不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

文字の大きさ
436 / 2,091
放浪編

材料集め

しおりを挟む
――脱走するために必要な道具の材料を入手するため、レナはネズミと共に夜間の間は出入りが禁止されている作業区へと忍び込む。巨人族であるゴンゾウは隠密行動には不向きなので彼には今日の寝床を確保してもらい、今回は二人だけで行動する事になった。


「チュチュイ!!」
「……よし、誰も居ないですね。今の内に入りましょうか」
「へえ、中々優秀だなあの子」


ネズミの契約獣であるマウスが先導を行い、囚人区と作業区の間に築かれた鉄柵を潜り抜けると、周囲に兵士の姿が見えない事を確認したように鳴き声を上げる。誰も居ない事を確認するとレナは鉄柵を掴み、形状高速変化の能力を利用して人間が一人通れる程に隙間を広げる。


「ふんぬらばっ!!」
「うわっ!?見た目よりも凄い怪力ですね……これ、巨人族でも簡単に壊せないように設計されているんですよ?」
「結構鍛えてるんだよ。ほら、気づかれる前に早く入りなよ」


レナが隙間を広げるとネズミは驚いた表情を浮かべ、彼の視界には力ずくでレナが隙間を広げたようにしか見えなかった。だが、今は錬金術師の能力を説明する暇もないので適当に誤魔化しながらレナはネズミを作業区に招き入れると、目的の材料を探す。


「大量の鉄の布が欲しいのならあちらの方にあります。囚人の脱走防止のために鉄格子を作ってますから」
「囚人に脱走を防止させる道具を作り出させているのか……とんでもない場所だな」
「製造の際は兵士の厳しい監視もあるので細工も出来ませんからね。あった、あそこの木箱の中です」


ネズミの案内の元にレナは鉄格子の一部が収納されている木箱を発見し、必要な分だけの鉄棒を回収するために見張りはネズミに任せ、木箱の中の鉄棒を空間魔法を発動させて異空間に収める。


「念のために余分に持っていくか……よし、後は布だけだな」
「チュイッ?」


十分な量の鉄棒を回収するとレナはマウスが自分を見つめている事に気づき、微笑みながらマウスの頭を指先で撫でる。


「よしよし、いい子だ。この調子で何かに気づいたらすぐに教えてくれよ」
「チュチュ~」
「あんまり甘やかさないでくださいよ。その子は割と人懐っこいですけど、怒ると凄く怖いんですから」


マウスは嬉しそうにレナの指先に頬を摺り寄せるが、ネズミがすぐに掴み取って自分の肩に移動させると、2人(+1匹)は次の材料を集めるために今度は大きなテントが張り巡らされている場所へ向かう。


「よし、これぐらいあれば十分かな……ネズミ、布を取りはずのを手伝ってくれ」
「こんな事がばれたら間違いなく懲罰房行きですね……ほら、マウス君も手伝って!!」
「チュチュッ!?」


鉄棒に張り巡らされた布をレナとネズミは取り外し、巡回の兵士の訪れる前にどうにかテント用の大きな布の回収に成功する。布を丸めて背中に担ぐと、二人は急いでその場を離れようとしたが、マウスが何かに気づいたように鳴き声を上げた。


「チュイッ!?チュチュウッ!!」
「えっ!?不味い、大勢の兵士が近づいているそうです!!早く隠れないと……」
「マジで!?」


布を空間魔法で回収する前に大勢の兵士が接近する気配をマウスが感じ取り、慌ててレナとネズミは隠れる場所を探すと、都合がいい事に人間が隠れられる程の大きさの壺を発見した。壺の傍には荷車も置かれており、荷車の陰に隠れるように設置されているので目立ちにくく、他に隠れる場所を探す時間もないのでレナはネズミを呼び寄せる。


「よし、あそこに隠れるぞ!!ほら、中へ入れ!!」
「え、いやそれは……」
「いいから早く!!」


木箱に近寄るレナを見てネズミは何故か躊躇するが、仕方がないとばかりに意を決した表情を浮かべて後に続く。急いで壺の蓋をレナが開いた瞬間、その中身を見て愕然としてしまう。


「な、何だこれ……!?」
「それは残飯を廃棄するために用意されている大壺です……この作業区で食事を取る人間も多いからあちこちに用意されてますよ」
「チュイイッ……」


壺の底には残飯の塊が溜まっており、液体も混じっていたのか蓋を開いた瞬間に異臭が漂う。中身を確認したレナはネズミに振り返り、お互いに嫌な表情を浮かべるがこのままでは兵士に見つかってしまう。


「どうします?」
「どうするって……隠れるしかないだろ」
「チュイッ!?」


本気かとばかりにマウスは驚いた表情を浮かべるが、遠くから聞こえてくる兵士の足音はレナとネズミの耳元にも届き、二人は意を決してお互いに抱き合う形で壺の中に飛び込む。


(うえっ!?なんか足元にぬめっとした感触が……)
(ちょ、レナさん……動かないでくださいよせまいんですから)
(お前も俺の腰に抱き着くなよ……しっ、来たぞ)


壺の中に隠れながらレナとネズミは先ほどまで自分達が存在した場所に大勢の兵士が駆け寄る足音を確認し、聞き耳を立てて彼等の様子を伺う。兵士達はテントが1つなくなっている事に気づいて慌てている様子であり、その中の一人はレナも聞き覚えのある声があった。



※最弱職の書籍化記念として二羽目です!! ←(´・ω・)!?
しおりを挟む
感想 5,095

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

離婚する両親のどちらと暮らすか……娘が選んだのは夫の方だった。

しゃーりん
恋愛
夫の愛人に子供ができた。夫は私と離婚して愛人と再婚したいという。 私たち夫婦には娘が1人。 愛人との再婚に娘は邪魔になるかもしれないと思い、自分と一緒に連れ出すつもりだった。 だけど娘が選んだのは夫の方だった。 失意のまま実家に戻り、再婚した私が数年後に耳にしたのは、娘が冷遇されているのではないかという話。 事実ならば娘を引き取りたいと思い、元夫の家を訪れた。 再び娘が選ぶのは父か母か?というお話です。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。