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外伝 ~ヨツバ王国編~

何が起きたのか

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「お主たち、よく無事だったのう……それでいったい何が起きたのだ?」
「……私達が街に侵入したとき、既に兵士達は石像と化した状態でした。なので侵入自体は問題ありませんでしたが、街中の方ではコボルトの大群が住民に襲いかかっていました」
「俺達が着た時はまだかなりの数の人間が石像にされるのを免れていた。だが、コボルト共と視線を合わせるだけで次々と石像にされちまった……最初は俺もリンダも何が起きているのか分からなかったが、リンダの奴が切れてコボルトに襲いかかろうとしたんだよ」
「うっ……」


既にリンダとシュンが王都へ入り込んだ時点で城壁の兵士達は石像と化しており、どうやら最初の被害者は彼等だったらしく、城壁を封鎖した状態で王都を防衛する兵士達を真っ先に石化させたという。実際に城壁内を調べたところ、赤獣であるコボルト達を監禁していたと思われる複数の檻が発見され、城下町の住民を襲った赤獣の大半は城壁から解き放たれた事が判明した。

兵士だけではなく、城下町の住民にも襲い掛かる赤獣の姿を見てリンダは居ても立っても居られず、彼女は赤獣の群れを殲滅するために襲いかかった。シュンはそんな彼女を制止しようとしたが、赤獣の前に立ったリンダが硬直し、やがて石像と化す光景を確認してシュンも赤獣たちの持つ「魔眼」の存在に気付く。


「こいつがコボルトの1体と目を合わせた瞬間、すぐに身体を石化された光景を見て俺も奴等の持つ力に気付く事が出来た。だからコボルト共が消えた後にこいつだけでも回収して、坊主に渡された精霊薬を使って復活させたというわけだ」
「申し訳ありません……冷静さを失い、勝手に行動して迷惑を掛けました」


シュンは水筒を取り出すと中身が空である事を示し、念のためにレナが渡していた「精霊薬」を使用してリンダを復活させたことを告げる。彼女は自分の勝手な行動でシュンに迷惑を掛け、失態を犯した事を謝罪した。しかし、そんな彼女に対してティナが励ます。


「リンダは間違って何かいないよ!!目の前に困っている人がいるのなら助けるのは当たり前の事だよ!!」
「うむ、リンダよ。お主の行動は確かに騎士としては間違っていたかもしれん。しかし、気持ちはよく理解できる、あまり気に病むな」
「は、はいっ!!」


ティナとデブリの言葉にリンダは頭を下げ、シュンの方も別に迷惑を掛けられたとは思っていないのか彼女の肩に手を置き、そして本題へと入る。


「コボルト共は城下町の住民を全員石化させた後、王城の方へ姿を消した……一応は何体かは残して街を巡回させているが、住民は全員が石化されたと考えた方が良い。だが、住民は石化されちまったが実質的な被害は最小限のはずだ。石像にされた事でコボルト共も住民は餌と認識していないのか襲いかかる様子はない」


死霊術で操作された赤獣は街の住民を石像にする事に成功したが、石像に変化された事で住民達は逆に赤獣に喰われる事もなく、現在も生き延びる事に成功していた。また、巡回に出向いていた赤獣に関してはシュンが内密に何体か始末しており、赤獣の対処法も判明した。


「俺が調べた限り、コボルト共は目を合わせなければどうにでもなる。どうやら奴等は瞳を直視しない限りは身体が石化される事はないようだ。試しに奴等に手鏡を見せつけてあいつら自身が石化しないのかも試したが、特に反応はなかった。俺も鏡に映った奴等の瞳を見たが、特に身体に異変はない、つまりあいつらは瞳を直視しなければどうにでもなるという事だな」
「なるほど……しかし、いくら精霊薬を常備していたとはいえ、調べるためにそこまでしなくても……」
「敵の情報を掴むためなら多少の危険は避けられねえだろ、それにこっちは二人で行動してるんだ。そこまで無謀な行動じゃないだろ」
「……遠くにいれば問題ないかと思って、離れた距離で目を合わせて石化されそうになりましたよね」
「ちょ、お前っ!?その事は黙ってろと言っただろうが……!!」


赤獣の魔眼を調べるためにシュンも色々と方法を試した時、彼も危うく石化されそうになったところをリンダが所有していた精霊薬で助けてもらったらしい。斥候を単独ではなく、二人で任せていた事が幸いし、お互いが石化したときはレナに渡された精霊薬でどうにか石像になる事を免れたという。

結果から言えば城下町の人間は全員が石像と化し、石化を免れた者は存在せず、また赤獣の「魔眼」は直視しなければ発動しない事が判明した。鏡越しに瞳を見ても能力は発動せず、かといって距離が離れていようと瞳を見てしまえば石化が始まってしまう。重要なのは赤獣と「視線」を合わせないという事であり、戦闘の際は心眼を利用して瞼を閉じながら戦うしかまともに戦える方法はないと思われた。
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