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真・闘技祭 予選編

途中報告

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『予選開始から10分が経過しました!!現時点で予選の突破者は既に18名を超えています!!残りの枠は15人のみです!!』
『ほらほら、頑張ってくださいね~あんまり調子に乗っていると、あっさりと他の人間に出し抜かれて予選落ちしますよ~』
「うえっ!?もうそんなに合格者が現れていたのか……」


闘技場からの放送にレナは驚き、まさか予選が開始されてから10分程度で既に半数以上の合格者が現れている事に驚く。よくよく考えれば今回の闘技祭には各国の実力者が揃っており、他の参加者も焦って魔物を捜索するためにその場を離れる。


「ま、まずい!!あんな奴に構っている暇はない、俺達も失格になるぞ!!」
「くそっ!!何処に居やがる!?」
「うおおおおっ!!必ず予選を突破するんだぁっ!!」
「あっ……行っちゃった」


立ち去っていく冒険者達を見てレナは立ち止まり、自分もすぐに街中に存在するはずの魔物を探し出そうと風の精霊を発動させる。風の精霊の力を借りて探し出そうとした時、ここで奇妙な反応を感じ取る。


(ん?何かが近づいているな。この反応は……相当デカいな)


レナは振り返ると、そこには予想外の生物が存在した。体長は7、8メートルは存在し、全身が灰色の皮膚に覆われ、それでいながら火竜よりも凶悪な顔立ちの四足歩行の生物が存在した。それを見たレナは敵の正体をすぐに見抜き、退魔刀を引き抜く。


「牙竜か!!」
「グガァアアアアッ!!」



――竜種の中でも火竜を上回る狂暴性を誇り、空腹に襲われると見境なく暴れ狂い、生態系を乱しかねない危険生物として冒険者ギルド側からも「レベル5」に指定されている危険種の「牙竜」がレナの前に出現した。



牙竜は火竜や地竜とは異なり、特定の住処を作る事はない。理由としては牙竜が住み着いた土地の魔物達は餌として捕食され、最悪の場合は根絶やしになるまで襲い続ける。そのために牙竜によって生態系を破壊された地域も多く、火山などの特定地域にしか生息しない火竜よりもある意味では人的被害を与えている存在であった。

世界各国が注目する催し物とはいえ、まさか竜種である牙竜も参加させている事にレナは驚きと呆れを抱く。しかもご丁寧に牙竜の口元の上下に生えている大きな4つの牙が銀色の輝きを放ち、どうやら牙竜を倒せば二人分の素材を回収できるらしい。つまり、この牙竜は単独ではなく他の冒険者を倒して手に入れろという事なのだろう。


「ガアアアッ!!」
「狙いは俺か……たくっ、面倒なのばっかだな!!」


レナを標的と定めたのか牙竜は鼓膜が破れな兼ねないほどの大声を放ちながら駆け出し、街道を踏み荒らしながらレナの元へと突っ込む。その様子を見てレナは鏡刀と退魔刀の刃を重ね合わせ、正面から構える。


(……新技、試すか?)


この二か月の間にレナは修行を重ね、魔刀術だけではなく剣技も磨かれていた。そして二か月の修行の内に新たな技も覚えたレナは意識を集中させ、戦技を発動させようとした瞬間、牙竜が唐突に立ち止まった。


「ウガァッ……!?」
「……どうした?怯えているのか?」


突然に立ち止まった牙竜に対してレナは疑問を抱き、これほどの大物が怯えるほどの威圧でも自分が無意識に放っていたのかと不思議に思う。今でも興奮すると剣鬼としての力が目覚め、無意識に周囲の人間に威圧を放つ癖はあるが、それでも竜種である牙竜が恐れるほどの威圧を放ったとはレナも思えずに違和感を抱く。

牙竜が何を恐れているのかとレナは後方を振り返ろうとした時、突如として背後から光が放たれ、強烈な閃光が街道を覆い込む。そのあまりの光の強さにレナと牙竜は視界を奪われてしまう。


(この光は……!?)


真っ白に染まった世界でレナは違和感を抱き、閃光を見てしまった事で反射的に瞼を閉じてしまったが、不思議な事に目が眩むほどの光だというのに不快感はない。それどころか逆に何かを包み込むような温かささえも感じ取り、やがてレナの耳元に足音が鳴り響く。


「ここは私に任せてください」
「その声は……!?」


レナの耳元に聞き覚えのある女性の声が響くと、何者かが自分の横を通り過ぎる気配にレナは襲われた。声の主が誰なのかをレナが思い出した瞬間、は聖剣を振りかざして視界を奪われた牙竜に向けて放つ。



「ディバイン……スラッシュ!!」
「アガァアアアアッ――!?」



牙竜に向けてレミアは聖剣の刃を振り下ろした瞬間、刀身から強烈な光の奔流が放たれ、牙竜の身体を飲み込む。全身に聖属性の魔力を浴びた牙竜の身体は突如として内側から膨れ上がり、弾け飛ぶ。やがて刃から光が消えた頃には粉々に砕け散った牙竜の死体が地面に散乱していた。

レナが視界を取り戻した頃には既に戦闘は終わり、牙竜の死体から剥がれ落ちた牙を拾い上げるレミアの姿が存在した。彼女は満足そうに聖剣を見て頷き、そしてレナに振り返って牙を投げ放つ。投げ込まれた牙を見てレナは反射的に回収すると、彼女は笑みを浮かべる。
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