不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

文字の大きさ
769 / 2,090
外伝 ~ヨツバ王国編~

西聖将の領地

しおりを挟む
「ぷるぷるぷるっ……ぷるんっ!?」
「ん?どうしたのでござるかスラミン?」
「ぷるぷるぷ~る!!」
「何か見つけたと言ってるみたい」


スラミンを抱えたコトミンが翻訳すると、何を見つけたのか気になったレナ達はスラミンが示す方角へ向けて移動を行う。その結果、森の中で流れている小川を発見した。


「なんだ、ただの小川じゃん。スラミン、お腹減って水を飲みたかったのか?」
「ぷるるんっ」
「違う、この小川は小川じゃない」
「え?どういう意味?」


見た限りでは森の中に流れる小川にしか見えないが、コトミンとスラミンだけは目の前の小川から水の臭いがしない事に気付き、彼女は小川に向けて小石を投げ込む。


「見てて」
「見てって……うわっ!?何だ!?」
「これは……」


コトミンが小石を投げつけた瞬間、小川の中に入り込む前に小石は空中で何かに衝突したように弾かれ、空間に波紋が生じた。それを見たレナ達は驚き、試しにレナが退魔刀を引き抜いて波紋が生じた空間に伸ばすと、まるでゴムのような物に触れた感覚が広がる。

どうやら透明なゴムのような壁が小川の前に存在するらしく、この壁に遮られて水の臭いが感じられなかったらしい。しかもレナが退魔刀の力を込めて押し込むと、弾力性があるのか跳ね返されてしまう。それを確認したレナは退魔刀を背中に戻し、見えない壁に触れながら様子を伺う。


「何だろうこの壁……結界石の障壁みたいな物かな?」
「でも、こんなの見たことないぞ……というより、この先にどうやって進めばいいんだ?」
「この感触、スライムと似ている」
「ぷるるんっ……」
「キュロロ……」


全員で見えない壁に触れてどうすれば侵入できるのか悩み、この先が目的地なのに入る手段がなければ先へ進めないため、レナは見えない壁を突破する方法を考える。


(これが魔法によって作り出された物なら、反鏡剣を使えば……)


全員を下がらせてレナは反鏡剣を引き抜くと、あらゆる魔法を跳ね返す素材で構成された反鏡剣ならば結界を破れるかもしれず、レナは戦技を発動させて切りつける。


「兜砕き!!」


全力で剣を振りぬいた瞬間、刃はあっさりと見えない壁を切り裂き、隙間を作り出す事に成功する。しかし、すぐに壁の隙間は塞がり始め、だいたい10秒ほどで閉じてしまう。それを確認したレナは頷き、仲間達に提案した。


「うん、反鏡剣なら隙間が作れるみたいだから先へ進めそう」
「いや、でもこれ明かに侵入者が入ってこないようにしているよな……本当に大丈夫なのか?」
「まあ、ティナ達がこの中に居るのは間違いないし……それにデブリ国王たちの石像は俺が預かってるんだし、大丈夫だよ……多分」
「その最後の一言で一気に不安になったでござる」
「とにかく、こんな所で立ちどまっても仕方ないよ。先へ進もう」


レナの言葉に全員が従い、見えない壁に隙間を作り出して全員が渡り切る。見えない壁の中に入っても特に外観が変化したわけではなく、本当に透明な壁が遮っていただけで別におかしな点はない。このまま先へ進もうとした時、ミノが何かを発見したのか地面を指差す。


「ブモォッ!!」
「どうしたのミノ?あ、これは……ウルの足跡だ!!やっぱり、ティナ達もここへ来てたんだ!!」


地面に大きな狼の足跡を発見し、長年共に過ごしたレナだからこそ足跡の正体がウルだと見抜く。そして観察眼の能力を発動させるとウルの足跡でどちらの方角へ向かったのかがはっきりと分かり、まだ足跡が出来てからそれほど時間は経過していない様子だった。


「よし、足跡を追って行こう!!今なら追いつけるかも!!」
「承知したでござる」
「やっと合流か……あれ?コトミンとスラミンはどこ行った?」
「ここにいる、スラミンに水分補給させている」
「ぷるるんっ♪」


コトミンは小川の中にスラミンを突っ込み、小川の水を飲み込ませる。王都を抜け出す際に大分無理をさせたのでスラミンも水分補給させて疲れを癒そうとするが、唐突にスラミンが震えだす。


「ぷるんっ!?ぷるぷるっ!!」
「きゃっ!?」
「スラミン!?どうしたの急に!?」
「ぷるるるんっ!!」


スラミンはコトミンの手元を離れると小川の中に飛び込み、大量の水分を補給して体積を肥大化させる。そんなスラミンの行動に全員が驚く中、ハンゾウが声を上げた。


「む、この気配……誰かが接近してくるでござる!!」
「え!?ティナ達か!?」
「いや、数が合わないでござる……レナ殿、すぐにここを離れた方がいいでござる!!」
「分かった、スラミン戻っておいで!!」
「ぷるるっ……」


大量の水分を吸収して通常時の3倍近くは大きくなったスラミンだが、レナの声を聞いて仕方なく小川から身を乗り出す。しかし、その間にも遠方から馬の足跡のような音が鳴り響き、レナ達の元へ接近していた。
しおりを挟む
感想 5,092

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―

ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」 前世、15歳で人生を終えたぼく。 目が覚めたら異世界の、5歳の王子様! けど、人質として大国に送られた危ない身分。 そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。 「ぼく、このお話知ってる!!」 生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!? このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!! 「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」 生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。 とにかく周りに気を使いまくって! 王子様たちは全力尊重! 侍女さんたちには迷惑かけない! ひたすら頑張れ、ぼく! ――猶予は後10年。 原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない! お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。 それでも、ぼくは諦めない。 だって、絶対の絶対に死にたくないからっ! 原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。 健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。 どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。 (全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。