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エルフ王国
貧弱の力の片鱗
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「信じられません……!!これほどの剣技をたった数日で身に着けたというのですか!?」
「えっと……」
「これが勇者の力なのですね!!素晴らしいです!!」
リンは感動したようにナオの両手を掴むが、戦技を繰り出した本人の方が驚いていた。しかし、冷静に考えれば彼の現在の攻撃力は「254」であり、疾風剣の熟練度は「10」単純な計算ならば熟練度の数値が攻撃威力の倍率を示しているとしたら瞬間的にではあるが「2540」という数字を引き出す。
レベルが50であるリンの攻撃の能力値は「2000」であり、瞬間的にではあるが彼女の攻撃力を超えた一撃を引き出せることになる。もしもナオのレベルが更に上がれば威力も高まり、そう遠くない内に王子と戦えるまでの力を身に着ける可能性も出てきた。
「あの、もう少し剣の戦技を教えてくれませんか?」
「ええ、構いません。私の知る限りの戦技を教えましょう!!」
ナオが遂に勇者らしい力を引き出した事にリンは興奮し、彼女は自分が扱う剣技を教える。先ほどの「疾風剣」は特別な攻撃動作は必要としないが、基本的には武器を取り扱う戦技は特定の攻撃動作を行うらしく、戦闘中に使い道を誤ると相手に大きな隙を与えてしまうので使用する際には注意するように忠告される。
「簡単な戦技ならば「兜割り」が一番でしょう。これは上段から剣を振り下ろす戦技です。単純ですが、扱いやすい戦技です」
「兜割り……」
説明を受けながらナオはステータス画面を開き、即座に目当ての戦技を発見するとSPを消費して習得する。あまりに目立ちすぎると過度な期待を抱かれる事を恐れ、今回は習得するだけで熟練度までは上昇させない。
「兜割り!!」
剣を握りしめた状態で振り下ろすと、確かに身体が勝手に動き、前方に剣を振り下ろす。戦技の発動中は特定の動作を行うため、回避や防御も難しい。そのために扱う際は注意しなければならず、下手に慣れない戦技を利用すれば相手の反撃の好機を与えてしまう。
「見事です!!今のは確かに兜割りの戦技でした」
「他にもどんな戦技があるんですか?」
「では次は旋風を試しましょう。こちらは横薙ぎに剣を振り払う動作を行うため、兜割りよりも隙が少なく、攻撃範囲も広い剣技です」
リンはあっと言う間に戦技を覚えたナオに感心しながら自分の知る剣技を次々と見せつける。彼女の動作を確認しながらナオはSPを消費して目的の戦技を習得し、こうして彼は2つ目の剣技を覚えた。
「旋風!!」
名前を口にした瞬間、ナオは横薙ぎに剣を振り払い、風切り音が響く。こちらは兜割りと比べて攻撃範囲が広い分、大振りになってしまうので隙が大きい。この「兜割り」と「旋風」は剣士の間では最初に覚える戦技らしく、単純ではあるが極めれば十分に実戦でも役立つという。
(兜割りはどちらかというと巻割りみたいに斧を振り下ろすような感覚だな。旋風もかなり大振りだから避けられたり、受けられると不味いかもしれない)
自分で覚えた技を分析しながらナオは手元を確かめ、そしてある疑問を抱く。それは戦技同士の組み合わせや同時に発動出来るのかという考えが浮かび、ナオはリンに問い質す。
「戦技同士の組み合わせは出来ますか?例えば、兜割りの直後に旋風を繰り出したり……」
「可能ではありますが、その場合だと大きく体力を消耗します。もうお気づきかも知れませんが戦技は使用する事に体力を消耗します。なので短時間に連続的に戦技を使用するのは控えた方が良いです」
「えっ……あ、言われてみれば……?」
ナオは自分が何時の間にか服が汗で濡れている事に気付き、頬に垂れ落ちる汗を拭う。思っていた以上に戦技の使用による体力の消耗は大きく、指弾のように指だけを動かす訳ではないのでより一層に体力の消耗が大きのだろう。
「ナオ様、本日は我々が用意した魔物と戦ってもらう予定でしたが、どうしますか?これほど戦えるのならば本日から外に出向いて魔物との戦闘を経験するのも悪くないかも知れません」
「えっ……」
思いがけないリンの申し出にナオは驚き、同時に彼は自分の攻撃を確かめたいという考えもあった。現時点でも瞬間的にとはいえ、リンを上回る攻撃を繰り出せるのならば普通の魔物とも戦える可能性は十分に高く、ナオは承諾しようとした時、ある事を思い出す。
「あ、じゃあ……一つだけお願いがあるんですけど」
――1時間後、ナオはリンの護衛の元で王城を抜け出し、城下町を通過して外の世界へ赴く事になった。ちなみに移動手段はナオは馬に乗れないので必然的に馬車となり、街の外の光景を窓越しに確認しながら同乗しているリンに質問を行う。
「木造製の建物が多いんですね」
「基本的に私達は木造製の家しか建築しません。我等は森人族、文字通りに緑の自然の民なのです。だからこそ自然の樹木を素材とした建物が心落ち着くのです」
「へえ……」
窓越しにナオは城下町の様子を伺い、現在の彼は住民に顔を見られないようにフードで全身を覆い隠している。森人族の多くは人間を見下しているため、正体をばれないように気を付けなければならないらしい。いくらナオが勇者とはいえ、イヤンのように彼が人間という理由で気に入らない存在も多い。
「えっと……」
「これが勇者の力なのですね!!素晴らしいです!!」
リンは感動したようにナオの両手を掴むが、戦技を繰り出した本人の方が驚いていた。しかし、冷静に考えれば彼の現在の攻撃力は「254」であり、疾風剣の熟練度は「10」単純な計算ならば熟練度の数値が攻撃威力の倍率を示しているとしたら瞬間的にではあるが「2540」という数字を引き出す。
レベルが50であるリンの攻撃の能力値は「2000」であり、瞬間的にではあるが彼女の攻撃力を超えた一撃を引き出せることになる。もしもナオのレベルが更に上がれば威力も高まり、そう遠くない内に王子と戦えるまでの力を身に着ける可能性も出てきた。
「あの、もう少し剣の戦技を教えてくれませんか?」
「ええ、構いません。私の知る限りの戦技を教えましょう!!」
ナオが遂に勇者らしい力を引き出した事にリンは興奮し、彼女は自分が扱う剣技を教える。先ほどの「疾風剣」は特別な攻撃動作は必要としないが、基本的には武器を取り扱う戦技は特定の攻撃動作を行うらしく、戦闘中に使い道を誤ると相手に大きな隙を与えてしまうので使用する際には注意するように忠告される。
「簡単な戦技ならば「兜割り」が一番でしょう。これは上段から剣を振り下ろす戦技です。単純ですが、扱いやすい戦技です」
「兜割り……」
説明を受けながらナオはステータス画面を開き、即座に目当ての戦技を発見するとSPを消費して習得する。あまりに目立ちすぎると過度な期待を抱かれる事を恐れ、今回は習得するだけで熟練度までは上昇させない。
「兜割り!!」
剣を握りしめた状態で振り下ろすと、確かに身体が勝手に動き、前方に剣を振り下ろす。戦技の発動中は特定の動作を行うため、回避や防御も難しい。そのために扱う際は注意しなければならず、下手に慣れない戦技を利用すれば相手の反撃の好機を与えてしまう。
「見事です!!今のは確かに兜割りの戦技でした」
「他にもどんな戦技があるんですか?」
「では次は旋風を試しましょう。こちらは横薙ぎに剣を振り払う動作を行うため、兜割りよりも隙が少なく、攻撃範囲も広い剣技です」
リンはあっと言う間に戦技を覚えたナオに感心しながら自分の知る剣技を次々と見せつける。彼女の動作を確認しながらナオはSPを消費して目的の戦技を習得し、こうして彼は2つ目の剣技を覚えた。
「旋風!!」
名前を口にした瞬間、ナオは横薙ぎに剣を振り払い、風切り音が響く。こちらは兜割りと比べて攻撃範囲が広い分、大振りになってしまうので隙が大きい。この「兜割り」と「旋風」は剣士の間では最初に覚える戦技らしく、単純ではあるが極めれば十分に実戦でも役立つという。
(兜割りはどちらかというと巻割りみたいに斧を振り下ろすような感覚だな。旋風もかなり大振りだから避けられたり、受けられると不味いかもしれない)
自分で覚えた技を分析しながらナオは手元を確かめ、そしてある疑問を抱く。それは戦技同士の組み合わせや同時に発動出来るのかという考えが浮かび、ナオはリンに問い質す。
「戦技同士の組み合わせは出来ますか?例えば、兜割りの直後に旋風を繰り出したり……」
「可能ではありますが、その場合だと大きく体力を消耗します。もうお気づきかも知れませんが戦技は使用する事に体力を消耗します。なので短時間に連続的に戦技を使用するのは控えた方が良いです」
「えっ……あ、言われてみれば……?」
ナオは自分が何時の間にか服が汗で濡れている事に気付き、頬に垂れ落ちる汗を拭う。思っていた以上に戦技の使用による体力の消耗は大きく、指弾のように指だけを動かす訳ではないのでより一層に体力の消耗が大きのだろう。
「ナオ様、本日は我々が用意した魔物と戦ってもらう予定でしたが、どうしますか?これほど戦えるのならば本日から外に出向いて魔物との戦闘を経験するのも悪くないかも知れません」
「えっ……」
思いがけないリンの申し出にナオは驚き、同時に彼は自分の攻撃を確かめたいという考えもあった。現時点でも瞬間的にとはいえ、リンを上回る攻撃を繰り出せるのならば普通の魔物とも戦える可能性は十分に高く、ナオは承諾しようとした時、ある事を思い出す。
「あ、じゃあ……一つだけお願いがあるんですけど」
――1時間後、ナオはリンの護衛の元で王城を抜け出し、城下町を通過して外の世界へ赴く事になった。ちなみに移動手段はナオは馬に乗れないので必然的に馬車となり、街の外の光景を窓越しに確認しながら同乗しているリンに質問を行う。
「木造製の建物が多いんですね」
「基本的に私達は木造製の家しか建築しません。我等は森人族、文字通りに緑の自然の民なのです。だからこそ自然の樹木を素材とした建物が心落ち着くのです」
「へえ……」
窓越しにナオは城下町の様子を伺い、現在の彼は住民に顔を見られないようにフードで全身を覆い隠している。森人族の多くは人間を見下しているため、正体をばれないように気を付けなければならないらしい。いくらナオが勇者とはいえ、イヤンのように彼が人間という理由で気に入らない存在も多い。
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