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6巻

6-2

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 ◆ ◆ ◆


 ――自分に向けて斬りつけてきたシュンに対し、仮面を被って変装したレイトは「物質変換」のスキルでアダマンタイトに変化させた木刀で刃を受け止める。
 金属音が響き渡り、レイトは防御用の戦技せんぎを発動させてはじき返す。

『「反動」』
「ちっ!!」

 剣が一瞬だけ激しく振動し、シュンの刀の刃がはじかれた。
 バルや、レイトの冒険者仲間であるゴンゾウも扱える防御型の戦技であり、鍔迫つばぜり合いの状態になったときに役立つ。
 刃をはじかれながらもシュンは即座に次の攻撃を繰り出す。

「『乱れ突き』!!」
『おおっ……』

 シュンは、槍騎士の称号を持つ氷雨の冒険者「ミナ」が愛用する槍の戦技と、同名の戦技を発動させた。
 シュンは残像が生まれるほどの速度で複数の突きを繰り出す。
 連続的に突き出された攻撃に対し、レイトは冷静に攻撃の軌道きどうを読んで足の位置を変えて回避した。

「何っ……!?」
『「旋風」』
「ちぃっ!!」

 自分の突き出した刃を回避したレイトに、シュンは動揺した。
 レイトはその隙をつき、刃を横ぎに振り払う。
 だが、シュンは咄嗟とっさに自分の鞘を引き抜いて攻撃を受け止め、なんとか直撃を避けた。
 相手がただ者ではないと判断したシュンは、刀と鞘を両手で握りしめた状態で身構えた。
 彼の腕はレイトの攻撃を受け止めたことで、あまりの衝撃にしびれてしまっていた。単純な腕力はレイトがまさっているのだ。

「くぅっ……意外と力が強いじゃねえか」
『……』
「頭をいて照れた動作すんじゃねえよっ!!」

 相手は小柄な体格から繰り出されるとは思えないほどの膂力りょりょくを誇る。まともに打ち合うのは危険と判断したシュンは素早く視線を動かし、自分の足元に落ちている酒瓶の破片に目を留めた。
 シュンは破片を拾い上げてレイトの顔面に投げ込む。

「おらっ!!」
『っ!!』

 レイトが刀で破片をはじいた。その際、一瞬の隙が生まれる。
 シュンは笑みを浮かべ、鞘を捨てて刀で斬りかかる。
 レイトは木刀を振り抜くのは間に合わないと判断し、代わりに柄を突き出した。

『ふんっ!!』
「何っ!?」

 木刀の柄が正面から振り落ろされた刃を受け止めた。
 レイトの予想外の反応速度にシュンは驚愕し、レイトは隙を逃さずに蹴りを繰り出す。
 蹴りはシュンの腹部に命中し、突き飛ばした。
 レイトは追撃を加えようとしたが、自分の目的を思い出して立ち止まる。
 腹部に強烈な一撃を受けたシュンは数歩ほど後退するが、なんとか持ち直して刀を構え直した。

「くぅっ……げほっ!! くそっ、てめぇっ……なかなかいい蹴りだな」
『…………』
「上等だっ!! 『刺突』!!」

 戦意がおとろえていないシュンは、戦技を発動して刀を突き出した。先ほどの「乱れ突き」の戦技より突きの速度は素早い。
 その攻撃に対して、レイトはあえて前に飛び出す。

(――今だっ!!)

 レイトはまぶたを閉じ、「心眼」の能力を発動した。
 五感を研ぎ澄ませた状態で前に移動する。
 顔面に迫りくるシュンの刃に対し、彼は「回避」の技能スキルと「反撃」の技能スキルを発動する。
 レイトは突き出された刃をわずかに顔を反らして左に回避し、木刀を握りしめて戦技を発動した。

『「回転」!!』
「ぐはぁっ!?」

 彼の振り抜いた刃がシュンの脇腹に見事に命中した。
 レイトはさらに力を込めて相手を吹き飛ばす。それと同時に、視界に新しいスキルの習得画面が表示された。


〈技術スキル「迎撃」を習得しました〉


『よしっ』

「回避」と「反撃」のスキルを同時に発動したことで、複合スキルの「迎撃」を新たに習得できた。「迎撃」は相手の攻撃を利用して強力な反撃を繰り出すスキルである。
 アイリスのアドバイスもあり、レイトはシュンを利用して新しいスキルを覚えようと計画していたのだった。
 これで今回の目的は達成したが、残された問題は攻撃を仕掛けたシュンがこのまま引き下がるはずがないということである。
 もう戦う理由がないというレイト側の事情を知るはずもなく、シュンは即座に攻撃を仕掛けてくる。

「この……ガキがぁっ!!」
『わっ!?』

 レイトは脇腹に強烈な一撃を受けた。
 シュンはレイトの一撃によって、ほとんど間違いなく肋骨ろっこつの数本が破損したはずである。普通の冒険者なら意識を失ってもおかしくはなかった。
 レイトは驚いたが、すぐに傷の影響でシュンの動作がにぶくなっていることに気付いた。
 彼は咄嗟に掌を伸ばしてシュンの肉体にれる。

『「衝風」!!』
「ぐはぁっ!?」

 相手の肉体に衝撃を直接与える戦技を発動した瞬間、負傷していたシュンが五メートル近く吹き飛んだ。
 レイトはしばらく観察したが、シュンが立ち上がる気配はない。どうやら、彼は意識を失ったらしい。
 さすがにやりすぎたかとも思ったが、ここまでしなければシュンを気絶させることはできなかったとレイトは判断した。
 彼は倒れたまま動かなくなったシュンに頭を下げる。自分の目的のために彼を利用したことに対するお礼と謝罪だった。
 レイトはシュンに近付き、掌をかざす。

『「回復強化」……これでしばらくすれば治りますから』
「ああっ……な、なんの真似だお前……ていうか、回復魔法? 剣士じゃないのか?」

 驚くことに、シュンはすぐに目を覚ました。
 レイトは一瞬あせったが、シュンが起き上がる気配はないのでまだダメージは残っているのだろうと思い直す。

『本当にすいませんでした……失礼します!!』

 レイトは即座にその場を立ち去った。

「ま、待ちやがれ……いててっ!? ちょ、完全に治ってねえぞ!?」

 残されたシュンは慌てて追いかけようとしたが、動こうとした瞬間に脇腹に激痛が襲いかかった。支援魔術師の回復魔法の効果は、時間をかけなければ発揮されないのだ。
 誰もいない夜の冒険都市に、シュンの抗議の声がむなしくこだました。


 ◆ ◆ ◆


 ――どうにかシュンから逃げ切れたレイトは、自宅に辿たどり着くと毛皮のマントと露店で販売していた仮面を外し、庭で眠りこけていたウルの身体に飛び込む。

「とうっ!!」
「クゥンッ……?」
「ふうっ……相変わらずいい具合のもふもふだな」

 レイトは眠っているウルの身体を枕代わりにして横たわり、昔はよくこうして野宿していたことを思い出す。
 そのまま寝入ろうかと考えたが、目がえてしまったのか眠れない。

「ちょっと興奮しすぎたかな……起こして悪かったな」
「ウォンッ」

 その通りだとばかりにウルが抗議するような鳴き声を上げた。
 レイトはなだめるためにウルの頭を撫で回し、そのままウルが眠るまで傍にいる。
 ウルが完全に眠ったことを確認したあと、レイトは自宅を抜け出す。

「少し運動するか」

 レイトは収納魔法を発動して退魔刀たいまとうを取り出し、って人気のない場所に移動する。
 目指したのは裏路地の先にある開けた場所である。かなり前の話になるが、最初にレイトがこの街を訪れたとき、そこで盗賊と遭遇した。
 誰もいないことを確認し、レイトは建物の屋根に飛び移った。大分レベルが上昇しているので「身体強化」の補助魔法を発動せずとも素の身体能力だけで跳躍することができた。

「よし、ここならいいか。問題ないよなアイリス」
『まあ、周辺に人は存在しませんね』

 念のためにアイリスの確認を取り、レイトは退魔刀を引き抜いて右手のみで持とうとする。だが、先日刃をアダマンタイトに変化させたことで以前よりも重量が増しており、現在の彼でも片腕だけで扱うのは難しい。

「おっとと……『重撃剣』」

 掌に紅色べにいろの魔力をにじませた瞬間、退魔刀の重みが一気に消失した。魔力で重力を操ったのである。
 レイトは退魔刀を片手のみで振り回す。重力を操作する魔法を使用すれば、どんなに重量が重い武器でも使えるようになるのが利点だ。
 彼は反対の腕に「氷装剣ひょうそうけん」を発動して氷の刃を作った。

「今日は二刀流の練習だな。上手くできるといいけど……」

 二刀流自体は何度か戦闘で実際に使用した経験があるが、いずれも長剣だけの組み合わせであり、退魔刀のような大剣を片腕だけで振るったことはほとんどない。理由としては身体能力を強化しても、退魔刀の重量が重すぎてレイトでは扱えなかったからである。
 だが、先日「重撃剣」という新たな戦技を覚えたおかげで、現在のレイトは片腕だけでも退魔刀を振るうことができる。
 彼は二刀流を得意とする従姉いとこのナオの動作を真似して、二刀流の練習をする。

「はあっ!!」

 ナオの動きを思い返しながら両手の剣を振り回すが、やはり彼女のように自在に剣を振り回すことはできない。そもそもナオが装備しているのは「カトラス」であり、レイトのような「大剣」や「長剣」ではなかった。
 武器に違いがある時点で、ナオの戦法を完全に真似するのは難しい。そう判断したレイトは、改めて自分に合ったスタイルをみ出すことにした。
 まず、両手で武器を装備した状態で戦技を発動できるのかを確かめる。大剣と長剣という別系統の武器を両手で所持した状態で、レイトは基本的な戦技を使ってみた。

「『かぶと割り』!!」

 戦技を発動した瞬間、レイトの身体は退魔刀と長剣を天高くかかげ、同時に振り下ろした。
 大剣、あるいは長剣を一本だけ持った状態で「兜割り」を発動した場合、両手で振り下ろす動作となる。片手で一本ずつ振り下ろす分、両手で放つよりも速度と威力が落ちていた。

「『旋風』!!」

 レイトは続いて、両手で横薙ぎに剣を振り払う動作の戦技を発動してみた。
 すると、レイトの両腕が交差して左右の両方向から剣を横薙ぎに振り払った。こちらも先ほどの「兜割り」と同様に剣速と威力が落ちているが、その反面攻撃範囲が伸びている。

「『回転』!!」

 さらにレイトは身体を回転させながら相手に斬りつける戦技を発動する。
 次の瞬間、レイトの身体は両足を軸に時計回りに一回転した。回転の勢いで二本の剣も素早く振られる。剣が一本のときと動作は大きく変わらず、回転を加える度に速度と剣圧も増すという特徴も同じだった。

「『刺突』!!」

 今度は最近覚えたばかりの戦技を発動する。
 すると、レイトは両手の剣を前方に突き出した。刀身の長さに違いがあるため、大剣のほうがリーチが長い。

「今のところはこれくらいか……というか、俺って基本的にこの四つの戦技しか戦闘では使ってないんだよな。一応、他の戦技も覚えてるけど……」
『別に戦技が多ければ強くなれるというわけでもないですからね。レイトさんはこれらのスキルを極められているってことです』
「それもそうか」

 実戦で使う戦技の数は少なくとも問題はない。
 それに、レイトはバルから教わった「撃剣」の技術を組み合わせて戦技を強化する「剛剣」という剣技を生み出している。
 この強力な剣技のおかげで、レイトは格上の敵を相手にしても互角に戦える。
 しかし、両手で武器を使用する場合は全身の筋肉を利用した「撃剣」の技術と非常に相性が悪い。つまり、二刀流の状態では「剛剣」を利用して戦うことはできないのだ。
 そのため、二刀流で戦う場合を想定して新しい戦法を編み出す必要がある。

「何かいい技はないの、アイえもん」
『誰がアイえもんですかっ……そうですね、それなら「疾風剣」の戦技でも覚えたらどうですか?』
「『疾風剣』……? それはどんな技?」

 レイトが首を傾げると、アイリスは詳しく説明した。

『文字通り、速度を重視した剣の戦技です。獣人ビースト族が覚えやすい戦技でもありますね』

 速度に特化した戦技と言っても、どのような技なのかイメージが付かない。
 そう思ったレイトだが、とりあえず習得方法を尋ねることにした。

「どうすれば覚えられる?」
『そうですね、こちらの戦技を覚える前に先に格闘家のスキルをある程度覚えましょう。レイトさんなら簡単に覚えられるはずですから』
「格闘家の? ……分かった」

 レイトは武器を手放し、アイリスの指示通りに行動を開始する。
 まずは「氷塊ひょうかい」の魔法を利用して人型の氷人形を作り、続いて拳のほうにもボクシンググローブのように氷のかたまりをまとう。

『今回は色々と覚えることになりそうですね。まずは基本の「拳打けんだ」を発動しましょう』
「『拳打』か……どんなのだっけ?」
『ゴンゾウさんが戦っていたときのことを思い出してください。あの人が戦人形バトルゴーレムと戦闘していたときに使用していた戦技を覚えてますか?』
「なるほど、あれか……分かった、やってみるよ」

 しばらく使っていなかったので忘れかけていたが、「拳打」はレイトが覚えている戦技だった。
 それを使い続ければ、新たなスキルを習得できるとアイリスは言う。
 レイトは氷人形に向けて拳を突き出し、人形の顔面部分に叩き込む。
 人形に軽いひび割れが生じるが、破壊にまでは至らない。
 レイトは先日のゴンゾウが戦う姿を思い返し、即座に反対側の左拳も叩き込む。この動作を数回繰り返し、ついに眼前に画面が現れた。


〈技術スキル「連打」を習得しました〉


「よっしゃっ」
『それでは、次はその「連打」を繰り返してください』

 アイリスが次の指示を出す。
 レイトは拳を握りしめ、氷人形に向けて何度も拳を突き出した。

「ていっ!! あ、壊れちゃった……もう少し頑丈に作らないとな」
『頑張ってください。次の戦技を覚えない限り、「疾風剣」は習得できませんよ』
「分かったよ」

 レイトは新しい氷人形を用意する。そして戦技を利用して殴り続けるが、スキルを覚える前にまたもや人形が壊れてしまった。仕方なく、レイトは再び新しい氷人形を作り出す。
 この作業を繰り返し、レイトは徐々に戦技とスキルの使用法法を把握していく。
 最初の「拳打」で右拳を突き出し、続いて技術スキルの「連打」で左拳を突き出す。この繰り返しによって、レイトは目にも留まらぬ速さで拳の連撃を繰り出すことができた。

「オラオラオラオラオラオラオラァっ!!」
『そのかけ声はちょっと危ない気がします!!』
「あたたたたたっ!! ほぁたぁっ!!」
『そっちもまずいですね!!』

 冗談交じりのかけ声を発しながら、レイトは拳を突き出していく。
 十数度目の氷人形を破壊したところで、拳にまとわせていた「氷塊」のボクシンググローブが壊れる。
 それと同時に、視界に画面が出現した。


〈戦技「疾風突き」を習得しました〉


「おお、なんか覚えた……」


〈技術スキル「乱撃ラッシュ」を習得しました〉


「あれ? 二つも?」

 レイトは首を傾げ、一つずつ内容を確認していく。
 前者は「拳打」の上位互換と思われる戦技であり、後者はこちらの戦技を最初に発動させたあとに使用できる技術スキルだった。
 これにはアイリスも予想外だったらしく、素直に感嘆の声を上げた。

『驚きましたね。まさか二つもスキルを習得できるなんて……さすがはレイトさん』
「これでいいの?」
『まあ、準備は整いましたね。せっかく覚えたんですから、試しにどんな戦技なのか確かめてみたらどうですか?』
「そうだな……よしっ」

 拳を握りしめ、レイトは新しく覚えた戦技を使う前に今度は「土塊どかい」の魔法を発動して人型の土人形を作り出す。また、何度も硬い氷に拳を叩きつけたことでさすがに拳を痛めてしまい、「回復強化」を施して両手の治療もしておいた。

「治療完了……まずは、『疾風突き』!!」

 戦技を発動した瞬間、レイトは通常の「拳打」とは比較にならないほどの速度で拳を突き出し、土人形の顔面を撃ち抜いた。速度も威力も「拳打」を上回っている。
 レイトはさらに続けて「乱撃ラッシュ」を発動した。
 すると、レイトの両拳が残像を生み出すほどの速度で拳が幾度も繰り出される。
 土人形の身体は一瞬でくずれ去ってしまった。
 眼前で崩れ去った土人形にレイトは驚愕する。

「お、おおっ……すごいなこれ」
『街中の喧嘩とかで使用したら駄目ですよ。相手を殺しかねませんから……それにしても、なんでレイトさんは魔術師として生まれたんでしょうね。剣士や格闘家だったら今頃は……』
「そういうのいいから」

 アイリスは同情するように言ったが、レイトは今さら自分の職業に疑問を抱くのも面倒になったのでそっけなく応えた。
 レイトの職業は「錬金術師」と「支援魔術師」。どちらもこの世界では不遇とされている職業だ。
 この世界の人間は必ず、生まれながらにしてなんらかの職業を持っている。そして、その職業は変えることができない。
 努力をすれば他の職業のスキルも覚えられるが、それはほんの一部だけであり、専門的なスキルは習得できない。
 レイトは拳にこびり付いた泥を振り払い、本命の「疾風剣」と呼ばれる戦技の習得方法を問い質す。

「名前の響きからするに、剣を持った状態で『疾風突き』を発動すればいいの?」
『その通りですね。ですけど、そう簡単には覚えられないと思いますよ』
「……まあ、試してみるか」

 すでに夜明けになろうとしているが、戦技の習得に夢中になっているレイトは疲れを忘れていた。
 彼は退魔刀を握りしめ、念のため「重撃剣」を発動した状態で先ほど覚えたばかりの戦技を使用する。
 戦技を使った直後、退魔刀が今までにない速度で繰り出され、衝撃波のような風圧が発生した。その速度に戦技を放ったレイト自身も驚きを隠せず、「撃剣」の技術を利用せずとも十分な速度と威力が期待できそうだった。

「これはすごいな……よし、なら『疾風突き』と『刺突』の戦技を同時に発動したらどうなるかな?」

 今回覚えた「疾風突き」とすでに覚えている「刺突」は、拳と剣の違いはあれど、腕を突き出して攻撃するという動作は同じである。
 レイトは試しに二つの戦技を同時に発動できないのか試してみる。
 レイトが右腕を突き出した瞬間、先ほどよりも速度を増した一撃が生み出され、風切り音が周囲に響き渡る。
 その直後、レイトの視界に画面が表示された。


〈戦技「疾風剣」を習得しました〉


「おお、やった!!」
『別のやり方を教えるつもりでしたが、まさかそんな方法があるとは……よく思いつきましたね』

 適当に戦技同士を組み合わせただけだが、運よく本命の戦技を覚えることに成功した。
 ついでにレイトは、「刺突」の戦技の強化方法も編み出した。今後はこちらの剣技も複合剣技「剛剣」の一種として加えることに決め、名前も「刺衝突ししょうとつ」と名付ける。

「『疾風剣』!!」

 レイトは新しく覚えた戦技を発動してみた。
 退魔刀が残像を生み出すほどの速度で振り抜かれ、軽い衝撃波が生じる。この戦技は全身の筋肉を利用して打ち込む「撃剣」とは違い、必要な筋肉のみで剣を振るらしく、速度は速いが威力という点では「撃剣」におとる。

「威力はちょっと弱いけど、片腕で使う分には悪くはないな……よし、今日はもう帰ろう」
『お疲れ様でした』

 一日の間に複数の戦技と技術スキルを習得し、レイトは満足して自宅に戻ることにする。
 結局、徹夜してしまったが十分な成果を得た。
 レイトが収納魔法で退魔刀を異空間にしまうと、アイリスが彼に呼びかけた。

『あ、待ってください。レイトさん、ちょっと私と本格的に「交信」してくれませんか?』
「いいけど……」
『すみませんね、今のように少し話すだけならいいんですけど……』

 短時間の会話ならば問題はないが、長時間の会話をする場合はレイトのほうから交信する必要がある。
 交信の間は時間が停止するが、レイト自身の精神を消耗しょうもうするので普段は彼女のほうから話しかける事が多い。だが、今回は長く話し合う時間が必要らしかった。
 レイトはアイリスと交信し、脳内で話しかける。


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