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ピクニックへ出発
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週末、私たちが校門へと向かうと、男子たちは既にそこで待っていた。男子はカイにレオンにマクシミリアン、フロレンツ。女子はクリス、リリー、カミラ、そして私。ベアトリクスも誘ったがきっぱりと断られてしまったのだ。
「お待たせしてしまって申し訳ございません」
「全然待っていないから大丈夫だよ」
私の謝罪にカイが爽やかな笑みを浮かべた。お弁当を作っていて少し遅くなってしまったが、集合時間には間に合ったはずだ。それでも私達よりもはるかに身分の高い男子陣を待たせるのは本当に失礼なことだった。
「いやー、でも晴れてよかったね」
しかし全く申し訳なさそうにしていない女子が一人。言うまでもなくクリスである。雲一つない空を見上げて、明るい声を出している。
……まあ確かに少し待たせたくらいで何か思うような人たちではないし、あまり気にしない方がいいのかも。
「そうね、ピクニック日和だわ」
私たちの言葉にカイも空を見上げる。もともと青い目に空が映って更に青が深くなっている。とても絵になる姿だった。
……こういうところを見ると私の推していたカイなんだよな。正直ちょっとだけドキッとする。かっこいいと思う。まあだからと言って好きになることはないけど。目の保養だな。
「皆そろったし早速出発しようぜ」
レオンがニカッと笑い、馬車を指さす。豪華な馬車が二台、そこに止まっていた。カイが用意してくれた馬車だ。うちの馬車よりおしゃれで大きい。
男女で別れて乗り込む。私とクリス、カミラとリリーで向かい合って座ると、扉が閉まり、すぐに馬車は動き始めた。私は膝に抱えたお弁当が振動で倒れてしまわないように、しっかりと抱え込む。
皆で一緒に作ったお弁当がぐちゃぐちゃになったら嫌だもんね。……クリスはうろちょろして味見と称したつまみ食いばっかりしていたけど。
ぎゅっと腕に力を入れて固定すると、クリスが横から「それ私が持つよ」と声をかけてくれた。
「大丈夫よ、ありがとう」
そう言って断るが、クリスは私の腕からバスケットをひょいと持ち上げた。そして自分の膝の上に置き、すうっと鼻から大きく息を吸った。
「あー、いい匂い……」
……目的はそれか。
鍛錬している私と、基本的に何もしていない、たまに一緒に剣を振るクリス。力は同じか、クリスの方が強い。私としてはちょっと不満だけど、クリスは体質だと言うので仕方がない。
だからか知らないけど、クリスは私が荷物を持っているとさりげなく持ってくれる。
まあクリスが持ちたいって言うならあれだけど、それでも生粋のお嬢様であるクリスに物を持たせるのは申し訳ない。本人は満足そうだけど。
でも私が何を言っても無駄か。クリスは何も考えていないように見えて、結構考えていることは知っているし。お弁当はクリスにお願いしよう。
「ところで、カミラちゃんって好きな人っていないの?」
突然、リリーがそう言い出した。思わず私も反応してカミラの方を見てしまう。
とても気になる。最初に会った時にはあんなに小さかったカミラだってもう立派なご令嬢だ。好きな人の一人や二人いてもおかしくはない。……いや、二人いるのはおかしいか。
「わたくしも気になるわ。カミラに好かれる殿方はどのような方なのでしょう」
ゲーム内ではラルフとくっつくカミラだ。もしかすると男の趣味が悪いかもしれない。もしろくでもない相手だったら、カミラには可哀そうだけど全力でその恋を阻止しなければならない。
まあ今見ている限り、カミラはラルフに対して苦手意識があるようだし、あそこまでろくでもない男の子って言うのも他にいないか。
私達に見られ、カミラはほっぺを真っ赤にして、ぶんぶんと首を横に振った。
「好きな方などいませんわ。今は授業について行くのに必死でそのような余裕などありませんもの」
「そうだよね。お勉強難しいもんね」
リリーがカミラの言葉に頷いているが、私にはそれが口実だと分かる。だって一年生の授業なんて全然難しくないもん。少なくともカミラにとっては余裕だろう。
となると、気になる相手がいて隠しているか、恋愛に興味がなく無難に答えたか。
「わたくしのことよりもクリス様ですわ」
そんなことを考えていると、今度はカミラがクリスの方を見た。私もクリスに視線を向ける。
「クリス?」
クリスのそういう話なんて全く聞いたことがない。てっきりマクシミリアンかフロレンツとでもくっつくのかと思っていたけど……。
「好きな人がいるの?」
私が聞くとクリスは「そうじゃないよ」と首を横に振った。首を傾げる私にカミラが言う。
「もしかしてお姉さまはご存じありませんの?」
「あら、わたくしの知らないことがあるのかしら?」
もう何年もずっと一緒にいるクリスだ。大抵のことは知っていると思うけど……特にカミラが知っていて私が知らないことなんて……。
クリスは言いたくなさそうな、少し気まずそうな表情を浮かべている。リリーもどうやら何か知っているような顔で、「そういえばエレナ様が寝ておられる間のことでしたね」と頷いている。
「クリス様は上のお兄様と婚約されているのですよ」
カミラの言葉に頭の中が真っ白になり……
「ええっ!?」
エレナになってからこれまでに出したことのない声を出し、思わず立ち上がってしまった。
「お待たせしてしまって申し訳ございません」
「全然待っていないから大丈夫だよ」
私の謝罪にカイが爽やかな笑みを浮かべた。お弁当を作っていて少し遅くなってしまったが、集合時間には間に合ったはずだ。それでも私達よりもはるかに身分の高い男子陣を待たせるのは本当に失礼なことだった。
「いやー、でも晴れてよかったね」
しかし全く申し訳なさそうにしていない女子が一人。言うまでもなくクリスである。雲一つない空を見上げて、明るい声を出している。
……まあ確かに少し待たせたくらいで何か思うような人たちではないし、あまり気にしない方がいいのかも。
「そうね、ピクニック日和だわ」
私たちの言葉にカイも空を見上げる。もともと青い目に空が映って更に青が深くなっている。とても絵になる姿だった。
……こういうところを見ると私の推していたカイなんだよな。正直ちょっとだけドキッとする。かっこいいと思う。まあだからと言って好きになることはないけど。目の保養だな。
「皆そろったし早速出発しようぜ」
レオンがニカッと笑い、馬車を指さす。豪華な馬車が二台、そこに止まっていた。カイが用意してくれた馬車だ。うちの馬車よりおしゃれで大きい。
男女で別れて乗り込む。私とクリス、カミラとリリーで向かい合って座ると、扉が閉まり、すぐに馬車は動き始めた。私は膝に抱えたお弁当が振動で倒れてしまわないように、しっかりと抱え込む。
皆で一緒に作ったお弁当がぐちゃぐちゃになったら嫌だもんね。……クリスはうろちょろして味見と称したつまみ食いばっかりしていたけど。
ぎゅっと腕に力を入れて固定すると、クリスが横から「それ私が持つよ」と声をかけてくれた。
「大丈夫よ、ありがとう」
そう言って断るが、クリスは私の腕からバスケットをひょいと持ち上げた。そして自分の膝の上に置き、すうっと鼻から大きく息を吸った。
「あー、いい匂い……」
……目的はそれか。
鍛錬している私と、基本的に何もしていない、たまに一緒に剣を振るクリス。力は同じか、クリスの方が強い。私としてはちょっと不満だけど、クリスは体質だと言うので仕方がない。
だからか知らないけど、クリスは私が荷物を持っているとさりげなく持ってくれる。
まあクリスが持ちたいって言うならあれだけど、それでも生粋のお嬢様であるクリスに物を持たせるのは申し訳ない。本人は満足そうだけど。
でも私が何を言っても無駄か。クリスは何も考えていないように見えて、結構考えていることは知っているし。お弁当はクリスにお願いしよう。
「ところで、カミラちゃんって好きな人っていないの?」
突然、リリーがそう言い出した。思わず私も反応してカミラの方を見てしまう。
とても気になる。最初に会った時にはあんなに小さかったカミラだってもう立派なご令嬢だ。好きな人の一人や二人いてもおかしくはない。……いや、二人いるのはおかしいか。
「わたくしも気になるわ。カミラに好かれる殿方はどのような方なのでしょう」
ゲーム内ではラルフとくっつくカミラだ。もしかすると男の趣味が悪いかもしれない。もしろくでもない相手だったら、カミラには可哀そうだけど全力でその恋を阻止しなければならない。
まあ今見ている限り、カミラはラルフに対して苦手意識があるようだし、あそこまでろくでもない男の子って言うのも他にいないか。
私達に見られ、カミラはほっぺを真っ赤にして、ぶんぶんと首を横に振った。
「好きな方などいませんわ。今は授業について行くのに必死でそのような余裕などありませんもの」
「そうだよね。お勉強難しいもんね」
リリーがカミラの言葉に頷いているが、私にはそれが口実だと分かる。だって一年生の授業なんて全然難しくないもん。少なくともカミラにとっては余裕だろう。
となると、気になる相手がいて隠しているか、恋愛に興味がなく無難に答えたか。
「わたくしのことよりもクリス様ですわ」
そんなことを考えていると、今度はカミラがクリスの方を見た。私もクリスに視線を向ける。
「クリス?」
クリスのそういう話なんて全く聞いたことがない。てっきりマクシミリアンかフロレンツとでもくっつくのかと思っていたけど……。
「好きな人がいるの?」
私が聞くとクリスは「そうじゃないよ」と首を横に振った。首を傾げる私にカミラが言う。
「もしかしてお姉さまはご存じありませんの?」
「あら、わたくしの知らないことがあるのかしら?」
もう何年もずっと一緒にいるクリスだ。大抵のことは知っていると思うけど……特にカミラが知っていて私が知らないことなんて……。
クリスは言いたくなさそうな、少し気まずそうな表情を浮かべている。リリーもどうやら何か知っているような顔で、「そういえばエレナ様が寝ておられる間のことでしたね」と頷いている。
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