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お弁当
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最後まで読み切った私はパタンと音を立てて本を閉じた。それに反応してクリスが動く気配がする。驚くようなことは書いてあった。だけど思ったよりも収穫は少ない。
「どうだった?」
「そうね……」
要約すると、魔法についてかなり詳しく書かれた本だ。私の知らないことは闇属性のことだけだった。光属性があるのだから闇属性もあってもおかしくはない。ただゲームには登場しなかっただけだ。
そして闇属性にできること。これは大体イメージ通り。人を呪う、操る、毒を作る、そして一番興味深いのは別の空間を作り出せること。文字通り、新たに空間を作り出せる。使いようによってはとても使える魔法だ。
「おそらく作者は全属性な上に闇属性が使えたんじゃないかと思うの」
光属性は伝説として、おとぎ話として残っていた。しかし闇属性なんてものは聞いたこともない。そんな属性のことを詳しく書くことができる理由なんて本人が使えるから以外に思い浮かばない。さらに、本にはもちろん光属性のことも書いてあったが、詳しい事なんて何も書いていなかった。私が皆に聞いた話くらいだ。
私の話を静かに聞いていたクリスは、首を傾げて本を眺めた。
「でもさ、これって何のための本なんだろう」
そう、そこだ。私も気になっていた。
「普通の魔法の本と違うところって闇属性について書かれてるってとこだよね。もしこれを誰にも知られたくないのなら普通本にして学校になんて置かないよね?」
「ええ、わざわざ読むための条件を設けるところも訳が分からないわね。誰にも読ませる気がないじゃない。読んでもらいたいのか読ませたくないのか分からないわ」
学校に置いたということは誰かに読んで欲しいということ。だけど全属性持ちの魔力強化できる人がいったい何人いるというのか。矛盾している。
私はため息を一つ落として椅子から立ち上がった。
「これではまるで内容どうのというよりも、読める人を探しているようね」
全属性持ちの魔力強化が可能な人。それをあぶりだすための本。だけどその理由が分からない。
「そうだね。とりあえずエレナは読めないふりをしていた方が良いんじゃない? 先にこれの作者を突き止めようよ」
「ええ、そうしましょう」
面倒ごとはごめんだ。まだゲームも始まっていないというのに。ようやく子供らしく学校生活を送れると思ったのに。
「とりあえず今日はもう寝ましょう。この本は明日図書室へ返すわ。その時にベルメール先生に探りを入れてみましょう」
明らかに何かを知っているベルメール先生。先生が敵なのか味方なのかをまず見極めないといけない。……別に敵も味方もないかもしれないけど。
時計はもう既に十時を指している。いい子は寝る時間だ。クリスは頷いてベッドへと入る。私はそれを確認すると明かりを消す魔法陣へと触れた。
真っ暗な中でベッドへと入り、布団をかぶる。闇の魔法。光の魔法の真逆の存在。簡単に人を殺すことのできる属性。もしこれが世の中に知れ渡ったら、もしこれを持つのが悪い人だったら、きっとこの世界は簡単になくなってしまうんだろうなと思う。
少なくとも私の知らない、私が憧れたファンタジー世界ではなくなってしまう。それだけは本当に嫌だ。面倒ごとは避けたい。だけど放っておくことはできない。ヒロインが編入してくるまであと三年。それまでにできるだけのことはしたいと思った。ただのモブに徹する為に。とりあえず、本の作者を探すことと、ヘンドリックお兄様とヨハンへの協力要請だ。
翌日の目覚めはあまり良くなかった。ぐっすり眠れていない感じ。まだ寝足りない。だけど無理やり体を動かしてベッドから出ると、自分で思っていたよりも動けそうだった。とりあえず食堂のキッチンを借りてお弁当作りっと。
食堂のおばちゃんには昨日交渉してオッケーを貰っている。部屋の外に出るために身支度を整えていると、クリスがもぞもぞと動く気配がした。
時間はまだ五時。あと三十分は寝かせておいてあげたい。できるだけ物音を立てないようにこそこそと部屋を出て廊下を歩く。もちろんまだ誰も起きていないようで、人の気配は全くない。
「おはようございます」
食堂へと入ると、もう既におばちゃん達が朝ごはんの支度をはじめていた。
「おはよう、エレナちゃん。早起きだね」
「ええ、六時から剣の訓練へ行いますので。じゃあこの隅をお借りしてもいいでしょうか?」
「うん、食材は好きに使ってもらっていいからね」
お礼を言って冷蔵庫を開けてみる。エレナになってから料理される前の食材を見たのは数えるほどしかない。だけど見た限り私の知らない食べ物はなさそうだ。
うん、これなら大丈夫そう。あまり高くない私の料理スキルでもお弁当は完成しそうだ。
卵焼きと、唐揚げと、ウインナーと……あとはお弁当の定番って言ったら何だろう。ああ、きんぴらごぼう? でもごぼうがないな。ポテトサラダにしよう。あとはなんと言ってもおにぎり!
はっきり言うと私は和食に飢えていた。この世界に来てからというもの、食事は洋食ばかり。お米はあるけどいつもピラフとかパエリアになって出てくる。お醤油もあるのに和食にはならない。もちろん美味しいし、おしゃれでバリエーションも豊富だけど、それでも日本人としては和食が食べたい。
さっさと作って魔法で作っておいたわっぱのお弁当箱に詰めていく。二人分だから簡単。それに汚れ物を洗うのに水魔法を使うと一瞬で終わるので超楽!
お弁当はあっという間にできあがり、私はお礼を言って食堂を出た。……おばちゃん達すごい私の方見てたな。やっぱり見たことない料理だからだよね。今度時間のある時にでも教えてあげようかな。
「どうだった?」
「そうね……」
要約すると、魔法についてかなり詳しく書かれた本だ。私の知らないことは闇属性のことだけだった。光属性があるのだから闇属性もあってもおかしくはない。ただゲームには登場しなかっただけだ。
そして闇属性にできること。これは大体イメージ通り。人を呪う、操る、毒を作る、そして一番興味深いのは別の空間を作り出せること。文字通り、新たに空間を作り出せる。使いようによってはとても使える魔法だ。
「おそらく作者は全属性な上に闇属性が使えたんじゃないかと思うの」
光属性は伝説として、おとぎ話として残っていた。しかし闇属性なんてものは聞いたこともない。そんな属性のことを詳しく書くことができる理由なんて本人が使えるから以外に思い浮かばない。さらに、本にはもちろん光属性のことも書いてあったが、詳しい事なんて何も書いていなかった。私が皆に聞いた話くらいだ。
私の話を静かに聞いていたクリスは、首を傾げて本を眺めた。
「でもさ、これって何のための本なんだろう」
そう、そこだ。私も気になっていた。
「普通の魔法の本と違うところって闇属性について書かれてるってとこだよね。もしこれを誰にも知られたくないのなら普通本にして学校になんて置かないよね?」
「ええ、わざわざ読むための条件を設けるところも訳が分からないわね。誰にも読ませる気がないじゃない。読んでもらいたいのか読ませたくないのか分からないわ」
学校に置いたということは誰かに読んで欲しいということ。だけど全属性持ちの魔力強化できる人がいったい何人いるというのか。矛盾している。
私はため息を一つ落として椅子から立ち上がった。
「これではまるで内容どうのというよりも、読める人を探しているようね」
全属性持ちの魔力強化が可能な人。それをあぶりだすための本。だけどその理由が分からない。
「そうだね。とりあえずエレナは読めないふりをしていた方が良いんじゃない? 先にこれの作者を突き止めようよ」
「ええ、そうしましょう」
面倒ごとはごめんだ。まだゲームも始まっていないというのに。ようやく子供らしく学校生活を送れると思ったのに。
「とりあえず今日はもう寝ましょう。この本は明日図書室へ返すわ。その時にベルメール先生に探りを入れてみましょう」
明らかに何かを知っているベルメール先生。先生が敵なのか味方なのかをまず見極めないといけない。……別に敵も味方もないかもしれないけど。
時計はもう既に十時を指している。いい子は寝る時間だ。クリスは頷いてベッドへと入る。私はそれを確認すると明かりを消す魔法陣へと触れた。
真っ暗な中でベッドへと入り、布団をかぶる。闇の魔法。光の魔法の真逆の存在。簡単に人を殺すことのできる属性。もしこれが世の中に知れ渡ったら、もしこれを持つのが悪い人だったら、きっとこの世界は簡単になくなってしまうんだろうなと思う。
少なくとも私の知らない、私が憧れたファンタジー世界ではなくなってしまう。それだけは本当に嫌だ。面倒ごとは避けたい。だけど放っておくことはできない。ヒロインが編入してくるまであと三年。それまでにできるだけのことはしたいと思った。ただのモブに徹する為に。とりあえず、本の作者を探すことと、ヘンドリックお兄様とヨハンへの協力要請だ。
翌日の目覚めはあまり良くなかった。ぐっすり眠れていない感じ。まだ寝足りない。だけど無理やり体を動かしてベッドから出ると、自分で思っていたよりも動けそうだった。とりあえず食堂のキッチンを借りてお弁当作りっと。
食堂のおばちゃんには昨日交渉してオッケーを貰っている。部屋の外に出るために身支度を整えていると、クリスがもぞもぞと動く気配がした。
時間はまだ五時。あと三十分は寝かせておいてあげたい。できるだけ物音を立てないようにこそこそと部屋を出て廊下を歩く。もちろんまだ誰も起きていないようで、人の気配は全くない。
「おはようございます」
食堂へと入ると、もう既におばちゃん達が朝ごはんの支度をはじめていた。
「おはよう、エレナちゃん。早起きだね」
「ええ、六時から剣の訓練へ行いますので。じゃあこの隅をお借りしてもいいでしょうか?」
「うん、食材は好きに使ってもらっていいからね」
お礼を言って冷蔵庫を開けてみる。エレナになってから料理される前の食材を見たのは数えるほどしかない。だけど見た限り私の知らない食べ物はなさそうだ。
うん、これなら大丈夫そう。あまり高くない私の料理スキルでもお弁当は完成しそうだ。
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