろで私を睨んでいる。……会っちゃったー。ヨハンへ視線をやると、申し訳なさそうな顔をしていて、一応止めてくれたんだということは分かった。
「殿下、それ以上お近づきにならないで下さいませ。エレナ様はこの後手合わせをなさるので、今はちょっとピリピリされておりますの」
クリスがすっと私とカイの間に入った。あれ、どうしたんだろう、クリスがこういう風に止めることってあんまりないよね?
首を傾げていると、クリスの視線の先にラルフの姿が見えた。……なるほど。ラルフを毛嫌いしているクリスだが、一応婚約者がいる私の体面を守ってくれたのだろう。
よく見るとカイ達を追っかけてきたのか、今日試験の子たちだけでなく、制服を着ている女子生徒たちまでもがいっぱいいることに気が付いた。
ギャラリー増えてますがな!
「そっか、それは邪魔しちゃいけないね。頑張って、エレナ」
「負けるなよ」
カイもレオンも私を応援してくれる態勢だ。私まだ一言もやるって言ってないんだけど。
だけどもう既に剣を手に持ってしまっている以上、今更やらないなんて言えない。クリスに外堀を埋められてしまったようだ。こっそりクリスを似らんでおくが、クリスはそれに気が付いても全く気にしておらず、にっこりと令嬢らしい、だけどいつもの笑顔を見せた。
……仕方がない。お兄様の胸を借りるつもりで頑張ってみるか。
「ヨハン、審判を」
私が渋々前に出ると、お兄様の一言でヨハンも前に出てきた。ああ、嫌だ。こんなたくさんの人に見られてなんて……
「ふん、せいぜい無様な姿をさらしたらいいわ」
ベアトリクスの見下すような声が聞こえて、カチンときた。ムカつく、この小娘。この際全力でやってやる。お兄様に勝つつもりでやってやる!
ベアトリクスのおかげでやる気が出た時、ヨハンの声が聞こえた。
「始め!」
……モテモテじゃん。ちょっとは笑いかけてあげるとかしなよ。ああ、そうか、お兄様は私だけが嫌いだったんじゃなくて、女の人が苦手なのか。
かっこいいし、魔法得意だし、多分頭いいし、長男だし、優良物件だと思う。あの冷たい目に耐えることができるなら。
「ヘンドリック様は婚約は決まっているのですか?」
令嬢の仮面を脱いだクリスが、お兄様へと声をかけた。
うわ、ヘンドリックお兄様にそんなこと聞けるなんてクリスすごい。私にはとても聞けないことだ。ヘンドリックお兄様もクルトお兄様も、私はお兄様方の婚約事情は全く知らない。とても気になる話題だ。表情には出さないようにして、しっかりと話に耳を傾ける。
「決まっていないし、決めるつもりもない」
なんですと! もったいない! というかヘンドリックお兄様はいずれお家を継ぐんだから結婚しないといけないでしょ。
ああ、そうだ。
「それならクリスなんていかがです? お兄様もクリスのことはお嫌いではないでしょう?」
我ながらとてもいい案だ。クリスと姉妹になるのは私にとってはとても嬉しいことだ。クリスだったら、ほら、女子女子していないし。……悪口じゃないよ。
だけど、クリスは信じられない、といった表情を浮かべて私を見た。え、あれ、お兄様の婚約者嫌だった? お兄様はというと、とても呆れた表情で私を見て、「冗談じゃない」と一言。
えぇっ!? めっちゃいい案だと思ったんだけど……私が思っていた程二人は仲良くなかったのかもしれない。
「エレナ、世の中には開けちゃいけない扉もあるんだよ」
クリスはそれだけ言うと、さっと話題を変えて、入学したら何をしたいかを話し出した。……この話題を出したのクリスなのに。お兄様も何事もなかったかのように前を向いて歩く。色々と納得はできないが、仕方がないので私もクリスに相槌を打ちながら歩いた。
お兄様は色々な教室を見せてくれた。座学を受ける教室。試験を受ける教室。魔法の授業で使う教室。本当に広い。造りはお城とちょっと似ていて覚えるまでは迷子になってしまいそうだ。
あっちの世界の学校との大きな違いは、ダンスホールがあるところ。すごく高い天井とシャンデリア、たくさんの窓。卒業パーティーや、ダンスの授業でも使うようだ。
「ここが騎士科の使う訓練場だ」
最後にお兄様が連れてきてくれたのは訓練場だった。
「訓練場は中にもあるが、外を使うことが多い。魔法の実技でも使うことがある」
うちの訓練場よりも圧倒的に広い。お城の訓練場よりはちょっと狭いけど。見ると、向こうの方で素振りをしている生徒が見えた。
へえ、女子もいるんだ。
私が眺めていると、お兄様はその人たちの方へと近付いた。
お兄様が自分から誰かに話しかけるのって初めて見た。なんか新鮮。そんなどうでもいいことを思っていると、お兄様は木剣を二つ持って戻って来た。その一つをポイと私の方へ放る。
「手合わせだ」
……うん? 私が? ヘンドリックお兄様と? どうしてそうなる。
「失礼ですが、お兄様は剣も嗜んでいらっしゃるのですか?」
ヘンドリックお兄様は魔法、クルトお兄様は剣。私の中では二人のイメージはそれで、逆は想像がつかない。いやいや、待ってよ。大体学校見学だよね? それでなんで剣を持つ必要があるの?
「嗜む程度だ」
「いいじゃん、エレナ。ヘンドリック様とだよ。相手にとって不足なし、だよ」
それはどうだけど。だってお兄様が負けるところなんて想像できないし。だけど私は今日剣を握る予定なんてなかった。こんなひらひらの服で剣を握るって令嬢としてどうなのだろうか。
「今更気にする外聞などありはすまい」
「どういう意味ですか!」
失礼だな。そりゃたしかに色々やらかしてはいるけど。
もたもたしていると、後ろから、嬉しそうな声が聞こえた。
「エレナ!」
振り返ると、ヨハン一行が立っていた。
「で、殿下……」
カイが満面の笑みで私に近付いて来て、ベアトリクスがその後ろで私を睨んでいる。……会っちゃったー。ヨハンへ視線をやると、申し訳なさそうな顔をしていて、一応止めてくれたんだということは分かった。
「殿下、それ以上お近づきにならないで下さいませ。エレナ様はこの後手合わせをなさるので、今はちょっとピリピリされておりますの」
クリスがすっと私とカイの間に入った。あれ、どうしたんだろう、クリスがこういう風に止めることってあんまりないよね?
首を傾げていると、クリスの視線の先にラルフの姿が見えた。……なるほど。ラルフを毛嫌いしているクリスだが、一応婚約者がいる私の体面を守ってくれたのだろう。
よく見るとカイ達を追っかけてきたのか、今日試験の子たちだけでなく、制服を着ている女子生徒たちまでもがいっぱいいることに気が付いた。
ギャラリー増えてますがな!
「そっか、それは邪魔しちゃいけないね。頑張って、エレナ」
「負けるなよ」
カイもレオンも私を応援してくれる態勢だ。私まだ一言もやるって言ってないんだけど。
だけどもう既に剣を手に持ってしまっている以上、今更やらないなんて言えない。クリスに外堀を埋められてしまったようだ。こっそりクリスを似らんでおくが、クリスはそれに気が付いても全く気にしておらず、にっこりと令嬢らしい、だけどいつもの笑顔を見せた。
……仕方がない。お兄様の胸を借りるつもりで頑張ってみるか。
「ヨハン、審判を」
私が渋々前に出ると、お兄様の一言でヨハンも前に出てきた。ああ、嫌だ。こんなたくさんの人に見られてなんて……
「ふん、せいぜい無様な姿をさらしたらいいわ」
ベアトリクスの見下すような声が聞こえて、カチンときた。ムカつく、この小娘。この際全力でやってやる。お兄様に勝つつもりでやってやる!
ベアトリクスのおかげでやる気が出た時、ヨハンの声が聞こえた。
「始め!」
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