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入学
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新入生代表挨拶はカイだった。真新しい制服を着て、キラキラと爽やかな笑顔で堂々と檀上に立つその姿は確かに皇子だった。入学式で覚えているのはそれだけだ。寝ていたわけではないけど、ずっとボーっとしていたらいつの間にか終わっていた。
だって眠いんだもん。アリアに朝早くからたたき起こされて、今日が肝心だからと、お風呂に入れられ、頭から足の先までピカピカに磨かれた。そして髪型もいつもより気合が入っているのか、すごく丁寧にくしけずられた。
今日だけ綺麗にしたって意味がないのに。されるがままになっている時はそう思っていたが、いざ学校に来てみると、皆気合が入っているのが一目瞭然で、アリアのおかげで私は恥をかかないですんだ。感謝はしているけど眠いものは眠い。
だけどもちろん、姿勢も表情も崩さないように気を付けている。
「エレナ様、今日からは寮生活ですわね」
「ええ、クリスティーナ様。どんなお部屋なのかしら。楽しみですわ」
式が終わり、教室へ移動する途中、クリスがどこからか隣に並んできた。その制服姿を見ると、お揃いの服を着ているような気分になって、とても嬉しい。まあ制服だからお揃いって言ったらお揃いだけどね。
入学試験の時に四、五十人くらいいたのが今は三十人くらいになっている。愛玲奈の時の一クラス分がひと学年だ。中にはベアトリクスの姿も、そしてラルフの姿もある。
実は昨日ラルフに会っている。昨日はお城に行かずに家で学校の準備をしていたら、突然やって来たのだ。そしてこう言った。
『お前のような礼儀も知らないやつが婚約者だと知られたら恥ずかしい。学校では俺に気安く話しかけるな。分かったな』と。
……うん、あれは驚いた。どうしてもラルフは私を礼儀知らずにしたいらしい。礼儀知らずはどっちだって話よ。まあいい。関わらずに済むなら万々歳だ。
先生に先導され、皆で教室に入ると、教室内には机と椅子が並べられていた。そして机には名前が彫られている。皆それぞれ自分の名前を見つけて座り始めている。
「エレナ様、こちらですわ」
「ありがとう」
クリスは私よりも先に探し当ててくれたようで、私はそちらに行って、座った。するとクリスは隣に座った。お、まさかの隣? やった!
よく見ると、席順は身分順になっているようで、カイやレオン、マクシミリアンは一番前の席に座っていた。……うわ、マクシミリアンの隣ベアトリクスじゃん。可哀そう。
伯爵家である私たちの席は意外と前の方だった。まあ公爵家はそんなに数がないもんね。私たちの学年ではここにいるのはレオンとベアトリクスだけだ。ということは私たちの前に座っているのはほとんど侯爵家だということになる。
なるほど、伯爵家って身分低いと思っていたけど、学校内じゃそんなに低くはないんだ。まあ学年にもよるだろうけど。この学年は子爵家と男爵家が多いね。でもうちとクリス家の間に人がいなかったのはラッキーだった。
「入学おめでとうございます。本日からあなた達はこの魔法学校の生徒として扱われます。言動に気を付けて生活するようにしてください。さて、この後のことですが……」
先生が前に立って説明を始める。この後は寮への案内があって、その後は自由だそうだ。学校の中を歩き回ってもいいらしい。流石に入学式その日から授業はないみたい。
どうもこの学校はとても自由な校風みたいで、授業があっても別に出る必要はなく、定期試験で合格点を取ればそれでいいというのだ。過去には入学から一度も授業に顔を出さずに卒業した人もいるらしい。
すごいな、その人。授業に出ずに何をしていたんだろう、と思ってしまう。
「ではこれから寮へと向かいます。着いたらそれぞれ寮母さんから部屋の鍵を貰ってください。その後は好きにして構いません。ですがもし学校内で迷子になってしまったら、周りの人に聞いてください。上級生も慣れているので案内してくれますよ」
上級生も慣れてるって、毎年迷子が出るってことだよね? 確かに広いもんね。気を付けて歩かないと。ただでさえ私は何度かお城の中でも迷子になっているのだから。
「では行きましょう」と教室を出て行く先生の後をぞろぞろと着いて行く。隣を歩くクリスは楽しそうで、見ているだけでもわくわくしているのが分かった。それにしても私達ってまだ十歳なのよね。十歳で親元を離れるってどういう気分なんだろう。……ああ、クリスはもうすぐ十一歳か。
少し歩くと、大きな建物が二つ並んでいるのが見えた。外から見た限り、広さも造りも全く同じに見える。
「こちらが寮です。男子寮は向かって左、女子寮は向かって右です。男子は女子寮へ、女子は男子寮へ絶対に入らないでください。ではここで解散します。各自鍵を受け取ってくださいね」
へえ、すごい綺麗だな。今日からここで生活するのか。そういえば食事ってどうなるんだろう。今まではアリアに給仕されて食べていたけど、ここではもちろんアリアはいない。お城にいるときはお城の執事さんやメイドさんが給仕していてくれたし。この世界で一人で食べることってあるのかな。でもまさか生徒全員に給仕を付けるわけにはいかないもんね。
なんてボーっと考えていたら、クリスが私の袖をクイッと引っ張った。ハッとして見上げていた視線を下げると、他の人たちは既に寮へと向かっていた。
「ごめんなさい、ボーっとしていたわ。私たちも行きましょう」
「うん」
周りに人がいないのをいいことに、クリスは令嬢の仮面を脱ぎ捨てる。この切り替えの早さは本当にすごい。
ふと目が合った。カイがこっちを見ていた。微笑んで見せるが、話しかけはしない。カイは今日、挨拶はしたものの、私の所へ近づいては来ない。学校では距離を置く約束を守ってくれているのだろう。
私はカイへと少し微笑んで、すぐに視線を戻した。そしてクリスと一緒に寮の中へと入った。
だって眠いんだもん。アリアに朝早くからたたき起こされて、今日が肝心だからと、お風呂に入れられ、頭から足の先までピカピカに磨かれた。そして髪型もいつもより気合が入っているのか、すごく丁寧にくしけずられた。
今日だけ綺麗にしたって意味がないのに。されるがままになっている時はそう思っていたが、いざ学校に来てみると、皆気合が入っているのが一目瞭然で、アリアのおかげで私は恥をかかないですんだ。感謝はしているけど眠いものは眠い。
だけどもちろん、姿勢も表情も崩さないように気を付けている。
「エレナ様、今日からは寮生活ですわね」
「ええ、クリスティーナ様。どんなお部屋なのかしら。楽しみですわ」
式が終わり、教室へ移動する途中、クリスがどこからか隣に並んできた。その制服姿を見ると、お揃いの服を着ているような気分になって、とても嬉しい。まあ制服だからお揃いって言ったらお揃いだけどね。
入学試験の時に四、五十人くらいいたのが今は三十人くらいになっている。愛玲奈の時の一クラス分がひと学年だ。中にはベアトリクスの姿も、そしてラルフの姿もある。
実は昨日ラルフに会っている。昨日はお城に行かずに家で学校の準備をしていたら、突然やって来たのだ。そしてこう言った。
『お前のような礼儀も知らないやつが婚約者だと知られたら恥ずかしい。学校では俺に気安く話しかけるな。分かったな』と。
……うん、あれは驚いた。どうしてもラルフは私を礼儀知らずにしたいらしい。礼儀知らずはどっちだって話よ。まあいい。関わらずに済むなら万々歳だ。
先生に先導され、皆で教室に入ると、教室内には机と椅子が並べられていた。そして机には名前が彫られている。皆それぞれ自分の名前を見つけて座り始めている。
「エレナ様、こちらですわ」
「ありがとう」
クリスは私よりも先に探し当ててくれたようで、私はそちらに行って、座った。するとクリスは隣に座った。お、まさかの隣? やった!
よく見ると、席順は身分順になっているようで、カイやレオン、マクシミリアンは一番前の席に座っていた。……うわ、マクシミリアンの隣ベアトリクスじゃん。可哀そう。
伯爵家である私たちの席は意外と前の方だった。まあ公爵家はそんなに数がないもんね。私たちの学年ではここにいるのはレオンとベアトリクスだけだ。ということは私たちの前に座っているのはほとんど侯爵家だということになる。
なるほど、伯爵家って身分低いと思っていたけど、学校内じゃそんなに低くはないんだ。まあ学年にもよるだろうけど。この学年は子爵家と男爵家が多いね。でもうちとクリス家の間に人がいなかったのはラッキーだった。
「入学おめでとうございます。本日からあなた達はこの魔法学校の生徒として扱われます。言動に気を付けて生活するようにしてください。さて、この後のことですが……」
先生が前に立って説明を始める。この後は寮への案内があって、その後は自由だそうだ。学校の中を歩き回ってもいいらしい。流石に入学式その日から授業はないみたい。
どうもこの学校はとても自由な校風みたいで、授業があっても別に出る必要はなく、定期試験で合格点を取ればそれでいいというのだ。過去には入学から一度も授業に顔を出さずに卒業した人もいるらしい。
すごいな、その人。授業に出ずに何をしていたんだろう、と思ってしまう。
「ではこれから寮へと向かいます。着いたらそれぞれ寮母さんから部屋の鍵を貰ってください。その後は好きにして構いません。ですがもし学校内で迷子になってしまったら、周りの人に聞いてください。上級生も慣れているので案内してくれますよ」
上級生も慣れてるって、毎年迷子が出るってことだよね? 確かに広いもんね。気を付けて歩かないと。ただでさえ私は何度かお城の中でも迷子になっているのだから。
「では行きましょう」と教室を出て行く先生の後をぞろぞろと着いて行く。隣を歩くクリスは楽しそうで、見ているだけでもわくわくしているのが分かった。それにしても私達ってまだ十歳なのよね。十歳で親元を離れるってどういう気分なんだろう。……ああ、クリスはもうすぐ十一歳か。
少し歩くと、大きな建物が二つ並んでいるのが見えた。外から見た限り、広さも造りも全く同じに見える。
「こちらが寮です。男子寮は向かって左、女子寮は向かって右です。男子は女子寮へ、女子は男子寮へ絶対に入らないでください。ではここで解散します。各自鍵を受け取ってくださいね」
へえ、すごい綺麗だな。今日からここで生活するのか。そういえば食事ってどうなるんだろう。今まではアリアに給仕されて食べていたけど、ここではもちろんアリアはいない。お城にいるときはお城の執事さんやメイドさんが給仕していてくれたし。この世界で一人で食べることってあるのかな。でもまさか生徒全員に給仕を付けるわけにはいかないもんね。
なんてボーっと考えていたら、クリスが私の袖をクイッと引っ張った。ハッとして見上げていた視線を下げると、他の人たちは既に寮へと向かっていた。
「ごめんなさい、ボーっとしていたわ。私たちも行きましょう」
「うん」
周りに人がいないのをいいことに、クリスは令嬢の仮面を脱ぎ捨てる。この切り替えの早さは本当にすごい。
ふと目が合った。カイがこっちを見ていた。微笑んで見せるが、話しかけはしない。カイは今日、挨拶はしたものの、私の所へ近づいては来ない。学校では距離を置く約束を守ってくれているのだろう。
私はカイへと少し微笑んで、すぐに視線を戻した。そしてクリスと一緒に寮の中へと入った。
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