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外伝 ~ヨツバ王国編~
ダークエルフ
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――ヒヒィイインッ!!
森の中に馬の咆哮が響き渡り、それを聞いたレナ達は慌ててその場を離れようとしたが、大きくなったスラミンを持ち上げるのに時間が掛かってしまう。
「ちょ、スラミンどれだけ水を吸ったの!?重いんだけど……!!」
「キュロロロッ……!?」
「ブモォッ……!?」
「ぶるるんっ……」
「鳴き声まで変わってるし……本当に何があったの!?」
アイン、ミノが二人がかりでもスラミンを持ち上げるのがやっとであり、体積から考えてもそれほど水分は吸収していないはずだが、何故か現在のスラミンは途轍もない重量になっていた。このままでは逃げる事も出来ず、仕方なくレナはハンゾウに接近する反応がどの方角から訪れようとしているのかを聞いて迎え撃つ事を提案する。
「ハンゾウ!!何処から来る!?」
「レナ殿の正面からでござるが……気を付けて欲しいでござる!!この気配、ゴウライ殿に匹敵するでござる!!」
「何だって!?」
バルトロス王国最強の剣士であるゴウライにも匹敵する気配が接近するという言葉にレナは驚き、退魔刀と反鏡剣を引き抜いて身構える。しばらくすると、木々を潜り抜けて額に二本の角を生やした「黒馬」に乗り込んだ人物が現れ、それを見たレナは驚きを隠せない。
「何だ!?」
「……侵入者か、排除する」
「レナ殿!!気を付けるでござる!!」
「ヒヒイイインッ!!」
黒馬は二本の角を振り翳してレナの元へ突進し、その背中に乗る黒色の鎧と剣を身に着けた「女騎士」はレナを睨みつける。
――女性の容姿は褐色の肌に美しい黒髪を越本まで伸ばし、細長い耳を持つ事から森人族だと思われた。容姿に関しては凛々しい顔立ちに無駄な肉がない体型、その手元には刀身が異様に長く、レナの退魔刀と同様に黒色の刃の長剣を握り締めていた。
女性は黒馬に跨ったまま退く様子はなく、それを確認したレナは両手の剣を振り翳し、正面から迎え撃つ。
「来いやぁっ!!」
「何!?」
「ヒヒンッ!?」
「嘘ぉっ!?」
レナは逃げもせずに堂々と黒馬の衝突を退魔刀で受け止め、そのまま数メートルは押し込まれるが、やがて黒馬の方が勢いを失って止まってしまう。その光景に誰もが驚き、一方でレナは相手を大人しくさせるために次の手に移る。
黒馬を正面から受け取めたレナはまずは地面に突き刺した退魔刀を引き抜き、殺さないように手加減をしながら刀身部分で黒馬に振り翳す。刃に触れないように気を付けて放たれた大剣は黒馬の側頭部に命中し、体長が3メートル近く存在する黒馬は悲鳴をあげて倒れ込む。
「ヒヒンッ!?」
「くっ……よくもクロを」
「それがその馬の名前?ちょっと安直過ぎない?」
「やかましい!!」
女性はクロと呼んだ黒馬から下りるとレナと向き合い、剣を振り翳す。それを見てレナも両手の剣で応戦を行い、刃同士が触れて金属音が鳴り響く。
「はああっ!!」
「くっ!?」
「れ、レナが押されている!?」
「あの者、強いでござる……!!」
「レナ、頑張って!!」
数十合ほど両者は打ち合い、その光景を見てコトミン達は驚きを隠せない。レナの実力を知っているだけにそれと互角に張り合う女性の力量に動揺を隠せず、一方でレナの方もレベルが80を超えた自分と互角に打ち合える相手に戸惑う。
(こいつ、かなり強い!!こんな細腕なのに剣撃が重い……ここまでの相手はミドル以来だ!!)
女性の繰り出す剣の重さは尋常ではなく、しかも彼女は戦技すら発動していない。両者は互角に渡り合い、やがて女性の方が距離を置くと剣を構える。
「中々やるな……これほど手応えのある相手は先代か、クレナイ以来だ」
「何だって?」
「だが、ここまでだ」
クレナイの名前を口にした女性にレナは驚くが、彼女はそんな黒色の剣を構えると、刀身に掌を伸ばす。そして次の瞬間、刀身に「真紅の炎」が纏い、それを見たレナ達は驚愕した。基本的に森人族は火属性を苦手とするはずだが、褐色肌の女性は刀身に凄まじい熱気を誇る炎を刃に纏わせてレナに挑む。
(魔法剣……いや、この感じは違う!!)
魔力感知の能力でレナは女性が刀身に纏わせた「真紅の炎」が只の魔法剣ではない事に気付き、この剣をまともに受けるのは危険だと判断したレナは縮地を発動させて攻撃を避ける。その直後、女性の振り下ろした刃が地面へ衝突して炎が正面に放たれる。
「なっ!?」
「ひいいっ!?」
「熱っ!?焼き魚にされる……!!」
「な、なんという威力!?」
振り下ろされた刀身から炎が放たれ、正面に存在した岩を焼き尽くす。岩石はあまりの炎の火力に原型を留めない程に溶かされ、もしもレナが避けなければ今頃は跡形もなく燃え尽きて板かもしれない。女性は剣を振り払うと、攻撃を回避したレナに笑みを浮かべた。
「なるほど、縮地を覚えているか……だが、その程度の芸当は私にもできる」
「何を……うわっ!?」
女性も縮地は扱えるらしく、一瞬にしてレナの背後へと移動すると、剣を振り払う。慌ててレナは頭を下げて回避する事に成功したが、女性が空振りした刃の炎が周囲に放たれ、今度は近くに立っていた大樹の樹皮を焼き払う。
森の中に馬の咆哮が響き渡り、それを聞いたレナ達は慌ててその場を離れようとしたが、大きくなったスラミンを持ち上げるのに時間が掛かってしまう。
「ちょ、スラミンどれだけ水を吸ったの!?重いんだけど……!!」
「キュロロロッ……!?」
「ブモォッ……!?」
「ぶるるんっ……」
「鳴き声まで変わってるし……本当に何があったの!?」
アイン、ミノが二人がかりでもスラミンを持ち上げるのがやっとであり、体積から考えてもそれほど水分は吸収していないはずだが、何故か現在のスラミンは途轍もない重量になっていた。このままでは逃げる事も出来ず、仕方なくレナはハンゾウに接近する反応がどの方角から訪れようとしているのかを聞いて迎え撃つ事を提案する。
「ハンゾウ!!何処から来る!?」
「レナ殿の正面からでござるが……気を付けて欲しいでござる!!この気配、ゴウライ殿に匹敵するでござる!!」
「何だって!?」
バルトロス王国最強の剣士であるゴウライにも匹敵する気配が接近するという言葉にレナは驚き、退魔刀と反鏡剣を引き抜いて身構える。しばらくすると、木々を潜り抜けて額に二本の角を生やした「黒馬」に乗り込んだ人物が現れ、それを見たレナは驚きを隠せない。
「何だ!?」
「……侵入者か、排除する」
「レナ殿!!気を付けるでござる!!」
「ヒヒイイインッ!!」
黒馬は二本の角を振り翳してレナの元へ突進し、その背中に乗る黒色の鎧と剣を身に着けた「女騎士」はレナを睨みつける。
――女性の容姿は褐色の肌に美しい黒髪を越本まで伸ばし、細長い耳を持つ事から森人族だと思われた。容姿に関しては凛々しい顔立ちに無駄な肉がない体型、その手元には刀身が異様に長く、レナの退魔刀と同様に黒色の刃の長剣を握り締めていた。
女性は黒馬に跨ったまま退く様子はなく、それを確認したレナは両手の剣を振り翳し、正面から迎え撃つ。
「来いやぁっ!!」
「何!?」
「ヒヒンッ!?」
「嘘ぉっ!?」
レナは逃げもせずに堂々と黒馬の衝突を退魔刀で受け止め、そのまま数メートルは押し込まれるが、やがて黒馬の方が勢いを失って止まってしまう。その光景に誰もが驚き、一方でレナは相手を大人しくさせるために次の手に移る。
黒馬を正面から受け取めたレナはまずは地面に突き刺した退魔刀を引き抜き、殺さないように手加減をしながら刀身部分で黒馬に振り翳す。刃に触れないように気を付けて放たれた大剣は黒馬の側頭部に命中し、体長が3メートル近く存在する黒馬は悲鳴をあげて倒れ込む。
「ヒヒンッ!?」
「くっ……よくもクロを」
「それがその馬の名前?ちょっと安直過ぎない?」
「やかましい!!」
女性はクロと呼んだ黒馬から下りるとレナと向き合い、剣を振り翳す。それを見てレナも両手の剣で応戦を行い、刃同士が触れて金属音が鳴り響く。
「はああっ!!」
「くっ!?」
「れ、レナが押されている!?」
「あの者、強いでござる……!!」
「レナ、頑張って!!」
数十合ほど両者は打ち合い、その光景を見てコトミン達は驚きを隠せない。レナの実力を知っているだけにそれと互角に張り合う女性の力量に動揺を隠せず、一方でレナの方もレベルが80を超えた自分と互角に打ち合える相手に戸惑う。
(こいつ、かなり強い!!こんな細腕なのに剣撃が重い……ここまでの相手はミドル以来だ!!)
女性の繰り出す剣の重さは尋常ではなく、しかも彼女は戦技すら発動していない。両者は互角に渡り合い、やがて女性の方が距離を置くと剣を構える。
「中々やるな……これほど手応えのある相手は先代か、クレナイ以来だ」
「何だって?」
「だが、ここまでだ」
クレナイの名前を口にした女性にレナは驚くが、彼女はそんな黒色の剣を構えると、刀身に掌を伸ばす。そして次の瞬間、刀身に「真紅の炎」が纏い、それを見たレナ達は驚愕した。基本的に森人族は火属性を苦手とするはずだが、褐色肌の女性は刀身に凄まじい熱気を誇る炎を刃に纏わせてレナに挑む。
(魔法剣……いや、この感じは違う!!)
魔力感知の能力でレナは女性が刀身に纏わせた「真紅の炎」が只の魔法剣ではない事に気付き、この剣をまともに受けるのは危険だと判断したレナは縮地を発動させて攻撃を避ける。その直後、女性の振り下ろした刃が地面へ衝突して炎が正面に放たれる。
「なっ!?」
「ひいいっ!?」
「熱っ!?焼き魚にされる……!!」
「な、なんという威力!?」
振り下ろされた刀身から炎が放たれ、正面に存在した岩を焼き尽くす。岩石はあまりの炎の火力に原型を留めない程に溶かされ、もしもレナが避けなければ今頃は跡形もなく燃え尽きて板かもしれない。女性は剣を振り払うと、攻撃を回避したレナに笑みを浮かべた。
「なるほど、縮地を覚えているか……だが、その程度の芸当は私にもできる」
「何を……うわっ!?」
女性も縮地は扱えるらしく、一瞬にしてレナの背後へと移動すると、剣を振り払う。慌ててレナは頭を下げて回避する事に成功したが、女性が空振りした刃の炎が周囲に放たれ、今度は近くに立っていた大樹の樹皮を焼き払う。
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