不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

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外伝 ~ヨツバ王国編~

復讐の人生

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――カレハはティナが生まれた時、彼女が自分を遥かに凌駕する魔力を所有していた事を知って危機感を抱いた。この国では魔力が最も膨大な王族が世継ぎとして選ばれるという古の掟が存在した。この掟はヨツバ王国が建国される前、まだ「エルフ王国」と呼ばれる時代からの慣わしである。

生まれた時から王族としての教育を受け、立派な跡取りに相応しいように育てられたカレハにとって、魔力が大きいという理由だけで甘やかされて育てられたティナに自分の立場を奪われるかもしれないという事実が耐え切れなかった。それでも妹には何の罪もなく、デブリもカレハが正式な跡取りである事に変わりないと宣言した。

しかし、家臣の中には国王の死去はティナが次の国王に相応しいという考え方の者も多かった。幼いティナが国王に相応しい年齢に育つまでの間はカレハが国王代理を務め、その後にティナが国王に相応しい器量を身に着ければ国王の座を譲るべきだと進言する者まで居た。

ティナが生まれてからカレハは自分の今までの行為がティナの「代理」でしかないのかと思い始め、密かにティナに対する苛立ちと怒りを抱く。そんな時に彼女の前にある女が現れたのが全ての始まりだった。


『可哀想な子供ね、貴女は……』
『なっ……いきなり何を言うのですかっ!?』


カレハの前に現れたのは既に王妃としての立場を固めたイレアビトだった。彼女は夫であるバルトロス13世と共にヨツバ王国に来賓客として訪れた時、カレハと接触していた。許可もなく自分の部屋にまで乗り込んできたイレアビトにカレハは戸惑うが、そんな彼女に対してイレアビトは優しく語り掛ける。


『貴女は仮の王として生きて行く事に不安を抱えているわね。自分はあくまでも妹の代理にしか過ぎない、そう考えているんでしょう?』
『あ、貴女に私の何が分かるというのですか!?』
『私にはよく分かるわ。私も貴女と同じ立場だったのだから……』
『えっ……!?』


イレアビトはあろうことか、自分の正体が「旧帝国」を収める長である事、そして長になるために彼女は他の姉妹を殺し、最終的には実の母親さえも殺した事を語った。イレアビトの正体を知ったカレハは動揺を隠せず、それほど重大な事を自分に知らせる理由が分からずに尋ねた。


『ど、どうして貴女はそんな話を私に……』
『貴女にも私になれる力があるからよ。私が旧帝国を……いや、バルトロス王国の王妃の座に上り詰める事が出来たのは力があったからよ』
『力……!?』
『貴女も私のようになれるかどうかは貴女の力量次第よ……私としてはあの純粋無垢な王女より、貴女が国王になってくれた方が都合が良い。そして貴女も私が国王の座に就けば色々と都合が良いはずよ』
『……協力関係、というわけですか?』
『今はそこまでではないわ。貴女が私と対等の立場になれるまでは協力も助力もしないわ……期待してるわよ』


自分よりも明らかに年下(少なくとも60才以上は)の人間の言葉に対してカレハは憤るが、不思議とイレアビトの言葉には説得力があり、彼女の人生がどれほど過酷で危険な道だったように感じられた。100年以上も生きているカレハよりもイレアビトの方が過酷な人生を送り、そして彼女の方が器が大きかった。

イレアビトと接触してからカレハの心の中に「闇」が生まれ、この1年後に彼女は闇に耐え切れずにティナの暗殺を謀る。だが、この時に失敗したのはカレハの中に残っていた良心の呵責に耐え切れず、彼女はティナを殺せなかった。その結果、その甘さが原因で彼女は投獄される。


『カレハよ……どうしてお主はこんな事を!!』
『酷すぎますわお姉様!!』
『信じられない、あの可愛いティナを殺そうとするなんて……貴女はもう、僕達の姉なんかじゃない!!』
『……失望したぞ、カレハ王女よ』
『カレハ様……残念です、貴女こそ国王に相応しいと思っていたのに』


王族の身分から追放され、隔離される際にカレハは実の家族と尊敬していた二人の将軍からも拒絶されてしまう。その事が原因で彼女は隔離後に身体が衰弱し、やがて病に侵されてしまう。治療魔導士は早急に処置を行えば治るはずだった病気だが、もう全てを失ったと思いこんでいたカレハにとっては自分が死のうとどうでもいい話だった。




しかし、彼女はティナがバルトロス王国に訪問すると聞いた時、イレアビトからの使者が訪れる。そしてティナの暗殺の手助けを行う事を告げられた。最初は自分が国王になるまでは強力しないと言い張っていたイレアビトが今更協力を申し出る事に疑問を抱くが、藁をもすがる思いで彼女はティナの暗殺を謀る。

結果としては暗殺は失敗に終わったが、自分とも縁があるライコフが罪を犯して投獄されたという話を聞いたカレハは彼と接触する。そして彼女は「レナ」の存在を知った。
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