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放浪編
マンホール
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『くっ……ここもやられていたか!!くそがっ……ギュロロロロッ!!』
『お、落ち着いて下さいサイクさん!!ここで暴れないでください!?』
『フンッ!!』
レナは壺の外から聞こえてきたのは作業区の担当を任されている「サイクロプス」の看守と取り巻きの巨人族の兵士だと気づき、ネズミと共に蓋を少しだけ上げて様子を伺う。サイクロプスと兵士達はテントが盗まれた事に気づいたらしく、彼等の話ぶりからどうやら木箱から鉄格子の一部も盗まれた事も知っている様子だった。
作業区で材料を盗まれた事にサイクロプスは苛立ちを抑えきれず、辺りに存在する物を蹴飛ばして兵士達を怯えさせる。サイクロプスが本気で切れると暴走してしまい、そうなった場合は巨人族で統一されている兵士達でさえも手に負えない。暴れ足りないのかサイクロプスは血走った眼を広げながら兵士達を睨みつける。
『今すぐに兵舎の兵士達を叩き起こせ!!農業区のゴブと兵士区のミノも呼んで来い!!いいか、絶対に監獄所長が訪れる前に侵入者を見つけ出せ!!』
『わ、分かりました!!』
『いや、お前達はここに残れ!!俺が出向いた方が早い!!いいか、決してサボるんじゃないぞ!!』
大きな足音を鳴らしながらサイクロプスは駆け出し、彼の種族が本気を出して走ればその速度は馬を遥かに上回る。その後姿を見送った兵士達は安堵した表情を浮かべ、溜息を吐きながら現場の確認を行う。
「あ~あ、派手にやらかしやがって……それにしてもテントを盗んでどうするつもりだ?」
「布だけを盗んだところで一体何をする気だ?あんな物、大きくて邪魔になるだけだろうが……カーテンの代わりに使うつもりか?」
「さあな……だけど、鉄格子の鉄棒は不味いだろ。武器になる物を盗まれたなんて知られたらサイクさんがまた厳しい罰を受けるぞ?」
「俺達も責任取らされるんだろうな……はあっ」
サイクロプスが消えた瞬間に兵士達はやる気なさげにテントが存在した場所の調査を行い、その姿を見たレナはネズミと向かい合い、今出ていくのは不味い事を話す。
(この状況で抜け出すのは難しそうだな……上手く外に出てもこんなに臭いんじゃすぐにばれるかも知れないし)
(でも、全員巨人族ですから獣人族程は鼻も利きませんよ。今の内なら案外抜け出せるんじゃないですか?)
ネズミの言葉にレナは兵士達が巨人族で統一されている事を思い出し、嗅覚が優れている獣人族の兵士ならば壺の外に出た瞬間に悪臭を嗅ぎ取って気づかれる恐れはあったが、試しに二人は壺から抜け出して足音を鳴らさないように荷車の背後へ移動を行う。
(やりましたね。気づかれている様子はありませんよ)
(でも、このまま宿舎に逃げるにしても身体の汚れを何とかしないと……)
(そうですね……)
壺から抜け出す事には成功したが、今のレナとネズミは囚人達の残飯で汚れてしまっており、どこかで身体を洗う必要があった。身体が洗える場所は宿舎の地下に存在する風呂場か、あるいは女囚館の温水プールならば身体も洗えるだろうが、どちらに向かうにしても作業区を抜け出さなければならない。
(仕方ありません、こうなったら僕のとっておきの場所へ案内しますよ)
(え?どういう意味?)
(僕の隠れ家にご招待するという意味です。ひとまずはここから離れましょう)
――ネズミの言葉に従ってレナは兵士達に気づかれる前に移動を行い、作業区から無事に逃げ出す。幸いにも巡回中の獣人族の兵士とは遭遇せず、二人はどうにか囚人区の学校の校舎まで戻ると、途中でネズミは立ち止まってレナを呼び寄せる。
「あ、待ってください。ほら、この中に入って下さい」
「この中って……マンホール?こんな物まで存在したのか……」
校舎の裏口近くに存在するマンホールの前でネズミは立ち止まり、マンホールの蓋を開けると中に存在する梯子を下りるように促す。レナは戸惑いながらも梯子を下りるとネズミは蓋をして出入口を塞ぐ。
「待っててくださいね、今明かりを用意しますから……」
「あ、俺は暗視のスキルがあるから大丈夫だよ?」
「本当ですか?なら、このまま進みますけど……」
梯子を下りる途中でネズミが明かりを取り出そうとしたが、幼少の頃に「暗視」のスキルを習得しているレナは暗闇の中でも暗視スコープを取り付けたように周囲の光景を確認する事が出来るため、問題なく梯子を下りていく。やがて下の方から水が流れる音が響き、二人は通路に降り立つ。
「ここは……下水道?」
「そういう事です。でも、臭くはないでしょう?水路の底の方に悪臭を吸い取る消臭石が埋め込まれているようです」
二人が下りた通路には水路も流れており、色合いから下水道である事は間違いないのだが不思議と悪臭は感じられず、以前にレナが訪れた冒険都市の下水道の時のようにこちらの世界特融の臭いを吸収する魔石を利用して臭いが抑えられていた。
『お、落ち着いて下さいサイクさん!!ここで暴れないでください!?』
『フンッ!!』
レナは壺の外から聞こえてきたのは作業区の担当を任されている「サイクロプス」の看守と取り巻きの巨人族の兵士だと気づき、ネズミと共に蓋を少しだけ上げて様子を伺う。サイクロプスと兵士達はテントが盗まれた事に気づいたらしく、彼等の話ぶりからどうやら木箱から鉄格子の一部も盗まれた事も知っている様子だった。
作業区で材料を盗まれた事にサイクロプスは苛立ちを抑えきれず、辺りに存在する物を蹴飛ばして兵士達を怯えさせる。サイクロプスが本気で切れると暴走してしまい、そうなった場合は巨人族で統一されている兵士達でさえも手に負えない。暴れ足りないのかサイクロプスは血走った眼を広げながら兵士達を睨みつける。
『今すぐに兵舎の兵士達を叩き起こせ!!農業区のゴブと兵士区のミノも呼んで来い!!いいか、絶対に監獄所長が訪れる前に侵入者を見つけ出せ!!』
『わ、分かりました!!』
『いや、お前達はここに残れ!!俺が出向いた方が早い!!いいか、決してサボるんじゃないぞ!!』
大きな足音を鳴らしながらサイクロプスは駆け出し、彼の種族が本気を出して走ればその速度は馬を遥かに上回る。その後姿を見送った兵士達は安堵した表情を浮かべ、溜息を吐きながら現場の確認を行う。
「あ~あ、派手にやらかしやがって……それにしてもテントを盗んでどうするつもりだ?」
「布だけを盗んだところで一体何をする気だ?あんな物、大きくて邪魔になるだけだろうが……カーテンの代わりに使うつもりか?」
「さあな……だけど、鉄格子の鉄棒は不味いだろ。武器になる物を盗まれたなんて知られたらサイクさんがまた厳しい罰を受けるぞ?」
「俺達も責任取らされるんだろうな……はあっ」
サイクロプスが消えた瞬間に兵士達はやる気なさげにテントが存在した場所の調査を行い、その姿を見たレナはネズミと向かい合い、今出ていくのは不味い事を話す。
(この状況で抜け出すのは難しそうだな……上手く外に出てもこんなに臭いんじゃすぐにばれるかも知れないし)
(でも、全員巨人族ですから獣人族程は鼻も利きませんよ。今の内なら案外抜け出せるんじゃないですか?)
ネズミの言葉にレナは兵士達が巨人族で統一されている事を思い出し、嗅覚が優れている獣人族の兵士ならば壺の外に出た瞬間に悪臭を嗅ぎ取って気づかれる恐れはあったが、試しに二人は壺から抜け出して足音を鳴らさないように荷車の背後へ移動を行う。
(やりましたね。気づかれている様子はありませんよ)
(でも、このまま宿舎に逃げるにしても身体の汚れを何とかしないと……)
(そうですね……)
壺から抜け出す事には成功したが、今のレナとネズミは囚人達の残飯で汚れてしまっており、どこかで身体を洗う必要があった。身体が洗える場所は宿舎の地下に存在する風呂場か、あるいは女囚館の温水プールならば身体も洗えるだろうが、どちらに向かうにしても作業区を抜け出さなければならない。
(仕方ありません、こうなったら僕のとっておきの場所へ案内しますよ)
(え?どういう意味?)
(僕の隠れ家にご招待するという意味です。ひとまずはここから離れましょう)
――ネズミの言葉に従ってレナは兵士達に気づかれる前に移動を行い、作業区から無事に逃げ出す。幸いにも巡回中の獣人族の兵士とは遭遇せず、二人はどうにか囚人区の学校の校舎まで戻ると、途中でネズミは立ち止まってレナを呼び寄せる。
「あ、待ってください。ほら、この中に入って下さい」
「この中って……マンホール?こんな物まで存在したのか……」
校舎の裏口近くに存在するマンホールの前でネズミは立ち止まり、マンホールの蓋を開けると中に存在する梯子を下りるように促す。レナは戸惑いながらも梯子を下りるとネズミは蓋をして出入口を塞ぐ。
「待っててくださいね、今明かりを用意しますから……」
「あ、俺は暗視のスキルがあるから大丈夫だよ?」
「本当ですか?なら、このまま進みますけど……」
梯子を下りる途中でネズミが明かりを取り出そうとしたが、幼少の頃に「暗視」のスキルを習得しているレナは暗闇の中でも暗視スコープを取り付けたように周囲の光景を確認する事が出来るため、問題なく梯子を下りていく。やがて下の方から水が流れる音が響き、二人は通路に降り立つ。
「ここは……下水道?」
「そういう事です。でも、臭くはないでしょう?水路の底の方に悪臭を吸い取る消臭石が埋め込まれているようです」
二人が下りた通路には水路も流れており、色合いから下水道である事は間違いないのだが不思議と悪臭は感じられず、以前にレナが訪れた冒険都市の下水道の時のようにこちらの世界特融の臭いを吸収する魔石を利用して臭いが抑えられていた。
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