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放浪編
屋敷に隠れる者
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レナ達が深淵の森の遺跡に帰還を果たした頃、森の奥に存在するバルトロス王国が管理する屋敷には傷を負ったウルの治療を行うエリナとティナの姿が存在した。2人はここまで自分達を緑影から守ってくれたウルを治すため、薬草をすり潰して傷口に塗り込み、包帯で巻く。
「クゥ~ンッ……」
「ウルちゃん大丈夫?ごめんね、痛いよね……」
「こんな事なら回復薬をもっと買い込んでおくべきでしたね……あ、ティナ様。後はあたしがやるから先に休んでください」
「平気だよ。こんな状態のウルちゃんを放っておけないし……」
「キュロロロッ!!」
「あ、アインちゃんが帰って来たよ!!」
屋敷の庭でウルの治療を行っていると、背中に大量の薬草を詰めた布袋を抱えたアインが現れ、二人の前に下ろす。他にも川から水を汲んできたのか革袋も渡すと、治療を受けているウルを心配するように頭を撫でる。
「キュロロ~」
「ウォンッ」
「アインもウルちゃんの事が心配なんすね」
「うん、アインちゃんが薬草を見つけるのが上手くて本当に助かったね」
サイクロプスであるアインは人間よりも五感が優れているので森の中に自生している薬草を見つけ出す事が得意らしく、他にも森の中にあった果物や木の実が入った籠も用意する。森人族は普通の食事よりも野菜や果物を好むので薬草の採取の時についでに集めてきたらしい。
「キュロンッ」
「あ、またいっぱい果物を持ってきてくれたんだね」
「本当に姫様のアインはいい子で助かりますね。ちょっと休憩しましょうか……あ、だけどウルちゃんの食事はどうしたらいいっすかね?」
「クゥ~ンッ」
ウルは果物や野菜の類は殆ど食べず、羨ましそうに食事を行おうとする3人を見て瞳を潤ませる。そんな目で見られたら3人も食事は行い難く、仕方なくエリナはボーガンを取り出して適当に森の中に生息する魔獣を狩る事にした。
「しょうがないっすね、ちょっとあたしが魔物を狩ってきます。多分、オークぐらいはいると思いますし……」
「えっ……エリナちゃんだけで大丈夫?」
「任せてくださいよ。こう見えても王国四騎士ですから……オークぐらいわけないですよ」
「キュロロッ」
エリナの言葉に自分も手伝うとばかりにアインが力こぶを作り、この二人ならばオーク程度の魔物など問題なく狩猟出来るだろう。だが、気掛かりがあるとすれば彼女達をここまで追い詰めた緑影の存在だった。
――数日前、偶然にもティナ達はヨツバ王国に仕えるはずの緑影に襲われたところをウルに救い出され、そのまま深淵の森の奥地に存在する屋敷まで運ばれた。どうにか緑影の追跡を免れる事に成功したがウルは逃走の際に緑影に深手を負わされ、今現在は屋敷の中で治療を受けている。
元々魔物に対する防備の面では優れた屋敷なので敷地内に入れば魔物に襲われる心配もなく、この場所を知るのは王国の中でも一部の人間だけである。敢えて魔物が救う危険地帯として知られている深淵の森に逃げ込んだなどと誰もが予想できず、今の所は追跡者が現れる様子はない。
「じゃあ、ちょっとあたし達は外に出ますのでティナ様とウルちゃんはここで待っていて下さい。すぐに戻ってくるので離れちゃ駄目ですよ!!」
「う、うん……二人とも気を付けてね」
「キュロロッ」
自分達に任せろとばかりにアインは胸を叩き、エリナを肩に乗せて森の中に引き返す。その様子を見送ったティナはウルに振り返ると、疲れて眠ってしまったのか寝息を立てていた。
「グウウッ……」
「あ、ウルちゃん寝ちゃった。ふふ、寝顔も可愛いな……あれ、なんでだろう。私も眠たくなっちゃった……」
連日の疲れが出て来たのかティナも眠気に襲われ、ウルの柔らかな毛皮に顔を突っ込みながら眠ってしまう――
――二人が眠った直後、屋敷の屋根の上から複数の人影が現れ、彼等はお互いに頷き合うと地面へ音も立てずに着地する。全員が緑色のマントを身に着けており、その内の一人は掌に小さな壺を握り締め、壺の中から甘い香りが漂う。
「おい、早くそれをしまえ。他の魔物に気付かれる恐れがある」
「ああ、すまない」
壺の中には紫色のバラを想像させる植物が収められ、この植物はバルトロス王国には存在しないヨツバ王国の特融の花である。本来は麻酔薬の原料にもなる植物のため、使い方によれば花の匂いを利用して他の人間の眠気を引き起こす効果もある。
屋根に隠れていた緑影の集団はこの壺の中に収められた花を利用してティナとウルを眠らせ、ティナを拘束するために近付こうとした。だが、寸前で隊長格の女性の森人族が立ち止まり、屋敷の外の様子を伺う。その女性の態度に部下たちは不振に思い、何か気になる事があるのかと問う。
「どうかしました?」
「いや……視線を感じたような気がしたんだが」
「まさか、気配感知には何も反応はありませんが……」
「エリナの事を心配しているのですか?大丈夫です、奴は所詮は子供……70才のガキに我々が後れを取るはずがありません」
この場に集まった緑影の面子は全員が200才を超える暗殺者であり、感知系の能力も習得している。なので仮にエリナが屋敷の異変に気付いて戻って来たとしても対応できる自信はあった。
「クゥ~ンッ……」
「ウルちゃん大丈夫?ごめんね、痛いよね……」
「こんな事なら回復薬をもっと買い込んでおくべきでしたね……あ、ティナ様。後はあたしがやるから先に休んでください」
「平気だよ。こんな状態のウルちゃんを放っておけないし……」
「キュロロロッ!!」
「あ、アインちゃんが帰って来たよ!!」
屋敷の庭でウルの治療を行っていると、背中に大量の薬草を詰めた布袋を抱えたアインが現れ、二人の前に下ろす。他にも川から水を汲んできたのか革袋も渡すと、治療を受けているウルを心配するように頭を撫でる。
「キュロロ~」
「ウォンッ」
「アインもウルちゃんの事が心配なんすね」
「うん、アインちゃんが薬草を見つけるのが上手くて本当に助かったね」
サイクロプスであるアインは人間よりも五感が優れているので森の中に自生している薬草を見つけ出す事が得意らしく、他にも森の中にあった果物や木の実が入った籠も用意する。森人族は普通の食事よりも野菜や果物を好むので薬草の採取の時についでに集めてきたらしい。
「キュロンッ」
「あ、またいっぱい果物を持ってきてくれたんだね」
「本当に姫様のアインはいい子で助かりますね。ちょっと休憩しましょうか……あ、だけどウルちゃんの食事はどうしたらいいっすかね?」
「クゥ~ンッ」
ウルは果物や野菜の類は殆ど食べず、羨ましそうに食事を行おうとする3人を見て瞳を潤ませる。そんな目で見られたら3人も食事は行い難く、仕方なくエリナはボーガンを取り出して適当に森の中に生息する魔獣を狩る事にした。
「しょうがないっすね、ちょっとあたしが魔物を狩ってきます。多分、オークぐらいはいると思いますし……」
「えっ……エリナちゃんだけで大丈夫?」
「任せてくださいよ。こう見えても王国四騎士ですから……オークぐらいわけないですよ」
「キュロロッ」
エリナの言葉に自分も手伝うとばかりにアインが力こぶを作り、この二人ならばオーク程度の魔物など問題なく狩猟出来るだろう。だが、気掛かりがあるとすれば彼女達をここまで追い詰めた緑影の存在だった。
――数日前、偶然にもティナ達はヨツバ王国に仕えるはずの緑影に襲われたところをウルに救い出され、そのまま深淵の森の奥地に存在する屋敷まで運ばれた。どうにか緑影の追跡を免れる事に成功したがウルは逃走の際に緑影に深手を負わされ、今現在は屋敷の中で治療を受けている。
元々魔物に対する防備の面では優れた屋敷なので敷地内に入れば魔物に襲われる心配もなく、この場所を知るのは王国の中でも一部の人間だけである。敢えて魔物が救う危険地帯として知られている深淵の森に逃げ込んだなどと誰もが予想できず、今の所は追跡者が現れる様子はない。
「じゃあ、ちょっとあたし達は外に出ますのでティナ様とウルちゃんはここで待っていて下さい。すぐに戻ってくるので離れちゃ駄目ですよ!!」
「う、うん……二人とも気を付けてね」
「キュロロッ」
自分達に任せろとばかりにアインは胸を叩き、エリナを肩に乗せて森の中に引き返す。その様子を見送ったティナはウルに振り返ると、疲れて眠ってしまったのか寝息を立てていた。
「グウウッ……」
「あ、ウルちゃん寝ちゃった。ふふ、寝顔も可愛いな……あれ、なんでだろう。私も眠たくなっちゃった……」
連日の疲れが出て来たのかティナも眠気に襲われ、ウルの柔らかな毛皮に顔を突っ込みながら眠ってしまう――
――二人が眠った直後、屋敷の屋根の上から複数の人影が現れ、彼等はお互いに頷き合うと地面へ音も立てずに着地する。全員が緑色のマントを身に着けており、その内の一人は掌に小さな壺を握り締め、壺の中から甘い香りが漂う。
「おい、早くそれをしまえ。他の魔物に気付かれる恐れがある」
「ああ、すまない」
壺の中には紫色のバラを想像させる植物が収められ、この植物はバルトロス王国には存在しないヨツバ王国の特融の花である。本来は麻酔薬の原料にもなる植物のため、使い方によれば花の匂いを利用して他の人間の眠気を引き起こす効果もある。
屋根に隠れていた緑影の集団はこの壺の中に収められた花を利用してティナとウルを眠らせ、ティナを拘束するために近付こうとした。だが、寸前で隊長格の女性の森人族が立ち止まり、屋敷の外の様子を伺う。その女性の態度に部下たちは不振に思い、何か気になる事があるのかと問う。
「どうかしました?」
「いや……視線を感じたような気がしたんだが」
「まさか、気配感知には何も反応はありませんが……」
「エリナの事を心配しているのですか?大丈夫です、奴は所詮は子供……70才のガキに我々が後れを取るはずがありません」
この場に集まった緑影の面子は全員が200才を超える暗殺者であり、感知系の能力も習得している。なので仮にエリナが屋敷の異変に気付いて戻って来たとしても対応できる自信はあった。
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