不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

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最終章 前編 〈王都編〉

革命団の統率者

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「子供……?」
「レナ殿、失礼でござるよ。こららの方が革命団を統率しているコタロウ殿でござる」
「やあ、初めまして」
「あ、どうも……」


コタロウと紹介された少年のような外見の小髭族は立ち上がるとレナに握手を求める。差し出された手を握り締めると、子供とは思えない程の握力で握り締められ、小さいとはいえ小髭族の腕力を備わっているコタロウにレナは驚く。


「ふふふ、僕の見た目でまだ子供だと思ったんだろう?こう見えてもちゃんと成人しているし、君達二人の年齢を合わせても僕は年上だよ」
「あ、そうなんですか。なんかすいません」
「自分が童顔である事はよく理解しているさ。だけどね、年下に子ども扱いされるのだけは許せないんだよ」
「す、すいません……」


自分が子供出ない事を強調しながら掌を握り締めてくるコタロウに対し、レナは自分の非礼を詫びて手を離す。改めてコタロウは二人と向き合うと、笑顔を浮かべて椅子に座るように促す。


「じゃあ、改めまして自己紹介を行おうか。僕の名前はコタロウ、革命団の団長兼鍛冶師を務めている」
「団長と……鍛冶師?」
「ああ、僕の本業は鍛冶師だからね。革命団が所有している武器の大半は僕と弟子たちが作り上げた代物さ」
「コタロウ殿はこの王都でも腕利きの鍛冶職人でござる。実を言えば拙者の刀もコタロウ殿に打ち直してもらった者でござる」
「そうだったのか……」


革命団の団長を務めるコタロウは表向きは鍛冶師として働き、その腕前は王都でも有名だという。また、革命団の所有する武具や防具の類も彼が用意している物らしく、そのお陰で革命団の人員は質の良い武具を整えているという。ハンゾウも王都へ赴いた時に彼と出会い、新しい刀を打ってもらった。


「君の噂はよく耳にしているよレナ君。だいたいの事情はこちらも察している、君が追放された王子である事、そして黒虎のギルドマスターの弟子でアイラさんの子供である事もね」
「そこまで知っているんですか?」
「拙者は何も喋ってないでござるよ。既にバル殿とアイラ殿から話を伺っていたようでござる」


自分の正体を知るコタロウにレナは驚きを隠せず、事情を知っているバルとアイラから説明を受けていたのかと考えると、その肝心の二人の姿が見えない事に気付く。ハンゾウの話ではこの会議室に二人が居ると思っていたのだが、コタロウはレナの考えを読み取ったようには話す。


「ああ、バルさんとアイラさんは残念ながらここにはいないよ。二人には買い出しを頼んでいる、人員も増えてきたから食料品も大量に必要になっていてね」
「そうなんですか……」
「それは残念でござる。でも、買い出しならすぐに戻ってくるのでは?」
「そうだね、ここで待てばいずれ二人は戻ってくるよ。それまでの間はここでゆっくりしてくれたまえ……と、言いたい所だがその前に君達に聞きたいことがいくつかある……入ってきたまえ」
『はっ!!』


コタロウは表情を一変させ、指を鳴らす。その直後に扉が開かれ、冒険者と思われる集団が中に入ってきた。その姿を見てレナは咄嗟に警戒するが、コタロウは笑い声をあげて二人を落ち着かせる。


「大丈夫、彼等は王女様を救い出すために選出した部隊の人間達さ」
「部隊?」
「ああ、君達もナオ姫が処刑されるという噂は耳にしているだろう?僕達はそれを断固として阻止するために救出作戦を立てている。ここに呼び出した全員がA級の階級を持つ腕利きの冒険者さ」


レナは冒険者達に視線を向け、確かに全員が並の冒険者とは思えぬ佇まいをしており、身に着けている装備品も一級品だった。中には見知った顔も存在し、先ほど別れたガロやダイアも含まれていた。


「ようレナ、さっきぶりだな」
「ちっ……」
「あはは……どうも」


3人はレナと顔を合わせるとダイアは親指を向け、モリモは愛想笑いを浮かべ、ガロは気に入らなさそうに顔をそむける。実力的には彼等もA級の冒険者のため、救出部隊に組み込まれたようだが、どうして革命団がナオの救出のために動いている事に疑問を抱く。

革命団はバルトロス王国と対立する組織のため、王妃と敵対しているとはいえ王国の王女であるナオを救うためにどうしてここまでの準備を整えているのかとレナはコタロウに質問する。


「……どうして革命団はナオを……いや、俺の義姉を救うためにここまでしてくれるんですか?」
「簡単な事さ、革命団にとってナオ姫は最後の希望。王妃というこの国の闇を祓う人だからだよ」
「国の闇を祓う……?」
「僕達は既に王妃の正体が旧帝国の末裔である事を知っている。そして彼女がこの国を裏から支配し、王国を乗っ取ろうとしている事もね」


王妃が元々は旧帝国側の人間である事を既に革命団は突き止めていたらしく、彼等は現在の王国が王妃の手によっておかしくなり始めている事を理解していた。だからこそ王妃の息子を王位の座に就かせるのは危険だと判断し、年若い女性ではあるがこの国の事を真剣に愛するナオの事を崇拝していた。


「僕達は革命団と名乗ってはいるが、実際の所は別に王国に恨みを抱いているわけでも、王国を滅ぼした後の新たな国の指導者になるつもりはない。僕達の目的はこの国を支配する王妃の打倒……そのためにはナオ姫の力が必要なんだ」
「王妃と対立している存在だから革命団はナオを救い出そうとしているんですか?」
「簡単に言えばそうなる。この国の王族で尚且つ王位継承権を持つ彼女が王座に就けば王妃の権限を剥奪出来る。だからこそ彼女には何としても生きて貰わないといけない」
「……どうして貴方は王妃が旧帝国の末裔だと知っているんですか?」


レナの質問にコタロウは黙り込み、何かを思い悩むように腕を組んで考え込む。やがて溜息を吐くと覚悟を決めたようにコタロウは話す。


「それは……僕も旧帝国側の人間だったからさ」
「何と!?それは本当でござるか!?」
「おい、マジかよ!?」
「聞いてねえぞ!?」


コタロウの告白にハンゾウ達も初耳だったのか会議室に動揺が走り、レナは冷静にコタロウと向き合って話の続きを促す。コタロウは昔の事を思い出す様に感慨深げな表情を浮かべ、自分と王妃の関係を語り始めた。


「僕と王妃は元々は旧帝国の暗殺者として育てられていた。だけど、僕の場合は両親を戦で失って戦災孤児になった時に組織から拾われたのに対し、彼女は旧帝国の先祖、つまりは帝国時代の皇族の末裔なんだ」
「という事は……」
「ああ、つまり王妃と君の先祖は元々は同じ人間だった。帝国が滅びて王国が建国された頃から皇族の家系は二つに分かれたが、王妃は正真正銘のバルトロスの家系だ」
「……信じられない」


王妃がバルトロス皇族の血筋という情報に会議室に集まった全員が動揺を隠せず、自分と王妃が遠縁である事はレナもアイリスから聞いていたが、やはり人に改めて言われると複雑な気持ちを抱く。しかも旧帝国は王妃によって止めを刺されたという話も思い出す。


「でも、腐敗竜の一件で旧帝国という組織は瓦解したんじゃないんですか?あ、噂で聞いた話ですけど……」
「よく知っているね。確かに旧帝国の関係者はもう殆どの人間が既に闇に葬られた……生きているのは僕と王妃、いやイレアビトだけだろう」
「いれあびと?」
「王妃の本名だ。この場に居る人間にだけ明かそう、決して他の人間には無暗に他言しないでくれ」


王妃の本名はコタロウも知っていたらしく、彼によればイレアビトとコタロウは共に旧帝国の組織の中で働いていたという。
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