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学生最後の冬
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その後は驚くほどに早かった。
秋にはレオンとベアトリクスの婚約が成立。公爵家同士の、しかも色々と問題のあったベアトリクスと、明らかにベアトリクスに苦手意識を抱いていたであろうレオンの婚約だ。
魔法学校内だけならず、貴族の間ではかなりの衝撃ニュースだったようで、一時その話題で持ちきりだったそうだ。
更にその後、冬の初めにはレオンの「家を継がない」意思表明がされた。これまたすごく話題になった。
何のための婚約かなどはすぐに噂になるかと思っていたけど、私の考えていた以上にクラッセン公爵家に関しての情報は出ていないようだ。
二人は卒業後すぐに結婚し、その後にベアトリクスがクラッセン公爵家を抜けるそうだ。もちろん、処刑がその後であると言うのは陛下への確認済みである。
十五、六歳で結婚と言うのは恐ろしく早いと私の感覚では思うが、どうもこの世界では普通のようで、既に婚約を結んでいる子達の半数以上が卒業したら結婚すると言っている。……すごい世界だ。
それにしても呆気ないほどに事が淡々を進んだところを見ると、本当にディターレ公爵や公爵夫人はレオンのことに関心がないんだろうなと思う。
まあ今回ばかりはそれが良い方に作用してくれたけど。
そしてカイとリリーの婚約に向けての進捗も順調なようだ。とりあえず陛下や重臣たちの賛同は得たようなのであとは手順を踏むだけらしい。皇族の婚約のことなんて全く知らないけど、色々とすることが多いのだろう。大変そうだ。
窓を開けるとキンと冷えた空気が部屋の中に入り込んでくる。
「見て、クリス、雪よ」
冬の短く、比較的暖かいこの世界、というかこの国。雪が降るのは年に数回程度だ。
「ほんとだね」
クリスが私の隣に並んで外を眺める。そしてニヤニヤしながら私の顔を見た。
「雪遊びしたいからって魔法使っちゃダメだよ」
「分かっているわよっ!」
いつぞやにやらかした王都積雪事件。あれ以来冬が来るたびクリスはそう言って私をからかう。私だってもう分かっているし諦めている。
大体もうそんな子供ではない。雪が積もったところで人目を気にせずに遊ぶなんて無理な話だ。
「それよりさ、もう再来月には卒業だけど、パーティーはラルフと一緒に行くの?」
「あら、まさか」
窓を閉めて口元に手を当ててみる。
「エスコートされる相手はもうとっくにお誘いを受けているはずでしょう? わたくしへお声をかけてくださった殿方はお一人もいませんでしてよ」
クリスだって知っているでしょ、と皮肉を込めてわざと令嬢っぽく喋ると、クリスは「はは」と苦笑いをした。もちろん婚約者持ちの私に声をかけてくるのは、その婚約者のラルフ意外にいるはずがないんだけど。
「クリスこそどうするの? ヘンドリックお兄様からは何か?」
私の問いかけにクリスは首を横に振った。
「一応卒業パーティーの日程は伝えたけど、返事は来てない」
「あー……」
あのお兄様のことだ。面倒だとでも思っているのだろう。
「まあ別に一人で出てもいいんだけどね」
「というかそっちの方が……」
ポッと何気なく口から出た言葉だった。しかしよく考えてみると、それが正解なような気がする。ラルフにしてもヘンドリックお兄様にしても一緒に行くよりも一人で行った方が楽かもしれない。というか絶対に楽だ。
無言でクリスと目を合わせる。クリスも同じことを考えているのが分かった。
「一緒に行きましょうね、クリス」
「もちろんだよ、エレナ」
にっこりと笑ったクリスの笑顔はとても眩しかった。おそらく私も同じような顔をしていただろう。
さて、卒業パーティーまで残りわずか。エレナになって、なんとなく目指していたのはここな気がする。最初は婚約破棄をされないように、今は婚約破棄をされることを望んで。
しかし本当に無事に婚約破棄してくれるのだろうか。さらに婚約を破棄された後、私はどうなるのだろうか。
というのも、私は卒業後の進路が何一つ決まっていない。色々なところから「ぜひうちに」と声をかけてもらったのはいいけど、全てお義母様やアリアに蹴られてしまった。
いつかアリアが言っていた、女子は結婚して家に入り、仕事をしないと言うのが実現してしまいそうだ。幸いなのはラルフとの結婚話は今のところ持ち上がっていないことだ。
卒業した後からでも雇ってくれるところはないのかと本気で考え中。魔法省だったらマルゴット様は歓迎してくれそうだけど、あのヘンドリックお兄様と一緒に働くのはちょっと遠慮したい。贅沢は言っていられない状況になったら仕方ないけど。
でも婚約は絶対に破棄して欲しい! 最近はラルフとの関りなんて全くないし、このまま何もないままだったらどうしよう……。
向こうから破棄してくれないなら何か考える必要があるけど……とりあえず卒業パーティーを待ってみるしかないか。
秋にはレオンとベアトリクスの婚約が成立。公爵家同士の、しかも色々と問題のあったベアトリクスと、明らかにベアトリクスに苦手意識を抱いていたであろうレオンの婚約だ。
魔法学校内だけならず、貴族の間ではかなりの衝撃ニュースだったようで、一時その話題で持ちきりだったそうだ。
更にその後、冬の初めにはレオンの「家を継がない」意思表明がされた。これまたすごく話題になった。
何のための婚約かなどはすぐに噂になるかと思っていたけど、私の考えていた以上にクラッセン公爵家に関しての情報は出ていないようだ。
二人は卒業後すぐに結婚し、その後にベアトリクスがクラッセン公爵家を抜けるそうだ。もちろん、処刑がその後であると言うのは陛下への確認済みである。
十五、六歳で結婚と言うのは恐ろしく早いと私の感覚では思うが、どうもこの世界では普通のようで、既に婚約を結んでいる子達の半数以上が卒業したら結婚すると言っている。……すごい世界だ。
それにしても呆気ないほどに事が淡々を進んだところを見ると、本当にディターレ公爵や公爵夫人はレオンのことに関心がないんだろうなと思う。
まあ今回ばかりはそれが良い方に作用してくれたけど。
そしてカイとリリーの婚約に向けての進捗も順調なようだ。とりあえず陛下や重臣たちの賛同は得たようなのであとは手順を踏むだけらしい。皇族の婚約のことなんて全く知らないけど、色々とすることが多いのだろう。大変そうだ。
窓を開けるとキンと冷えた空気が部屋の中に入り込んでくる。
「見て、クリス、雪よ」
冬の短く、比較的暖かいこの世界、というかこの国。雪が降るのは年に数回程度だ。
「ほんとだね」
クリスが私の隣に並んで外を眺める。そしてニヤニヤしながら私の顔を見た。
「雪遊びしたいからって魔法使っちゃダメだよ」
「分かっているわよっ!」
いつぞやにやらかした王都積雪事件。あれ以来冬が来るたびクリスはそう言って私をからかう。私だってもう分かっているし諦めている。
大体もうそんな子供ではない。雪が積もったところで人目を気にせずに遊ぶなんて無理な話だ。
「それよりさ、もう再来月には卒業だけど、パーティーはラルフと一緒に行くの?」
「あら、まさか」
窓を閉めて口元に手を当ててみる。
「エスコートされる相手はもうとっくにお誘いを受けているはずでしょう? わたくしへお声をかけてくださった殿方はお一人もいませんでしてよ」
クリスだって知っているでしょ、と皮肉を込めてわざと令嬢っぽく喋ると、クリスは「はは」と苦笑いをした。もちろん婚約者持ちの私に声をかけてくるのは、その婚約者のラルフ意外にいるはずがないんだけど。
「クリスこそどうするの? ヘンドリックお兄様からは何か?」
私の問いかけにクリスは首を横に振った。
「一応卒業パーティーの日程は伝えたけど、返事は来てない」
「あー……」
あのお兄様のことだ。面倒だとでも思っているのだろう。
「まあ別に一人で出てもいいんだけどね」
「というかそっちの方が……」
ポッと何気なく口から出た言葉だった。しかしよく考えてみると、それが正解なような気がする。ラルフにしてもヘンドリックお兄様にしても一緒に行くよりも一人で行った方が楽かもしれない。というか絶対に楽だ。
無言でクリスと目を合わせる。クリスも同じことを考えているのが分かった。
「一緒に行きましょうね、クリス」
「もちろんだよ、エレナ」
にっこりと笑ったクリスの笑顔はとても眩しかった。おそらく私も同じような顔をしていただろう。
さて、卒業パーティーまで残りわずか。エレナになって、なんとなく目指していたのはここな気がする。最初は婚約破棄をされないように、今は婚約破棄をされることを望んで。
しかし本当に無事に婚約破棄してくれるのだろうか。さらに婚約を破棄された後、私はどうなるのだろうか。
というのも、私は卒業後の進路が何一つ決まっていない。色々なところから「ぜひうちに」と声をかけてもらったのはいいけど、全てお義母様やアリアに蹴られてしまった。
いつかアリアが言っていた、女子は結婚して家に入り、仕事をしないと言うのが実現してしまいそうだ。幸いなのはラルフとの結婚話は今のところ持ち上がっていないことだ。
卒業した後からでも雇ってくれるところはないのかと本気で考え中。魔法省だったらマルゴット様は歓迎してくれそうだけど、あのヘンドリックお兄様と一緒に働くのはちょっと遠慮したい。贅沢は言っていられない状況になったら仕方ないけど。
でも婚約は絶対に破棄して欲しい! 最近はラルフとの関りなんて全くないし、このまま何もないままだったらどうしよう……。
向こうから破棄してくれないなら何か考える必要があるけど……とりあえず卒業パーティーを待ってみるしかないか。
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