不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません？

カタナヅキ

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Ｓ級冒険者編

リーリス

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「まあ、正確に言えばこの施設はレナさんが生きていた時代よりも未来の地球の技術で作られたと考えた方がいいですよ」
「未来？それってどういう意味？」
「言葉通りの意味です。こちらの世界と地球の世界では時の流れが違うんですよ。例えば外の世界には日の国と呼ばれる国がありますよね？」
「日の国……ああ、和国の事？」
「ありゃ？今の時代では国名が変わっちゃったんですか？」

リーリスの言葉にレナは少し前に訪れた「和国」の事を思い出す。元々は日の国と呼ばれていたが、数百年ほど前に国名が「和国」へと改名されている。その事はリーリスも知らなかったらしいが、和国は元々は異世界人が作り上げた国である事はレナも知っていた。

和国は過去に召喚された人間が作り出した国であり、名前の響きから考えても日本人が関わっているのは間違いない。だが、和国の技術は地球の日本の江戸時代から大正時代を想像させる科学力しか残っておらず、この世界で国が誕生してから相当な年月が流れているはずだが文明自体は大きく発展してはいない。

「まあ、名前はどうでもいいです。その和国という国が異世界人、つまりは地球の日本人が作り出したのは知っていますか？」
「うん、有名な話だからね」
「それなら話は早いです。和国を作り出したのは江戸時代から大正時代に移り変わる頃の時代の人間が召喚され、この世界に国を作り上げたんですよ。ですが、召喚される地球人は時代が別々何です。この施設は何百年も前に作り出されたんですが、この施設を作り出した人間はレナさんの時代の後に生まれた人間なんです」
「つまり……召喚される人間は毎回別々の時代から訪れているの？」
「全員が全員そういうわけでもないですよ。実際に私を作り出す切っ掛けを生み出した異世界人はレナさんと同じ時代の人間です。名前は「ルノ」というんですが……もしかして知ってるんじゃないですか？」
「ルノ……それってまさか、霧崎ルノ！？」

自分の従弟の名前が出てきたことに驚き、薄々と気づいてはいたがまさか地球に暮らしていた時の自分の従弟が勇者として召喚されていたのかと動揺を隠せない。一方でリーリスは納得したように頷き、彼女はレナの従弟がどのような経緯でこの世界に召喚されたのかを簡単に話す。

「やはりそうでしたか、レナさんの記憶を探ったときに何か妙に親近感を覚える方がいたので不思議に思ってたんですが……」
「えっ……記憶を探るって、俺の記憶を覗き見したの？」
「あ、大丈夫ですよ。記憶を探るといっても別にレナさんが見聞きしたものを映像化するわけではなく、レナさんの印象深い人間の情報だけしか引き出す事は出来ませんから」
「何が大丈夫なのか分からないけど……けど、本当にルノ君がこの世界に勇者として召喚されていたの？」
「ええ、ですが彼の場合は勇者ではありません。あくまでも勇者に巻き込まれてこの世界に訪れた一般人だったんですけど、その勇者よりも有名になって帝国の危機を救った英雄として歴史に名を刻んでいます」

――リーリス曰く、レナの従弟である「霧崎ルノ」は今から約４００年近く前に勇者召喚に巻き込まれて訪れたという。本来は勇者として召喚されたのは４人の男女だったのだが、ルノの場合は勇者である４人がこちらの世界に召喚された際に巻き込まれたらしく、共にこの世界に訪れたという。まだバルトロス帝国が衰退する前の時代、つまりは帝国が善政を行って平和だった時代にルノは召喚された。

その後、紆余曲折あって帝国は本来は勇者として召喚した４人の人間を手放してしまい、残ったルノの力を借りて当時復活した「魔王軍」と呼ばれる組織と戦ったという。魔王軍はルノと帝国の軍勢によって討ち滅ぼされ、世界を平和に導いた「帝国の英雄」としてルノは今現在でも全ての魔術師から崇められる存在になったという。

ルノの末路に関してはリーリスも記録はなく、少なくとも死亡したと伝えられたのは彼が訪れてから８０年後の話らしく、唐突に帝国の英雄の死だけが世界中に伝わった。英雄を失った帝国は衰退し、暴君と呼ばれる皇帝の元から離れた皇子の一人が現在のバルトロス王国を築き上げ、帝国を滅ぼしたと伝わっていた。

「帝国の英雄ルノは史上最強の魔術師と呼ばれ、実際にその功績はこれまでに召喚された勇者の中でも群を抜いています。彼は火竜、地竜、蛇竜、水竜、白竜、他にも様々な超級危険種を討伐しています。ですが、あまりにも彼の功績が大きすぎて後の時代に生まれた人間はただの御伽噺だと信じない方も多いそうです」
「まさかルノ君がこの世界に来ていたなんて……でも、俺はともかく、ルノ君だって地球に家族がいるのに」

転生者であるレナはこの世界に生まれた時点で元の世界の家族との縁は断ち切られたが、訳も分からずに召喚されたルノは元の家族に会う事も出来ずに寂しい思いをしたのかとレナは不憫に感じたが、リーリスはあっさりと否定する。

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