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県大会編1

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 一辺が一一メートルの正方形に区切られた空間に、二人は立っていた。
 二人とも稽古着と袴の上に面を被り、胴を付け、籠手を嵌め、垂を締め、竹刀を握っている。
 高校剣道県大会の試合だ。
 一方は国邑高校剣道部の主将伊庭一刀。
 天宮神社の見習い神職で、剣道が強く、県大会常連の強者で<国邑の一本刀>という異名を大会関係者から付けられている。
 故にその実力は折り紙付きだった。
 一刀は古より妖魔を討伐してきた天宮神社の一員であり、剣術はそこで習い、妖魔討伐の役目も幾度もこなしてきた。
 そのため高校生どころか、成人の剣道家と試合をしても勝てる程の実力を持っている。
 だから対戦相手が剣道の試合しかしたことのない高校生なら実力の半分程度でも勝てる。

「一刀! 頑張って!」

 観客席から声を掛けてきたのは、天宮雅。
 天宮神社の一人娘で一刀の許嫁だ。
 幼い頃に両親を事故で亡くした一刀を雅の父親が引き取ってから一つ屋根の下で兄妹同然に暮らしてきた。そして長い時間を掛けてその間は深くなり、先日身体を寄り深く結びつけた。
 幾度も肌を重ね合わせたため、雅は一刀の事が非常に気になる。
 武道の試合のため声援は控えめにしなければならないことを知っていてもつい声を出して応援してしまうほどに。
 一方の一刀も雅の事が非常に気になる。
 試合で声援を聞きつければ、それが遠くの観覧席から出された小さい雅の声でも一刀の耳は確実に捕らえた。その声は耳から入り脳髄に放たれ身体の中で木霊する。
 木霊して増幅された声は全身を奮い立たせる。

「始め!」

「めえええええんっっっっっっっ」

 審判の合図と共に矢いや獣のように前に突進した一刀は、相手が対応する隙を与えず、面に竹刀をぶつける。
 折れたかと思われるほど乾いた大音量が試合会場に響き渡った。

「面あり! 一本!」

 三人の審判が一刀の方へ旗を揚げる。一刀の一本勝ちだった。



「おめでとう一刀」

 試合が終わって面を外した一刀の元へ雅が赴き祝福する。
 学校の応援のため制服のセーラー服姿で応援に来ていた。

「ありがとう」

 雅に褒めて貰えて一刀も嬉しかった。素朴な服装だがその分飾らない言葉で褒められているようで良かった。

「でも試合は残念だったね」

「しょうがないよ。団体戦なんだから」

 剣道の試合では団体戦と個人戦がある。団体戦では五人一組の星取り戦形式で、予め提出した順に一対一の試合を五回行う。そして五試合で勝ち数の多い方が勝ち抜ける。
 国邑高校は一刀以外の部員の実力が低いため、主将の一刀以外は負け越しが多かった。

「個人戦頑張ってね」

「ああ、分かっているよ」

 そのため個人の実力によるトーナメント形式の個人戦では一刀が勝ち抜ける事が多く<国邑の一本刀>の異名を付けられた最大の理由だ。

「あ……」

 その時、雅がふらつき、一刀が支えた。

「大丈夫かい?」

「……大丈夫……一寸眩んだだけだから」

「やっぱり休んでいた方が良かったんじゃないのか?」

 妖魔討滅に一緒に行くことが多く、体力のある雅だが、このところ不調で原因不明の倉見が多い。
 原因は分かっているが対処不能だ。
 そのため、応援に来なくて良いと一刀は言っていたが、雅は頑として聞き入れず、山に近い実家の神社からこうして応援に来ていた。

「今からでも帰った方が良いんじゃ」

「ううん、最後まで一刀の応援に残る」

 一刀のすすめにも頑として聞き入れようとしない。

「……なら少し補充する?」

「え」

 小声で提案してきた一刀の言葉に雅は頬を紅くする。

「そんな、試合なのに」

「ほんの少し触れるだけだよ。その、そこまでするつもりは無いよ」

 一刀も自分の言っていることを理解しており頬を紅く染める。

「けど」

「応援しているときに倒れられたら試合を放棄しても駆けつけるよ」

「う……」

 一刀の言葉に雅は困りつつも嬉しかった。

「……うん」

 そして小さく頷いて承諾した。



 その後、昼食を食べに行くと言って顧問や仲間から離れて雅と二人きりとなる。
 雅との仲は学校内では有名なため、二人っきりで良い事をするためにバックレるんだなと全員に思われていた。
 まあ、実際に良い事をするためだが、彼等の想像以上の事だ。

「ここならいいか」

 会場内で人気の無い場所を探して、隠れる。
 椅子やテーブルを置くための倉庫らしく、空っぽで誰もいない。

「良いかな」

 一刀は自分の着替えを床に敷くと雅を座らせた。
 雅はゆっくりと恥ずかしげに座る。
 クラシックな白い上着に紺色の襟に紅いスカーフ。スカーフと同色の紺色スカートから伸びる素足の先には白い靴下とローファー。
 典型的な女子高生の姿だが、その分他の子との身体が違う事がハッキリと分かる。
 メリハリのある身体のライン。細い腕に長い足。
 小さい顔に小さな唇。瞳は大きく、神は黒くて長く艶やかで後ろで纏められている。
 少し緊張しているようで無意識に身体を抱いている。人気が無いとは言え、大勢の大会関係者が入っている建物であり、何時人が入ってくるかも知れないという緊張感があるのだろう。
 人気がない分、遠くの喧噪も耳に入り、近づく物が無いか警戒してしまう。そのため身体の感度も上がっているようで、所々立っている。
 何より素晴らしいのは身体の各所が明らかに前より成長している。
 自分が育てた、という思いが頭の中を過ぎり赤面する。
 一刀は雅の左横に座ると後ろから右手を回して雅を抱き寄せる。
 自分より小柄でも肉付きがよくなているのがわかる。
 太ったとか気にしているようだが抱き心地が良くなっていることを一刀は喜んでいた。
 その最も肉付きの良い部分に手を伸ばして行く。

「あん」

 乳房を握られた雅は小さく艶声を上げる。
 興奮しており熱い吐息が小さな口から漏れてくる。
 一刀は左手で雅の顎を左手で摘まむと自分の口に引き寄せてキスをした。

「!」

 最初はビックリして目を見開いた雅だったが、やがて目を蕩けさせて舌を入れてくる。
 両手も一刀の後ろに回し縋るように力を入れて自分の身体を一刀に引き寄せる。
 一刀も両手を雅の身体の後ろに回し愛撫するが、やがて雅の身体を強く抱き寄せた。
 セーラー服越しに触っていた手がいつの間にか中に入り素肌を撫でる。もう一方はスカートの中に入り込んでショーツの上から可愛らしい桃尻を掴み握る。
 二人の熱は更に上がって行き、より濃厚に絡み合っていく。
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