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図書室
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図書室の場所が分からず、二人で廊下をさまよっていると、前から歩いて来る見慣れた姿を発見した。
「ちょうどいいところに兄様!」
クリスがヨハンを指さして、嬉し涙でも流しそうな勢いでヨハンへと駆け寄った。
周りに人の姿が見えずにお手上げかと思われた時だったので、正直ほっとした。だけどクリスのように嬉しくてヨハンに駆け寄るなんてことはできない。
……本当に仲の良い兄妹だ。
ヨハンは突然指をさされてぎょっとしたように足を止めたが、私達の顔を見て、フッと笑った。
「二人そろって迷子かい?」
「うん、もう戻れないかと思ったから兄様が来てくれてよかったー!」
「大げさよ、クリス」
別にヨハンが来なくても戻ることくらいはできた。来た道はもう分からないけど。最終手段、窓から外に出たら帰れるだろう。まあ、そんなところを誰かに見られでもしたら私はもうおしまいなのだけど。
「ヨハン様、わたくし図書室へ参りたいのです。場所を教えていただけますか?」
「ああ、それなら私も丁度向かうところだよ。一緒に行こう」
おお、なんと、前から歩いて来たヨハンが向かうところだったとは、私たちは全く反対方向に来ていたようだ。まあ適当に歩いていたから全然不思議ではないんだけど。
三人並んで図書室へと歩く。この辺りは驚くほど人気がない。国一番の学校だって言うんだから図書室に行く子って結構いるんじゃないの?
「それにしてもここは広すぎますわ。地図が欲しくなります」
ショッピングモールのように出入口のあたりに貼っておいて欲しい。結構本気でそう思ったのだが、それを想像するとなんだかファンタジー感が薄れた。……やっぱりない方が良いかも。
「皆そうだよ。私も最初は迷ったからね」
「もしかしてヘンドリックお兄様も迷ったのでしょうか?」
学校内で迷子になる十歳のヘンドリックお兄様。想像すると少し可愛い。
「いや、ヘンドリックは冷静に学校内を回って頭に入れていたよ。迷っても来た道を覚えているからすぐに帰って来るし」
……なんだ、やっぱり可愛くない。あの頭をもってすればこれくらいの広さなんてことないんだろうな。
「ここだよ」
ヨハンが重たそうな扉をぎいっと引っ張る。私とクリスは促されて先に中へと入った。
うわ、めっちゃ広い。もしかしてお城より広いんじゃない? 床から天井まで壁一面の本棚はびっしりと本が詰まっている。現代語から古語までまざった本たちはどれも興味深くて、どれから読もうかとわくわくする。
「わたくし奥の方を見て参りますわ」
クリスにそう声をかけて本棚の間を進む。どの本棚も高く、重たそうな本ばかりがぎっしりと詰め込まれていて、上の方は大人が手を伸ばしても届きそうもない。
というか本棚で全然周り見えないし、図書室の中でも迷子になりそうなんだけど……。できるだけ来た道を覚えながら進む。何度か角を曲がると、一番奥まで来たのか、三方を本棚で囲まれた突き当りへと入った。
うーん、ここが一番奥? 何か面白そうな本あるかな……うん、上の方は背表紙の文字すらよく見えない。目は悪くないと思うけど、じっと目を凝らしてみてもタイトルが読めない。ゲームとかじゃ大体一番奥っていいものがあったりするんだけどな。
……ああ、そうか魔力で強化したら見えるかもしれない。ぐっと目に魔力を集めて再び本棚を見上げる。お、おお、見える。見えるぞ。うーん、めぼしいものはなさそう……?
「あ、あれ……」
たくさんの本の中に一冊だけ、文字が光っている物がある。どう考えても普通の本じゃない。ほら、やっぱり一番奥にはお宝があるんだよね。
うきうきして手を伸ばしてみるが、全く届かない。届く気配がない。ですよねぇ。そうだと思ってた。そう簡単に手に入らないのがお宝だもんね。でもこんなことで諦めませんよっと。
周りをきょろきょろして、人の姿がないことを確認。そして私は魔力強化を解き、その本を魔法で取った。重いその本を両手で持って表紙を眺める。
あれ? 何も書いてない? 中を開いてみてもどのページも真っ白だ。不思議に思い、本を閉じてもう一度背表紙を見てみるが、やはり何も書いてない。さっき文字が光ってたと思ったんだけど……ああ、そうか、魔力か。
合格発表の時の手紙を思い出す。魔力での隠し文字。だから光ってたんだ。そっと本に触れて魔力を流してみる。が、流れない。今までにこんなことはなかった。なんか、はじき返されるような、変な感じ。魔力が流せないようになってるの? さっき見えたのは魔力で目を強化してたから?
もう一度目に魔力を集めようとしたその時だった。
「エレナちゃん。もうすぐ昼休みが終わるよ。そろそろ教室に戻ろう」
「あ、はい……!」
いきなり声をかけられて驚きでばっと振り返ると、ヨハンが立っていた。ヨハンは私が手に持っている本を見て、「ああ、それか」と呟くと、私の手から取った。
「私も入学当初から気になっているんだ。何か仕掛けがあるんだろうけどどうしても読めなくてね。エレナちゃんには読めた?」
「いえ……」
ヨハンにすら読めない本。おそらくヘンドリックお兄様にも。これは一体なんなのだろうか。
「本の貸し出しは魔力の登録をしてからだから、また放課後に来たらいいよ。そうしたらこれも借りられるから」
「はい、そうしますわ」
私が頷いたのを見て、ヨハンはふわっと本を浮かすと、本棚へと戻した。ヨハンの後に続いて本棚の中を歩いたが、どうしてもあの本が気になって、放課後には絶対に借りに来ようと思った。
「ちょうどいいところに兄様!」
クリスがヨハンを指さして、嬉し涙でも流しそうな勢いでヨハンへと駆け寄った。
周りに人の姿が見えずにお手上げかと思われた時だったので、正直ほっとした。だけどクリスのように嬉しくてヨハンに駆け寄るなんてことはできない。
……本当に仲の良い兄妹だ。
ヨハンは突然指をさされてぎょっとしたように足を止めたが、私達の顔を見て、フッと笑った。
「二人そろって迷子かい?」
「うん、もう戻れないかと思ったから兄様が来てくれてよかったー!」
「大げさよ、クリス」
別にヨハンが来なくても戻ることくらいはできた。来た道はもう分からないけど。最終手段、窓から外に出たら帰れるだろう。まあ、そんなところを誰かに見られでもしたら私はもうおしまいなのだけど。
「ヨハン様、わたくし図書室へ参りたいのです。場所を教えていただけますか?」
「ああ、それなら私も丁度向かうところだよ。一緒に行こう」
おお、なんと、前から歩いて来たヨハンが向かうところだったとは、私たちは全く反対方向に来ていたようだ。まあ適当に歩いていたから全然不思議ではないんだけど。
三人並んで図書室へと歩く。この辺りは驚くほど人気がない。国一番の学校だって言うんだから図書室に行く子って結構いるんじゃないの?
「それにしてもここは広すぎますわ。地図が欲しくなります」
ショッピングモールのように出入口のあたりに貼っておいて欲しい。結構本気でそう思ったのだが、それを想像するとなんだかファンタジー感が薄れた。……やっぱりない方が良いかも。
「皆そうだよ。私も最初は迷ったからね」
「もしかしてヘンドリックお兄様も迷ったのでしょうか?」
学校内で迷子になる十歳のヘンドリックお兄様。想像すると少し可愛い。
「いや、ヘンドリックは冷静に学校内を回って頭に入れていたよ。迷っても来た道を覚えているからすぐに帰って来るし」
……なんだ、やっぱり可愛くない。あの頭をもってすればこれくらいの広さなんてことないんだろうな。
「ここだよ」
ヨハンが重たそうな扉をぎいっと引っ張る。私とクリスは促されて先に中へと入った。
うわ、めっちゃ広い。もしかしてお城より広いんじゃない? 床から天井まで壁一面の本棚はびっしりと本が詰まっている。現代語から古語までまざった本たちはどれも興味深くて、どれから読もうかとわくわくする。
「わたくし奥の方を見て参りますわ」
クリスにそう声をかけて本棚の間を進む。どの本棚も高く、重たそうな本ばかりがぎっしりと詰め込まれていて、上の方は大人が手を伸ばしても届きそうもない。
というか本棚で全然周り見えないし、図書室の中でも迷子になりそうなんだけど……。できるだけ来た道を覚えながら進む。何度か角を曲がると、一番奥まで来たのか、三方を本棚で囲まれた突き当りへと入った。
うーん、ここが一番奥? 何か面白そうな本あるかな……うん、上の方は背表紙の文字すらよく見えない。目は悪くないと思うけど、じっと目を凝らしてみてもタイトルが読めない。ゲームとかじゃ大体一番奥っていいものがあったりするんだけどな。
……ああ、そうか魔力で強化したら見えるかもしれない。ぐっと目に魔力を集めて再び本棚を見上げる。お、おお、見える。見えるぞ。うーん、めぼしいものはなさそう……?
「あ、あれ……」
たくさんの本の中に一冊だけ、文字が光っている物がある。どう考えても普通の本じゃない。ほら、やっぱり一番奥にはお宝があるんだよね。
うきうきして手を伸ばしてみるが、全く届かない。届く気配がない。ですよねぇ。そうだと思ってた。そう簡単に手に入らないのがお宝だもんね。でもこんなことで諦めませんよっと。
周りをきょろきょろして、人の姿がないことを確認。そして私は魔力強化を解き、その本を魔法で取った。重いその本を両手で持って表紙を眺める。
あれ? 何も書いてない? 中を開いてみてもどのページも真っ白だ。不思議に思い、本を閉じてもう一度背表紙を見てみるが、やはり何も書いてない。さっき文字が光ってたと思ったんだけど……ああ、そうか、魔力か。
合格発表の時の手紙を思い出す。魔力での隠し文字。だから光ってたんだ。そっと本に触れて魔力を流してみる。が、流れない。今までにこんなことはなかった。なんか、はじき返されるような、変な感じ。魔力が流せないようになってるの? さっき見えたのは魔力で目を強化してたから?
もう一度目に魔力を集めようとしたその時だった。
「エレナちゃん。もうすぐ昼休みが終わるよ。そろそろ教室に戻ろう」
「あ、はい……!」
いきなり声をかけられて驚きでばっと振り返ると、ヨハンが立っていた。ヨハンは私が手に持っている本を見て、「ああ、それか」と呟くと、私の手から取った。
「私も入学当初から気になっているんだ。何か仕掛けがあるんだろうけどどうしても読めなくてね。エレナちゃんには読めた?」
「いえ……」
ヨハンにすら読めない本。おそらくヘンドリックお兄様にも。これは一体なんなのだろうか。
「本の貸し出しは魔力の登録をしてからだから、また放課後に来たらいいよ。そうしたらこれも借りられるから」
「はい、そうしますわ」
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