不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

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24 / 2,090
2巻

2-3

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「……こいつは、あたしが冒険者を始めてからずっと使っている武器なんだけど。実を言うと失敗作らしいんだよ、あたしの行きつけの鍛冶屋かじやの親父が言うにはね。頑丈さと重さを重視しすぎて、切れ味が犠牲になってるし、しかも重すぎるせいで普通の人間には扱えない……だからあたし以外に扱える人間はいないんだよ」
「え、そんなに重いんですか?」
「試しに持ってみるかい?」

 興味を示したレイトに、バルが大剣を差し出す。レイトは受け取ってすぐ、重量に耐え切れずに手放してしまった。
 大剣が地面に衝突した瞬間、轟音が響き渡る。

「お、重い……」
「だろうね。あたし以外にこいつを扱えるのなんて巨人ジャイアント族ぐらいだよ。だけど、頑丈さだけが取り柄だったこいつが見事にひび割れちまった……最後の一撃は凄かったよ」
「ど、どうも……」

 レイトはそう答えながらも、なんとなく喜べない。
 軽々と大剣を振り回していたことを思い出し、その怪力に改めて恐怖を抱いたのだ。試験だったため彼女は防御に徹していたが、そうでなければ彼は呆気なく負けていただろう。
 バルがレイトに視線を向ける。
 大剣にひびを生じさせた彼の一撃は、確かに強力だった。バルが冒険者を辞めた時に封印した必殺技「撃剣」をつい使ってしまったくらいに。
 ――後継者が現れた。
 バルの脳裏にふとそんな言葉が響く。彼は剣士としては未熟であるが、英雄の原石かもしれない。

「なあ……確かレイトだったね。あんたは誰に剣を教わったんだい?」
「家の使用人の暗殺者に……」
「はっ!? 使用人……暗殺者? どっちなんだい……」
「えっと、まあ我流です」

 レイトは剣術の基礎をアリアに教わった。しかし、二刀流や大剣はレイトが独自に生み出した剣技なので、我流というのも間違っていない。
 バルは彼の答えを聞いて、納得したように頷く。
 彼の剣筋は非常に変わっていた。対人戦の経験が少ないのはすぐに分かったが、魔物には通用する技量であったのは間違いない。
 元々、「撃剣」を誰かに伝えるつもりはなかったが、バルはこの瞬間、その技をレイトに教えようと決めた。
 バルはレイトの目を見据えて告げる。

「最後にあたしがあんたに使った一撃……覚えているかい?」
「えっと……すみません。攻撃に集中しすぎてよく覚えてません」
「まあ、あんだけ剣を振り回していたらね……『撃剣』だよ」

 初めて聞く単語だったのでレイトは首を傾げる。

「戦技ですか?」
「そうだよ。といっても、人間で覚えているのはあたしぐらいだろうね」
「え、どうして?」
「そもそも大剣を扱う奴なんて人間には滅多にいないからさ。こんなでかくて重い剣を振り回すより、他に優れた武器は幾らでもあるからね……まあ、あたしの場合は、戦場にいた時からこいつしか扱っていなかったけど」

 実際、大剣のような重量のある武器を好んで使用する人間は少ない。バルのように人間離れした怪力でもなければ、重い武器は扱えないのだ。
 レイトが「氷装剣」で生み出す大剣は本物と比べると軽い。しかも彼の意思に合わせて重量を変えられる。実際の大剣は、レイトの筋力では持つことすら難しかった。

「この『撃剣』という技は、巨人ジャイアント族の大剣使いが使用することが多いね。だけど、あいつらは力任せに大剣を振り回しているだけさ。あたしの目から見れば、あんなの剣技とは言えないね」
「バルさんは違うんですか?」
「あたしの場合は、力任せに振り回すんじゃない……思いっきり振り回すのさ」
「え?」

 バルの言葉の意味が分からず、呆然とするレイト。
 すると彼女は大剣を握りしめて身構えた。そして、その場で大剣を正面から振り下ろす。大剣の刃が空を切る音が響く。
 今の彼女の素振りを見て、レイトは何となく違和感を覚える。
 考え込んでいると、バルは大剣を肩に乗せて振り向く。

「どうだい? さっきの戦闘の時と、今の剣の素振りの違いが分かったかい?」
「……もしかして、今のは腕だけの力で振ったんですか?」
「そういうこと。大抵の巨人ジャイアント族はみんなこんな感じさ。腕力だけで武器を振り回す癖がある。だけど、人間のあたし達がそんな真似をしたら、腕がもげちまうだろうね。だから全身の筋肉を使って振り回すのさ!!」

 そう言うとバルは勢いよく大剣を振りかぶり、今度はその言葉通り、腕だけではなく全身を使って大剣を振り下ろした。
 大剣は先ほどとは比べ物にならない剣速で空を切り、衝撃波が地面を走る。
 そういえばレイトも、彼女のように全身で大剣を扱っていたことに気づく。妙に納得している彼にバルが告げる。

「重い武器を扱う時に重要なのは、腕力じゃなくて下半身さ。重すぎる武器を支えるためには、足腰が大切なんだよ。その点、あんたはちゃんと鍛えているね」
「鍛えたというか……勝手に鍛えられました」

 深淵の森で暮らしていたレイトは普段から「瞬脚しゅんきゃく」や「跳躍」のような下半身を使うスキルを多用し、ウルと共に森の中を駆け巡りながら獲物を狩っていた。そのお陰で、大剣を扱うために必要な下半身が鍛えられていたようだ。
 バルはレイトに笑みを向ける。

「あんたのさっきの『回転』の戦技は凄かったよ。だけど、戦闘の時にあんな派手な動作を繰り返すわけにはいかないだろ?」
「それはまあ……」
「そこで、手頃な技を教えてやろうというわけさ。あたしのように扱えるようになるかは分からないけど、少なくとも覚えておいて損はないだろ」
「それが、『撃剣』ですか?」
「そういうことさ。まあ、基本ぐらいは教えてやるよ」

 こうしてレイトはバルから「撃剣」を教わることになった。
 しかし「撃剣」は今まで彼が習得してきたスキルの中でも特殊で、習得するのに時間が掛かるようだった。
 結局、この日覚えることはできなかった。


 その後、レイトは冒険者ギルドに戻った。そこでFランクの冒険者として登録し、ギルドカードと銅製のバッジを受け取る。
 冒険者は階級に合わせたバッジを付けることが義務付けられている。E・Fランクは銅、C・Dは銀、A・Bは金、そしてSランクはミスリルである。
 レイトは、一緒に戻ってきたバルに依頼の受注の仕方を尋ねる。

「仕事はどうやって受けるんですか?」
「ああ、そこに掲示板があるだろう? 貼ってある依頼書を確認して、受付に言えばいいのさ。まあ、新人なんだから雑用から頑張ることだな」
「雑用?」
「冒険者というのは、基本的に何でも屋だよ。魔物を狩り続けるだけでいい職業じゃないからね。いい仕事が欲しければ、まずは街の人間から信頼を得ることだね」

 バルはそれだけ言うと去っていった。
 レイトは掲示板に視線を向け、貼り出されている羊皮紙を一つずつ確認する。
 殆どの依頼が、D・Eランクの資格を持っていなければ受けられないようだ。Fランクでも受けられる依頼は一つだけだった。

「これは……ゴブリンの討伐か。これくらいなら何とかなりそうだな」

 冒険都市の住民からの依頼ではなく、近くの村からのものらしい。依頼内容は、村の畑を襲うゴブリンの討伐とのことで、討伐数によって報酬が増えるようだ。
 レイトは羊皮紙を剥ぎ取ると、眼鏡の受付嬢のところに持っていく。

「すみません、これをお願いします」
「あ、は~い。無事に合格したんですね、おめでとうございます。それではギルドカードを提示してください」
「はい」

 レイトがギルドカードを差し出すと、受付嬢は羊皮紙に書かれている内容を確認し、手続きを済ませた。

「はい、これで問題ないですよ。それでは頑張ってくださいね」

 受付嬢はギルドカードと羊皮紙をレイトに返し、彼を応援してくれた。レイトは頭を下げてそれらを受け取ると、羊皮紙に描かれた地図を頼りに現地に向かうのだった。


       ◆ ◆ ◆


 村にたどり着いて早々、レイトは自分が初めての依頼に失敗したことに気づいた。正確には失敗ではないが、報酬を受け取れないことは間違いなかった。
 というのも彼は、ナオ姫と出会ったゴブリンに壊滅させられた村に戻っていた。

「依頼を出していたのはこの村だったのか……これじゃあ、どうしようもないな」
「ウォンッ……」

 ゴブリンに村が壊滅させられる前に、冒険者ギルドに討伐依頼を出していたようだが、既にこの村の人間は全滅している。もし生き残っている人がいたとしても、このありさまでは報酬を受け取れるわけがない。

「仕方ないか、依頼は諦めよう……そういえばウル、その王冠はどう? 気に入った?」
「クゥ~ンッ」

 王冠というのは、街を出る前にウルの頭に被せてあげた装備である。
 ウルを見て野生の魔獣と勘違いして驚く人もいたので、賞金首の報酬で購入したのだ。
 最初は首輪を用意したのだが、ウルが嫌がったので、高価な王冠を買うことになったのだった。

「かなり出費したぞ。まあ、似合ってるからいいけどさ」
「ウォンッ」

 そう言って溜息を吐いたレイトは、冒険都市に引き返そうとした。その時、ウルが何かに気づいたように鳴き声を上げる。

「ウォンッ!!」
「ん? どうしたウル、何か見つけたのか?」
「クゥンッ」

 ウルは前足を突き出し、勝手に歩き始める。レイトがウルの後に続いて歩いていくと、レイトの耳にも何か聞こえてきた。

「う、うわああああっ!?」
「ウガァアアアアッ!!」
「馬鹿っ!! 何をしてんだ!! 早く逃げろっ!?」

 複数の悲鳴と、化物の叫び声が響き渡る。
 レイトとウルは、声がした場所に急いで駆けつける。そこには数人の男女がおり、巨大な緑色の巨人に一人の獣人ビースト族の男が掴まれていた。
 最初、襲っているのはゴブリンかと思ったレイトは、その魔物のサイズを見て考え直す。子供の赤毛熊ブラッドベア並みの大きさがあり、ゴブリン以上に醜悪しゅうあくな顔をしていた。色合いはゴブリンよりも濃い。
 レイトは相手の正体を掴むため、アイリスと交信する。

『アイリス!!』
『そいつはトロールですね。ゴブリンと外見が似ていますが、全く違う魔物です。ブラッドベアにも劣らない膂力を持ち、武器を使う程度の知能を持っています。非常に耐久力が高い相手なので気をつけてください』
『トロール……女子トイレで迎撃しないといけないやつか!!』
『そういう映画もあるみたいですが……って、そんな場合じゃないですからっ』

 トロールは剣士らしき獣人ビースト族の男の首元を掴み、握り潰そうとしている。それを見たレイトは咄嗟に手を伸ばし、トロールの背中に向けて魔法を発動した。

「『氷刃弾』!!」
「ウギャアッ!?」
「えっ!?」

 トロールの背中に「氷塊」の刃が突き刺さった。レイトが予想していたよりも頑丈で貫通するには至らなかったが、トロールは掴んでいた剣士の男を放す。
 トロールがレイトとウルに視線を向ける。

「げほっ……だ、誰だ!?」
「いいから早く離れろっ!!」

 レイトは剣士を怒鳴りつけると、両手に「氷装剣」を発動して氷の長剣を生み出す。そのままウルの背中に飛び乗り、トロールに突っ込む。

「ウル!!」
「ウォンッ!!」
「ウガァアアアッ!!」

 トロールが咆哮ほうこうを上げるが、レイトとウルは怯まない。
 両腕を交差して防御しようとするトロールに向かって、レイトは錬金術師のスキル「形状変化」で刃に振動を加えた長剣の一撃を浴びせ掛ける。

「『旋風』!!」
「ウギャアッ!?」

 地面が血で染まり、冒険者達が声を上げる。

「嘘っ!?」
「ト、トロールをき、斬った!?」

 振動させた刃がトロールの両腕に食い込む。切断には至らなかったが、深手を負わせることには成功した。
 レイトは長剣を引き抜くと、ウルを走らせて距離を開ける。

「やっぱり、大剣じゃないと威力不足か……」
「ウォンッ!!」

 獣人ビースト族の剣士が、気絶して倒れているおの使いの男を抱えながら言う。

「お、おい君、そいつは頼んだぞ!! 僕達は先に逃げる!!」
「はっ?」

 当たり前のように強敵の相手を押しつけてきたことに唖然あぜんとして、レイトは変な声を出してしまった。
 格闘家らしき女が、血を流して倒れている魔術師の女のもとへ走る。

「アミル!! しっかりして!!」
「諦めろリン!! アミルはもう……」

 獣人ビースト族の剣士が冷たく言う。しかし、リンと呼ばれた格闘家の女は首を横に振る。

「嫌よ!! こんな、こんなこと……」
「ウオオオオオッ……!!」

 突如としてトロールが怒りの咆哮を上げ、逃げだそうとする冒険者達に標的を変える。
 もの凄い勢いで接近してくるトロールに獣人ビースト族の剣士は声を上げ、肩に抱えていた斧使いの男を落としてしまった。

「うわっ!? く、来るなぁっ!!」
「ダ、ダシン!?」
「ウガァアアアアッ!!」

 格闘家のリンにダシンと呼ばれた獣人ビースト族の剣士が腰を抜かして地面に倒れると、トロールは足を振り上げて踏みつけようとする。
 そこへ、レイトがトロールの背後からウルを走らせる。

「くそっ……間に合えっ!!」

 レイトは両手の「氷装剣」に、残り少ない魔力を使って補助魔法「魔力強化」を掛ける。すると、刀身が冷気を帯びる。
 トロールの肉体は頑丈だ。しかし「氷装剣」の刃に振動を走らせれば、ダメージを与えられることは確認済みである。
 レイトはウルに乗ったまま、両手の長剣ごとトロールの背中に突っ込んだ。

「おらっ!!」
「ウギャアアアアアアッ!?」
「おおっ!?」

 トロールの背中の皮膚に刺すことはできても、さらに奥までは突き入れることはできない。そこでレイトは、突き刺したままの「氷装剣」におびただしい冷気を流す。
 肉体内部から、トロールは徐々に凍結していった。

「ウゴォオオオオッ……!?」
「……倒したか?」
「クゥンッ……」

 レイトの目の前で氷像ひょうぞうと化したトロールを見て、レイトとウルは安堵の息を吐く。
 それと同時に、レイトの両手に激痛が走った。手を確認すると、掌が凍りついている。慌てて剣を手放して両手を「火球」の魔法で溶かす。

「いてててっ……やっぱり、『魔力強化』を施した『氷塊』をじかに持つのは危険だな」
「ウォンッ!!」
「分かってるよ……『回復強化』」

 治癒力を高めて怪我を治すと、レイトは凍りついたトロールに接近する。完全に凍りつかせたので、素材の回収は不可能そうだった。
 レイトはとどめを刺すために、掌をかざす。

「『火炎弾』」

 トロールの肉体に向けて火炎の弾を放つ。
 水分を含む物質は凍結させると硬度が落ちてもろくなるが、トロールの頑丈な肉体もその例に漏れず、呆気なく砕け散った。

「ふうっ……どうにかなったな」

 獣人ビースト族の剣士ダシンと、格闘家のリンが驚きながら話し掛けてくる。

「き、君は……冒険者か?」
「私達……助かったの? ありがとう!! 本当にありがとう!!」
「ああ、いえ……」

 成り行きとはいえ、トロールに襲われていた冒険者達を救い出したことには違いない。しかし、レイトは一生懸命だっただけなので、急に感謝されて戸惑ってしまった。
 レイトを置いて逃げようとしたダシンは気まずそうだが、リンは心の底から感謝していた。

「本当に助かったわ……貴方が来てくれなかったら私達は殺されていたと思う。ちょっと、ダシンも礼を言いなさいよ!! 命の恩人なのよ!!」
「……すまない、助かったよ」
「いえ……あの、そちらの二人は大丈夫ですか?」
「そ、そうだった!!」

 倒れている斧使いの男と魔術師の女のもとに、二人は駆け寄る。
 共に重傷を負っているが、命に別状はないようだ。リンが緑色の液体が入った硝子ガラスびんを取り出し、アミルという魔術師の女に声を掛ける。

「動いちゃだめよ……」
「ううっ……ああっ!?」

 レイトはその液体が何なのか気になって尋ねる。

「それは?」
「回復薬よ。下位の回復薬だけど、傷の治療ぐらいはできるの」

 リンがアミルの傷口に液体を掛けた瞬間、血を洗い流すように傷口が塞がっていった。アミルの顔も心なしか安らいだように見える。
 一方、斧使いの男、ガリルはかなりひどかった。殴り飛ばされたのか、左腕が異様な方向に曲がっている。

「くそっ、ガリル、動くなよ……腕を戻すからな」
「うがぁっ……!?」

 ダシンがガリルの腕を掴み、力尽くで元に戻していく。
 それから回復薬を飲ませようとしたが、ガリルの意識が朦朧もうろうとしているため、上手く飲んでくれない。

「くそっ、飲んでくれガリル!! 目を覚ませ!!」

 見ていられず、レイトは怪我の治療を申し出る。

「あの……回復魔法を施しましょうか?」
「えっ? 本当に!?」
「た、頼む!!」

 レイトはガリルの肉体に掌を押しつけて、「回復強化」を施した。
 補助魔法とはいえ熟練度を限界まで高めた彼の魔法は、ガリルの怪我をゆっくりと治していく。曲がっていた腕も元に戻った。
 意識を取り戻したガリルが口を開く。

「ううっ……お、俺は一体……!?」
「良かった!! 気がついたのね、ガリル」
「助かった……ありがとう」

 リンがガリルを抱き上げると、ガリルはレイトにお礼を言った。

「いえ、でも大丈夫ですか?」

 レイトが心配そうに尋ねると、ダシンが厳しい表情で言う。

「大分血を失っている。すぐに都市に戻って休ませないといけない。それにしても、どうしてこんなところにトロールが……」
「『猛火隊もうかたい』の冒険者集団パーティは……全滅したようね」

 何のことだろうかと、レイトは聞き返す。

「猛火隊?」
「あの人達のことよ。元々、私達は彼らと共にあそこで休んでいた時に襲われたの」

 そう言ってリンが指さしたのは、以前レイトが衣服類を拝借した村長の屋敷だった。村で一番大きい屋敷だったはずだが、トロールが破壊したのか今は半壊していた。
 その内部は、遠目にも血の匂いが漂ってきそうなほど真っ赤で、大惨事となっているのが分かった。
 ダシンがレイトに告げる。

「僕達はこの二人を都市に連れていく。君はどうする?」
「あっ。えっと、ちょっとここに用事があるので」
「そうか……分かった。だけどここは危険だ、気をつけた方が良い」

 ダシンとリンは半ば意識を失っているガリルとアミルをそれぞれ抱えると、近くに停めてあるという馬車へと足を向けた。
 そして最後に、レイトに声を掛ける。

「僕達は、冒険者ギルド牙竜がりゅうに所属している『赤き旗』という冒険者集団パーティだ。何かあったら力になる」
「本当に助けてくれてありがとう!! 私達に頼みたいことがあったらいつでも言ってね」
「お気をつけて……」

 二人を見送ったレイトは、トロールの死骸に視線を向ける。不意打ちが上手くいったとはいえ、無傷で倒せたことに自分でも驚いた。

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