池に落ちて乙女ゲームの世界に!?ヒロイン?悪役令嬢?いいえ、ただのモブでした。

紅蘭

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定期試験の結果

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毎日がとても忙しくて、日々はあっという間に過ぎて行った。平日は学校で勉強。休日も寮の部屋に籠って勉強漬け。皆同じような毎日を送っており、上級生はそれを懐かしそうに眺めていた。私も来年にはあんな風に新二年生を懐かしく見る日が来るのかと思うと信じられない気持ちになる。

前期の定期試験が終わり、翌日、張り出された結果を見に向かう。隣を歩くクリスはとても機嫌が良さそうだ。よほど試験の結果に自信があるのだろうか。


「楽しそうね、クリス」


私がそう言うと、クリスは「うん!」と元気よく頷いた。


「だって来週には長期休暇に入るんだよ! この勉強ばかりの毎日からおさらばだよ!」


私は「そう」と一言返事をして前を見る。

……あれ、休暇中って補習なかったっけ? 前にヨハンがチラッと言っていたような気がするんだけど。あれ、気のせい? 後で確認しに行かないといけないな。でもそれまでは黙っておこう。こんなにイキイキしているクリスを見るのは久しぶりだし。

定期試験は科ごとに一日ずらして行われた。今までだったら三科全てが同じ日に行われていたようだが、今年は私やクリス、カイが複数の科を取っているので、その関係だ。騎士科、魔法科、文官科の順に行われた試験。自信はあるとも言えないけどないとも言えない。それなりには頑張れたと思っている。多分。

まあだけど去年みたいに一位はとれないだろうな。正直二割くらい分からないところあったし。

結果発表の場所が近付いて来て、私はその空気の異質さに気が付いた。クリスと顔を見合わせて首を傾げる。今までと違う気がする。やっぱり二年生になったからかな?

段々と近付くと、それに伴って、私たちへと向けた視線があちこちにあることに気が付いた。ざわざわひそひそとしている。まるでヘンドリックお兄様に連れられて出たあの卒業パーティーのようだ。


「クリス、何をしたのかしら?」

「私じゃないよ。エレナでしょ」


なんてお互いのせいにしながらも私たちはとりあえず結果を目指す。注目されるのには慣れている。本当は嫌だけど。

結果発表の前の人だかり。遠くから見ようかと思って立ち止まると、私達に気が付いた子達がざわっとなり、人だかりが割れた。前に伸びる一本の短い道。

……いや、本当に何?

怪訝さが表情に出ないように気を付けて、私はクリスを見る。クリスは明らかに戸惑っており、本当に心当たりがないようだ。

後ろにヘンドリックお兄様がいるとか?

振り返ってみても、もちろんお兄様がいるわけがない。……となると原因はあれか。成績がすごい良かったか、すごい悪かったか。

どちらにせよこの場を早く離れたい。私は割れた人だかりの中を前へと進み、結果を見上げた。

……やっちまったー……!

横に立つクリスは上を見たままポカンと口を開けている。私はため息を吐きたいのをこらえて、改めて結果へと目を向ける。

三科並んだ順位。それぞれ一番上に私の名前はあった。そして、魔法科、文官科ではその下にクリスの名前。私たちはそろって一位、二位を取ってしまったのだ。正答率は八割程度。そりゃ目立つわ。複数の科を選択したうえでこの順位って……。

カイの名前は魔法科で五位、文官科で六位にあった。一つの科に大体十人ちょっと。そう考えると中間くらいだと言える。けど、複数の科を選択している私たちがこの順位だと、カイはかなり悔しいだろう。


「クリス、行きましょう」


このまま人の目にさらされるのは勘弁。というか、こんな結果を出したら絶対よくない噂が立つ。かなりやばいかもしれない。頑張りすぎてしまったかもしれない。

足早にその場を離れる私たちをいくつもの視線が取り巻いていた。



いつものベンチに腰かけて、ため息を吐く。クリスはまだ信じられないようで、ぽかんとしたり、おろおろしたりしている。

本当なら嬉しいはずの結果が全然嬉しくない。素直に喜ぶことができたらどんなに楽か。


「……かなりまずいわ」

「うん」


二人そろって成績が良かったのは二人で一緒に勉強をしたからだろう。別れて授業に出て、分からないところはお互い教え合う。二人とも分からない場合は補習の時に聞く。そうやって私たちは二人で頑張って来た。教えることで勉強になるし、先生に質問するより気楽に聞けるし、同じ部屋なのでいつでも聞ける。

あの点数は私たちの勉強の成果だ。というか八十点くらいで一位が取れるなんて思ってもいなかった。一年生の時は八十点と言ったら六、七位くらいだったから。


「点があんなにも取れないものだとは思っていなかったわ」

「うん、私も皆はもっといい点かと思ってた。だからせいぜい三位か四位くらいだと思ってたんだけど……」


何がまずいって全部の教科で一位を取ったことだろう。不正なんてしていない。だけど他の子達は不正をしないとあんな点数は取れないと思うかもしれない。

ただでさえ、私達が入学前からヨハンと繋がりがあることは皆が知っている。

チャイムの音が響く。予鈴だ。


「ぐだぐだ考えたって仕方がないわ。わたくしとクリスは一生懸命勉強した。それだけよ」


自分にそう言い聞かせるように言って立ち上がると、クリスも「うん」と頷いて立ち上がった。正直不安しかない。注目されるのは慣れた。だけど嫌な噂をされるのは慣れないものだ。教室にも行きたくない。

重たい足を一歩踏み出すと、後ろから手が取られた。


「大丈夫、二人一緒なら怖くないよ」


クリスがきゅっと私の手を握って、私は視界がぼやけた。涙がこぼれないように瞬きをしてごまかす。「ええ」と震える声で返事をすると、私の手を握る手にさらに力がこもり、私もそれを握り返した。
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