不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

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最終章 前編 〈王都編〉

竜種級の魔人族

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「流石にこの数は……きついな!!」
『しぶとい人間だな……いや、人間?』


頭髪の蛇の攻撃を弾き返すレナを見てメドゥーサは疑問を抱いた声を上げ、蛇の攻撃を中断させた。その隙を逃さずにレナは後ろへ下がり、心眼のみで周囲の状況を把握しながらラナを救い出す手段を考える。周囲に身を守れそうな障害物は存在せず、この場所だけが石像が存在しない事に気付く。他の通路には無数の石像が存在するのに対し、この広間だけは石像が1つも設置されていなかった。


「石像がない……お前の仕業か?」
『そうだ。この場所はお前達のような侵入者を捕まえるために邪魔な物は一切排除した……こういう風に捕まえるためにな!!』
「これは……!?」


レナの魔力感知が発動し、なんとメドゥーサは全身から黒色の魔力を噴き出すと、黒煙のように周囲に拡散させた。魔法も扱えたことにレナは驚く一方、煙に触れるのは危険だと判断して右腕を掲げて風の聖痕の力を発動させる。

本来、密封された空間では風の精霊は住みにくいが、地下迷路が広大だった事や外へ通じる出入口が存在する事が幸いしてこの場所でも風の精霊を呼び集める事は出来た。


「風圧!!」
『ぬうっ!?』
「うわっ!?」


右手を地面に振り下ろした瞬間に強烈な突風が発生し、迫りくる黒煙を全て吹き飛ばす。その結果、ラナを抱えていたメドゥーサも体勢を崩して彼女を手放してしまい、その隙を逃さずにレナは反鏡剣を抱えて飛び掛かった。


「加速剣撃……兜割り!!」
『ぐうっ!?』


空中で複合戦技を発動させたレナに対してメドゥーサは咄嗟に頭髪の蛇を伸ばして反撃するが、重力によって加速した剣の刃は無数の蛇を切り裂いて本体にまで迫る。危険を察知したメドゥーサは攻撃を途中で止めてその場を離れ、警戒するように距離を取る。


『私の髪の毛を切っただと……馬鹿な!?』


自分の頭髪が切られた事にメドゥーサは動揺を隠せず、斬りつけられた頭を抑えて驚愕の声を上げる。切り裂かれた蛇は地面に暫くの間はのたうちまわったが、やがて動かなくなった。その様子を見ながらレナはラナに手を伸ばす。


「ほら、起きろ……大丈夫か?」
「馬鹿が……何故、私を置いていかなかった?」
「あんたが道案内してくれないと俺は先に進めないからだよ」
「くそっ……すまない」


ラナは伸ばされた手を掴み、身体の痛みを抑えながら起き上がる。負傷はしたようだが動けない傷ではなく、彼女に回復魔法を施しながらレナは狼狽しているメドゥーサに視線を向け、取引を持ち込む。


「メドゥーサ!!俺達はこの先に進みたいだけだ!!黙って通すなら何もしない……だけど、邪魔をするなら切り伏せるぞ!!」
『人間が……調子に乗るなよ!!』
「調子に乗ってんのはお前だよ!!」


性懲りもなく頭髪を伸ばして攻撃を仕掛けようとしたメドゥーサに対してレナは掌を構え、久方ぶりに火属性と風属性の初級魔法と支援魔法を組み合わせた合成魔術を発動させる。


「火炎刃!!」
『何ぃっ!?』


三日月状の火炎の刃がレナの手元から放たれ、風の聖痕の効果なのか今回は一段と巨大な炎刃が発生し、メドゥーサの身体が爆炎に包み込まれた。迷路内に悲鳴が響き渡り、その様子を見ていたラナはあまりの威力に冷や汗を流す。


「馬鹿な……なんという威力だ。これではまるで上級の砲撃魔法と同じではないか」
「うわ、凄い威力……大分聖痕の力も扱えるようになったかな」


炎に包まれて崩れていくメドゥーサの姿を確認したレナは自分の右腕に視線を向け、想像以上の魔法を生み出す事に成功した事を驚く。今のレナならば砲撃魔法にも劣らぬ威力の魔法も生み出す事が可能となり、遠距離への相手の攻撃を行えるようになったと考えるべきだろう。

2人は燃え盛る通路に顔を向け、もう心眼を発動する必要はないかとレナが瞼を開こうとした時、不意に傍のラナが呻き声を上げて膝を付く。


「ぐうっ!?ま、まさか……」
「ラナ?」
「離れろっ!!」
『シャアアッ!!』


片膝を付いた状態でラナはレナの身体を突き飛ばした瞬間、彼女の足元から何かが飛び出して先ほどまでレナの立っていた位置に降りかかる。それは先ほどレナが切り落としたメドゥーサの頭髪の蛇で間違いなく、何時の間にかラナの右足に別の蛇が噛みついていた。


「こいつら……!?」
『シャアアアッ!!』


死んだふりをしていたのか、切り落とした全て蛇が動き出してレナの身体に噛みつこうとしてきたが、それを剣で振りはらいながらレナは瞼を開いてラナの様子を伺うと、既に蛇に噛みつかれた箇所から石化が始まっており、ラナは短剣を引き抜いて石化していない箇所を切り落として石化を止めようとしていたが、他の蛇が彼女の行動に気づいたように短剣を握り締める腕に絡みついて阻止する。


『シャウッ!!』
「ぐあっ……くそっ、逃げろ……」
「離れろ!!」


完全に石化する前にレナは剣を振り払い、ラナに絡みついていた蛇達だけを切り裂く。そのまま彼女を抱きかかえようとしたが、ラナがそれを止めるように右手を突きだす。


「触るな!!お前も石化するぞ……」
「ラナ……」
「……頼む、どうかハヅキ様を――」


ラナが言葉言い終える前に彼女の肉体が石像と化し、その様子を見たレナは歯を食いしばる。そして火炎に包み込まれた通路に視線を向けると、そこには切り落とした頭髪の蛇を拾い上げて自分の頭に移動させるメドゥーサの姿が存在した。

メドゥーサは全身が火炎に包み込まれながらも歩み寄り、余裕の表情を浮かべる。身体に黒色の魔力を纏わせる事で火炎を防いでいるらしく、全ての蛇を集め終えたメドゥーサが答える。


『無駄だ……我が肉体は闇の精霊の加護を受けている。この程度の炎で焼かれる事などない』
「なるほど、魔鎧術か……ホネミンのと比べるとおどろおどろしいな」


ホネミンが人間に擬態する際に扱う「魔鎧術」をどうやらメドゥーサも扱えるらしく、彼女は闇の精霊を吸収する事で身体を包み込む魔力の鎧を形成して先ほどの魔法を防いだらしい。それを察したレナは反鏡剣に視線を向け、この魔法を跳ね返す剣ならば魔鎧術を突破して攻撃が出来る事を示す。


「おい、ラナを元に戻せ。そうすれば命は助けてやる」
『この期に及んでまだそんな事を……状況を理解しているのか人間?お前もその女と同じようにしてやる』
「なら仕方ない……ここで死ね」


反鏡剣を握り締めたレナはメドゥーサと向き合うと、圧倒的な威圧感を放つ。それを受けたメドゥーサは過去にこの場所に訪れた剣士の事を思い出し、金色の髪の毛の少年の姿を思い浮かべる。それと同時にレナの正体を掴む。


『そうか、お前は剣鬼か……忌々しい』
「遺言はそれだけか?」
『ふんっ……調子に乗るな、貴様の剣など私には通用しない』


剣を上段に構えたレナに対してメドゥーサは頭髪の蛇を増やして自分の周囲に広げさせると、お互いに隙を伺うように動かない。メドゥーサの頭髪の蛇が1匹でもレナの身体に食い込めば敗北するが、この状況でもレナは自然と落ち着き、冷静に相手の様子を伺う。

メドゥーサの能力は確かに厄介だが、それでも竜種と実際に戦った事があるレナから言わせれば勝てない相手ではない。カイから教わった剣技を試すため、五感を研ぎ澄ましながらレナはメドゥーサに向かう。


「一刀――」
『死ねっ!!』


正面から迫ってきたレナに対してメドゥーサは無数の頭髪の蛇を放ち、確実に蛇達はレナの身体を貫いた。その様子を見たメドゥーサは歓喜の表情を浮かべたが、それが彼女の最大の過ちだった。肉体を「貫いた」という事にメドゥーサは疑問を抱いた頃には既に「本物」のレナは彼女の目前にまで迫っており、剣を下から振り上げて首元を切断していた。


「両断」
『っ――!?』


メドゥーサの絶叫が地下迷路内に響き渡り、胴体と首が地面に崩れ落ちる。その様子を心眼で確認したレナは瞼を開くと、何時の間にか視界に画面が表示されていた。


『戦技「残像」を習得しました』
「ん?」


知らぬ間に新たな戦技を習得していたらしく、画面に表示された文字を見てレナは首を傾げながらも地に落ちたメドゥーサに視線を向ける。既に死に絶えているのか瞳を合わせてもレナの肉体が石化する事はなく、かわりに背後からラナの呻き声が聞こえてきた。
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