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S級冒険者編
S級冒険者のメダル
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――数分後、装備を外したライオネルはレナの回復魔法を受けて身体の損傷を治してもらう。勝負を挑んだ相手に治療を受けている事にライオネルは複雑な表情を浮かべるが、そんな彼にマリアは誇らしげに語り掛けた。
「どうかしら?私の甥の実力は?」
「ぐうっ……悔しいが、認めざるを得ないようだな。見事だ、まさかこの俺を吹き飛ばせる「剛剣」の使い手が現れるとは……」
「どうも」
回復魔法を施しながらもレナはライオネルの肉体を確認し、彼の身体が傷だらけである事に気付く。古傷を見るだけでどれほどの修羅場を掻い潜り、ライオネルがS級冒険者に成ったのかを思い知らされる。だが、そんなライオネルをレナが倒したという事実は覆せず、彼は素直に敗北を認めてレナがS級冒険者の資格を持つに相応しい人間だと頷く。
「見事だ小僧よ、いやレナといったな。この俺を一撃で倒すとは……恐らく、お前はもう母親を超えているだろう」
「そうなの?」
「ええ、私の知る限りでは昔の姉さんよりも貴方の方が強いわ」
「それは凄いでござる!!」
「あの伝説の冒険者アイラを超えたか……」
ライオネルの言葉にカゲマルとハンゾウは称賛するが、レナとしては冒険者としてのアイラの事はよく知らないので比較対象にされても反応に困る。だが、昔はマリアと隣に並べる実力者であったという話は聞いており、アイラがどのような剣士だったのかを尋ねる。
「母上はどんな剣士だったんですか?」
「何だ、アイラの息子なのにお前は母親がどんな剣士なのかも知らないのか?」
「ちょっと事情がありまして……」
「そうか、だが納得もしたぞ。お前の剣とアイラの剣は明らかに違う、奴の剣は力ではなく、速度を重視した「疾剣」だった」
「疾剣?」
レナやバルのように「腕力」を重視した剣技を得意とする剣士は「剛剣」の使い手と呼ばれるのに対し、アイラのような「速度」を重視した剣技を得意とする剣士は「疾剣」の使い手と呼ばれていた。この二つの剣技は相反する技術のため、アイラの息子が母親とは異なる剣技を習得している事にライオネルは意外に思う。
最もレナの場合は色々な事情で大剣のような力を必要とする武器ばかりを使う生活を強いられ、バルの元で指導を受けてきたので自然と「剛剣」の使い手となった。だが、もしもアリアやアイラが指導を行っていればレナも「疾剣」を習得していた可能性もある。環境が異なればレナもアイラのように疾剣の使い手として大成していた可能性は十分にあった。
「お前の母親は立派な剣士だった。結婚して冒険者を引退した事が残念でならん……しかも、よりにもよって国王が相手とは、息子のお前に言うのもあれだが男の趣味が悪いぞ」
「その事に関しては同意するわ」
「あはは……否定できない」
『ですね』
ライオネルとマリアの言葉にレナは父親である先代のバルトロス国王の事は庇う事は出来ず、アイリスでさえも同意してしまう。なにしろ生まれてきたばかりの赤ん坊のレナを投げ捨てる男であるため、父親としては失格だろう。それでも死に際にレナの事を気にかけていた辺りはほんの少しは愛情を抱いていたのかもしれない。
治療を終えたライオネルは起き上がると身体が動く事を確認し、レナの攻撃で凹んだ大盾を持ち上げる。長年の間、自分を支え続けた防具ではあったが見事に凹まされた事にライオネルは眉を顰め、改めてレナの剛剣の凄まじさを思い知らされた。
「この黒硬盾をここまで凹ませるとは……恐れ入った」
「だから言ったでしょう?私の甥は世界一の剛剣の剣士なのよ」
「ふっ……あながち否定も出来んな。いいだろう、俺はお前の事を認めるぞレナよ」
「あ、どうも……」
マリアがレナの肩を掴んで自慢げにライオネルに語り掛けると、彼は素直にレナの実力を認めると、金色に光り輝くメダルを差し出す。金貨の類ではなく、表面上には獅子を想像させる紋様が刻まれていた。不思議そうにレナはそれを受け取ると、マリアが説明を行う。
「それはS級冒険者の証であるメダルよ。全てのS級冒険者は必ず与えられる物だけど、各々の希望に沿った紋様が刻まれるわ」
「へえ、そうなんだ……あれ、でも俺は受け取っていないけど……」
「このメダルを所有する事が許されるのは正式にS級冒険者に昇格を果たした人間だけよ。貴方のメダルは全てのS級冒険者に認められ、全員からメダルを受け取った時に新しいメダルが制作されて貴方に渡されるはずよ」
「なるほど……という事は、今まで俺は正式なS級冒険者じゃなかったの?」
「メダルはS級冒険者として初めて仕事を果たしたときにも受け取る事が出来るわ。但し、今回の場合はS級冒険者全員に会って実力を認めさせましょう。そっちの方が手っ取り早いわ」
「一時の間、俺のメダルはお前に預ける。全員のS級冒険者から認められた後に返しに来い」
「はい、分かりました。すぐに返せるように頑張ります」
レナはライオネルからメダルを受け取ると不思議そうに眺め、自分がS級冒険者になった時はどのようなメダルを授けられるのか興味が湧いた。
「どうかしら?私の甥の実力は?」
「ぐうっ……悔しいが、認めざるを得ないようだな。見事だ、まさかこの俺を吹き飛ばせる「剛剣」の使い手が現れるとは……」
「どうも」
回復魔法を施しながらもレナはライオネルの肉体を確認し、彼の身体が傷だらけである事に気付く。古傷を見るだけでどれほどの修羅場を掻い潜り、ライオネルがS級冒険者に成ったのかを思い知らされる。だが、そんなライオネルをレナが倒したという事実は覆せず、彼は素直に敗北を認めてレナがS級冒険者の資格を持つに相応しい人間だと頷く。
「見事だ小僧よ、いやレナといったな。この俺を一撃で倒すとは……恐らく、お前はもう母親を超えているだろう」
「そうなの?」
「ええ、私の知る限りでは昔の姉さんよりも貴方の方が強いわ」
「それは凄いでござる!!」
「あの伝説の冒険者アイラを超えたか……」
ライオネルの言葉にカゲマルとハンゾウは称賛するが、レナとしては冒険者としてのアイラの事はよく知らないので比較対象にされても反応に困る。だが、昔はマリアと隣に並べる実力者であったという話は聞いており、アイラがどのような剣士だったのかを尋ねる。
「母上はどんな剣士だったんですか?」
「何だ、アイラの息子なのにお前は母親がどんな剣士なのかも知らないのか?」
「ちょっと事情がありまして……」
「そうか、だが納得もしたぞ。お前の剣とアイラの剣は明らかに違う、奴の剣は力ではなく、速度を重視した「疾剣」だった」
「疾剣?」
レナやバルのように「腕力」を重視した剣技を得意とする剣士は「剛剣」の使い手と呼ばれるのに対し、アイラのような「速度」を重視した剣技を得意とする剣士は「疾剣」の使い手と呼ばれていた。この二つの剣技は相反する技術のため、アイラの息子が母親とは異なる剣技を習得している事にライオネルは意外に思う。
最もレナの場合は色々な事情で大剣のような力を必要とする武器ばかりを使う生活を強いられ、バルの元で指導を受けてきたので自然と「剛剣」の使い手となった。だが、もしもアリアやアイラが指導を行っていればレナも「疾剣」を習得していた可能性もある。環境が異なればレナもアイラのように疾剣の使い手として大成していた可能性は十分にあった。
「お前の母親は立派な剣士だった。結婚して冒険者を引退した事が残念でならん……しかも、よりにもよって国王が相手とは、息子のお前に言うのもあれだが男の趣味が悪いぞ」
「その事に関しては同意するわ」
「あはは……否定できない」
『ですね』
ライオネルとマリアの言葉にレナは父親である先代のバルトロス国王の事は庇う事は出来ず、アイリスでさえも同意してしまう。なにしろ生まれてきたばかりの赤ん坊のレナを投げ捨てる男であるため、父親としては失格だろう。それでも死に際にレナの事を気にかけていた辺りはほんの少しは愛情を抱いていたのかもしれない。
治療を終えたライオネルは起き上がると身体が動く事を確認し、レナの攻撃で凹んだ大盾を持ち上げる。長年の間、自分を支え続けた防具ではあったが見事に凹まされた事にライオネルは眉を顰め、改めてレナの剛剣の凄まじさを思い知らされた。
「この黒硬盾をここまで凹ませるとは……恐れ入った」
「だから言ったでしょう?私の甥は世界一の剛剣の剣士なのよ」
「ふっ……あながち否定も出来んな。いいだろう、俺はお前の事を認めるぞレナよ」
「あ、どうも……」
マリアがレナの肩を掴んで自慢げにライオネルに語り掛けると、彼は素直にレナの実力を認めると、金色に光り輝くメダルを差し出す。金貨の類ではなく、表面上には獅子を想像させる紋様が刻まれていた。不思議そうにレナはそれを受け取ると、マリアが説明を行う。
「それはS級冒険者の証であるメダルよ。全てのS級冒険者は必ず与えられる物だけど、各々の希望に沿った紋様が刻まれるわ」
「へえ、そうなんだ……あれ、でも俺は受け取っていないけど……」
「このメダルを所有する事が許されるのは正式にS級冒険者に昇格を果たした人間だけよ。貴方のメダルは全てのS級冒険者に認められ、全員からメダルを受け取った時に新しいメダルが制作されて貴方に渡されるはずよ」
「なるほど……という事は、今まで俺は正式なS級冒険者じゃなかったの?」
「メダルはS級冒険者として初めて仕事を果たしたときにも受け取る事が出来るわ。但し、今回の場合はS級冒険者全員に会って実力を認めさせましょう。そっちの方が手っ取り早いわ」
「一時の間、俺のメダルはお前に預ける。全員のS級冒険者から認められた後に返しに来い」
「はい、分かりました。すぐに返せるように頑張ります」
レナはライオネルからメダルを受け取ると不思議そうに眺め、自分がS級冒険者になった時はどのようなメダルを授けられるのか興味が湧いた。
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