池に落ちて乙女ゲームの世界に!?ヒロイン?悪役令嬢?いいえ、ただのモブでした。

紅蘭

文字の大きさ
94 / 300

入学

しおりを挟む
新入生代表挨拶はカイだった。真新しい制服を着て、キラキラと爽やかな笑顔で堂々と檀上に立つその姿は確かに皇子だった。入学式で覚えているのはそれだけだ。寝ていたわけではないけど、ずっとボーっとしていたらいつの間にか終わっていた。

だって眠いんだもん。アリアに朝早くからたたき起こされて、今日が肝心だからと、お風呂に入れられ、頭から足の先までピカピカに磨かれた。そして髪型もいつもより気合が入っているのか、すごく丁寧にくしけずられた。

今日だけ綺麗にしたって意味がないのに。されるがままになっている時はそう思っていたが、いざ学校に来てみると、皆気合が入っているのが一目瞭然で、アリアのおかげで私は恥をかかないですんだ。感謝はしているけど眠いものは眠い。

だけどもちろん、姿勢も表情も崩さないように気を付けている。


「エレナ様、今日からは寮生活ですわね」

「ええ、クリスティーナ様。どんなお部屋なのかしら。楽しみですわ」


式が終わり、教室へ移動する途中、クリスがどこからか隣に並んできた。その制服姿を見ると、お揃いの服を着ているような気分になって、とても嬉しい。まあ制服だからお揃いって言ったらお揃いだけどね。

入学試験の時に四、五十人くらいいたのが今は三十人くらいになっている。愛玲奈の時の一クラス分がひと学年だ。中にはベアトリクスの姿も、そしてラルフの姿もある。

実は昨日ラルフに会っている。昨日はお城に行かずに家で学校の準備をしていたら、突然やって来たのだ。そしてこう言った。

『お前のような礼儀も知らないやつが婚約者だと知られたら恥ずかしい。学校では俺に気安く話しかけるな。分かったな』と。

……うん、あれは驚いた。どうしてもラルフは私を礼儀知らずにしたいらしい。礼儀知らずはどっちだって話よ。まあいい。関わらずに済むなら万々歳だ。

先生に先導され、皆で教室に入ると、教室内には机と椅子が並べられていた。そして机には名前が彫られている。皆それぞれ自分の名前を見つけて座り始めている。


「エレナ様、こちらですわ」

「ありがとう」


クリスは私よりも先に探し当ててくれたようで、私はそちらに行って、座った。するとクリスは隣に座った。お、まさかの隣? やった!

よく見ると、席順は身分順になっているようで、カイやレオン、マクシミリアンは一番前の席に座っていた。……うわ、マクシミリアンの隣ベアトリクスじゃん。可哀そう。

伯爵家である私たちの席は意外と前の方だった。まあ公爵家はそんなに数がないもんね。私たちの学年ではここにいるのはレオンとベアトリクスだけだ。ということは私たちの前に座っているのはほとんど侯爵家だということになる。

なるほど、伯爵家って身分低いと思っていたけど、学校内じゃそんなに低くはないんだ。まあ学年にもよるだろうけど。この学年は子爵家と男爵家が多いね。でもうちとクリス家の間に人がいなかったのはラッキーだった。


「入学おめでとうございます。本日からあなた達はこの魔法学校の生徒として扱われます。言動に気を付けて生活するようにしてください。さて、この後のことですが……」


先生が前に立って説明を始める。この後は寮への案内があって、その後は自由だそうだ。学校の中を歩き回ってもいいらしい。流石に入学式その日から授業はないみたい。

どうもこの学校はとても自由な校風みたいで、授業があっても別に出る必要はなく、定期試験で合格点を取ればそれでいいというのだ。過去には入学から一度も授業に顔を出さずに卒業した人もいるらしい。

すごいな、その人。授業に出ずに何をしていたんだろう、と思ってしまう。


「ではこれから寮へと向かいます。着いたらそれぞれ寮母さんから部屋の鍵を貰ってください。その後は好きにして構いません。ですがもし学校内で迷子になってしまったら、周りの人に聞いてください。上級生も慣れているので案内してくれますよ」


上級生も慣れてるって、毎年迷子が出るってことだよね? 確かに広いもんね。気を付けて歩かないと。ただでさえ私は何度かお城の中でも迷子になっているのだから。

「では行きましょう」と教室を出て行く先生の後をぞろぞろと着いて行く。隣を歩くクリスは楽しそうで、見ているだけでもわくわくしているのが分かった。それにしても私達ってまだ十歳なのよね。十歳で親元を離れるってどういう気分なんだろう。……ああ、クリスはもうすぐ十一歳か。

少し歩くと、大きな建物が二つ並んでいるのが見えた。外から見た限り、広さも造りも全く同じに見える。


「こちらが寮です。男子寮は向かって左、女子寮は向かって右です。男子は女子寮へ、女子は男子寮へ絶対に入らないでください。ではここで解散します。各自鍵を受け取ってくださいね」


へえ、すごい綺麗だな。今日からここで生活するのか。そういえば食事ってどうなるんだろう。今まではアリアに給仕されて食べていたけど、ここではもちろんアリアはいない。お城にいるときはお城の執事さんやメイドさんが給仕していてくれたし。この世界で一人で食べることってあるのかな。でもまさか生徒全員に給仕を付けるわけにはいかないもんね。

なんてボーっと考えていたら、クリスが私の袖をクイッと引っ張った。ハッとして見上げていた視線を下げると、他の人たちは既に寮へと向かっていた。


「ごめんなさい、ボーっとしていたわ。私たちも行きましょう」

「うん」


周りに人がいないのをいいことに、クリスは令嬢の仮面を脱ぎ捨てる。この切り替えの早さは本当にすごい。

ふと目が合った。カイがこっちを見ていた。微笑んで見せるが、話しかけはしない。カイは今日、挨拶はしたものの、私の所へ近づいては来ない。学校では距離を置く約束を守ってくれているのだろう。

私はカイへと少し微笑んで、すぐに視線を戻した。そしてクリスと一緒に寮の中へと入った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

美人同僚のおまけとして異世界召喚された私、無能扱いされ王城から追い出される。私の才能を見出してくれた辺境伯様と一緒に田舎でのんびりスローライ

さら
恋愛
美人な同僚の“おまけ”として異世界に召喚された私。けれど、無能だと笑われ王城から追い出されてしまう――。 絶望していた私を拾ってくれたのは、冷徹と噂される辺境伯様でした。 荒れ果てた村で彼の隣に立ちながら、料理を作り、子供たちに針仕事を教え、少しずつ居場所を見つけていく私。 優しい言葉をかけてくれる領民たち、そして、時折見せる辺境伯様の微笑みに、胸がときめいていく……。 華やかな王都で「無能」と追放された女が、辺境で自分の価値を見つけ、誰よりも大切に愛される――。

【完結】奇跡のおくすり~追放された薬師、実は王家の隠し子でした~

いっぺいちゃん
ファンタジー
薬草と静かな生活をこよなく愛する少女、レイナ=リーフィア。 地味で目立たぬ薬師だった彼女は、ある日貴族の陰謀で“冤罪”を着せられ、王都の冒険者ギルドを追放されてしまう。 「――もう、草とだけ暮らせればいい」 絶望の果てにたどり着いた辺境の村で、レイナはひっそりと薬を作り始める。だが、彼女の薬はどんな難病さえ癒す“奇跡の薬”だった。 やがて重病の王子を治したことで、彼女の正体が王家の“隠し子”だと判明し、王都からの使者が訪れる―― 「あなたの薬に、国を救ってほしい」 導かれるように再び王都へと向かうレイナ。 医療改革を志し、“薬師局”を創設して仲間たちと共に奔走する日々が始まる。 薬草にしか心を開けなかった少女が、やがて王国の未来を変える―― これは、一人の“草オタク”薬師が紡ぐ、やさしくてまっすぐな奇跡の物語。 ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

【完結】ヒロインに転生しましたが、モブのイケオジが好きなので、悪役令嬢の婚約破棄を回避させたつもりが、やっぱり婚約破棄されている。

樹結理(きゆり)
恋愛
「アイリーン、貴女との婚約は破棄させてもらう」 大勢が集まるパーティの場で、この国の第一王子セルディ殿下がそう宣言した。 はぁぁあ!? なんでどうしてそうなった!! 私の必死の努力を返してー!! 乙女ゲーム『ラベルシアの乙女』の世界に転生してしまった日本人のアラサー女子。 気付けば物語が始まる学園への入学式の日。 私ってヒロインなの!?攻略対象のイケメンたちに囲まれる日々。でも!私が好きなのは攻略対象たちじゃないのよー!! 私が好きなのは攻略対象でもなんでもない、物語にたった二回しか出てこないイケオジ! 所謂モブと言っても過言ではないほど、関わることが少ないイケオジ。 でもでも!せっかくこの世界に転生出来たのなら何度も見たイケメンたちよりも、レアなイケオジを!! 攻略対象たちや悪役令嬢と友好的な関係を築きつつ、悪役令嬢の婚約破棄を回避しつつ、イケオジを狙う十六歳、侯爵令嬢! 必死に悪役令嬢の婚約破棄イベントを回避してきたつもりが、なんでどうしてそうなった!! やっぱり婚約破棄されてるじゃないのー!! 必死に努力したのは無駄足だったのか!?ヒロインは一体誰と結ばれるのか……。 ※この物語は作者の世界観から成り立っております。正式な貴族社会をお望みの方はご遠慮ください。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムで完結済み。

一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました

しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、 「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。 ――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。 試験会場を間違え、隣の建物で行われていた 特級厨師試験に合格してしまったのだ。 気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの “超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。 一方、学院首席で一級魔法使いとなった ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに―― 「なんで料理で一番になってるのよ!?  あの女、魔法より料理の方が強くない!?」 すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、 天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。 そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、 少しずつ距離を縮めていく。 魔法で国を守る最強魔術師。 料理で国を救う特級厨師。 ――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、 ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。 すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚! 笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。

異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜

恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。 右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。 そんな乙女ゲームのようなお話。

処理中です...