不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

文字の大きさ
773 / 2,090
外伝 ~ヨツバ王国編~

西聖将の役割

しおりを挟む
「ホムラさん、どうか落ち着いてください。この人達は本当に敵じゃなくて……」
「黙れ、私に指図するな。たかが王国四騎士如きが……」
「ホムラちゃん、機嫌治してよ~」
「ええい、纏わりつくな王女!!」
「わわっ!?」


ホムラはティナを振り払い、クロと名付けているバイコーンの背中に乗り込む。そんなホムラの態度にハンゾウは眉をしかめ、注意する。


「お待ちくだされ西聖将殿、自分が使える国の王女に対してそのような態度はいくらなんでも失礼ではないのでござるか?いくら六聖将といっても、臣下であるならば王族に対しての最低芸の礼儀は……」
「臣下だと?ふざけた事を抜かすな、私はこんなガキに仕えたつもりはない」


ハンゾウに対してホムラは辛辣に返答し、ティナとエリナの方に振り向いて気に入らなそうに舌打ちを行う。そんな彼女の傍若無人な態度にレナ達は戸惑うが、エリナが慌てて説明を行う。


「皆さん、落ち着いてくださいっす!!西聖将は六聖将の中でも特別な存在で、そもそもヨツバ王族の臣下ではないんです!!」
「はあっ!?どういう事だよ?六聖将といっても将軍なんだろ?なのに国に仕えていないって……」
「西聖将が仕えるのは王族ではなく、ヨツバ王国その物なんです。つまり、西聖将が忠誠を誓う相手は王ではなく、国その物なんです」
「そういう事だ。だから王族であろうと私の邪魔をするならティナ王女、お前だろうと容赦はしない」
「ううっ……」


ホムラの言葉にティナは落ち込み、その反応を見てレナ達は不思議に思う。ギンタロウの場合はティナが幼少期の頃から懐いているので砕けた口調を使ってはいたが、それでも最低限の礼儀は守っていた。しかし、ホムラの場合は完全にティナに対して礼儀など弁えていない。

将軍でありながら王族ではなく、国に忠誠を誓うという言葉にレナはどういう意味なのかをエリナに問う前にアイリスと交信を行う。


『アイリス、西聖将はヨツバ王国の間ではどんな立場なの?』
『そうですね、西聖将はヨツバ王国の将軍ではありますが、同時に独立した存在でもあるんです。西聖将の領地は例え、ヨツバ王国の関係者であろうと踏み入る事は許されていません。つまり、ヨツバ王国内で西側の領地は完全に西聖将が管理してるんです』
『え?なにそれ、そんなのヨツバ王国内に別の国があるような物じゃないの?』
『実際、そんな感じです。西聖将はある事を条件に西側の領地の完全な支配を任されています。そのある事というのがヨツバ王国にとっても重要な役目を果たしているので王族であろうと西聖将を指図する事は出来ません』


アイリス曰く、西聖将はヨツバ王国内で最も重要な役割を担っているため、その対価として西側の領地の独立をみとめられているという。だから西聖将は六聖将の一角、というよりはヨツバ王国内に存在する別の国の支配者という傾向が強い。

ヨツバ王国に仕える身でありながら王族の命令であろうと断ることができる立場にある西聖将は、非常に特別な存在である一方で途轍もない重要な役目を与えられている。その役目というのが実はレナにも無関係ではなかった。


『西聖将に与えられた役目というのは過去に召喚された勇者、つまりは地球人が関わっています』
『勇者!?それって確か、過去に地球から召喚された人間たちの事だよね?』
『はい、レナさんやホネミンさんと違って転生ではなく、転移で訪れた人間たちの事です。彼等は地球人の姿のまま特別な力を宿した状態でこの世界に訪れ、様々な偉業を果たしています。そして彼等の中には次世代に召喚される勇者のために武器や道具を残して死亡したり、あるいは元の世界へ戻った人がいます。西聖将の役割とは過去に召喚された勇者の遺物が残された「神殿」の管理を任されています』
『神殿……それって、前に深淵の森の遺跡や大迷宮で訪れたああいう場所?』
『そうです。西聖将の領地にも過去に召喚された勇者が作り出した施設が残っています。そして彼等の役目はその施設を守ることです』


西聖将の領地内にも勇者と呼ばれる存在が残した「神殿」という名前の施設が残っている事を知ったレナは驚き、西聖将が守護する神殿にはかつてヨツバ王国が危機に陥った時、それを救った勇者たちが残した「聖遺物」が残っているという。


『西聖将の領地には400年ぐらい前に召喚された勇者とその時代の人間が作り出した施設が存在します。その施設には精霊薬を作り出す機能を持つ機器が保管され、現在も稼働中なんです。西聖将が与えられた役目はその施設を何としても守護する事なんです』
『けど、独立を認めるなんていくらなんでもやりすぎじゃないの?』
『そこは仕方がない事なんですよ。実はダークエルフは一時期迫害の対象にされた時期がありまして、そんな彼等を守るために勇者は生前にダークエルフを集め、この地の管理を任せるようにデブリ国王に頼んだんです』
『なんか、重い話になって来たな……』
『まあ、その辺は長くなるので省きます』


アイリスによると西聖将が領地の支配を任されるまでには色々なドラマがあったらしいが、現時点では話す必要はないと判断して交信を打ち切る。
しおりを挟む
感想 5,092

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―

ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」 前世、15歳で人生を終えたぼく。 目が覚めたら異世界の、5歳の王子様! けど、人質として大国に送られた危ない身分。 そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。 「ぼく、このお話知ってる!!」 生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!? このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!! 「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」 生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。 とにかく周りに気を使いまくって! 王子様たちは全力尊重! 侍女さんたちには迷惑かけない! ひたすら頑張れ、ぼく! ――猶予は後10年。 原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない! お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。 それでも、ぼくは諦めない。 だって、絶対の絶対に死にたくないからっ! 原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。 健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。 どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。 (全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。