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疑い
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二人で教室へと入ると、一瞬にして全ての視線が私達に集まり、話声は唐突に消えた。異様な雰囲気の中を席まで歩く。とても居心地が悪い。何も悪いことはしていないのに俯いてしまいそうになる。
というか本来祝われるべきじゃない? だって一位だよ、絶対こんな雰囲気になるなんておかしいよ! とちょっとだけ腹が立ってきた時だった。
「エレナ、クリス」
私たちを呼び止める声が聞こえて、私は足を止めて振り返る。その声に緊張で体が強張った。何を言われるのかと身構えて、正面から声の主、カイを見る。
カイはじっと私とクリスの顔を見て、そして爽やかに笑った。
「おめでとう。すごいよ、二人とも」
まず初めにほっとした。カイに誤解されるのはとても嫌だったから。そして、嬉しさが込み上げてきた。クリスの表情も段々明るくなり、いつもの笑顔が咲く。
「次は俺が一位取るからな!」
レオンがいつもと同じ口調でそう言う。今回二位だったのが悔しかったのか、そうではなかったのか分からない口ぶりだ。
「僕も次はクリスを抜くからね」
文官科の三位だったマクシミリアンが笑いながらそう言う。
「二人とも私を忘れてはいないだろうね。今回は出遅れたけど、次はエレナも抜かすからね」
カイがそう言う。私はクリスと顔を見合わせた。この空気の中そんな風に言える三人がとても眩しく見えた。そしてとても心が温かくなった。
自然と頬が緩んだ。人目など気にならないくらい嬉しかった。クリスの表情も段々と明るくなっていく。
「ええ、わたくし達も負けませんわよ」
「次回も頑張りましょうね、エレナ様」
ふっと笑い、改めて席へと進む。教室中の空気がが少しだけ穏やかになったような気がした。その時だった。
「何が『負けません』、だ。どうせカンニングでもしたんだろう」
恐らく皆が思っていただろう。だけど誰も言わなかった言葉だった。そんなに大きな声ではなかったが、空気が一気に凍り付いた。振り返るのが嫌になるこの声。だけど無視はできない。身分は私の方が下なのだ。
「ラルフ様の婚約者の座に少しでも相応しくなりたいと頑張った結果がこれですわ。カンニングなどしておりませんわ」
「ふん、カンニングなどしたら婚約者である俺の評価にも関わるとなぜ分からんのだ」
だからしてないって言ってるじゃん! どうしてこんなに話が通じないの……。
ざわめきがだんだんと大きくなってきた時、教室が扉が開き、コツコツとノイナー先生が入って来た。
「何をしているのですか。授業はもう始まりますよ。早くそれぞれの科の教室に移動してください」
その一言で皆が慌てて動くかと思ったが、その前に声が上がった。
「先生、あのカンニングした二人をこのままにしておいてもいいんですか?」
誰がそう言ったのか確認しなくても分かる。ラルフだ。そしてその言葉に続いてちらほらと同じような言葉が控えめに聞こえた。
「あの二人がどこぞの教師と仲が良いことは誰もが知っていますし」
ヨハンのことか……。
ノイナー先生は何を考えているのか分からない表情でその様子を眺めるばかり。するとどこかでガタン、と大きな音がした。反射的にそちらを見る。
音を立てて立ち上がったのはベアトリクスだった。おお、懐かしのベアトリクス。最近は関わることもないし、嫌がらせもないし忘れていた。悪役令嬢のベアトリクスがこんなチャンスを逃すわけがないよね。
と、思っていたが、ベアトリクスは一人でさっさと教室を出て行った。とても面白くなさそうな表情で。
あれ? 何もなし? ここぞとばかりにカンニングの追及をしてくるかと思っていたんだけど。そう思っていたのはベアトリクスの取り巻き達も同じようで、教室の様子を気にしながらもベアトリクスを追いかけるように出て行った。
……もしかするとカイと距離を置いた私たちはもう敵ではないと思っているのかもしれない。よく分からないけどラッキーだ。
「クリス、行きましょう」
私も授業に遅れるのは嫌だ。幸い次に受けようと思っている文官科の教室はここから比較的近いので間に合うだろう。机の上に置いたいたノートを回収し、クリスと一緒に教室を出る。
あの空気が自分で思っていたよりも辛かったのか、足取りも重かった。カンニングをしたとかしてないとか言っていたらきりがない。証拠なんてないんだし。
少しだけ早足で歩いていると、後ろからぱたぱたと静かな足音が聞こえ、私達に並んだ。誰かなと見てみると、普通に仲良くしている女の子二人だった。
「エレナ様、クリスティーナ様、わたくし達は分かっておりますわ。お二人がどれだけ頑張られていたのか。カンニングなんておっしゃる方のことは気にしないでくださいませ」
私とラルフの関係が決していいものではないと、既に皆気付き始めている。この二人は遠回しにラルフのあの態度を気にするなといいたいのだろう。
……まあ確かに全科で一位を取ったのが私じゃなかったらラルフもわざわざこんな風に言わなかったかもしれない。本当に、私はどうしてこんなにもラルフに嫌われているのだろうか。不愉快だと思う時期はとっくに過ぎた。今はただただ不思議で仕方がない。
「ありがとうございます」
クリスが本当に嬉しそうな笑顔でそう言うと、二人も釣られるように笑みを浮かべた。
というか本来祝われるべきじゃない? だって一位だよ、絶対こんな雰囲気になるなんておかしいよ! とちょっとだけ腹が立ってきた時だった。
「エレナ、クリス」
私たちを呼び止める声が聞こえて、私は足を止めて振り返る。その声に緊張で体が強張った。何を言われるのかと身構えて、正面から声の主、カイを見る。
カイはじっと私とクリスの顔を見て、そして爽やかに笑った。
「おめでとう。すごいよ、二人とも」
まず初めにほっとした。カイに誤解されるのはとても嫌だったから。そして、嬉しさが込み上げてきた。クリスの表情も段々明るくなり、いつもの笑顔が咲く。
「次は俺が一位取るからな!」
レオンがいつもと同じ口調でそう言う。今回二位だったのが悔しかったのか、そうではなかったのか分からない口ぶりだ。
「僕も次はクリスを抜くからね」
文官科の三位だったマクシミリアンが笑いながらそう言う。
「二人とも私を忘れてはいないだろうね。今回は出遅れたけど、次はエレナも抜かすからね」
カイがそう言う。私はクリスと顔を見合わせた。この空気の中そんな風に言える三人がとても眩しく見えた。そしてとても心が温かくなった。
自然と頬が緩んだ。人目など気にならないくらい嬉しかった。クリスの表情も段々と明るくなっていく。
「ええ、わたくし達も負けませんわよ」
「次回も頑張りましょうね、エレナ様」
ふっと笑い、改めて席へと進む。教室中の空気がが少しだけ穏やかになったような気がした。その時だった。
「何が『負けません』、だ。どうせカンニングでもしたんだろう」
恐らく皆が思っていただろう。だけど誰も言わなかった言葉だった。そんなに大きな声ではなかったが、空気が一気に凍り付いた。振り返るのが嫌になるこの声。だけど無視はできない。身分は私の方が下なのだ。
「ラルフ様の婚約者の座に少しでも相応しくなりたいと頑張った結果がこれですわ。カンニングなどしておりませんわ」
「ふん、カンニングなどしたら婚約者である俺の評価にも関わるとなぜ分からんのだ」
だからしてないって言ってるじゃん! どうしてこんなに話が通じないの……。
ざわめきがだんだんと大きくなってきた時、教室が扉が開き、コツコツとノイナー先生が入って来た。
「何をしているのですか。授業はもう始まりますよ。早くそれぞれの科の教室に移動してください」
その一言で皆が慌てて動くかと思ったが、その前に声が上がった。
「先生、あのカンニングした二人をこのままにしておいてもいいんですか?」
誰がそう言ったのか確認しなくても分かる。ラルフだ。そしてその言葉に続いてちらほらと同じような言葉が控えめに聞こえた。
「あの二人がどこぞの教師と仲が良いことは誰もが知っていますし」
ヨハンのことか……。
ノイナー先生は何を考えているのか分からない表情でその様子を眺めるばかり。するとどこかでガタン、と大きな音がした。反射的にそちらを見る。
音を立てて立ち上がったのはベアトリクスだった。おお、懐かしのベアトリクス。最近は関わることもないし、嫌がらせもないし忘れていた。悪役令嬢のベアトリクスがこんなチャンスを逃すわけがないよね。
と、思っていたが、ベアトリクスは一人でさっさと教室を出て行った。とても面白くなさそうな表情で。
あれ? 何もなし? ここぞとばかりにカンニングの追及をしてくるかと思っていたんだけど。そう思っていたのはベアトリクスの取り巻き達も同じようで、教室の様子を気にしながらもベアトリクスを追いかけるように出て行った。
……もしかするとカイと距離を置いた私たちはもう敵ではないと思っているのかもしれない。よく分からないけどラッキーだ。
「クリス、行きましょう」
私も授業に遅れるのは嫌だ。幸い次に受けようと思っている文官科の教室はここから比較的近いので間に合うだろう。机の上に置いたいたノートを回収し、クリスと一緒に教室を出る。
あの空気が自分で思っていたよりも辛かったのか、足取りも重かった。カンニングをしたとかしてないとか言っていたらきりがない。証拠なんてないんだし。
少しだけ早足で歩いていると、後ろからぱたぱたと静かな足音が聞こえ、私達に並んだ。誰かなと見てみると、普通に仲良くしている女の子二人だった。
「エレナ様、クリスティーナ様、わたくし達は分かっておりますわ。お二人がどれだけ頑張られていたのか。カンニングなんておっしゃる方のことは気にしないでくださいませ」
私とラルフの関係が決していいものではないと、既に皆気付き始めている。この二人は遠回しにラルフのあの態度を気にするなといいたいのだろう。
……まあ確かに全科で一位を取ったのが私じゃなかったらラルフもわざわざこんな風に言わなかったかもしれない。本当に、私はどうしてこんなにもラルフに嫌われているのだろうか。不愉快だと思う時期はとっくに過ぎた。今はただただ不思議で仕方がない。
「ありがとうございます」
クリスが本当に嬉しそうな笑顔でそう言うと、二人も釣られるように笑みを浮かべた。
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