池に落ちて乙女ゲームの世界に!?ヒロイン?悪役令嬢?いいえ、ただのモブでした。

紅蘭

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カミラも一緒に

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「お姉さま、最後の試験でも一番だったとお聞きしました。おめでとうございます」


私の成績トップ者の模様付きリボンを見て、カミラが眩しい笑顔を浮かべる。

ああ、可愛い……カミラの笑顔を見ていると自分の中の悪い心が全て浄化されていくようだ。卒業後のこととか、婚約のこととか、色々考えていたことがさあっと消えて心が軽くなる。


「ありがとう。そうは言っても魔法科だけだけどね」


卒業前の最後の試験。全ての科でトップを取るつもりで気合を入れて挑んだ私だったが、文官科はマクシミリアンに、騎士科はレオンに見事にトップを取られてしまった。

騎士科に関してはペーパーテストだったらレオンに勝っているつもりはある。しかし実技に関してはやはり魔法無しの純粋な身体能力のみとなると、私の体は不利だった。

この二つの結果を見た時、魔法科までカイやリリーにトップを取られていないかととても不安になった。いやまあ別ントップを取らなかったからと言って別に何かあるわけでもないんだけど。

というより本来なら多分リリーが一番で卒業するはずだっただろう。邪魔者は私の方なのだ。


「だけって、全ての科をこなしている時点で素晴らしいことですわ! わたくしなんて魔法科だけで精一杯ですもの。ご自分を過小評価しないでくださいませ!」


カミラがすごい勢いでそう言う。事実を言っただけなのになぜ私はこんなに怒られるのだろう。しかしカミラが私を誇らしく思ってくれているであろうことは嬉しい。


「ありがとう」


カミラの自慢の姉であれるなら私はいくらでも努力できる自信がある。本当に妹がこんなに可愛いものだとは知らなかった。


「だけどお姉さまが卒業してしまわれたら寂しくなりますわ……」

「あら、卒業したっていつでも会えるじゃない。カミラに呼ばれたらわたくし、どこまでだって飛んで行きますわよ」


そう言うとカミラはふふ、と可笑しそうに笑った。


「お姉さまでしたら本当に空を飛んで来てしまいそうですわ」


いや、さすがに比喩だったんだけど……もしかして魔法使ったらできるのかな? 試したことはないけどまた試してみよう。


「お姉さまは卒業パーティーはあの方と?」

「いいえ、お誘いは受けておりませんもの。一人で参りますわ」


もう目前に迫った卒業パーティー。いまだにあの馬鹿からの誘いはないどころか、ろくに顔を合わせてもいない。今更誘われるわけもないだろう。となると他に一緒に行く人もいな……カミラは?

はた、と気が付いた。ヘンドリックお兄様は婚約者がいないから代わりに私を連れて行ってくれた。婚約者のいない人は父親や母親と行く人もいるみたいだし……それなら私が家族であるカミラを誘っても問題ないのでは?

婚約者はいるけど、パーティーの相手がいないというところでは一緒だ。


「カミラ、もしよかったらわたくしと一緒に行かない? 殿方のようなエスコートはできないけれど、きっと楽しいわよ」

「ええ!? そのようなこと……よろしいのでしょうか?」


カミラは驚いて声を上げるが、その表情がとても嬉しそうなのは分かっている。「きっと大丈夫よ」と頷く。同性なのでエスコート相手にはならないけど、別にいいだろう。


「それはさすがに聞いたことないんだけど」


横から声が聞こえて、そちらにはクリスが半分呆れたような表情で立っていた。


「あら、クリス、おかえりなさい」


いつの間に部屋に入って来たのだろう。全く気が付かなかった。


「ただいま。何か面白そうな話してるみたいだね」


クリスがもう一つ空いていた椅子に腰かけ、そして私を見た。


「カミラを連れていきたいなら誰か別の人に頼んだら? 駄目ではないと思うけど、同性のエレナが連れて行くのは裏で何言われるか分からないよ。エレナも、カミラも」

「それはいけないわね」


私は別になんて言われてもいいけど、カミラが陰口を言われるのは駄目だ。ベアトリクスのおかげで大分敵対している子達は減ったけど、それでも全くいないわけでもない。カミラにまで火の粉が飛ぶのは避けたいところだ。クリスが今までそんな話を聞いたことがないということは、非常識なことなんだろうし。


「誰か頼めるような殿方はいらっしゃるかしら?」

「いいえ、お姉さま。そこまでするくらいでしたらわたくしはお留守番しておりますわ。お姉さまの晴れ舞台を見ることができないのはとても残念ですが……」


俯いてそう言うカミラをよそに、クリスが言う。


「婚約者がいなくて頼めそうな相手って言ったら一人しか心当たりないんだけど、どう思う?」

「ええ、わたくしも一人だけ」


しかもあのラルフに対抗できる相手だ。

本来、ゲーム内ではおそらくラルフは卒業パーティーでカミラをエスコートしただろう。ということは婚約破棄の場にカミラもいたはず。できればそれを再現したい。

……というのは建前で、私がカミラも一緒に行きたい。だって一緒の方が楽しいだろうから。


「もうあまり時間がないわ。すぐにお願いしに行きましょう」


にっこりと笑って立ち上がると、カミラは少し戸惑ったような表情を浮かべた。


「あ、あの、わたくしは……はい」


別に圧なんてかけてないよ。大切な妹だもん。私はただ笑顔で見つめただけだもん。

隣でクリスが「やっぱり兄妹だね」とポツリと呟いたのは無視した。
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