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司書の先生
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放課後、授業が終わると私は速攻図書室へと向かった。もちろんクリスも一緒である。
重たい扉を引いて中へと入ると、昼休みには空っぽだったカウンターの中に女の人が座っていた。司書さんかな?
「こんにちは」
「あらまあ、いらっしゃい」
声をかけた私たちを見てその人は驚いたように目を丸くしたが、すぐに微笑んでくれた。とても感じの良い人だ。それにしてもなんで驚かれたんだろう。
首を傾げると、司書さんはふふっと笑った。
「ごめんなさいね、ここへはいつも決まった数人しか来ないから初めて見る顔って嬉しくて」
「そうなのですか。こんなに本がたくさんあるのにあまり利用されないなんて寂しいですわね」
昼休みに来た時に人がいないと思ったのは、昼休みだから、じゃなくてそれが普通だったのか。寂しいと口では言っているが、正直嬉しい。だって人が少ない方が集中して本が読めるし。
「ええ、そうね。でも毎日顔を出してくれる子もいたのよ。残念ながら去年卒業してしまったけれど」
へえ、毎日図書室に通うってすごい勉強家なんだ。
「その子、なんだかツンツンしているのだけど、本当は優しい子でね。わたくしが本をたくさん持っていたら半分以上持ってくれたり、困っていたら助けてくれたりしてくれてね。すごくいい子だったんだけどね」
ツンツンしていて本当は優しい去年卒業した勉強家。優しいとはっきり言ってしまうのには抵抗があるけど、そういう人を一人知っている気がする。
クリスも気が付いたのか、何とも言えない表情で私の方を見ている。……だよね。
「その人、目がこうつり上がっていて、結構かっこいいヘンドリックという名前ではありませんでしたか?」
手で目じりをきゅっと持ち上げると、司書さんは嬉しそうに顔を綻ばした。
「ええ、そうですわ。ヘンドリックです。あなたご存じなのね」
「はい、わたくしの兄ですの。改めて、わたくしエレナ・フィオーレと申します」
司書さんが驚いて「まあまあ」と言うのを聞いて、クリスも口をはさむ。
「わたくしはクリスティーナ・クレヴィングですわ」
「クレヴィングって、じゃああなたはヨハンの?」
「ええ、そうですの」
にっこりとした表情で頷くクリスに、司書さんは更に目を丸くした。「じゃあ、あなたが……」と小さな呟きが聞こえた。うん? 何? クリスがどうかしたの?
私の時とはちょっと違った反応に私は首を傾げるが、クリスは特に不思議そうでもなく頷いた。
「ええ」
「まあまあ、ここはあなたには少し窮屈でしょう。この図書室では他の生徒がいない間だけでも楽に過ごしてちょうだい」
「はい、ありがとうござます。ではお言葉に甘えて」
クリスからすっと令嬢の仮面が剥がれ落ちて、いつものクリスの表情になる。え、何? 全然意味が分からないんだけど。司書さんクリスのこと知っているの? 令嬢らしくしなくていいの?
「こんにちは、ベルメール先生」
すっと私たちの上に影が落ち、後ろから声が聞こえた。振り向くとそこにはヨハンが立っていた。
「あら、ヨハン。そうね、今年からは先生なのよね。この子たちを見ていると五年前が懐かしいわ。あの頃はまだあなたもヘンドリックも小さかったもの」
「昔の話は止めてください」
ヨハンが珍しく照れたようにベルメール先生の話を遮った。小さいヨハンとヘンドリックお兄様。ちょっと気になる。
「それよりも挨拶は終わりましたか? この子が本を借りたいようで」
「ああ、わたくしの挨拶がまだでしたね。わたくしはディアナ・ベルメール。この魔法学校卒業と同時にずっとここで司書をしておりますの。図書室で分からないことがあったらなんでも聞いてちょうだい」
「はい、ありがとございます、ベルメール先生」
ベルメール先生は「じゃあ早速」と、カウンターの上に拳サイズの魔石を置いた。魔法省で見た空の魔石ではない。綺麗な台座に乗っていて、おしゃれな装飾もしてある。
「これはこの図書室の魔石です。ここに魔力を登録することによって、本の貸し出しを行えるようになります。どうぞ触れてみてくださいませ」
そっとヨハンに背中を押され、魔石へと手を伸ばす。触れた瞬間、少しだけ魔力が抜かれた気がした。普通の魔石だとこちらが魔力を流さないのに対し、これは明らかに私の魔力を吸った。
……どうなってるんだろう。魔法陣か何かが書いてあるのかな? 気になって色々な角度から見てみたいけど、そんな真似はできない。
クリスも魔石へと触れて、魔力の登録は終わった。
「はい、結構です。本を借りる時はその本に少しだけ魔力を通してください。それで手続きは完了です。魔力を通していない本を持ちだすと扉の結界に拒まれますので気を付けてくださいませ。魔力を流せない場合はこちらに持って来てくださったら大丈夫です」
扉の結界。めっちゃファンタジー用語出てきた! 思わず後ろを振り返って扉を見るが、もちろん何も見えない。まあ結界って言っても魔法の一つだよね。見えるわけないか。
「返す時はどうしたらいいんですか?」
クリスが元気よく手を挙げてベルメール先生へと質問する。ああ、本当だ。借りるときに魔力を通すんだったら、返す時は魔力を抜いたらいいのかな?
「魔力を抜くのですが、これは普通にはできることではありませんので、こちらへ持ってきていただければ結構です」
「できるのでしたら自分でしてもよろしいのでしょうか?」
その問いにベルメール先生は驚いた表情で私を見た。そして、ふっと柔らかく微笑んだ。
「ええ、もちろんです。ですが、図書室の外では魔力を抜くことはできませんので注意してください。……ヘンドリックとエレナはとても優秀な兄妹なのですね」
なるほど。お兄様も自分でしていたのか。というか私もだけどヘンドリックお兄様だってゲーム的にはモブキャラだよね? なんでこんなに優秀な設定になっているのかすごく不思議。
とは言っても考えたってどうしようもない。私はそんな疑問など頭の片隅に追いやった。
重たい扉を引いて中へと入ると、昼休みには空っぽだったカウンターの中に女の人が座っていた。司書さんかな?
「こんにちは」
「あらまあ、いらっしゃい」
声をかけた私たちを見てその人は驚いたように目を丸くしたが、すぐに微笑んでくれた。とても感じの良い人だ。それにしてもなんで驚かれたんだろう。
首を傾げると、司書さんはふふっと笑った。
「ごめんなさいね、ここへはいつも決まった数人しか来ないから初めて見る顔って嬉しくて」
「そうなのですか。こんなに本がたくさんあるのにあまり利用されないなんて寂しいですわね」
昼休みに来た時に人がいないと思ったのは、昼休みだから、じゃなくてそれが普通だったのか。寂しいと口では言っているが、正直嬉しい。だって人が少ない方が集中して本が読めるし。
「ええ、そうね。でも毎日顔を出してくれる子もいたのよ。残念ながら去年卒業してしまったけれど」
へえ、毎日図書室に通うってすごい勉強家なんだ。
「その子、なんだかツンツンしているのだけど、本当は優しい子でね。わたくしが本をたくさん持っていたら半分以上持ってくれたり、困っていたら助けてくれたりしてくれてね。すごくいい子だったんだけどね」
ツンツンしていて本当は優しい去年卒業した勉強家。優しいとはっきり言ってしまうのには抵抗があるけど、そういう人を一人知っている気がする。
クリスも気が付いたのか、何とも言えない表情で私の方を見ている。……だよね。
「その人、目がこうつり上がっていて、結構かっこいいヘンドリックという名前ではありませんでしたか?」
手で目じりをきゅっと持ち上げると、司書さんは嬉しそうに顔を綻ばした。
「ええ、そうですわ。ヘンドリックです。あなたご存じなのね」
「はい、わたくしの兄ですの。改めて、わたくしエレナ・フィオーレと申します」
司書さんが驚いて「まあまあ」と言うのを聞いて、クリスも口をはさむ。
「わたくしはクリスティーナ・クレヴィングですわ」
「クレヴィングって、じゃああなたはヨハンの?」
「ええ、そうですの」
にっこりとした表情で頷くクリスに、司書さんは更に目を丸くした。「じゃあ、あなたが……」と小さな呟きが聞こえた。うん? 何? クリスがどうかしたの?
私の時とはちょっと違った反応に私は首を傾げるが、クリスは特に不思議そうでもなく頷いた。
「ええ」
「まあまあ、ここはあなたには少し窮屈でしょう。この図書室では他の生徒がいない間だけでも楽に過ごしてちょうだい」
「はい、ありがとうござます。ではお言葉に甘えて」
クリスからすっと令嬢の仮面が剥がれ落ちて、いつものクリスの表情になる。え、何? 全然意味が分からないんだけど。司書さんクリスのこと知っているの? 令嬢らしくしなくていいの?
「こんにちは、ベルメール先生」
すっと私たちの上に影が落ち、後ろから声が聞こえた。振り向くとそこにはヨハンが立っていた。
「あら、ヨハン。そうね、今年からは先生なのよね。この子たちを見ていると五年前が懐かしいわ。あの頃はまだあなたもヘンドリックも小さかったもの」
「昔の話は止めてください」
ヨハンが珍しく照れたようにベルメール先生の話を遮った。小さいヨハンとヘンドリックお兄様。ちょっと気になる。
「それよりも挨拶は終わりましたか? この子が本を借りたいようで」
「ああ、わたくしの挨拶がまだでしたね。わたくしはディアナ・ベルメール。この魔法学校卒業と同時にずっとここで司書をしておりますの。図書室で分からないことがあったらなんでも聞いてちょうだい」
「はい、ありがとございます、ベルメール先生」
ベルメール先生は「じゃあ早速」と、カウンターの上に拳サイズの魔石を置いた。魔法省で見た空の魔石ではない。綺麗な台座に乗っていて、おしゃれな装飾もしてある。
「これはこの図書室の魔石です。ここに魔力を登録することによって、本の貸し出しを行えるようになります。どうぞ触れてみてくださいませ」
そっとヨハンに背中を押され、魔石へと手を伸ばす。触れた瞬間、少しだけ魔力が抜かれた気がした。普通の魔石だとこちらが魔力を流さないのに対し、これは明らかに私の魔力を吸った。
……どうなってるんだろう。魔法陣か何かが書いてあるのかな? 気になって色々な角度から見てみたいけど、そんな真似はできない。
クリスも魔石へと触れて、魔力の登録は終わった。
「はい、結構です。本を借りる時はその本に少しだけ魔力を通してください。それで手続きは完了です。魔力を通していない本を持ちだすと扉の結界に拒まれますので気を付けてくださいませ。魔力を流せない場合はこちらに持って来てくださったら大丈夫です」
扉の結界。めっちゃファンタジー用語出てきた! 思わず後ろを振り返って扉を見るが、もちろん何も見えない。まあ結界って言っても魔法の一つだよね。見えるわけないか。
「返す時はどうしたらいいんですか?」
クリスが元気よく手を挙げてベルメール先生へと質問する。ああ、本当だ。借りるときに魔力を通すんだったら、返す時は魔力を抜いたらいいのかな?
「魔力を抜くのですが、これは普通にはできることではありませんので、こちらへ持ってきていただければ結構です」
「できるのでしたら自分でしてもよろしいのでしょうか?」
その問いにベルメール先生は驚いた表情で私を見た。そして、ふっと柔らかく微笑んだ。
「ええ、もちろんです。ですが、図書室の外では魔力を抜くことはできませんので注意してください。……ヘンドリックとエレナはとても優秀な兄妹なのですね」
なるほど。お兄様も自分でしていたのか。というか私もだけどヘンドリックお兄様だってゲーム的にはモブキャラだよね? なんでこんなに優秀な設定になっているのかすごく不思議。
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