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S級冒険者編
地球へ戻りたいのか
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「いいえ、あそこにあるでかい金庫みたいな装置でルノさんは地球へ戻りましたよ」
「えっ!?嘘っ!?」
リーリスの示した方向には彼女の言う通りに巨大な金庫を想像させる物体が存在し、彼女によるとこの金庫のような装置を動かせば地球へと帰還する事が出来るという。まさか地球へ戻る方法が本当にあった事にレナは驚きを隠せないが、リーリスは残念そうに首を振る。
「ですけど、この転送機と呼ばれる装置は現在は使えません。燃料がもう残ってませんし、それに転送に必要な腕輪型の装置も壊れてますから」
「えっ……じゃあ、地球へは戻れないの?」
「装置の方は修理できますけど、燃料の方は少々問題がありましてすぐに作り出せないんですよ。でも、時間があれば地球へ転移する事は出来ますよ?」
「という事は……俺も地球へ戻る事が出来たりする?」
「ええ、可能ですよ」
レナはリーリスの言葉に転送機と呼ばれる装置の前に移動すると、無言で掌を押し当てる。この世界へ転移してから十数年の月日が流れ、今では元の家族の記憶もあまり残っていない。こちらに関してはアイリスが気を遣って敢えて元の家族の記憶を故意に思い出せないようにしているという話は聞いていた。
地球の記憶が明確に残っていたらレナがホームシックを起こして孤独に苛まれる事を配慮した上での判断のため、別にレナはアイリスの行動を感謝しても責める気はない。それに彼女に頼めば地球に居た頃の記憶は返してくれるそうなのでもしも地球へ戻る機会があれば元の世界の両親や友人がどうしているのかを確かめたいとは思っていた。そして遂に地球へ戻れる機会が訪れた事にレナは緊張感を抱くが、ここである問題に気づく。
(……地球へ戻ったところで、皆は俺の事を気づいてくれるのか?)
改めてレナは自分の身体に視線を向け、ある問題に気づいてしまう。それは地球で暮らしていた頃の「霧崎レナ」と違い、この世界の「レナ・バルトロス」は魂が同じでも肉体は全く別の物へと変わっている。年齢も慎重も体重も何もかもが地球で暮らしていた頃と違うため、仮に地球へ戻ってもレナの地球の両親や友人はレナの事を気づいてくれる保証はない。
(そうか……俺はもう、地球の人間ですらないのか)
ここに来てレナは自分が地球の住人ではなく、この世界の住人である事を理解した。だが、不思議と寂しい思いは抱かず、むしろ逆に解放されたような気分に陥る。今までは地球へと戻らなければならないと思っていたが、改めて自分がこの世界の人間だと理解すると無理に地球に戻る必要はないと悟る。
(この世界にも俺の家族はいる、友達もいる、大切な存在がたくさんできた……なら、あの世界に拘る必要はないのか?)
正直に言えば地球に残した両親には急に自分がいなくなったことで心配をかけてしまう事には罪悪感を覚えていた。しかし、記憶は残っていないがアイリスによれば狭間の世界に取り込まれた時点でレナはこちらの世界の人間へと生まれ変わった。彼女によれば不慮の事故で死亡したような物であり、誰が悪いわけでもない。
残してきた両親には悲しい思いをさせた事は気がかりだが、今のレナが地球へ戻って両親と再会したとしても受け入れてくれるか分からない。正直に言えば今は記憶が定かではないとはいえ、本当の両親に拒否された時の事を考えると恐れを抱いていた。
――アリアを失った時のように家族を失う事はもう二度と味わいたくはないと考えたレナは無意識に拳を握りしめ、元の世界に戻るべきか悩む。せめて両親に一言でもいいから謝罪したいという気持ちはあったが、無理に会う必要があるのかと心の中で思う自分もいる事をレナは気づいていた。
転送機の前で思い悩むレナを見てリーリスは頬を掻き、悩みこんでいるレナを見て彼女はわざとらしく話題を逸らした。
「それはそうと実はこの施設には色々な装置が残っていましてね、レナさんの友人のホネミンさんの事なんですけど……」
「……あ、そうだ。ホネミンはここに自分の肉体を取り戻す方法があるかもしれないといってたけど、どうなったの?」
ここでレナはこの研究施設に訪れた目的を思い出し、目元の涙を拭ってホネミンの姿を探す。彼女は仮想世界では共に戦っていたので他のピットの中に眠っているのかと思われたが、そもそも骨だけの状態の彼女がどうやって意識だけを仮想世界に送り込むことが出来たのか疑問である。
今更ながらにピットにも複数の種類が存在し、基本的にはレナが入っていたピットのように卵型の機器だったが、ゴンゾウのような巨人族でも入り込めるような巨大なピットも存在した。眠っている間はまるで赤ん坊が母親の胎内で丸まるっているように身体を休めるらしく、コトミン、シズネ、ダイン、ゴンゾウ、ミナの姿は確認できた。だが、肝心のホネミンの姿は見えない事にレナは不思議に思う
「えっ!?嘘っ!?」
リーリスの示した方向には彼女の言う通りに巨大な金庫を想像させる物体が存在し、彼女によるとこの金庫のような装置を動かせば地球へと帰還する事が出来るという。まさか地球へ戻る方法が本当にあった事にレナは驚きを隠せないが、リーリスは残念そうに首を振る。
「ですけど、この転送機と呼ばれる装置は現在は使えません。燃料がもう残ってませんし、それに転送に必要な腕輪型の装置も壊れてますから」
「えっ……じゃあ、地球へは戻れないの?」
「装置の方は修理できますけど、燃料の方は少々問題がありましてすぐに作り出せないんですよ。でも、時間があれば地球へ転移する事は出来ますよ?」
「という事は……俺も地球へ戻る事が出来たりする?」
「ええ、可能ですよ」
レナはリーリスの言葉に転送機と呼ばれる装置の前に移動すると、無言で掌を押し当てる。この世界へ転移してから十数年の月日が流れ、今では元の家族の記憶もあまり残っていない。こちらに関してはアイリスが気を遣って敢えて元の家族の記憶を故意に思い出せないようにしているという話は聞いていた。
地球の記憶が明確に残っていたらレナがホームシックを起こして孤独に苛まれる事を配慮した上での判断のため、別にレナはアイリスの行動を感謝しても責める気はない。それに彼女に頼めば地球に居た頃の記憶は返してくれるそうなのでもしも地球へ戻る機会があれば元の世界の両親や友人がどうしているのかを確かめたいとは思っていた。そして遂に地球へ戻れる機会が訪れた事にレナは緊張感を抱くが、ここである問題に気づく。
(……地球へ戻ったところで、皆は俺の事を気づいてくれるのか?)
改めてレナは自分の身体に視線を向け、ある問題に気づいてしまう。それは地球で暮らしていた頃の「霧崎レナ」と違い、この世界の「レナ・バルトロス」は魂が同じでも肉体は全く別の物へと変わっている。年齢も慎重も体重も何もかもが地球で暮らしていた頃と違うため、仮に地球へ戻ってもレナの地球の両親や友人はレナの事を気づいてくれる保証はない。
(そうか……俺はもう、地球の人間ですらないのか)
ここに来てレナは自分が地球の住人ではなく、この世界の住人である事を理解した。だが、不思議と寂しい思いは抱かず、むしろ逆に解放されたような気分に陥る。今までは地球へと戻らなければならないと思っていたが、改めて自分がこの世界の人間だと理解すると無理に地球に戻る必要はないと悟る。
(この世界にも俺の家族はいる、友達もいる、大切な存在がたくさんできた……なら、あの世界に拘る必要はないのか?)
正直に言えば地球に残した両親には急に自分がいなくなったことで心配をかけてしまう事には罪悪感を覚えていた。しかし、記憶は残っていないがアイリスによれば狭間の世界に取り込まれた時点でレナはこちらの世界の人間へと生まれ変わった。彼女によれば不慮の事故で死亡したような物であり、誰が悪いわけでもない。
残してきた両親には悲しい思いをさせた事は気がかりだが、今のレナが地球へ戻って両親と再会したとしても受け入れてくれるか分からない。正直に言えば今は記憶が定かではないとはいえ、本当の両親に拒否された時の事を考えると恐れを抱いていた。
――アリアを失った時のように家族を失う事はもう二度と味わいたくはないと考えたレナは無意識に拳を握りしめ、元の世界に戻るべきか悩む。せめて両親に一言でもいいから謝罪したいという気持ちはあったが、無理に会う必要があるのかと心の中で思う自分もいる事をレナは気づいていた。
転送機の前で思い悩むレナを見てリーリスは頬を掻き、悩みこんでいるレナを見て彼女はわざとらしく話題を逸らした。
「それはそうと実はこの施設には色々な装置が残っていましてね、レナさんの友人のホネミンさんの事なんですけど……」
「……あ、そうだ。ホネミンはここに自分の肉体を取り戻す方法があるかもしれないといってたけど、どうなったの?」
ここでレナはこの研究施設に訪れた目的を思い出し、目元の涙を拭ってホネミンの姿を探す。彼女は仮想世界では共に戦っていたので他のピットの中に眠っているのかと思われたが、そもそも骨だけの状態の彼女がどうやって意識だけを仮想世界に送り込むことが出来たのか疑問である。
今更ながらにピットにも複数の種類が存在し、基本的にはレナが入っていたピットのように卵型の機器だったが、ゴンゾウのような巨人族でも入り込めるような巨大なピットも存在した。眠っている間はまるで赤ん坊が母親の胎内で丸まるっているように身体を休めるらしく、コトミン、シズネ、ダイン、ゴンゾウ、ミナの姿は確認できた。だが、肝心のホネミンの姿は見えない事にレナは不思議に思う
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